『まぐだら屋のマリア』ネタバレ!あらすじから結末を相関図付きで

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『まぐだら屋のマリア』は、絶望の淵から命を絶とうと辺境の地に流れ着いた板前見習いが、食堂を切り盛りする謎の女性に出会い、生きる力を取り戻す「贖罪」の物語です。今回は、尾野真千子さん主演でNHKでドラマ化もされる『まぐだら屋のマリア』の結末までのあらすじをご紹介します。

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『まぐだら屋のマリア』あらすじ

故郷にいる母を捨て、後輩を見殺しにし、老舗料亭崩壊に関わった及川紫紋が、死に場所を求めて辿りついたのは、“尽果”というバス停だった。

道の先には崖っぷちギリギリに今にも倒れそうな一軒の食堂「まぐだら屋」があり、華やかなカツオ出汁のいい香りが漂っていた。

食堂を切り盛りする女性・ マリアは、紫紋が無一文にもかかわらず料理をふるまい、眠る場所まで与えるなど救いの手を差し伸べた。

そのお礼に「まぐだら屋」を手伝うことになった紫紋は、マリアの料理と慈愛、そして食堂にやってくる客との交流によって弱っていた心を回復させた。

そんななか紫紋は、店の経営者で“女将”と呼ばれる老女に会いにいくが、女将は雇う代わりにマリアには決して惚れるなという条件を出し…。

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『まぐだら屋のマリア』登場人物&相関図

登場人物

有馬りあ・・・通称“マリア”。 山陰地方の地塩村のなかにある集落“尽果” にある食堂「まぐだら屋」を切り盛りする。左手の薬指が欠損しているなど謎多き女性。
及川紫紋・・・東京の老舗料亭「吟遊」で板前修業をしていたが、ある出来事をきっかけに崖の上にたたずむ小さな食堂「まぐだら屋」にたどり着く。
女将・・・マリアが“女将”と呼ぶ老女。マリアを憎悪している。代々地塩村一帯を治めている桐江家の人間。
住吉克夫・・・地塩村で代々続く漁師。
丸弧・・・倒れ込むように“尽果”にやってきた19歳の青年。 紫紋の家に居候する。
浅川悠太・・・紫紋の後輩。貧しい寒村の生まれ。ある事件をきっかけに自ら命を絶つ。
早乙女晴香・・「吟遊」の仲居。紫紋が想いを寄せていた女性。
宮前登紀子・・・「吟遊」グループを束ねる女帝。経営権を一手に握り、気分次第で従業員を解雇する。
前田譲二・・・「吟遊」の板前で紫紋の先輩。
宮本静子・・・登紀子の屋敷の家政婦。息子に似ている紫紋を何かと気遣う。

