『風よあらしよ』ネタバレ!あらすじから結末を相関図付きで紹介

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婦人解放運動家・伊藤野枝の壮絶で鮮烈な半生を描いた村山由佳さんによる小説『風よあらしよ』がドラマ化されます。彼女が、激しい恋と共に、命懸けで現代に残してくれた叫びとは一体なんだったのでしょうか?今回は原作『風よあらしよ』のあらすじから結末ネタバレと感想を相関図を交えながらご紹介いたします。

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『風よあらしよ』相関図

主人公の 伊藤野枝は、28歳という短い生涯ながら3回結婚し、7人の子どもを出産したので、登場人物は多めです。

そこに、月刊誌「青踏」に関わった人々、大杉栄の同志たちが加わり、物語は展開していきます。

『風よあらしよ』登場人物


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『風よあらしよ』あらすじ

野枝の生い立ち

伊藤ノエは、福岡県今宿という田舎で、7人兄妹の3番目の長女として生まれた。

かつては海産物問屋として栄えた伊藤家だったが、父・ 亀吉がロクに働かない放蕩者だったため没落。

ノエは、口減らしのため伯母の家に預けられるなどして、自分がいつどこにやられるかもしれない警戒心を抱えて過ごした。

その不安は的中し、今度は父の妹である伯母のキチの家に里子に出されることになった。

しかしキチの夫・ 代 準介は実業家で裕福だっため、長崎市内の女学校で勉強させてもらえることになった。

ノエはここぞとばかりに本を貪るように読み、いつか自分は、村の古い因習にとらわれることなく、男と同等に世に出てやると、息巻いていた。

東京へ

そんななか、おじの代は事業を拡大するため一家で長崎から東京へ引っ越すことになり、ノエは実家に帰された。

「絶対にこのままでは終わらん!」

女が虐げられるような、こんな村に留まりたくないと思ったノエは、東京の代に「東京で私に勉強させて恩返しさせて下さい」と哀願とも呼べる手紙を出した。

代は、女だからといって、ノエの向学心と野心を放っておくのは惜しいと、妻の反対を押し切って東京に呼び寄せた。

執念で村を出たノエは、より一層勉強に励む一方で、英語教師の 辻 潤をした。

縁談

ノエは辻 潤と気持ちを確かめあっていたが、上野高等女学校の卒業が迫った頃、両親が勝手に、地元の豪農である兼松福太郎との縁談を決めてしまう。

「嫌ばい。あんな男、虫唾がはしる。」

ただただ働き、男と交わっては産み育てる人生。

自分の気持ちは無視され、物のように扱われる屈辱。

無理やり結婚させられたものの、耐えきれなくなったノエは、たった8日で福太郎の元から逃げ出してしまう。

そして、東京の辻潤の実家に転がりこみ、同棲をはじめた。

教師でありながら教え子に手を出したとして、辻は教師を辞めることになった。

青踏社へ

かねてより女流作家か記者になりたいと言っていたノエに、辻は「青踏」の編集長・ 平塚らいてうに手紙を書くことを勧めた。

平塚らいてうは、ノエに会うなり、美しい野性味と、若い女性ながらその猛々しい思いを気に入り、「青踏」に招き入れた。

青鞜社に通い始めたノエは、与謝野晶子、尾竹紅吉・岡本かの子らと親交を深め、女性解放運動の中心的人物へと成長する。

ノエはこの頃に、辻との間に長男・一(まこと)、次男の流二(りゅうじ)をもうけた。

その後、発禁処分などで経営が傾いていた「青踏」を、らいてうから引き継ぎ、編集長となったノエは「貞操論争」「堕胎論争」「廃娼論争」を発表した。

そんななか、ノエは社会主義を唱えるアナキスト大杉栄と出会う。

大杉栄との運命の出会い

大杉とノエは、男女としても同志としても強烈に惹かれ合った。

しかし、ノエに辻がいたように、大杉にも何度も投獄をされたときに支えてくれた妻・堀保子がいた。

