『湖の女たち』ネタバレ!あらすじ~結末を相関図付きで

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吉田修一さんによる『湖の女たち』は、琵琶湖近くの介護療養施設で、百歳の男が亡くなったことを発端に、昭和から令和への「罪」があぶり出されるミステリーです。そこで今回は、映画化もされる『湖の女たち』のあらすじ~結末をご紹介いたします。

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『湖の女たち』登場人物&相関図

登場人物

豊田佳代・・・介護療養施設「もみじ園」の介護士。
濱中圭介・・・滋賀県西湖署の刑事。
伊佐美・・・圭介の先輩の刑事。
濱中華子・・・圭介の妻。歯科医師妊娠中。
松本郁子・・・「もみじ園」の介護士。
服部久美子・・・「もみじ園」の介護士で佳代の同僚。ユニットリーダー。
服部三葉・・・服部の孫娘。中学二年生。
池田立哉・・・週刊誌の記者。20年前の薬害事件を調べるうちに、「もみじ園」で亡くなった市島民男が関与していることを知る。
市島民男・・・京都大学の教授。「もみじ園」に入所するが人工呼吸器の停止で亡くなる。享年100歳。
市島松江・・・民男の妻。94歳。
渋井宗吾・・・医療法人渋井会の会長。
西木田一郎・・・政治家。
段田信彦・・・第八銀行頭取。西木田一郎の父親。

相関図

※無断転載ご遠慮ください。

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『湖の女たち』あらすじ

『湖の女たち』は、3つの軸から構成されており、それぞれが少しづつ重なりながらラストに向かっていきます。

介護施設で男性の人工呼吸器を外され亡くなった事件
男女の倒錯的な関係
雑誌記者が薬害事件を調べるなかで知る戦時中に人体実験を行っていたとされる関東軍731部隊の出来事

また、犯人らしき(意外な)人物も明かされますが、真相は分からないまま終わりを迎えます。

では、まず介護施設で起こった事件から整理していきましょう。

介護施設の事件

琵琶湖の湖畔にある老人介護施設「もみじ園」で市島民男という百歳の男が亡くなりました。

死因は人工呼吸器の作動停止だったのですが、その機械には異常があればアラームが鳴る仕組みが何重にも施されており、当直の介護士たちはアラームの音を一切聞いていないと証言しました。

人工呼吸器のすべての機能が同時に故障することは考えづらく、人為的な機器の停止が疑われました。

そして警察の疑いの矛先は、当直の介護士である松本郁子へ。

しかし、彼女には動機も見当たらず、普段の勤務内容も真面目で人の命を奪うような人間ではありませんでした。

刑事の男

介護施設の事件を担当するのは、滋賀県西湖署の刑事・濱中圭介です。

彼は結婚しており、妻・華子は妊娠中でもうすぐ出産を迎えます。

圭介は、先輩刑事・伊佐美に命じられるまま組織の一員として、かなり強引な取り調べを行うことになりました。

容疑者となった松本郁子には確信をもてるような証拠や動機もありませんでしたが、警察は犯人に仕立て上げようと勝手にシナリオを作成しました。

さらに、彼女を尾行したりするなど精神的に追い詰め、「介護士と看護師の待遇の差に不満があったから犯行に及んだ」という自白を強要しました。

連日の取り調べで追い詰められた松本は、自らの軽自動車でトラックに突っ込むという交通事故を起こしてしまいます。

しかし、警察は厳しい取り調べを止めることもせず、執拗に彼女を追い詰めていきます。

そんななか、琵琶湖周辺にある別の老人介護施設「徳竹会」で、またしても人工呼吸器が止められ、九十二歳の女性が亡くなりました。

これだけマークをされた松本が、他の施設で犯行を行えるはずがなく、彼女は無実だったということが証明されました。

佳代と圭介

「もみじ園」で働く介護士の豊田佳代は、聞き込みにやってきた刑事の圭介と異様な男女の関係に陥っていきます。

圭介は主としてあれこれ指示し、佳代はその異常ともいえる性癖につき従います。

大半の人間は誰かに従うことで安心する。

二人は施設の事件の捜査の合間に密会を続け、やがてその関係は破綻へと向かっていきます。

週刊誌記者と薬害事件

物語の3人目の視点が、週刊誌記者の池田立哉です。

彼は20年前の薬害事件を調べているうちに、「もみじ園」で亡くなった老人・市島民男にたどり着きます。

まずは薬害事件について簡単に説明すると、当時、医師・ 宮森勲と製薬会社MMOは、血液製剤が患者に大きな副作用をもたらすことを知っていながら治験を進めて治療を行っていました。

滋賀県警の西湖は、宮森勲と製薬会社MMOの密約の証拠を持っていましたが、厚生大臣を務めていた西木田一郎によって立件を中止させられた苦い過去があります。

薬害事件の大まかなことが分かったところで、現代に戻ります。

池田は、薬害事件の取材中に旧琵琶湖ホテルで一枚の写真を見つけました。

そこには…

渋井宗吾・・・医療法人渋井会の会長
段田信彦・・・第八銀行頭取で西木田の父
市島民男・・・京大教授で「もみじ園」の事件の被害者

の三人が写っていました。

そしてこの三人は、戦時中の満州で七三一部隊に所属していました。

七三一部隊はハルビンに本部を置き、中国人・ロシア人捕虜などに対して非人道的な生体実験・生体解剖を行っていたことで知られています。

しかし、市川民男が「もみじ園」で命を奪われたのは、彼が戦時中に行った行為の復讐ではありませんでした。

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『湖の女たち』結末ネタバレ

第二の事件

琵琶湖周辺にある別の老人介護施設「徳竹会」で、市川民男と同じ手口で、またしても人工呼吸器が停止され、九十二歳の女性が亡くなりました。

その女性と市川には接点もなく、共通点もありません。

また、警察からマークをされていた松本が、他の施設で犯行を行えるはずがなく、彼女は無実だったということが証明されました。

これにより圭介は、あってはならない取り調べを行った刑事として世間から非難されます。

もちろん組織から指示されて行ったことでしたが、警察は圭介にすべての違法行為をかぶせました。

後が無くなった圭介は絶望していましたが、それは佳代も同じでした。

佳代は、異常な欲望を抑えることができなくなり、「市島民男の人工呼吸器を止めたのはわたしです」と嘘の自白をしようとするなど、破滅的な行動をとるようになっていました。

