【ネタバレ】『怪物の祈り』あらすじ・結末・相関図から紐解くテーマの深層

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死刑制度の是非、被害者遺族の救い、そして本当の「贖罪」とは何か――。
重厚なテーマで読者の心を揺さぶる薬丸岳さんいよる傑作ミステリー『怪物の祈り』。

本作のあらすじから、衝撃のラスト、読後に残る深い余韻までを徹底解説します。

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『怪物の祈り』あらすじ

刑務所で受刑者の精神的ケアや立ち直りを支援する牧師の保阪宗佑は、娘を暴漢に殺害される。

裁判で「サンキュー」と高笑いし反省の色を全くみせない犯人に対し、保阪は激しい憎悪に駆られ、犯人を地獄の底に突き落とすため模索する。

そして保阪は、犯人に最大の恐怖と絶望、そして苦しみを味わわせるため、教誨師として対面し生きる喜びを与えた上で死刑台に送り込む計画をたてた。

被害者の父として死刑囚と対峙することになった保阪は、これまで罪の赦しを説いてきたはずが、自分が復讐に憑りつかれていることに悩み苦しむ。

本当の更生、そして贖罪とは何なのか。最期の教誨で、保阪が犯人にかけた言葉とは――。

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『怪物の祈り』登場人物

登場人物

保阪宗佑・・・キリスト教の牧師。刑務所や拘置所で受刑者の精神的救済を行う教誨師。元恋人を死に追いやった経験から牧師となった。娘を手にかけた石原に復讐のため近づく。
保阪由亜・・・宗佑と元恋人・優里亜の子供。結婚を控え、妊娠7か月だったが石原によって襲われ命を落とす。
石原亮平・・・由亜を含め4人の命を奪った死刑囚。幼少期に両親は離婚して父に引き取られ、その後祖母に預けられるも祖母を殺害した過去を持つ。母親と姉に見捨てられたと感じている。姉からび手紙をきっかけに保阪から教誨を受ける。
小泉直也・・・刑務所で石原を担当する刑務官。石原が手をかけた女性の父が保阪と知り…。
優里亜・・・保阪の元恋人。保阪に別れを告げられたあと由亜を出産し自ら命を絶つ。
真里亜・・・優里亜の姉。優里亜は亡くなり、彼女の娘の由亜を育てる。保阪に石原の教誨師になって復讐してほしいと提案する。
武井 遥・・・石原の姉。母親に引き取られる。弟の事件を知り心を痛め、拘置所に手紙を送り続ける。クリスチャン。

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『怪物の祈り』結末をネタバレ

偽りの寄り添いと、怪物の変化

教誨師として石原亮平と対話を続けていた保阪宗佑は、感情を封じ、心のなかで娘の由亜に詫びながら彼の心に寄り添い続けた。

皮肉にも石原は保阪に心を開くようになり、刑務所での生活態度も穏やかになり、少しづつ生きる希望を見出していた。

明かされる事件の本当の動機

一方、保阪は他の死刑囚に最後の祈りをささげるため死刑執行に立ち会い、彼らが絶望のなか死刑台に送られる姿を目の当たりにし、精神を病んでいく。

娘の無念を晴らそうと石原と向き合っていた保阪だったが、石原が自分を必要としてくれている姿を見て、彼を許したいという気持ちが芽生え始める。

石原が事件をおこした動機は、自分を捨てた母と姉に事件のおぞましさをみせつけて後悔させたいということだった。

しかし、保阪が姉の遥から話を聞くと、幼少期に父についていくと決めたのは石原自身であり、生活が困窮した母と姉は石原は父に引き取られて良い生活を送っていると思っていたという。

保阪から遥の話を聞いた石原は、姉と面会することを決め、石原は実年齢よりも老いてしまった姉の本当の想いを知った。

最期の教誨、そして沈黙の贖罪

ついに石原の死刑執行日が決定する。石原は最後の時間を保阪と過ごすことを望んだ。

石原は由亜が亡くなる直前に助けを求めた「お父さん(保阪のこと)」という言葉と共に、彼女の最後の様子を彼女の父に伝えて欲しいと頼んだ。

死を前に「一人になるのが怖い」と恐怖に震える石原に対し、保阪は彼の頬に触れ、「君の罪は許す」と言葉をかけた。

石原は姉との対面で、被害者はもう何も伝えることはできないことを悔やみ、自分が犯した罪の重さを実感していた。

だから石原は、保阪から最後に姉へ伝えたいことはあるかと聞かれても、被害者の無念を思い何もメッセージを残さなかった。

石原は、被害者や遺族への直接の謝罪は行わなかったが、贖罪に意味を込めて唯一の肉親である姉に何も伝えないままこの世を去ったのだった。

生きる喜びを知り、絶望のなかで死なせるという保阪の復讐は形を変え、ひとつの「救済」へと昇華した瞬間だった。

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『怪物の祈り』見どころと感想

『怪物の祈り』は、精神的負担の多い受刑者の精神的救済を行う教誨師と死刑囚の収容から執行まで扱う刑務官の姿、そして死刑制度という重いテーマを扱った作品です。

最初は心を引き裂かれるような事件と遺族の神経を逆なでする犯人に怒りのようなものを感じましたが、主人公と犯人の心の変化によって読後は不思議と穏やかな気持ちになりました。

最後に「死にたくない、助けて」と犯人言わせたことで保阪の復讐は成功したと言えますが、保阪は最後に彼の罪を許しました。

同時に石原にとってはこれ以上ない罰でもありました。

犯人の石原が行ったことは決して許せませんが、彼は生まれながらの悪ではないことが姉によって明らかになり、彼が最後に選んだ「沈黙の退場」は、読者に強い衝撃を残します。

保阪自身も恋人の姉を好きになってしまい、お腹に保阪の子を身ごもった恋人を死に追いやったという同じ十字架を背負う者として、石原に憐れみのような感情が芽生えたのではないでしょうか。

SNSでは「この犯罪なら死刑は当然」「死刑執行までが遅すぎる」などの言葉をよく見かけますが、死刑囚だけではなく、想像もつかないような苦悩と重責のなかで仕事をする刑務官の仕事について考えさせられました。

現在の日本では死刑制度は認められていますが、本当にそれで被害者の無念は晴れ、被害者家族の痛みがなくなるのか….保阪が最後に選んだ言葉は万人が納得できるものではありませんが、死刑制度に一石を投じるラストだったなと思います。

死刑囚だけでなく、想像を絶する重責のなかで職務を全うする刑務官や教誨師の苦悩など、現代社会が目を背けがちな死刑制度のリアルを描き切った、読み応えのある作品ですので、映画化で気になった方はぜひ原作も手にとってみてください。

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