『火喰鳥を、喰う』ネタバレ!登場人物&相関図付きで結末までを考察

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なんともインパクトのあるタイトルの小説『火喰鳥を、喰う』は、七十年以上前に戦死した大伯父の日記が発見されたことで始まる怪異現象を描いた作品です。今回は映画化も決定した『火喰鳥を、喰う』の結末までのあらすじをネタバレ有りでご紹介いたします。

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『火喰鳥を、喰う』あらすじ

信州で妻・夕里子と共に実家で暮らす久喜雄司の元に、太平洋戦争で南方の島で亡くなった大叔父・久喜貞市日記が見つかったと連絡が入った。

それと同じ頃に、久喜家の墓に刻まれていた貞市の名が何者かによって削り取られるという不可解な出来事が発生する。

亡き大叔父の古い日記の発見
久喜家代々の墓になされた奇妙な破壊行為

これらをきっかけに、貞市の部下だった男の屋敷の火災、日記を持ち帰った新聞記者の錯乱、雄司の祖父・保の失踪など怪異な事件が次々に起こる。

そこで雄司たちは、夕里子の知り合いで超常現象に造詣のある北斗総一郎に相談に行くが…

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『火喰鳥を、喰う』登場人物&相関図

登場人物

久喜雄司・・・大学時代の先輩・夕里子と結婚して信州に暮らす主人公。
久喜夕里子・・・雄司の妻。鋭い勘を持ち、常に冷静。
久喜貞市・・・太平洋戦争末期に戦死した雄司の大伯父。
久喜 保・・・雄司の祖父。貞市の弟。
久喜伸子・・・雄司の母。
瀧田 亮・・・夕里子の弟。大学生。貞市の日記に興味を持ち、姉の嫁ぎ先に遊びにきた。
藤村 栄・・・太平洋戦争中に貞市と共に密林生活を送り、日本への帰還が叶った元兵士。90歳。
伊藤勝義・・・貞市の部下。藤村と共に復員した兵士。日本に戻り間もなく病で亡くなった。
与沢市香・・・信州タイムス記者。
玄田 誠・・・信州タイムスカメラマン。
北斗総一郎・・・超常現象に造詣のある男。夕里子とは昔からの知り合い。

相関図

※無断転載禁止

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『火喰鳥を、喰う』結末までをネタバレ

遺された日記によって不幸が次々と襲いかかる

「生」への異常なまでの執着が綴られた久喜貞市の日記を読んだ人たちは次々と不可解な出来事に巻き込まれていきます。

●夕里子の弟・亮→無意識に日記の最後のページに「ヒクイドリヲ クウ ビミ ナリ」と書き込み、ノイローゼ状態になる。
●貞市の部下・藤村→自宅が全焼し、大火傷を負う。
●カメラマンの玄田→マラリアにかかり、錯乱して自分の腕を切り落とす。
●祖父・保→行方不明に。

物に触るとその物に宿るものに共鳴する力をもつ夕里子は、日記から強烈な生存欲求を感じ、超常現象に詳しい知人の北斗総一郎に相談に行きます。

貞市は生きていた?

北斗総一郎は、かつて夕里子が交際していた男でした。

北村はあの日記には貞市の思念からくる「籠り」があるといい、貞市はニューギニアの密林で亡くなったにもかかわらず、日記を読んだ者が「貞一が生きている」と感じたことが引き金になったと説明しました。

そして亮が「ヒクイドリヲ クウ ビミ ナリ」と日記に書き込んだことで、貞市はヒクイドリを仕留め食べて生き残ったという事実を確定させてしまったのでした。

つまり日記を読んだ者の思念によって久喜貞市の「生」が創造されたのです。

墓石の名が削りとられていたのも、位牌が消えてしまったことも、これで説明がつきます。

そしてここからは、 貞市が戦死した世界線(雄司の現実)貞市が生き残った世界線(貞一の孫・千弥子のパラレルワールド)の戦いになっていきます。

黒幕は北斗総一郎

北村自身も夕里子と同じく物に触れると思念を感じ取れる能力を持っていました。

人に理解されない能力を持つ北村と夕里子は共鳴して惹かれ合いますが、いつしか夕里子は自分と折り合いをつけ、穏やかに過ごせる相手である雄司を選んだのでした。

しかし、北斗は籠りを超える執念で今でも夕里子を欲していました。

北斗は雄司がいる世界と貞市の孫・千弥子の世界どちらにも存在し、貞一の日記を利用して雄司を亡き者にしたのでした。

雄司が自宅に戻ると「久喜貞市」の表札が掲げられていました。

それは貞市が生き残った世界線が勝利した証でもありました。

雄二と貞市の「生」は両立しない…。

雄司は、なんとか現実を変えようと100歳に近い老人となった貞市に小刀を向けますが、振り返った貞市は火喰鳥となり雄司を睨みつけました。

結末

場面は変わり、ここは貞市が生き残った世界

貞市の孫・千弥子は、これまで何度も中年の男(雄司)から、「お前がいると生きられない」と声をかけられたり、貞市の名を墓に刻まれる悪夢を見てきました。

そしてあるときには、小刀で貞一の首を刺したりすることもありました。

そんなある日、偶然知り合った北斗総一郎という男から、自分自身を消そうとしている悪魔の存在を教えてもらい、その対処法などの助言をしてもらいます。

妊娠していた千弥子は北斗からのアドバイスを受けて「お腹の子を何としてでも守る」と強く念じ、ついに悪夢を跳ね返したのでした。

そして今日、新婚旅行に発つ前に北斗が久喜家を訪ねてきました。

彼の隣には「夕里子」と紹介された色白の妻が立っていたのでした。-おわりー

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『火喰鳥を、喰う』感想

本作は横溝正史ミステリー&ホラー大賞を受賞していますが、怖いというよりはSF要素が強い作品でした。

選考でも「ホラー部分が怖くない」と評されていますが、『火喰鳥を、喰う』というインパクト大のタイトルですでに掴みはOKで、大叔父の日記を読んだ人が不可解な死を遂げ、貞一VS雄司の戦いが展開され始めるとさらに加速。

火喰鳥を食べたいと思うほどの生存欲求の塊となった貞一が、どんどん現実を書き変えていく恐怖。

猟奇的な描写も多く、「火喰鳥も人も喰えば同じ」と仲間の肉を食らい生き延びたのもグロテスクでした。

黒幕は北斗でしたが、千弥子の相談に便乗して貞一を利用し、雄司を消して愛する女性を手に入れる結末は、不気味な仕上がりになっています。

思念=執着が強いものの勝利というか、種の生存競争みたいなものを感じました。

ただ北斗という男が超常現象に詳しい人物というだけで、千弥子から信頼されたというエピソードはちょっと薄く、主人公が極限状態に追い込まれて狂気的になっていく描写や虫のエピソードの回収ももっと欲しかった。

土着ホラー好きな私には少し物足りない部分もありましたが、叔父が生きて帰ってきた世界が現実を侵食していく演出などSF的には凝った作品となっていますので、映画化される前にぜひ原作も手にとってみてください。

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