湊かなえ『未来』結末までのあらすじを相関図付きでネタバレ

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湊かなえさんの小説『未来』は、貧困や虐待のなかにいる子供が、未来から届いた手紙を通して救いと希望を求めるお話です。今回は黒島結菜さん主演で映画化も決定した『未来』の結末までのあらすじを相関図付きでご紹介いたします。

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『未来』あらすじ

「こんにちは、章子。わたしは20年後のあなたです」

父を病気で亡くし、母と二人暮らしになった10歳の佐伯章子は、30歳になった未来の自分から「未来は希望に満ちた温かいもの」だと書かれた手紙を受け取る。

大好きだった父がいなくなり、人に戻ったり、人形に戻ったりと精神的に不安定な母の代わりの家事をこなしながら小学校に通う章子は、未来の自分に返事を書くことで過酷な状況を乗り越えようとする。

しかし、同級生からの屈辱的ないじめ、母の交際相手の男からの激しい暴力など抗えない困難に直面する。

一方で、章子の友人である亜里沙も父からの虐待と、弟の死に打ちのめされていた。

そんななか章子は、父が遺した「僕たちの子どもへ」というタイトルのフロッピーディスクを再生した後に気を失うほどの衝撃をうけ、亜里沙と共にある決意をする。

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『未来』登場人物&相関図

登場人物

【章子】
佐伯章子・・・10歳のときに30歳になった自分から手紙を受け取る。父が亡くなり過酷な状況に陥る。
佐伯文乃・・・子どもの頃の辛い経験が原因で精神的に不安定。人に戻ったり、人形に戻ったりの状態に。
佐伯良太・・・章子の父。胃がんで亡くなる。
樋口絹代・・・良太の母。良太が亡くなったと聞き、突然 章子の家を訪れ、息子ソックリな章子を引き取りたいと申し出る。
後藤実里・・・章子のクラスメイトでいじめの首謀者。両親はPTAの役員。
林 優斗・・・章子の担任教師。章子の家庭環境を気にかけるうち、母・文乃に心を奪われる。
早坂誠司・・・文乃と事実婚状態になる男。フランスの有名レストランで修行したことが自慢。文乃が受け取った良太の保険金でレストラン「HAYASAKA」をオープンさせる。
猪川・・・高級ホテルチェーン「いのや」のオーナー。レストラン「HAYASAKA」の客。章子に暴力をふるう早坂に注意する。
【エピソードⅠ】
須山亜里沙・・・章子の友人。
須山健斗・・・亜里沙の弟。優しい性格だったが、あることが原因で4階建ての屋上から飛び降り自ら命を絶つ。
須山・・・亜里沙と健斗の父。美容師だったが、亜里沙の母の実家が経営している金属加工会社で指を切断してしまい、それがきっかけで結婚した。レストラン「HAYASAKA」でアルバイトをする。妻が亡くなってからは子供に暴力を振るう。
智恵理・・・高校生の亜里沙が慕っている定時制大学の先輩。母が再婚した義理父は弁護士。
【エピソードⅡ】
篠宮真唯子・・・教師。章子と亜里沙の担任。
君江・・・真唯子の祖母。そうめん作りの名人。真唯子に公務員になるように勧め、大学進学のため夫の遺産の1千万円を渡す。
原田勇輝・・・真唯子の恋人。映画が好き。
【エピソードⅢ】
樋口良太・・・醜い容姿にコンプレックスを持つ。柔道を習っていたおかげでいじめにはあわなかったが、クラスメイトの森本から辛辣な言葉を投げかけられ…。母親は県議会議員である森本の父親の後援会に入っている。
森本誠一郎・・・美しい容姿を持つ良太の同級生。心に闇を抱え、クラスメイトに暴言を吐くが、あるとき良太に言い返され…。
森本真珠・・・誠一郎の妹。
森本総一郎・・・誠一郎と真珠の父。県議会議員。

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相関図

※無断転載禁止

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『未来』結末までをネタバレ

以下ネタバレを含む内容となっていますので、未読の方はご注意ください。

章子

父・良太をがんで亡くし、心を病む母・文乃を支えながら暮らしていた章子だったが、ある日 担任の林先生が文乃に個人的な感情を持つようになり事態は一転する。

林先生と文乃の関係が学校で問題になると、林は文乃への想いを校長やPTA役員の前で宣言するが、文乃は林から言い寄られて迷惑だったと説明する。

納得できないは、家まで押しかけるが警察に通報され、そのまま学校を退職した。

再び母の体調が悪くなった頃、良太の母で章子の祖母にあたる樋口絹代が章子を引き取りたいと申し出る。

しかし章子は文乃を一人にはできず、絹代の提案をきっぱりと断る。

その際に、絹代から母がかつて放火によって父と兄を死なせたという衝撃の事実を告げられるが、新たに仕事を見つけ社会復帰しようとする母を見て、これからも力を合わせて生きていこうと決意する。

