黒川博行『国境』結末までのあらすじを相関図付きで解説
二宮&桑原コンビが詐欺師を追って北朝鮮へと潜入する黒川博行さんによる“疫病神シリーズ”第2弾『国境』の映画化が決定しました。今回はシリーズ随一の傑作と称される小説『国境』の結末までのあらすじを相関図付きでご紹介いたします。
『国境』あらすじ
建設コンサルタントの二宮啓之と暴力団幹部の桑原保彦は、詐欺師を追って北朝鮮に潜入した。
その詐欺師・趙成根は北朝鮮の貿易外交部がカジノを開くという投資話を関西の複数の組織に持ち掛け、10憶円以上の金をだまし取り北朝鮮へ高飛びしたからだ。
二人は観光ツアーを装いガイドの監視をかいくぐりながら趙の行方を追い、北朝鮮の北部の町に向かったという情報を得るものの滞在期間の終了のため一旦日本に戻った。
二宮は父の元恋人・高山淑子のツテを辿り中国から北朝鮮に入国できることを知り、再び桑原と共に国境に向かうことにした。
二人はセメント袋に入り越境することに成功し、途中でトラックが事故を起こすなどトラブルもあったが、なんとかヒッチハイクで北朝鮮北部に辿りついた。
徹底した体制統制、厳しい行動制限、軍事費優先の経済政策に加え経済制裁の孤立によって深刻な食糧難…
想像を絶する世界を目にしながら二宮と桑原は、潜伏していた趙を見つけるが…
『国境』登場人物&相関図
◆登場人物
◆二宮啓之・・・建設コンサルティング業を営む。詐欺師・趙也根を探しに桑原らと共に北朝鮮に潜入する。父・孝之は二蝶会の元幹部。
◆桑原保彦・・・二蝶会の幹部組員。粗暴な性格。若頭の命令で詐欺師・趙也根を探す。
◆柳井明寿・・・在日三世。堪能な朝鮮語を生かし、合併や合資事業を仲介する手数料で生計を立てている。32歳。1960年に北の帰国事業で親戚を9人が北朝鮮に渡った。
◆嶋田和夫・・・二蝶会の若頭。
◆趙成根(チョウソングン)・・・詐欺師。投資話を持ち掛け二宮や嶋田から金をだまし取って北朝鮮に逃亡した。
◆竹村正一・・・趙成根の共犯者。
◆渡辺悠紀・・・二宮の従妹。モダンバレエのインストラクター。
◆高山淑子・・・二宮の父の元恋人。遠縁の柳井を二宮に紹介した。
◆永田 隆・・・淑子が二宮の父・孝之と別れた後に交際していた焼肉チェーンのオーナー。
◆池内・・・大江組の若頭。
◆小坂田倫郎・・・大江組の元組員。
◆石井利夫・・・竹村の詐欺師仲間。
◆飛鳥 清・・・老舗ホテル「ヒルパークス」のオーナー。
◆中川・・・マル暴の刑事
◆相関図
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『国境』結末をネタバレ
ようやく趙を捕まえた二宮と桑原だったが、趙は石井利夫という男に踊らされた実行犯に過ぎなかった。
趙は5千万円で仕事を受け、石井の取り分は3憶、残りは石井のさらに上にいる金主が持っていったという。
二宮と桑原はガイドの李の力を借りながら、今度は北朝鮮から国境を越えて中国に戻ろうと車を走らせていたが途中でクラッシュし木に激突。
足が折れた李を桑原が助け出した直後に人民軍の銃声が響き、三人は林のなかに飛びこんだが、二宮は二人を見失い一人川を泳ぎ切って対岸の中国にたどり着いた。
翌日 二宮は柳井と合流するが、国境の川の下流で身元不明の遺体が二体発見されたと連絡が入り、二宮は二人を置いて逃げてしまったことを悔やんだ。
帰国した二宮は早速石井利夫の行方を追うが、その際に張っていた大江組の組員に捕まり激しい暴行を受けてしまう。
そして鉄パイプでとどめを刺されそうになった二宮の前に、なんと亡くなったはずの桑原が現れ、組員をボコボコにした。
