『一次元の挿し木』相関図付きで結末までのあらすじをネタバレ
『一次元の挿し木』は、二百年前の人骨のDNAが4年前に失踪した妹のものと一致するという不可解な謎を追う青年と、彼に立ちはだかる宗教組織の企みを描いた科学サスペンスです。今回は第23回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、ドラマ化も決定した『一次元の挿し木』の本作のあらすじ、複雑な人間関係がひと目でわかる相関図(登場人物紹介)、そして核心に迫る衝撃の結末までをネタバレありで徹底解説します!
『一次元の挿し木』あらすじ
ヒマラヤで発見された二百年前の人骨から抽出されたDNAが、四年前に失踪した妹・紫陽のものと完全に一致した。
紫陽の兄で遺伝人類学を学ぶ大学院生・七瀬 悠は、この不可解な謎を解き明かすため動きだすが、関係者の連続死や巨大な陰謀に巻き込まれていく。
200年の時を超えて繋がったDNAの真実とは? 姿を消した紫陽は今もどこかで生きているのか――?
『一次元の挿し木』登場人物&相関図
◆登場人物
◆七瀬 悠・・・遺伝人類学を学ぶ大学院生。
◆七瀬紫陽・・・悠の義理の妹。豪雨の日に突然失踪し四年経過。
◆七瀬陽一・・・紫陽の父で悠の義父。大手製薬会社日江製薬の代表取締。24年前ループクンド湖の人骨調査に携わる。
◆石見崎明彦・・・悠が所属する研究室の担当教授。ヒマラヤ山中で発掘された古人骨を研究室に持ち帰る。
◆石見崎真理・・・石見崎の娘。重い障害のため車椅子生活をおくる。
◆牛尾・・・宗教団体「樹木の会」の実行部隊。ループクンド湖の人骨調査の関係者を執拗に追う。邪魔者や関係者を容赦なく排除するサイコパス。
◆仙波佳代子・・・分子生物学の世界的権威。24年前のループクンド湖の人骨調査のリーダーだった。
◆楓・・・悠の母。「樹木の会」の熱心な信者。七瀬陽一と再婚し紫陽の義母になる。八年前の脳の病気で他界。
◆七瀬弓彦・・・陽一の父。故人。日江製薬の創業者。宗教団体「樹木の会」創設者・真鍋宗次郎とは非常に親しい関係だった。
◆石見崎 唯・・・石見崎の姪。日江製薬元社員で七瀬陽一は会社員時代の先輩。七瀬と共にループクンド湖の人骨調査に携わる。
◆真鍋宗次郎・・・・宗教団体「樹木の会」創設者。故人。
◆アモール・・・インド人研究者。日江製薬と共同でループクンド湖の人骨調査に携わる。
◆平間孝之・・・雑誌編集長。旧友でフリー記者の小野寺から渡された情報から日江製薬と樹木の会の関係を探る。
◆相関図
※無断転載ご遠慮ください。
『一次元の挿し木』【ネタバレ注意】明かされる衝撃の真実と結末
※ここからは物語の核心、および結末のネタバレを含みます。未読・未視聴の方はご注意ください。
◆紫陽の出生に隠された「禁忌の実験」
紫陽は、24年前のループクンド湖の人骨調査で発見された遺体から抽出したDNAを悠の母親に移植して生み出されたクローン人間でした。
このおぞましい実験が遂行された理由は
●宗教団体「樹木の会」創設者・真鍋宗次郎は、後子ができず後継者を欲していた。そこで懇意にしていた日江製薬に相談したところ会長の七瀬弓彦がクローンを作ろうと提言した。
●倫理的観点からクローン実験を断念されていた仙波佳代子は、キャリア形成とマッドサイエンティストとしての歪んだ好奇心好奇心からこの実験のリーダーを引き受けた。
ということにありました。
そして研究は成功し紫陽が誕生しますが、七瀬弓彦が亡くなり「樹木の会」とは関係のない人物が日江製薬のトップについたためクローン実験は頓挫。
残された紫陽は七瀬陽一に引き取られ、後に悠の母・楓と結婚したのでした。
◆紫陽が姿を消したわけ
紫陽があんなに大好きだった悠の前からいなくなったのは、ズバリ醜くなった自分を見せたくなかったから。
クローンであることに起因する遺伝子情報の配列異常(染色体異常)のような欠陥を持って生まれてきた紫陽は、身体が徐々に弱っていく運命にありました。