章子が中学生になった頃、文乃はアルバイトをしていたホテルの副料理長・早坂誠司と同棲し始め、早坂はホテルを辞めてレストラン「HAYASAKA」をオープンさせる。

その資金に使われたのは、文乃が受け取った良太の保険金だった。

早坂は店の経営が悪化し始めると、章子に暴力を振るって憂さ晴らしをし始める。

そして不審火によって店が火事になると、早坂は用済みとばかりに文乃と章子を捨て、二人はアパートに移り住んだ。

絶望の淵に立たされた章子だったが、ある日 小学校の同級生だった須山亜里沙が現れる。

亜里沙

亜里沙もまた家族の問題で心に傷を負っていた。

父は早坂の店でアルバイトをしていたが、それがうまくいかなくなると早坂が始めた女性を紹介する仕事を手伝うようになる。

あるとき、少年を求める顧客のために、早坂から息子の健斗を差し出すように言われた父は、金のために承諾。

そして健斗は、そのことを苦にして自ら命を絶ってしまう。

そして、弟の死の真相を知った亜里沙は、ある覚悟を決める。

フロッピーディスク

章子は、亜里沙がいじめの首謀者・後藤実里の悪事をみんなの前で言ってくれたおかげで、再び学校に通えるようになった章。

ある日 章子は、亜里沙が慕う定時制高校の先輩・智恵理の家のパソコンで、父・良太が遺したフロッピーディスクの中身を見た。

そこには良太が高校時代に文乃と出会った頃の内容が記されていた。

冴えない容姿をしていた良太は、進学校に通っていた頃に、美少年の同級生・森本誠一郎と出会う。
誠一郎が絡んでいた同級生をかばった良太は、彼の次のターゲットになり辛辣な言葉を投げつけられる。
しかし良太は、誠一郎に毅然とした態度で抵抗。
それから誠一郎は良太に興味を持つようになり、不思議な友人関係が始まった。
ある日、誠一郎の家に招かれた良太は、隣の部屋にいる少女と関係を持って良いと勧められる。
一糸まとわぬ姿でベッドに座る少女に欲望が抑えれなかった良太は、その少女を押し倒してしまうが、その少女は誠一郎の妹・真珠(まじゅ)だった。
真珠は父親から忌み物にされ、それを知った兄の誠一郎は妹の体を売り、自分も悪魔になることで心を守っていた。
地獄のような家族の関係に気づいた母は、数年前に自ら命を絶った。
誠一郎は良太にすべて打ち明け、父親をこの世から葬り、真珠を自由にすることを決意する。
良太は誠一郎の計画に協力し、放火に加担するが、真珠は良太を庇うためにすべての罪を被ったのだった。

その後、良太は親の反対を押し切り、文乃と名前を変えた真珠と駆け落ち同然に結婚。そして生まれたのが章子だった。

手紙の差出人「おとな章子」の正体

手紙は未来からやって来たものではなく、章子と亜里沙が小学四年生のときの担任・篠宮真唯子によって書かれたものだった。

母に捨てられ祖母に育てられた真唯子は、祖母の勧めで公務員である小学校の教師になるため東京の大学に進学し、一人暮らしのアパートで原田勇輝という同じ大学に通う学生に出会う。

