『Qros(キュロス)の女』ネタバレ謎の美女の正体は?あらすじ~結末を相関図付きで
誉田哲也さんにによる小説『Qrosの女』は、CMで世間を騒がす謎の美女をめぐり、マスコミや芸能事務所、ネットの情報戦を描いた傑作ミステリーです。今回はドラマ化も決定した『Qrosの女』のあらすじから結末をネタバレ有りでご紹介します。
『Qrosの女』あらすじ
大手ファストファッションブランド「Qros(キュロス)」のCMに出演する謎の美女。
目を引くようなスタイル抜群の美人なのに、名前をはじめ素性が全く分からないため、「Qrosの女は誰だ?!」とその謎が話題を呼んでいた。
ところが最近、ネット上に彼女の目撃情報が度々上がるようになり、具体的な行動や盗撮した写真などが拡散されていた。
そんなか、先輩記者・栗山と共に別件で張り込みをしていたぺーぺー記者・矢口は、偶然「Qrosの女」を見かけ撮影するが…。
『Qrosの女』登場人物&相関図
◆登場人物
◆栗山孝治・・・「週刊キンダイ」の敏腕記者。かつて園田にガセネタを掴まされ若手女優の人生を狂わせた過去がある。
◆矢口慶太・・・栗山の後輩の契約記者。
◆園田芳美・・・フリーのブラックジャーナリスト。ガセネタを週刊誌に売りつつ小銭を稼いでいる。
◆栗山志穂・・・孝治と同居している妹。
◆Qrosの女・・・ファストファッションブランド「Qros」のCMに出演したことからネットで騒がれる謎の美女。
◆済木昭三・・・大手芸能事務所スマッシング・カンパニー(通称:スマカン)社長
◆福永瑛莉・・・スマカン所属のモデル出身の人気女優。QrosのCM出演者。
◆石上 翼・・・最大手芸能事務所Wingの社長。業界全体に多大なる影響力を持つカリスマ。
◆藤井涼介・・・芸能事務所Wingに所属する人気俳優。QrosのCM出演者。
◆島崎ルイ・・・シンガーソングライター。QrosのCM出演者。父は映画監督、母は大物女優。
◆近藤サトル・・・イケメン格闘家。QrosのCM出演者。
◆十和田晴敏・・・ここ数年で急成長した中堅芸能事務所「GOプロモーション」社長。
◆相関図
※無断転載ご遠慮ください。
『Qrosの女』結末ネタバレ
マスコミ、芸能界、ネットなどの情報が錯綜する『Qrosの女』は、章ごとに語り手と時間軸が変わり、真相が明かされていく仕組みになっています。
一見、不可解だった登場人物の動きも、後々 本人によって語られることで、そのときの行動の意味が分かってきます。
小説では、ぺーぺー記者の矢口が先輩記者・栗山に手伝ってもらい、人気俳優・藤井涼介のマンション近くでQrosの女を偶然撮影し、スクープをものにしたとこから物語が始まりますが、実はその前から事態は動いていました。
◆園田への依頼
世間でアパレルブランドQrosのCMに出演する謎の美女が騒がれ始めた頃、ブラックジャーナリスト・園田の元にアキヤマと名乗る見知らぬ男から依頼が入ります。
それは「Qrosの女のプライベートを暴いて欲しい」というもので、1つの情報につき10万で買い取るという高報酬な依頼でした。
男はQrosの女が、大手芸能事務所スマッシング・カンパニーで事務員をしている市瀬真澄だと明かし、早速、園田はその女性を見張ることにしました。
真澄の住所、使っている電車から私服、利用しているスーパー、買ったものなど些細な情報を提供した園田は、楽に金を稼いでいきました。
そんななか、いつものように張り込みをしていると真澄は何度も後ろを気にするような素振りをし、周囲を警戒するようになっていきます。
不審に思った園田がネット検索にかけてみると、明らかに園田が提供した情報を元に真澄のプライバシーがネットに晒されていました。
園田は、これまで違法な仕事に手を染めることもありましたが、自分の情報がコントロールの効かないところで拡散していることに恐怖と怒りを感じました。
自分の流儀に反していることを許せなくなった園田は、「アキヤマ」という人物を特定するためスマッシング・カンパニーの社長に掛け合い、直接 真澄と会うことにしました。
◆栗山と真澄の出会い
早速 園田は、とある空き家に真澄を案内しますが、なんと栗山が真澄の後を尾けていたのでした。
栗山は、以前 スマッシング・カンパニーを取材で訪れた際に、コーヒーを出してくれた事務員が「Qrosの女」だと気づき、彼女を見張っていたのです。
栗山が、園田と真澄が入っていった空き家の様子を伺っていたところ、暴力団風の男二人組が家の中に乗り込んでいきました。
怒鳴り声と家具が投げ飛ばされる音が響くなか、玄関から身を潜めた真澄が怯えながら出てきました。
栗山は何の説明する間もなく、真澄を連れて全力でその場から逃げ出しました。
それから事情を把握した栗山は、妹・志穂と同居する自宅マンションに真澄を匿うことにしました。
真澄は空き家を逃げ出す際に、園田が持ってきていたノートPCからUSBメモリを抜き取り、持ち帰っていました。
パソコンに詳しい志穂が、暗号化されたUSBメモリの情報を解析すると、そこにはブラックジャーナリスト園田が集めた世に出せない情報が詰まっていました。
