『禁じられた遊び(清水カルマ)』あらすじ~結末と感想・考察

映画

亡くなった母親の指を埋めて生き返らせるという清水カルマによるジャパニーズホラー小説『禁じられた遊び』のあらすじから結末までをネタバレ有りでご紹介いたします。

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『禁じられた遊び』登場人物

登場人物

伊原直人・・・
美雪・・・直人の妻。交通事故で亡くなる。超常的な能力を持っていた。
春翔・・・直人と美雪の一人息子。
倉沢比呂子・・・フリーのビデオ記者。かつて直人に好意を寄せていた。
柏原亮次・・・やり手ディレクター。比呂子に好意を抱く。
大門・・・元々は真言宗の僧侶だったが、素行不良で宗派を追われ、現在は霊能力者としてテレビに出演している。

『禁じられた遊び』あらすじ

伊原直人は、美人の妻・美雪と息子の春翔と共に、平穏で幸せな生活を送っていた。

しかし、都心の郊外に念願のマイホームを購入した矢先、美幸が交通事故にあい、亡くなってしまう。

絶望する直人とは対照的に、春翔は「ママを生き返らせる」と、美幸の遺体の指の一部を土に埋め、毎日 熱心に祈りを捧げはじめる。

一方、フリーのビデオ記者の倉沢比呂子の身の回りで奇妙な怪奇現象が起こりはじめる。

愛する者を蘇らせることは、タブーだったのかー。

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『禁じられた遊び』結末ネタバレ

美雪の生霊

実は、倉沢比呂子は美雪がまだ生きている頃に、彼女の生霊に悩まされたことがありました。

比呂子はかつて勤めていた会社で、上司のセクハラから直人に救われたことがあり、彼に好意を抱き、直人も、部下の比呂子をかわいらしいと感じていました。

子どもの頃から不思議な力があった美雪は、二人の様子を敏感に感じ取り、憎しみを抱えながら生霊として比呂子の周囲で奇妙な現象を起こしていたのです。

始まりは些細な嘘から…

そもそもの発端は、直人が春翔を喜ばせるためについた些細な嘘でした。

ある日、春翔がトカゲをつかまようとしますが、尻尾だけ切ってトカゲは逃げてしまいました。

「トカゲは危機を感じると尻尾を切って身を守る」と言った直人に、春翔は「じゃあ、この尻尾からもトカゲさんが生えてくるの?」と子どもらしい発想で問いかけました。

直人はいたずら心から、「尻尾を土に埋めて水をかけ“えろいむえっさいむ…”と呪文をかけていると、尻尾から体が生える」と教えました。

その日から春翔は毎日、熱心に庭で呪文を唱えるのでした。

ここまでは、とても微笑ましい家族のエピソードですが、美雪が亡くなってから一変します。

純粋な思いが狂気を生む

美雪が事故で亡くなってから、春翔は事故の日にねじ切られてしまった美雪の指を持ち帰り、土に埋めました。

人間が亡くなるということを理解できず、母がいなくなったことを受け止めきれない春翔の行為を、無理に止めることが出来ない直人。

「えろいむえっさいむ、えろいむえっさいむ….」

母親を生き返らせるために、春翔は毎日、毎日、熱心に呪文を唱え続けます。

そんななか、直人がふと庭を見ると、指を埋めた土が盛り上がり、中から裸の美雪が!!

