『男ともだち』ネタバレ解説!異性の友人という究極のファンタジー
千早 茜さんの『男ともだち』は、誰よりも理解しながらも決して恋人にはならない男女の曖昧で特別な関係を描いた小説です。今回は直木賞候補にもなった『男ともだち』をネタバレ解説します。
『男ともだち』あらすじ
売れっ子イラストレーターの神谷 葵は、同棲している倦怠期の彼氏がいながらも、妻帯者の医師との逢瀬を重ねる日々を送っていたが、ある日 かつての男ともだち・ハセオから電話がかかってくる。
神谷とハセオは、大学時代なぜかいつも一緒にいて、お互いに理解し合いながらも決して恋人にはならなかった。
ハセオとの再会によって、葵の停滞していた日常と、心の奥底に眠っていた感情が再び激しく動き出すーー。
『男ともだち』登場人物
◆登場人物
◆神谷 葵・・・29歳。京都在住のイラストレーター。才能はあるが身勝手で不器用。
◆ハセオ・・・葵の大学時代の先輩。葵を理解してくれる男ともだち。女性関係にだらしない。
◆彰人・・・葵の同棲している恋人。会社員。関係は冷めてきている。
◆真司・・・葵の愛人。遊び人の医者。既婚者。
◆辻田美穂・・・葵の大学の同期。
『男ともだち』感想・ネタバレ
◆境界線を引くことで保たれる「壊れない関係」
主人公の神谷が心の底から必要としていたのは、身体を重ねる恋人ではなく、「自分の本質をずっと見守ってくれる存在」でした。
彼女が同棲相手との不和や不倫という泥沼の恋愛に足を取られながらも、なんとか精神のバランスを保っていられたのは、ハセオという絶対的な「男ともだち」がいたからです。
作中に「男ともだち なんてずるい響き」とありましたが、神谷はともだちという境界線を引くことで、ハセオとの壊れることのない関係を保っています。
求めないし、離れないし、そして理解してくれ、ただただ寄り添ってくれるハセオは女性にとってはファンタジー。
名前も長谷雄じゃなくて、カタカナで“ハセオ”という時点で選ばれし者感が強いですね。
神谷はずるずると関係を続けていた同棲中の彼氏・彰人と別れ、寂しさを埋めるように、都合の良い関係だった医者の真司と逢瀬を重ねていましたが、ハセオによってその関係も壊れてしまいます。
◆恋人になれば「その他大勢」に成り下がる
神谷は、貴重なハセオという存在を自分のものにしたいと思い、恋人になろうとしますが、美穂からそんなことをすればハセオを失うと忠告されます。
もし一度でも関係を持ってしまえば、ハセオにとって葵はその他大勢の女の一人になり、落ち込んだときに助けてくれなくなるからです。
一度でも関係してしまえば、それはハセオの得意な「だらしない男女関係」の消費サイクルに組み込まれてしまう。
ハセオがハセオでいるためには、一線を越えてはならないのです。
結果として、神谷は恋人も愛人も失い、ハセオと恋人になることもありませんでした。しかし、二人の特別な関係性は守られたのです。
◆共感と羨望が入り混じる、現代の新しい絆
同棲相手がいながら不倫に走り、誰とでも身体を重ねてしまう葵の奔放さは、一見すると「サークルクラッシャー」のようであり、純粋な共感は呼びにくいかもしれません。
しかし、そんなだらしなく不器用な彼女を、倫理的な善悪を超えてただ全肯定し、存在を認め合えるハセオという存在には、誰もが猛烈な羨望を抱くはずです。
異性でありながら、セックスという肉体関係を持たないからこそ「唯一無二の特別」でいられる。既存の「友情」や「恋愛」というカテゴリーには決して括れないこの関係性は、孤独を抱えて生きる現代の私たちにこそ、本当に必要な絆のカタチなのかもしれません。
『あのこは貴族』結末までのあらすじと相関図は⇒こちら

入れ替わり男女の15年の物語『君の顔では泣けない』あらすじから結末は⇒こちら
本屋大賞受賞!凪良ゆう『汝、星のごとく』結末までのあらすじと相関図は⇒こちら



この記事へのコメントはありません。