相関図

※無断転載ご遠慮ください。

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『まぐだら屋のマリア』結末をネタバレ

紫紋が尽果に来た理由

東京の老舗料亭「吟遊」で板前修業をしていた及川紫紋は、後輩浅川悠太も出来て充実した日々を送っていた。

ある日、想いを寄せている仲居の早乙女晴香から、ふたりきりで会いたいといわれた紫紋だったが、そこで「吟遊」の内部告発をしたと伝えられる。

「吟遊」では食品偽装や料理に使いまわしが頻繁に行われており、紫紋も先輩からの圧力で手を染めていた。

もし逆らえば「吟遊」グループを束ねる女帝・宮前登紀子に解雇されることは目に見えていたため従うしかなかった。

晴香は以前から既婚者で先輩板前の前田譲二と不倫関係にあり、逢瀬に際に面白おかしく「吟遊」での不正を聞いていた。

前田は妻と別れるからと言いながら、ずるずると引き延ばしにして挙句に約束を守ることはなかった。

晴香は自分はとんでもないことをしてしまったと罪悪感から死のうと考えていたが、紫紋は泣きながら止め、成り行きでホテルに入った。

晴香と抱き合っている間、紫紋は携帯が鳴っていることに気づかないでいたが、翌朝 悠太が列車に身を投げたことを知った。

悠太は晴香と交際して一緒に死のうと約束していたが、晴香が現れなかったため一人で命を絶ったのだった。

自分をあれほど慕ってくれた悠太のSOSを見逃した紫紋は、自分が殺したのも同然だと思い悩んだ。

そして故郷の母とも連絡を絶ち、自分も悠太のとこに行こうと、尽果までやってきたのだった。

マルコ

まぐだら屋で紫紋が働き出してしばらくたった頃「まぐだら屋」の前に倒れ込むようにいた丸孤は、紫紋の家に居候することになった。

丸孤も紫紋と同じように過去に何かあったようで、ある日 菜の花畑で手首を切っていた。

心配したマリアと紫紋は、「警察に自首する」という丸孤に何があったのか聞いた。

丸孤の父親はどうしようもない酒乱で暴力を振るったり浮気を繰り返すため、母親は丸孤を連れて家出した。

しかし、転校先の学校で「手首を切れ」などとと酷いいじめにあい、それがきっかけで5年間引きこもり生活を送った。

母親は手料理を作ってくれたが、丸孤は頑なに食べようとせずカップラーメンばかりを食べたため、今はカップラーメンが受け付けない体になってしまった。

丸孤は母親からの毎日のメールに嫌気がさし、掲示板に「母ちゃんうざい」と書き込んでいると、ある日 何者かから「3万でおまえの母ちゃんを殺してやる」と返信があった。

やりとりを楽しんでいた丸孤のもとに、相手から「明日、実行するから3万振り込め」と連絡が入った。

丸孤は母親に「指定の口座に3万振り込まないと、またいじめに遭う」と嘘をつき、母親は急いでコンビニで振り込みを済ませた。

その夜、母親の帰宅が遅いことが気になった丸孤が居間に降りていくと、母親が鼻から血を流して倒れていた。

丸孤は混乱し、救急車を呼んだあと着の身着のまま家を飛び出し、“尽果” にやってきたのだった。

すべてを聞いたマリアは、母親が丸孤が部屋を出るきっかけを与えてくれたのだと、彼を抱きしめた。

それからしばらく経ち丸孤は徐々に回復して、女将に食事を届ける仕事を任されるまでになった。

そんななか丸孤はずっと電池が切れたままの携帯を、紫紋から一瞬だけなら電源がはいるかもと助言され、ボタンを押してみた。

そこには、母親からのたくさんのメッセージが受信ボックスにあり、母親が亡くなっていなかったことを知る。

それから丸孤はマリアたちに促され、母親の元へ戻っていった。

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ヨハネとマリアの秘密

ある日、端正な顔付きの中年男性が尽き果てのバス停に佇んでいるのを見かけた紫紋は、雨が降り出したため食堂で傘を貸した。

マリアと同じく男の左手薬指がないことに気づいた紫紋は、直観的にマリアを連れていかれると思い、引き留めをせず見送るが、直後に男とマリアが抱き合っているところを目撃してしまう。

ショックを受けた紫紋は、マリアの過去を知る克夫に問いただすと、重い口を開いて男の素性を教えてくれた。

男は与羽(ヨハネ)といい、17年前に都内で高校の数学教師していた。

与羽には杏奈という妻と5歳になる花南という娘がおり、満ち足りた幸福のなかで生活していた。

そんななかで与羽が出会ったのが、クラスの不登校の女生徒・有馬りあ(=マリア)だった。

最初は教師という立場で辛抱強くマリアに接していた与羽だったが、その気持ちは次第に好意というものに変わっていった。

そしてある日、マリアが母から虐待され、父から蹂躙されていることを知った与羽は、男としたマリアを守りたいと思うようになった。

マリアとのに溺れていった与羽は家族のことまで考えられなくなってしまった。

そして妻の杏奈は夫の浮気に気づき、マリアと一緒になるなら私を殺してから行ってと包丁を出した。

与羽は包丁を手に取ると自分の左薬指に突き立て根こそぎ切り落とした。

そこで与羽は気を失い、病院に搬送されたのだった。

さらなる悲劇と女将の正体

病院で目覚めた与羽は、枕元に“屋上に来て”という紙切れを見つけ向かうと、柵の前に花南を抱いた杏奈が立っていた。

傍らにはマリアと 杏奈の母もおり、必死で娘を制止しようと呼びかけていた。

この母親こそ、女将の桐江だった。

杏奈はマリアに自分と娘を殺せと迫るが、マリアは与羽と同じように包丁を持って左手の薬指を断ち切った。

与羽は悲鳴をあげながらマリアを抱きかかえた直後、杏奈は花南を抱いたまま屋上から身を投げてなくなった。

その後、マリアは死ぬまで償い続けようと与羽と別れ、尽果にやって来て女将の面倒を見ながら食堂を始めたのだった。

※かつてマリアは与羽と出会った頃、彼から妻の故郷である「まぐだら伝説―尽果の昔語り」という本を読ませてもらい杏奈の実家のことを知っていた。

目の前で娘と孫を一度に亡くした女将が、その原因となったマリアのことを「あの女は聖母ではなく悪魔だ」と吐き捨てるように言っていたのも無理はないと紫紋は思うのだった。