原田の趣味である映画鑑賞を通じて親しくなった二人は、徐々にお惹かれ合っていく。

そんな頃 真唯子を捨てていった母が、祖母が章子の学費のために遺してくれた貯金を狙って、行政書士を連れてやって来る。

通帳を取られ、学費を工面することになった真唯子は、騙されてカラオケのいかがわしいイメージビデオに出演してしまい、そのショックから原田に別れを告げてしまう。

それから数年後、教師になり章子の担任になった真唯子だったが、以前出演したビデオの存在が実里の父親の指摘によってバレてしまい退職することになる。

かねてより章子の家庭環境を気にかけてきた真唯子は、章子の父・良太が入院している病院を訪れる。

良太は自分が亡くなったあと、章子に希望をもって生きていけるように、真唯子に手紙を書いて欲しいと頼む。

真唯子は良太から聞いた限りのエピソードを交えて、幸せな未来が待っているという手紙を書き、章子が父と行く約束をしていたリームマウンテン三十周年記念の栞を同梱する。

二十年後の栞を手に入れられたのは、原田の存在があったからだった。

原田は大学卒業後にドリームランドを運営する会社に就職し、試作品で作ったドリームマウンテン三十周年記念の栞を真唯子に見せた。

真唯子は受け持った生徒の手紙について明かし、その栞を譲ってもらったのだった。

結末

亜里沙は、自分を虐待し、弟の健斗を死に追いやった父の殺害を決意したと章子に明かした。

章子もまた母・文乃に体を売らせていた早坂を消すこと決める。

章子は早坂に毒を盛り、家に火を放った。

かつての父が母を守ったように…。

そのとき、帰宅した母・文乃は章子を抱きしめ「行ってらっしゃい」と送りだした。

そして章子は手紙を持って、亜里沙との待ち合わせ場所に向かう。

亜里沙は火をつけることができず、戻ってきたら父に酷い目に遭わされることを恐れた。

でも二人には、未来を幸せにすごしている証拠であるドリームマウンテン三十周年記念の栞がある。

だから今日は、ちゃんと話を聞いてくれる大人に、自分たちがされたこと、自分たちがしたことを大きな声で叫ぼうと誓うのだった。

『未来』感想

湊かなえさんの集大成と言われるだけあって、この『未来』は人間の心の闇や社会の歪みをテーマにした作品です。

登場人物が一人称でそれぞれ語るスタイルも健在で、同じ事柄であっても視点が変わると見える世界も変わるので、色々な解釈でできて面白いです。

タイトルにふさわしく、冒頭では20年後の自分から「未来は希望に満ちた温かいもの」だという手紙が届くのですが、すぐに思った通りのしんどい展開になっていきます。

幼少期の壮絶な虐待から壊れてしまった母を健気に支える章子。

章子は悲惨な状況を手紙の文章で吐き出すことによって、どうにか正常な心を保っているのですが、壮絶ないじめと母の男からの暴力に打ちのめされてしまいます。

支えにしていた手紙を信じなくなった頃に、現われる友人・亜里沙、そして父から残された「僕たちの子どもへ」というタイトルのフロッピーディスクの存在による章子は再び立ち上がります。

そして章子はかつての父と同じように母を守るため、放火をし、そこに母が帰宅します。

「章子はパパもそっくりね。顔も、性格も、こうして私を助けようとしているところも。」

ママは片手に持っていたレジ袋を置いて、両手で包み込むようにわたしの頭をなでた。大切なものを愛おしむように。それから、両手の親指と人差し指の先で、わたしの耳をつまんだ。

「耳の形は私と一緒。」

これまで不安定でネグレクト気味だった文乃が、すぐに章子の気持ちを察して受け止め、愛していると伝えるところは本当に秀逸。

火が迫るなかの緊迫した場面ですが、ここだけ温かな時間が流れ、父・良太の気配も感じられる感動よシーンでした。

また物語では、酷い大人がいる一方で子どもたちに救いの手を差し伸べる大人、そして良い仮面をかぶった悪魔のような大人が登場します。

一番えぐかったのは、早坂のレストランの客である猪川です。

猪川は早坂の暴力から章子を守るのですが、後から早坂から亜里沙の弟を金で買っていたことが判明します。

こうゆうところが湊かなえさん作品の残酷なところであり、リアルなところで、登場人物が簡単に良い人、悪い人と予測できない面白さがあります。

いじめっこの実里だって、引くくらい章子に陰湿ないじめをしますが、彼女もまた 毒親によって歪んでしまった被害者のように感じます。

ほとんどの登場人物が病み、物語は貧困、いじめ、虐待という不幸のループが続いていきますが、真唯子が原田とテーマパークを訪れ、章子と亜里沙が大人たちに声を上げようとするラストは希望を感じさせるものでした。

目を背けたくなるような陰鬱なエピソードがてんこ盛りの『未来』ですが、闇が濃ければ濃いほど、あたたかな光を感じさせてくへる作品となっていますので、映画で興味を持った方はぜひ原作も手にとってみてくださいね。

湊かなえ『人間標本』結末ネタバレと相関図は⇒こちら
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