『対決』結末までのあらすじをネタバレ!差別の根幹を描く問題作
月村了衛さんによる小説『対決』は、医科大学における女子の入試差別を通して、女性新聞記者と女性大学理事が対峙する姿を描いた作品です。今回はNHKでドラマ化も決定した『対決』の結末までのあらすじをご紹介いたします。
『対決』あらすじ
新聞記者の檜葉(ひば)菊乃は、ある私立医大の入試で女子受験生の減点が行われているというネタを掴み、取材を進めるうちに医大の理事である神林晴海に目を付ける。
檜葉は医師を目指す娘のためにも真相を探ろうとするが、神林は檜葉の追及を巧みにかわしていく。
粘り強く確信に迫っていく檜葉と常任理事としてマスコミ対策を任された神林。
男性優位の社会で、多くの理不尽や侮辱に耐えてきた二人の対決の行方はー
『対決』登場人物
◆登場人物
◆檜葉菊乃・・・日邦新聞社会部の記者。43歳。夫のDVが原因で離婚し、現在はシングルマザーとして高校2年生の娘・麻衣子と二人暮らし。検察官を担当する通称”P担”。
◆神林晴海・・・統和医大の理事。45歳。前医学長・小山内の強い推薦で、事務局ながら異例で理事の仲間入りを果たした。独身。
【日邦新聞社会部】
◆相模・・・社会部のキャップ。42歳。檜葉と同じ班員。
◆和藤・・・檜葉と同じ班員。
◆甲斐田・・・檜葉と同じ班員。30代半ば。
◆西森・・・檜葉と同じ班員。20代後半。最年少。
◆堀江・・・司法担当デスク。
◆東海林・・・社会部部長。檜葉を社会部に抜擢した。
【統和医大関係者】
◆蜂須賀・・・副理事長。
◆本間・・・理事長。
◆北加代子・・・医師。教授。56歳。権力志向が高い。
◆小山内・・・前医学長。統和医大の重鎮。病気が発覚し病院を去る。神林の能力を認め理事に推薦した。
『対決』結末ネタバレ
◆第一の対決
新聞記者の檜葉が神林に初めてアポを取って迎えた第一の対決は、完璧なまでの完敗に終わった。
男性社会で理不尽なことを乗り越え理事にまで登り詰めた神林ならば、同じ女性として分かってくれると檜葉は思ってたが、甘かった。
確かに神林はこれまで女性であるがゆえ、容姿を揶揄され、悔しい思いをしてきた。
しかし、そうした困難を乗り越えて理事になり、さらに大きな目標を掲げているため、道半ばでこの地位を手放すわけにはいかない。
医大の方針が「本学の名誉を守る」ということである以上、マスコミの対策を任された神林が仕事を全うするのは当たり前のことだった。
だからこそ神林は檜葉が女性差別の問題を口にしてもひるむことなく、終始 世間話の枠をでない会話に留め、隙を一切見せることはなかった。
◆第二の対決
そんななか檜葉の高校生になる娘が、こともあろうか統和医大を受験することが分かった。
娘の将来のためにも闘おうと思った檜葉は、新聞記者仲間の協力も得て、再度 神林に話を聞くことを決めた。
その矢先、受験相談のため娘とゼミを訪れた檜葉は、入試動向を研究するためゼミに来ていた神林と二度目の対面をした。
神林は檜葉に、娘を授業料が全額免除となる推薦枠に合格させる代わりに、これ以上 女子受験生の減点が行われているという件について探らないでほしいと取引をもちかける。
檜葉はその申し出を断り、娘が統和医大を志望したのは、裏では悪評高い女医・北加代子の著書に感銘をうけたからだと正直に話した。
すると神林は絶句し、この件についてこれ以上何も言うことはなかった。
こうして第二の対決は引き分けになった。
◆最後の対決
神林は、権力志向が高く、男性に媚びて医学会をうまく渡り歩いて今の地位を築いた北加代子を好きではなかったが、彼女がそうせざる得なかったことも理解していた。
しかし今の時代、北のようなやり方は通用しないどころか、そんな方法をとっていたら女性の地位を貶めることになる。
だからこそ神林はもっと力を得て、理事会での発言力を持ち、正しい入試体制にしたいと考えていた。