マリアと女将

マリアが与羽と共に尽果を去ってから、紫紋は一人でまぐだら屋を切り盛りしていた。

マリアがいなくなって3か月経った頃、女将の体調がますます悪くなり、医者は紫紋にそろそろ覚悟が必要だと伝えた。

女将はマリアを憎みながらも、彼女が帰ってくることを待っていた。

そんななか丸孤がふらりとまぐだら屋にやって来て、脳梗塞で倒れた母のリハビリを手伝いながら、仕事をして養っていると報告した。

丸孤は東京から携帯電話の充電器を持ってきており、紫紋にふるさとの母に連絡をとるように勧めた。

紫紋は丸孤を見送ったあと佇んでいると、道を挟んだ向かい側のバス停に人が降りたことを確認した。それはマリアだった。

あの日、与羽は妻と娘が眠る寺で自ら命を絶とうと尽果に来たが、マリアは与羽を説得して、一緒に過ごしていたという。

与羽が孤児院で勉強教えるボランティアをしたり、高齢者の話し相手になるなど、皆に慕われていることを知ったマリアは安心して尽果に戻ってきた。

マリアは余命いくばくもない女将の家を訪ねた。

女将はあんなにマリアに冷たかったのに、今回は微笑してマリアを抱きしめ、マリアも「お母さん…」と呟いた。

それから間もなく女将は息を引き取り、マリアは「まぐだら屋」に戻ってきた。

結末

ある日、マリアは紫紋に故郷で待っている母親のもとに帰ったほうが良いと諭した。

紫紋は丸孤からもらった充電器を使って携帯の電源を入れた。

そこには家政婦の静子、晴香、そして母親からのメッセージに溢れていた。

晴香のメールには、内部告発したことは後悔していないが、兄弟のような紫紋と悠太の仲を壊したこと、悠太が亡くなったことが辛く、手首を切ったこともあったと書かれており、母親に苦しくても生きることが罪を償うことだと言われ、前を向くことができたと書いてあった。

紫紋の母からのメールには、息子を責めるわけでもなく、ただ帰ってきて欲しいと綴られていた。

紫紋は母に「お世話になった人に恩返してから帰りたい。」と伝え、マリアに料理の手ほどきをし、克夫らと心ゆくまで過ごした。

そして春がやって来て、紫紋はついに帰ることになった。

紫紋がバス停に見送りにきたマリアに「マリア、おれ、あなたのことをー」と言いかけると、マリアは優しく紫紋を抱いた。

バスに乗り込んだ紫紋は、大きく手を降るマリアをみて涙が溢れた。-おわりー

『まぐだら屋のマリア』感想

本作は、マグダラのマリアの神話を紐解いた「贖罪」をテーマにしたお話で、シモン、ヨハネ、マルコも登場します。

そして老舗料亭の残り物の使い回しや産地偽装エピソードは、千場吉兆の事件を元にしているのは明らかですね。

なかなかヘビーな過去を背負った登場人物たち。

自分を慕ってくれた後輩を見殺しにしてしまった紫紋の傷もなかなかですが、マリアは生い立ちからしんどくて胸が締め付けられるものでした。

人間は死ぬことも簡単ではないし、生き続けることはもっと難しいと思い知らされます。

人生詰んだ状態でも、手を差し伸べてくれる人がいる”尽果”。

そこで出される料理のなんと美味しそうなこと!本当に食べることは生きることですね。

食べるという行為は、単に胃袋を満たすだけではなく、心を豊かにしたり生き方そのものにも影響を与えていきます。

そして女将に助けられたマリアは紫紋を助け、その紫紋は丸孤を救います。

こうして赦された人々は、大切な人が待つ故郷へ帰っていくのです。

最後まで伝説の魚マグダラが釣れないのもOK、紅葉のエピソードも物語のスパイスになっていて良い。

『まぐだら屋のマリア』は、タイトルからして芸術系のミステリーかと思いきや、どっぷり重いヒューマンミステリー。でも、余韻は陽だまりに佇むような温かさを感じる作品でした。

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