園田はこの中から、携帯電話で録音していた「アキヤマ」の声を聞かせ、真澄に心当たりがある人物か確かめようとしていたようでした。
◆過去の因縁
一方、財布もパソコンも置いて空き家からなんとか逃げ出した園田は、「週刊キンダイ」の契約記者・矢口に藤井涼介のマンションの住所を提供することで一時的に金を得て、次の行動を起こすことにしました。
暴力団がやって来たあの日、栗山が真澄を尾行していたことを知った園田は、彼なら真澄の行方をしっているかもと考えて連絡を取りました。
実は園田と栗山には、過去に因縁がありました。
かつて園田は栗山に新人女優のガセネタを提供し、その情報を元に栗山が記事を書いたことで新人女優は自殺したという一件がありました。
それ以来、栗山は園田を恨み、目の仇にしてきました。
案の定、久しぶりに園田がかけてきた電話に塩対応する栗山でしたが、彼の「市瀬真澄のプライバシーを晒した黒幕を暴きたい」という言葉を聞いて協力することにしました。
◆黒幕
その頃、真澄はスマッシング・カンパニー所属のモデル出身の人気女優・福永瑛莉に呼び出されていました。
QrosのCMで真澄が注目され面白くなかった瑛莉でしたが、ネットで散々なことを書かれている真澄のことを気にかけていました。
そして、ネットに書き込まれた文章の“(笑)=カッコ笑い”のカッコが予測変換で半角になっていることを指摘しました。
瑛莉は、この(笑)を使う人から、直接メールをもらったことがあったことがありました。
その人物こそ、QrosのCMで真澄と共演したイケメン俳優・藤井涼介だったのです。
◆栗山が仕掛けた罠
黒幕が藤井だと知った栗山は、矢口を利用して藤井のマンションで張り込みをさせ、そこにQrosの女をわざと通らせて、写真を撮らせました。
しかし、このとき栗山に指示されてやってきたQrosの女は真澄ではなく、真澄によく似たニューハーフ・橘ミクでした。
何も知らない矢口は、Qrosの女の写真共に、藤井とQrosの女の関係を匂わせる記事を書き上げました。
雑誌が発売されるとマスコミは藤井涼介の元に押し寄せ、苛立った藤井は今までの好青年のイメージとはかけ離れた暴力的な態度をとってしまうのでした。
◆結末
栗山は真澄を連れて、藤井が所属する最大手芸能事務所Wingの社長・石上翼の元を訪れました。
石上は、藤井が真澄のプライベートを晒し、知り合いの暴力団を使って園田を脅したこと知らされ、藤井を呼び出しました。
藤井は、自分がメインだったCMで真澄の方が注目されたことに嫉妬しての行動だったと説明しました。
石上、藤井に見切りをつけたように、今回の件は好きなように記事にしていいと栗山に告げました。
しかし、栗山は過去の苦い経験から、これ以上自分の記事でタレントの人生を奪うようなことはしたくないと考え、ある提案をしました。
それは、真澄ではなく真澄によく似たニューハーフ・橘ミクをQrosの女としてデビューさせて欲しいというものでした。
そうすれば、真澄は平穏な日常に戻ることができ、目立ちたがり屋の橘ミクは、芸能人になる夢を叶えられると思ったからです。
半年後ー
巨大広告やドラッグストアの化粧品のポスター、ゲーム機のCM…世間には橘ミクの顔が溢れていました。
もう彼女をQrosの女と呼ぶ者はいません。
栗山はそんな橘ミクの看板が見える喫茶店で、芸能界と全く関係のない仕事をしている真澄と会い談笑するのでした。-おわりー
『Qrosの女』感想
誉田哲也さんが芸能界やマスコミの裏側をテーマにしたと聞くとドロドロものを想像しましたが、本作は異色ともいえるお話で、むしろ爽やかさを感じる作品でした。
誰一人亡くならないし、小悪党・園田もボコボコにされず、犯人の動機も大したことないので、残酷な表現が苦手な人でも読みやすいです。
一方でSNSの匿名性の怖さやプライベートを暴かれる芸能人の苦労、大手事務所の圧力などダークな部分もきちんと描かれています。
情報に踊らされる人、ネットに書き込まれる無責任な情報、それに傷つく人々は、現代の深刻な問題でもあります。
登場人物に目を向けると、お人好しの矢口、その矢口のトドのような彼女、口の悪い妹、目立ちたがりやのオカマなどは、物語の箸休めキャラとして楽しめました。
キュロスはユニクロのイメージ?
マスコミや芸能事務所なんて魑魅魍魎で、悪どいイメージもありますが、中には自分なりの流儀や正義を貫き、プロフェッショナルとして仕事に向き合う人がも多くいることが分かりました。
また、複数の視点で時系列が前後してストーリーが展開していき、それぞれの登場人物が同じ出来事を語るのですが、分かりにくいということは全くなかったです。
『Qrosの女』は、姫川シリーズのような硬派沙を求める人には少し物足りないかもしれませんが、ライトなミステリーとして十分なヤラレタ感を味わえる作品です。
エンターテインメントらしい鮮やかなラスト(誰も傷つけない優しい嘘)の読後感も良いので、ドラマ化で知った人はぜひ読んでみて下さいね。
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