でも今、女子の差別入試を認めてしまえば、医療現場は混乱し、統和医大の職員は仕事を失うことになってしまうため、檜葉のリークを許すことはできない。
そんななか統和医大の女子学生が男性准教授から悪質なセクハラを受けていることが判明した。
さらに神林は副理事長・蜂須賀によって福島の系列校に飛ばされることになり、大学を腐敗させている敵を一掃しようと考え、檜葉に会うことに決めた。
そして檜葉を自宅に呼んだ神林は、今回のセクハラの件を記事にしてもいいが、差別入試の件はまだ報道しないように伝えた。
檜葉はその取引には応じられないと言い、最後の切り札を出してきた。
それは神林が父のように尊敬し慕っていた小山内がまだ存命で、神林の現在の状況を案じているというものだった。
檜葉はすぐに小山内に電話をかけて神林に取り次いだ。
小山内は病室のベッドから、医師を育てる大学がそんな安直な方法を採ることは許されず、神林には入試の正常化に努めて欲しいと伝えた。
それを聞いた神林は嗚咽し、檜葉は彼女の肩にそっと手を置いた。
◆結末
神林の証言を得た檜葉は、一大スクープを勝ち取り、記事は掲載された。
そのセンセーショナルな内容に国民は驚いたが、大学側はすぐに入試差別撤廃を約束して事態の収束をはかった。
統和医大の根回しと口裏合わせによって檜葉の名が世に出ることはなかったが、檜葉はこの一件によって少しでも良い方向に向かって欲しいと願うのだった。
一方神林は、一連の不祥事でいなくなった蜂須賀をはじめとする上層部に代わり、大学の信頼を取り戻すと共に、過去の受験で不合格になった女子学生に誠心誠意謝罪することを誓った。
『対決』感想
医科大学における女子の入試差別を通して、現代日本が抱える様々な「差別」をテーマにした『対決』は、東京医大で女子受験者を一律減点していたという実際の事件を元にしたお話です。
本作では、男性優位の社会で女性に待ち受けるセクハラやパワハラのエピソードに加え、「差別」の根幹についてても描かれています。
例えば、主人公の仕事仲間の男性記者が本音を語った
「人間である限り差別はなくならない。この世界には男も女だけでなく男女どちらにも当てはまらない性自認を持つ者など色々な人がいて、それぞれが口に出さないけれど心のなかで思うこうとはたくさんある。けれどそれが人格や人権の否定になってはいけない。大切なのは自分自身が「無自覚な差別はある」と認め、どうすればその差別をなくせるのかという問題に向き合うべき」
という言葉。
この場面では、一見 女性に理解のあるようにみえる男性でも、無意識のうちに下に見るような心理があるということも言及されています。
差別をゼロにするではなく差別があることを潔く認めたシーンですが、事件の差別を暴いて終わりではなく、差別が生まれた理由が何であるのかまで考えなければいけないことに気づかせてくれる言葉でした。
一方で、女性が医師になっても、地方に行きたがらない、体力面での不安や産休育休で現場から長期離脱しなければならならず、そのしわ寄せは男性医師が背負うことになることなど今の医療制度の問題にも触れられており、きれいごとでは済まされないことも理解できました。
差別というのは無意識なものもあり、自分たちが所属するグループを守りたいという人間の抗えない心理でもあります。
しかし、なくならないものだからといって、差別を許すことはいけません。
昔は許されたからといって、女性の容姿をからかう表現をしたり、お茶くみなどの慣習を強要することは現在では不適切なことです。
差別が起こらないような法整備や正しい教育を行うことはもちろん、自分が偏った見方をしていないか振り返ることも大切だなと感じました。

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