『夜明けのすべて』ネタバレ!あらすじ~結末を相関図付きで考察

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『夜明けのすべて』は、生きがいを見いだせないPMS(月経前症候群)の女性とパニック障害の男性がお互いに「おせっかい」を発動させ、寄り添い、希望を見出していくまでを描いた温かい作品です。そこで今回は、瀬尾まいこさんによる『夜明けのすべて』のあらすじ~結末を感想付きでご紹介いたします。

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『夜明けのすべて』登場人物&相関図

登場人物

藤沢美紗・・・28歳の事務員。普段は穏やかだがPMS(月経前症候群)によって月に一回イライラが抑えられず、怒りを爆発させてしまう。
山添孝俊・・・栗田金属に転職してきた25歳。覇気がないように見えるが実はパニック障害を患っている。
栗田・・・美沙と山添が働く栗田金属の社長。68歳。鷹揚な性格。
住田・・・栗田金属の女性事務員。世話好き。
平西・・・栗田金属社員。おしゃべりで明るい。
鈴木・・・栗田金属社員。黙々と仕事をするが優しい。
辻本・・・山添が以前勤めていた会社の上司。

相関図

※無断転載禁止

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『夜明けのすべて』あらすじ

主人公の藤沢美沙は、月に一度やってくるPMS(月経前症候群)に悩まされながらも町の小さな会社・栗田金属で事務員として働いている。

症状は生理の日やその2~3日前にかっと血が上り、怒りが抑えられずに酷く攻撃的になってしまう。

大学卒業後に就職した会社は、PMSが原因で人間関係に支障をきたし、退職してしまったほどだった。

現在 勤務している栗田金属の仕事内容は単調だが、社長や同僚の理解もあり居心地が良かった。

周囲の人々に支えられながら3年ほど働いてきた美沙だったが、あるとき些細なことで転職してきたばかりの山添孝俊にイライラをぶつけてしまう。

そんなか山添が会社で倒れそうになり、美沙はトイレ掃除のときに偶然拾った薬をこっそり彼に手渡した。

実は山添はパニック障害を抱えており、薬の種類を知っていた美沙は症状を見てすぐに彼のものだと分かったのだった。

美沙より3歳下の山添も、パニック障害を患い大手コンサルティング会社を辞職していた。

以前の山添は、仕事を精力的にこなし、おしゃれに気をつかい、彼女もいて友人も多く、充実した生活をおくっていたが病気になってからは、ただ眠るためだけにアパートに帰宅する無気力な日々を過ごしていた。

今まで普通に出来ていたことが、出来なくなる辛さ、悲しみ、絶望…。

同じような境遇でいつ治るとも分からない病気を抱える美沙と山添。

お互いに友情や恋愛感情を持ってはいないが、助け合えることは出来るのではないか?

干渉されたくないと思っていた二人は、周囲に理解されがたい病気を通して歩み寄っていく。

果たして美沙と山添は「夜明けまえ」を乗り越え、新しい一歩を踏み出すことができるのかー。

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『夜明けのすべて』ネタバレ

お互い無関心だった美沙と山添でしたが、病気という爆弾を抱えて生きていることに少しづつ共感していきます。

美沙は、美容室にも行けない山添の髪の毛を切ってあげたり、彼の近所にないコンビニで美味しいものを買ってきてあげたりと一見「おせっかい」ともいえる行動をとります。

最初は少し迷惑がっていた山添でしたが、美沙に切られた自分の髪型に大笑いしたり、一緒に休日出勤したり、好きなアーティストの話をしたりするうちに、彼女に心を開いていきます。

そしてついには、美沙のPMSが起こる前兆を察知できるようになり、彼女が不調のときは空き地に連れ出し怒りを発散できるようにしてがえました。

そして正月を迎えたある日のこと、実家に帰省しなかった山添のアパートのポストに3つのお守りが入っていました。

差出人は書いていませんでしたが、1つは美沙、あと2つは誰が持ってきたのか分かりません。

美沙は山添に「このお守りの真相を掴むのを、生きがいにしたらどうかな?」とワクワクしながら提案します。

そして、ついにお守りの贈り主が社長と以前 山添が勤めていた会社の上司であることが判明するのでした。

そんななか、美沙が急な虫垂炎のため病院で手術をうけることになりました。

社長から知らされた山添は自分がパニック障害であることも忘れて電車に飛び乗り、脂汗をかきながら死ぬ思いで美沙の病室に辿りつきました。

その後も自転車まで購入して美沙の退院まで見届けた山添は、彼女と一緒に過ごすことに緊張感も圧迫感も感じないことに気づきました。

そして山添は、以前の上司に手紙を書き「あたたかい人たちに支えられなんとか仕事ができている」とお礼の気持ちを伝えました。

一方、会社に復帰した美沙は栗田金属の専門的な商品を生かして、一般の人向けに会社の倉庫をオープンにしてみようと山添に相談しました。

二人はすぐに企画書を作成して社長に提案。社長も倉庫オープンに大賛成でした。

明日は何をしようか

少しづつですが、山添は薬の量を減らすことができました。

そして美沙に「好きになることができる」と伝えたのでした。

『夜明けのすべて』感想

いつ治るか分からない病気を患ってしまうと、出来ないことばかりに目が行き、周囲が見えなくなるのは容易に理解できます。

本作では、そんな圧倒的な孤独を抱えた二人が出会い、少しづつ相手のしんどさを理解し、気持ちが通じ合ってくるのと同時に、自分の病気と正面から向き合っていけるようになるまでのお話です。

「知ってる? 夜明けの直前が、一番暗いって」

美沙と山添は纏っている空気感が似ていて、隣り合ったパズルのピーズがぴったりと収まるように、引き合っていきます。

人は人との関わりのなかで傷つくけれども、反面 救われることある。

ラストは病気が完治してメデタシメデタシではないけれど、理解してくれる職場、共感できる同僚など優しい世界線の先に希望の光を感じました。

そして、作者の瀬尾まいこさんもパニック障害の当事者。

発作の描写を読んだときは、自分が当事者であるかのような苦しさをリアルに感じました。

知らなければ「怠けている」「我慢が足りない」と思うようなことでも、このように症状の疑似体験することで、少しかもしれませんが病気への理解につながるような気がします。

すべてを「推し量る」ことは出来ないまでも、「寄り添う」気持ちは持てるかもしれません。

そんな風に想わせてくれた本作は、病気について悲観するばかりではなく、ときにはクスッと笑えるエピソードを交えつつ、すっと心に染みるような温かい作品でした。


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