しかも大杉は、新聞記者の 神近市子とも不倫関係にあり、四角関係の末に、市子に日蔭茶屋という旅館の一室で刺されてしまう。

世間からは、経済的にも大杉を支えていた市子に同情があつまり、反対にノエは「淫乱女」「悪魔のような女」と批判された。

その後、ノエは辻と4年の結婚生活に終止符を打ち、大杉も保子と離別、市子は殺人未遂で逮捕された。

大杉とノエの評判は地に落ちてしまい孤立したが、二人の間には長女・ 魔子(後に眞子と改名)が誕生。

「魔子」という名前は、「悪魔」と呼ばれていたノエが、世間に対して挑発的に名付けたことに由来する。

二人に世間の目は冷たかったものの、モラルなんて糞くらえと、魔子の他にエマ(幸子)、エマ(笑子)、ルイズ(ルイ)、ネストルと5人の子どもをもうけた。

それからノエと大杉は、平等で公正な社会を目指し、無政府主義運動に傾倒していく。

ノエの最期

過激な発言から、大杉とノエは、政府からの監視の対象となり、24時間警察の尾行が付いた。

本が発禁処分を受け、逮捕されるたびに、着の身着のまま引っ越しを繰り返した。

そして、関東大震災が発生から2週間後、大杉とノエと大杉の甥・橘宗一(6歳)は、憲兵隊特高隊に連行されてしまう。

ノエと大杉は激しい拷問を受け、その日のうちに宗一と共に憲兵隊構内で殺害された。

ノエは28歳の若さだった。

三人の遺体は畳表で巻かれ、古井戸に投げ捨てられるという惨たらしさだった。

結末

事件は隠蔽されかけたが、宗一がアメリカとの二重国籍を持っており、母・あやめがアメリカ大使館に駆け込んで真相究明を訴え、捜査が行われた。

大杉とノエの遺した無戸籍子どものうち、次女・エマは大杉の妹に、三女・エマと四女・ルイズはノエの実家に引き取られた。

男児で末っ子のネストルは代隼介の娘・千代子が育てたが、一歳で病死してしまう。

魔子は、大杉の弟の勇に引き取られたが、大杉の同志たちは、大杉が溺愛した魔子にアナキストとしての希望を見出し、面倒をみたがったという。

生前より大杉を慕っていた村木源二郎は、「また会いにくるよ」と魔子を抱きしめたが、「これが最後だ。もう二度とここへは来られない」と心のなかで思っていた。

1か月後 村木は、和田久太郎らと共に福田雅太郎大将を狙撃したが失敗に終わっている。-END-

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『風よあらしよ』感想

「吹けよあれよ風よあらしよ」

これは野枝が、「青踏」で残した言葉で、本作のタイトルの一部になっています。

吹き荒れる嵐のような思いを胸に秘め、ものすごいエネルギーで、短い人生を駆け抜けた伊藤野枝。

結婚、不倫、出産、青鞜社、日蔭茶屋事件、甘粕事件…とても28年間に起こった出来事とは考えられず、野枝の生涯がいかに濃密であったが分かります。

彼女は、「皆が自由に生きられる世の中」を実現しようとしただけなのですが、当時の日本政府や思想に都合が悪いという理由で惨殺さてしまいました。

生前 野枝は、子どもたちに「私はまともな死に方をしない」と言っていたようですが、その言葉には自分の運命を恨めしく思う気持ちも込められているように感じます。

彼女の人生を辿ることは、とても精神を消耗しますが、651ページの分厚い本でありながら、強いエネルギーと疾走感に引き込まれ、あっという間に読み終えることができました。

野枝の本能のままのはちゃめちゃな行動には、付いていけないことも多々ありますが、貧富、ジェンダー格差、人種差別…現代の社会矛盾や閉塞感に共通する部分もあって、心を揺さぶられます。

『風よあらしよ』は、時代の殻を破り、突き抜けた伊藤野枝という女性の生きた証であり、「自由」が当たり前ではないと気づかせてくれる究極の性愛小説でした。

ドラマ『風よあらしよ』相関図キャストは⇒こちら


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