『アンダークラス』結末を相関図付きでネタバレ!田川シリーズ第3作
小説『アンダークラス』は、劣悪な環境で働いていた外国人技能実習生が起こした事件をきっかけに、日本の格差社会の問題を浮き彫りにした社会派ミステリーです。今回はNHKでドラマ化も決定した『アンダークラス』の結末までのあらすじを相関図付きでご紹介いたします。
『アンダークラス』あらすじ
秋田県の水路で介護施設に入居していた藤井詩子という老女の遺体が発見され、施設で働いていたベトナム人技能実習生の女性・アインが容疑者として浮上する。
アインは詩子に頼まれ自殺の手助けをしたと自供するが、捜査にあたった刑事・田川は遺体の「手」が外側に向いていたことに違和感を感じる。
他殺ではないかと疑う田川はアインと交流のあった捜査一課の女性刑事・樫山と共にアインが来日してからの行動を追うが、神戸で彼女が劣悪で人権を無視した労働環境に耐え兼ね逃げ出したことを知る。
田川たちは再捜査の過程で、大手企業の利益追求、便利さを求める顧客たちの欲望により、犠牲となった技能実習生の過酷な現実を知ることになり…。
『アンダークラス』登場人物&相関図
◆登場人物
◆アイン・・・ベトナム人の技能実習生。29歳。藤井詩子の自殺ほう助の疑いで逮捕される。苛烈な労働と虐待に耐え切れず神戸の繊維会社を逃げ出し、秋田の介護施設に流れ着いた。
◆藤井詩子・・・秋田県の介護施設に入所していた女性。末期癌のためアインに自殺の手助けを頼んだとされ亡くなった。
【警察】
◆田川信一・・・捜査一課でお荷物と陰口を叩かれる迷宮入り事件を扱う第5係でたった一人で捜査にあたる刑事。メモ魔。
◆樫山順子・・・警視庁第一強行犯係のキャリア警視。大使館にいた頃に交流のあったアインを一緒に探してほしいと田川に依頼する。
【サバンナ】世界的なネット通販会社
◆山本康裕・・・・サバンナ企画室の部長。オックスマートからサバンナにヘッドハンティングされたエリートサラリーマン。
◆中村沙織・・・山本の部下で秘書。山本を公私共にサポートする。
【神戸の人々】
◆黒田・・・アインが神戸で働いていた縫製工場「コウベテキスタイル」の女性専務。社長が気に入っていたアインを目の敵にし暴力や虐待を行っていた。
【秋田県の人々】
◆浅野恒太朗・・・詩子の同級生。詩子が亡くなる前に施設へ面会にきていた。
◆大高雅子・・・詩子の親友の姪。
◆相関図
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『アンダークラス』結末をネタバレ
◆詩子とアインの重なる境遇
詩子は戦前に秋田県で婚外子として生まれ、太平洋戦争後は神戸に奉公に出され縫製工場で身を粉にして縫製工場で働いた。
しかし詩子は奴隷のような労働環境から逃げ出し、アメリカの進駐軍相手に体を張って金を稼いだ。
詩子が介護施設でよく言っていた「ヤマガワ」というのは、神戸では地元民が地名ではなく「山側」「海側」と表現するところからきていた。
お金持ちが住む高級住宅街は山側にあり、そうでない人は海側エリアに住んでいたため、詩子はいつか「山側」の人間になりたいと強く思って生きてきた。
一方、アインはベトナムから娘の養育費を稼ぐために技能実習生の制度を利用して100万円ほどの借金をして来日したが、その生活が聞いていた話とは全く違うものだったことを知る。
神戸の縫製会社コウベテキスタイルでは、携帯を取り上げられほとんど休憩や休日もないまま働かされ、挙句の果てには取引先の性接待も強いられた。
アインはあまりに辛い仕事場から逃げ出し、秋田の介護施設に流れ着き詩子の担当になった。
神戸の縫製工場で尊厳を無視され過酷な労働を強いられていたアインと戦後の神戸で体を張って生きぬ抜いてきた詩子は、境遇が似ていたことから心を通わせ、急速に仲を深めていった。
◆真犯人
サバンナの山本康裕はかつて大手スーパーオックスマートに勤めており、当時 秋田県の詩子の地元を担当し、大規模商業施設建設を計画していた。
また山本は度々出張で秋田県を訪れ、その際にスナックで働く詩子の親友の姪・大高雅子と交際し、妻と別れたら一緒になると言っていた。
しかし山本に離婚する気はなく、それを知った雅子は妊娠2か月のときに自ら命を絶ったのだった。
詩子は親友の姪を殺され、彼がかつて働いていたオックスマートの出店で地方の商いが崩壊し、サバンナに移籍してからもアインのうような技能実習生を奴隷のように扱っていたことに腹を立て山本に抗議することにした。
そこで詩子はサバンナのコールセンターに電話をかけ、山本が立場の弱い女性たちに行ったことを問いただした。