髪は抜け、干上がった艶のない皮膚、だらりと垂れ下がる舌という、かつての美少女の面影をなくす難病が彼女を襲っていたのです。
女子ならば、好きな男性にこんな姿を見られたくないと思う気持ち分かりますよね。
美少女の紫陽自身は、現在の姿からのギャップが大きすぎて耐えられないでしょうし、イケメン悠とは不釣り合いになると悲観的にもなるはずです。
そして紫陽へのトドメは悠が言った「醜くなったら、それはもうきみじゃない」という言葉。
会話のなかの冗談だったとはいえ、徐々に身体が蝕まれていく紫陽にとって、この言葉は残酷すぎました。
◆死神・牛尾の正体
物語なかで死神のような不気味な存在の牛尾は、「樹木の会」創設者真鍋宗次郎のクローンでした。
牛尾は遺伝子の配列異常によって理性を欠き、人を破壊するためだけにプログラムされたような怪物。
苛性ソーダが入ったポリタンクを「ぽちゃん ぽちゃん」させながら、アモール、石見崎、七瀬陽一、マスコミ関係者の平間など次々と溶かして骨だけにしていきます。
牛尾は、「樹木の会」を存続させるため新しいイコン(象徴)を創るため、クローン研究の貴重なサンプルとして紫陽の身体を狙います。
また、その生命倫理を無視したおぞましい研究を外部に漏らさないように、邪魔者や関係者を容赦なく排除する実行部隊として暗躍。
とはいえ牛尾も身勝手な実験の被害者。
欠陥があるため組織の捨て駒として利用されるというのは少し可哀そうではありますが、「ぽちゃん」という死亡フラグの音を聞くだけで背筋が凍ります。
◆仕掛けられた身代わりトリック
悠と一緒に謎の解明のため動いていた唯は、実は石見崎の娘の真理でした。
では車椅子に乗った真理は一体誰なのか….それは4年前に姿を消した紫陽でした。
石見崎は教団に狙われる紫陽を守るため、紫陽を娘の真理にし、真理も無くなった従姉妹の唯を名乗り協力したのです。
●唯・・・石見崎の姪で交通事故で亡くなっている。
●真理→唯
●紫陽→真理
真理と紫陽はまるで姉妹にようにかけがえのない時間を過ごしていましたが、クローン実験がスキャンダルに取り上げられそうな気配を感じた「樹木の会」が動き出したことで暗雲が立ち込めます。
◆紫陽の選択と結末
悠の母・楓が紫陽に遺した短剣のおかげで悠は牛尾を倒すことに成功。(ちょっとファンタジー色強め)
紫陽は、京一から投与された(ミラクルすぎる)薬で動ける身体を取り戻した後、悠の元に戻ることなく宗教団体「樹木の会」の新しいイコン(象徴)として生きることを決めました。
紫陽は、自分存在を必死に守るため犠牲になった陽一や石見崎、そして悠や唯に今後 危害が及ばないように教祖になることを決断したのでしょう。
◆タイトルの意味
「挿し木」とは植物の茎や枝などを土や水に挿して、根を出させ個体を増やす繁殖方法です。
私も剪定した薔薇の茎で挿し木の挑戦したことがありますが、意外にも簡単に親株と同じ個体を作ることに成功しました。
しかし親と同じ色や形の花を再現できる一方で、病害虫の被害に遭いやすい特徴も引き継がれるので健康な親株を選ぶことが重要になります。
植物なら欠陥があっても問題はありませんが、これを人間に置き換えるとシャレにならないことが牛尾を見れば明らかですね。
紫陽もまた身体が弱いですし、クローンといえども意志を持った一人の人間ですから倫理的な論争が起こるのも無理はありません。
生物の起点となるDNAを現した「一次元」とクローンを示す「挿し木」は、トリックと出生の秘密が込められた物語を象徴するようなタイトルとなっています。
生命倫理への強いメッセージと難しいテーマを扱った本作ですが、専門的なことも分かりやすく説明されていますし、何よりも構成が面白いので、この緻密な構成と衝撃をいち早く味わいたい方は、ぜひ原作小説もチェックしてみてください!
東野圭吾原作ドラマ『分身』結末と相関図は⇒こちら



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