桑原はあの日 李をかついで川を泳ぎ切り、李が警察にうまく説明してくれたおかげで日本に戻ってこられたのだった。
大江組は、大物政治家・吉岡喜一郎の議員秘書の野朝から石井利夫を紹介されていた。
石井はホテルオーナーの飛島 清に目をつけ、ゼネコンに睨みのきく代議士と飛鳥をつなぎ、大江の組長に金を渡して趙を消すように依頼していたのだった。
一方 飛鳥が経営するホテルは破産手続の準備中で、吉岡に債権者の抑え込みを依頼して資産隠しを図った。
その後 石井と吉岡の議員秘書の野朝は飛鳥を金主に仕立て上げ、二宮や桑原の組からせしめた金を、飛鳥の娘婿が経営する会社に出資してさらに儲けようよしていた。
二宮と桑原は、石井と竹村を捕まえ、今度は在日有力商人の大物・飛鳥の元に向かうが、そこに刑事の中川が現れた。
朝野に指示されてやって来たという中川だったが、実は石井が金になると目論み、身柄を横取りしようとしていた。
中川から、吉岡が泣きついて本家の仲澤組が動き出したと知った桑原は、金を一刻も早く手に入れるため二宮を連れて飛鳥の邸宅に乗り込んだ。
飛鳥から3億円の小切手を手に入れたが、桑原は足を撃たれてしまい闇医者の元で治療することになった。
二宮は桑原が動けないことをいいことに小切手を一人で換金しようとするが、仲澤組に見つかり桑原の元へ一緒に向かうことになった。
さすがの桑原も仲澤組に手出しすることはできず、二蝶会の若頭・嶋田が騙しとられた3千万を返してもらうという約束で、3億円と飛鳥の娘婿が経営する会社の営業権を手渡した。
結局二人の元には、石井、竹村、飛鳥から奪った4千万円ほどの現金や国債しか残らなかった。
二宮は桑原と交渉して手に入れた金で新しい事務所に引っ越しをし、桑原は仲澤組の口利きで二蝶会の若頭補佐の地位を得た。
その年の暮れ、二宮が桑原にキャバクラに呼び出されると、そこには国境を越えたときのガイド李がいた。
二宮は李と握手し、再会できたことを喜んだ。
『国境』感想
黒川博行による“疫病神シリーズ”のなかでの壮大なスケールで展開していく『国境』。
今回もスピード感あるアクションやイケイケヤクザの桑原や二宮の生きた関西弁が堪能でき、北朝鮮の市井の人々の暮らしを知ることができます。
物語では20年ほど前の北朝鮮の様子が描かれていますが、現在も慢性的な食糧不足で国民は深刻な困窮状態におかれており、問題は全く解決していません。
それだけクーデターや反乱の芽を早めに摘み取るような国民に対する監視システムが徹底しているということなんでしょう。
真面目に働いても全く暮らしはよくならず、うまれながらに階級が決定する社会では、将来への向上や希望を持てないのも無理はありません。
このあたりの描写は、黒川さんの静かな怒りのようなものが感じられました。(パーマデブとか…書いて大丈夫?消されない?)
しかしそんな殺伐としたなかで、仁義を貫く北朝鮮のヤクザ黄や老いぼれだけど仕事ができる李との交流やラストの人情味溢れる終わり方には胸が熱くなりました。
自分は絶対に行きたくない国ですが、北朝鮮の閉塞感にカチ込む桑原と二宮の無鉄砲ぶりにワクワクが止まらない。
後半は大金を巡って日本の裏社会に政治家、資産家などの抗争が描かれますが、前半の北朝鮮のインパクトが強すぎて若干間伸びしたのが少し残念。
それでもエンタメとしては大満足間違いなしの作品ですので、映画を観る前の予習として小説もぜひ読んでみて下さいね。
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