サバンナという会社は成果が出なければ即解雇される苛烈な企業で、山本は雅子やアインを弄んだことを知られたくなかったため、中村に指示して詩子とコールセンターの通話記録のデータを処分させた。
それから山本は藤井の口封じを行う計画をたて、アインがかつて働いていたサバンナの孫請けのコウベテキスタイルの黒田に「断れば、今後一切取引しない」と脅してアインと連絡を取らせた。
そしてアインには祖国に置いてきた病弱な娘の治療代がまなかえ、ベトナムの平均年収の10倍ともいえる300万円の報酬を提示して、詩子殺害に加担させた。
事件当日、山本は仙台に出張した際に部下と別れ、足がつかないように様々な交通機関を利用して、秋田の介護施設にたどり着いた。
黒田を通じて山本がここへやって来る日時を指示されていたアインは詩子を散歩に連れ出した。
そして山本は楽しそうに散歩している詩子に近づき車椅子ごと水路に突き落とした。
その際に詩子は山本に「人殺し!」と叫んで最後まで抵抗し、そのときに手が反り返ったのだった。(この手の向きを見て、田川は詩子が自殺ではなく他殺だと疑うきっかけになった)
◆結末
事件当日の山本の行動を洗った田川は、詩子の命を奪ったのはアインでないことを確信した。
そして事情聴取で山本を追い詰め、ついに罪を自供させた。
山本の共犯者である愛人の中村は優秀な弁護士を雇って逃れようとするが、詩子が公正取引委員会にも山本の件を告発していた報告書が見つかり、捕まるのは時間の問題だった。
一方 アインの殺人への疑いは晴れたものの、警察に虚偽の証言をしたとして逮捕されることになった。
アインが犯罪で得た300万は没収されることになったが、樫山が今後もアインを見守り、娘が来日できるように働きかけることになった。
『アンダークラス』感想
バブル崩壊後の格差拡大や非正規雇用の増加で「一億総中流社会」が崩壊し、現在の日本には「アンダークラス」という新しい階級社会が生まれました。
この階級のほとんどは非正規雇用者で、日本人の7人に1人という割合となっています。
そんなアンダークラスの問題にスポットを当てた本作は、大企業が外国人技能実習生を部品のように扱い、人間の尊厳を無視して搾取し続ける様子が克明に描かれています。
バブル崩壊後人手不足を補おうと政府は「外国人受け入れ」の法律をつくり、自給の安い外国人を日本に呼び農業、介護、土木、縫製など単純労働の仕事を担わせました。
私の周りでもコンビニやファーストフード店、車の整備、建設現場などでよく外国人の方が働いているのをよく目にするようになってきました。
技能実習生の制度を利用して来日したベトナム人のアインは、日本には行けば良い環境で働け、仕送りもできるほど給料がもらえると聞き、高い手数料を借金してやってきました。
ここにも違法ブローカーの搾取があり、外国人は企業の面接紹介料として高額なお金を請求されます。
いざ日本に来るとアインは、安い賃金で休みなく働かされ、ペナルティと称して動物の檻に閉じ込められたり、取引先の接待に駆り出されたりする奴隷のような扱いを受けます。
多くの技能実習生は借金があり、転職や途中帰国がないため、逃げ出すこともできず劣悪な環境で働き続けるしかありません。
一方で印象に残ったのはアインの日本はもうお金持ちの国ではなくなったという言葉です。
これからは外国人は働くなら日本より時給の高い韓国や中国を選び、反対に日本人が外国に働きに出ないといけなくなるという未来が待っているというのです。
その考えは皮肉なことにサバンナの山本も同じで、娘には人口減少で経済規模が縮小している日本で働くより、海外に出てほしいと願っていました。
山本も元々は貧しい家に生まれ、必死な思いで今の地位まで登り詰めました。
今の日本ではアンダークラスに転落すれば這い上がるチャンスがないことを知っている山本は、殺人に手を染めてまでも今の地位にしがみつき、娘の留学費用を捻出しようとしたのでした。
外国人労働者は欠かせない存在になった日本ですが、私達が求める便利なサービスの裏には外国人や非正規雇用者の搾取の現実があります。
今後、技能実習生の働き方を見直さなければ、外国人の犯罪も増え、これまで過酷な仕事を強いられてきた技能実習生の仕事を日本人が担うことになるかもしれません。
そうならないためにも社会は、外国人だけではなく、若者や氷河期世代への教育や就労支援、生活支援のサポート体制を強化してほしいなと感じました。
派遣労働者の闇を暴いた『ガラパゴス』の結末と相関図は⇒こちら


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