あまりの恐怖から直人は「すまない」と謝りながら、美雪の体に杭を打ち込むと、叫び声をあげながら彼女は土のなかに戻っていきました。

それから、美雪の異変に気がついた春翔は、「パパのせいでママが生き返れなかった。」と直人を責めるのでした。

比呂子にも異変が

美雪が亡くなってから、比呂子の周囲で再び異変が起こり始めます。

霊媒師の大門に、お祓いの儀式をしてもらういますが、美雪の怨念が強すぎて振り払うことはできません。

そこで比呂子は、美雪の力が弱まる昼間に、直人の家に美雪との直接対決に向かい、なんとか撃退。

しかし、飛び散った美雪の血や体液から、再び美雪は復活しようとします。

すべてを終わらせようと直人は、家に火を放とうとしますが、そこに春翔が現れて….。

結末

「パパがいじめる。助けて。」という言葉に導かれるように戻ってきた春翔は、「ママがんばって。」と微笑みながら、またあの呪文を唱えます。

美雪の不思議な力は春翔に遺伝しており、彼女が生き返ったのは、他でもない春翔の力だったのです。

春翔の抑えようのない不思議な能力は、次第に竜巻を生み出し、それは嵐に変わり、直人が助けようとしたときには、雷が春翔に落ちたあろでした。

この雷により、春翔はまたたくまに炎に包まれて亡くなってしまいます。

事故後、直人は愛犬のポチが何かを咥えているのを発見します。

それは、ポチが春翔を助けようと身体を噛んで引きずった際にもぎとられた肉片でした。

数日後 直人は、希望に満ちた笑顔を浮かべながら、肉片を土に埋め呪文を唱えたのでした。-END-

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『禁じられた遊び』感想と考察

愛する人を思う気持ちが、死者を蘇らせるというシンプルなホラーなので、小難しさはなくサクサクと読み終えることができました。

反面、少しひねりが少なく、「浮気疑惑だけで、そんなに長い時間 相手の女性を恨むことができるのか?」「最後は雷が直撃して終了?」など粗さも気になりました。

既婚者を心のなかだけで想っていた比呂子にいたっては、怪奇現象に巻き込まれるわ、霊媒師に襲われるわで、災難すぎて不憫になりました。

まぁ。比呂子には、直人に少し未練が残っていたということでしょうか。それにしても、割りに合わなさすぎwww。

直人の煮え切らない態度や優柔不断さにもイライラします。

美雪は、生霊のままで良かったものの、ゾンビやモンスターのように変化させてしまったことも、存在を曖昧にしてしまいました。

でも、美雪が蘇ったときの体のヌメヌメ感や、暴れっぷり、禍々しい家の描写などは、モンスターパニック、B級感もあるので、オカルトファンにはたまらないかもしれません。

純粋な存在の子どもが一番恐ろしいという視点やバッドエンドへの持って行き方は好きです。

ここに、もう少し人間の醜さ、説得力などが加われば、面白いホラー作品が出来上がると思うので、映画化に期待したいです。

『禁じられた遊び』とは?

小説のタイトルにもなっている『禁じられた遊び』の元になっているのは、スティーヴン・キングの長編小説『ペット・セマタリー』ではないかと思います。

『ペット・セマタリー』の最初に付けられたタイトルは、『リジェネレイション』と言い「再生」「再建」「新生」など蘇りの意味を持っています。

物語は、田舎に引っ越してきた医師一家に襲いかかる怪現象を描いたもので、「呪い」の力を借りて死者を蘇らせようとする「家族の愛」をテーマにしています。

また、亡くなったものを生き返らせるという具体的な描写は、1952年に公開されたフランス映画『禁じられた遊び』と酷似しています。

映画では、戦争で孤児となった5歳のフランス人少女・ポーレットが、農家の少年ミシェルに「お墓の作り方」を教わり、亡くなった愛犬が寂しがらないように様々な動物の死骸でお墓をつくり、その遊びがエスカレートしてついには、十字架を盗んで自分たちの墓に使おうとする…というお話です。

幼いミシェルとポーレットは、虫や小動物の亡骸を土のなかに埋めて、十字架を立てて祈りを捧げる「葬式遊び」シーンは、春翔がトカゲを埋めて呪文を唱える行為と重なります。

もし、自分の大切な家族、恋人、ペットを亡くしたなら、「もう一度会いたい」と思うのは当然の感情です。

本作は、その愛が深すぎるがゆえに、超えてはいけない一線を越えてしまうという恐ろしくも悲しい物語なのです。


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