密会の果て

やがて二人の行為はエスカレートし、佳代は圭介の言うままに、手錠をかけられたまま湖へと身を投げました。

最初は恐怖を感じていた佳代でしたが、極限の状態に置かれた瞬間、これまで味わったことのない興奮を感じていました。

自分が亡くなれば圭介は逮捕され、彼は一生私から逃れられない…。

湖に沈みながらも高揚感を感じていた佳代でしたが、その直後、圭介が続けて湖に飛び込み佳代を救いました。

それから圭介は冷静さを取り戻しますが、すでに心が壊れてしまった佳代は今までの生活に戻れないと不安になるのでした。

ハルビンでの悲劇

一方、週刊誌の記者の池田は、市島民男の妻・松江から、日本人の男児とロシア人の女児が凍死体で発見された出来事について聞かされます。

当時、ハルビン郊外に作られた村で暮らしていた松江は、少年たちが父親の真似をして白衣をまとっているところを目撃します。

その少年たちの人体実験を模倣した行為により、日本人の男児とロシア人の女児は亡くなってしまったのです。

疑惑

それから間もなく池田は、取材のため「もみじ園」の介護士・服部久美子の家を訪れ、そこで彼女の孫の三葉と出会います。

中学生の三葉はモデルに憧れを抱いており、池田に自分のアルバムを見せます。

池田はそのなかに、三葉と取り巻きの少年たちが白衣を身に着けている一枚に目を留めます。

少し前に聞いた、松江の話とシンクロするような写真に嫌悪感を感じる池田。

三葉は、自分たちは水草に付く害虫を調べている生物部だとと答えました。

しかし池田は、写真のとられた日付が、もみじ園で市島民男が亡くなった日と同じであることに気づきました。

池田の不審がる様子に気づいた服部は、「そろそろ出勤の時間だ」と言い出し、池田もすぐに家を後にしたのでした。

真犯人

結論から言うと、入所者の人工呼吸器を停止させたのは、「もみじ園」のベテラン介護士である服部の孫である三葉でした。

障害者施設での大量殺人事件に影響を受けた三葉たちは、「生産性のない人間は生きる価値がない」という理由で犯行を行っていました。

また、害虫というのは介護施設の寝たきりの老人を指していたのです。

三葉は取り巻きの男子たちと、野鳥観察と称してキャンプを行い、夜中から早朝に介護施設に行っていたと考えられます。

結末

それから半年後ー。

老人介護施設の事件は、解決の糸口も見つけられないまま、人々の記憶からも忘れ去られていきました。

佳代は圭介と連絡を取ることもなく、挨拶を交わす程度の異性にも出会っていました。

一方、松本郁子から訴えられた圭介は、自分の非を認めたため、警察を辞めざるおえない状況になっていました。

事件がどうしても気になった池田は休職し、それからずっと三葉を監視していました。

そんななか池田は、三葉たちが野鳥観察で宿泊しているバンガローのなかで、壁にかかった白衣を発見します。

それから間もなく、彼らはバンガローを出て白衣をまとい、一列に並んで三葉が口にした介護施設に向かって歩いていきました。

池田が三葉たちの犯行を確信したとき、目の前には同じく彼らをマークする圭介の姿があったのでした。ーEND-

『湖の女たち』感想

『湖の女たち』は、介護施設で起きた事件を発端に、男女の倒錯的な関係、薬害問題、旧満州の人体実験などが複雑に絡み合う物語です。

事件の真相に迫るなか、美しい琵琶湖の風景とハルビンの白銀の世界が重なり合い、人間の残酷な所業が浮かび上がっていく様子は凄みさえ感じます。

そして、同時に進行していく佳代と圭介恋愛とは程遠いアブノーマルな関係。

その描写は生々しく、まるで官能小説を読んでいるようでした。

強引な捜査の果てに、破滅へと向かっていく佳代と圭介、そして意外ともいえる真犯人。

「生産性のない人間は生きる価値がない」という一節からは、相模原やまゆり園で起きた事件を思い起こさせます。

それにしても、脇でちょっと出てきた中学生が犯人というのは、誰も予想できなかったのではないでしょうか。

なんの前触でもなく「悪意」が現れる様子は、筆者の作品のなかでは『パレード』に似ているかもしれません。

また、戦時中のハルビンで、湖に浮かぶ全裸の男児と女児の遺体の情景は、琵琶湖のほとりで情事にふけり、壊れていく佳代よ圭介の成れの果ての姿のようで「ゾッ」としました。

海とは違って、遠くに行くことができない湖という設定も、独特の閉塞感があって気味の悪さを増幅させていました。

『湖の女たち』は、社会派、ミステリー、戦争もの、官能小説、どれにも当てはまらない ジャンルレスでアングラな物語でしたが、破綻せずに最後まで読ませるのは、さすが吉田修一さん!

映画で興味を持った方は、ぜひ原作も読んでみて下さいね。

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