『月の満ち欠け』ネタバレ!あらすじ~結末を相関図と共に解説

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月の満ち欠けのように生と死を繰り返した女性が、前世で愛した男性にたどり着くまでを描いた佐藤正午さんによる『月の満ち欠け』を読みました。一見ロマンティックな物語のように思えますが、狂気さや執念が漂う重めのファンタジーで、良い意味で期待を裏切られる作品でした。そこで今回は、映画化もされる小説『月の満ち欠け』のあらすじから結末を相関図を交えながらご紹介します。

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『月の満ち欠け』相関図

本作は、一人の女性が月の満ち欠けのように死んで、生まれかわり、愛する男性との再会を願う切ないお話です。

その女性の名前は瑠璃。

彼女が3回亡くなって、3回生まれ変わる三十余年におよぶ物語のため、人物相関図はかなり複雑です。

さらに時系列もややこしい!

個人的には原作の複雑な構成を読んでから映画を見る方が楽しめると思うので、相関図を参考にして下さい。

『月の満ち欠け』相関図


※無断転載ご遠慮下さい。

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『月の満ち欠け』あらすじから結末ネタバレ

瑠璃と三角哲彦の出会い

物語の発端となるのは 正木瑠璃(旧姓:奈良岡)。

名前の由来は、”瑠璃も玻璃も照らせば光る”。

瑠璃は、大手ゼネコンに勤める 正木竜之介と結婚するものの夫婦生活はうまくいかず、正木の浮気やモラハラもあって、レンタルビデオ店でバイトをする大学生・ 三角哲彦と恋に落ちてしまう。

ある日、瑠璃は哲彦に、夫・正木の会社の先輩(八重樫)が「ちょっと死んでみる」と遺書を残して自殺したエピソードを話した。

瑠璃はこの遺書を、試しに死んでみて別の人に生まれ変わると解釈し、「私も、月の満ち欠けのように、生と死を繰り返す。そして未練のある哲彦くんの前に現れる」と言った。

その一週間後に瑠璃は地下鉄の電車に轢かれて死んでしまった。

哲彦は、ショックで1年留年し、瑠璃が生まれ変わって自分に会いにきてくれることを願った。

幼い堅と娘の瑠璃

この物語の語り部となるのが、 小山内堅という男性で、三角、瑠璃と並んで軸となる人物。

小山内は、大学のサークルで知り合った同郷の藤宮梢と結婚して娘が生まれたが、その娘の名前が妻の強い希望で瑠璃と名付けられた。

瑠璃が7歳になった頃、原因不明の高熱が一週間も続いたことがあった。

幸い、夏は下がり回復したものの、梢は瑠璃の変化に気づき始めていた。

ぬいぐるみを突然「アキラくん」と呼んだり、瑠璃が生まれる前に流行った黒猫のタンゴを口ずさんだり、デュポンのライターをすぐに見分けたり…

梢は、瑠璃の異変を小山内に訴えたが、小山内は気にも留めなかった。

そんなある日、瑠璃は行方不明となり、高田馬場駅のレンタルビデオ店の近くで保護された。

瑠璃は、なぜ親に連絡もせずに遠く離れたレンタルビデオ店に行ったのか、その理由を一切話そうとしなかった。

それから11年後、高校生になった瑠璃は、梢の運転する車で事故に遭い、二人は亡くなってしまう。

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正木竜之介と社長の娘・希美

妻・瑠璃が電車にはねられて亡くなったあと、正木竜之介はギャンブル、酒、女に溺れ、荒れた生活を送っていた。

それでも、両親の計らいでなんとか立ち直り、地元の小沼工務店に就職。

正木は、本来仕事のデキる人間で、小沼社長からも信頼され、社長の妻からも頼りにされていた。

なかでも、小沼の娘・希美(7歳)は竜之介を慕い、とても懐いていたが、ある日原因不明の発熱に襲われた。

病気は回復したものの、その日から希美は正木を避けるようになった。

(希美は、瑠璃の2度目の生まれ変わり。正木を避けるのは、かつて彼からDVまがいの行為をされたため。)

正木はある日、小沼の妻から希美が実は、瑠璃と名付けられるはずだったことを知らされる。

希美は瑠璃の生まれ変わりではないのか…と確信した正木は、ある日希美と共に、三角に会いに行こうと無理やり連れだした。

しかし、三角に会いに行く途中に事故に遭ってしまい希美は亡くなり、正木はロリコン誘拐犯として逮捕され、その後拘置所内で死亡した。

緑坂ゆいと娘のるり

女優で娘・瑠璃の親友だった 緑坂ゆいが、小山内をたずねてきた。

緑坂は、妊娠中におなかの子が、自分のことを「瑠璃」だと名乗る 不思議な体験をしたことを打ち明けた。

そして、生まれた娘にひらがなで「るり」と名前を付けたこと、七歳の年に原因不明の発熱に襲われたことを真剣に話した。

小山内には生まれ変わりなど信じられなかったが、ゆいは、瑠璃が高校生のときに残した前世の恋人の肖像画が三角哲彦の顔と似ているか確かめたいという。

そして小山内は、肖像画を見せるため東京でゆいの娘・るりと対面したが、るりは小学生にしてはませた口を利く女の子だった。

まるで堅を昔から知っているような口ぶりで、馴れ馴れしく会話した。

そしてるりは、小山内に「生まれ変わりはわたしだけとは限らない。ほかにも生まれ変わりを体験する人はいる。もし小山内さんを堅さんと呼ぶ子がいたら本物かもね」と意味深な言葉を残した。

小山内は、そのとき8年前から交際している 清子の15歳の娘・みずきが堅さんと呼ぶことを思い出していた。

みずきは、15年前に事故で亡くなった梢の生まれ変わりかもしれない…。

三角哲彦と緑坂るり(エピローグ)

正木瑠璃の3度目の生まれ変わりである7歳の緑坂るりは、母の目を盗みようやく三角哲彦の会社までやってきた。

しかし、ランドセルを背負った少女が会社に入ってくると、周囲の大人は追い返そうとした。

「あたしを子ども扱いするな!あたしをアキヒコくんに会わせて!」

大人につかまえられたるりの前に、一人の男性がハンカチを差し出した。

53歳になった三角哲彦だった。

三角は笑顔で頷きながら、「瑠璃さん。ずっと待ってたんだよ。」と言った。-END-

『月の満ち欠け』感想とまとめ

雨の日のビデオ屋で出会い、短い間だったけど精神的に深く結ばれた瑠璃と三角哲彦。

30年余りの年月を費やして、恋をした人と再び巡り会おうとするストーリーは、一見ロマンチックですが、瑠璃が無残にも亡くなったり、それにより壊れていく家族には、いたたまれない気持ちになりました。

特に親たちは残酷で、自分の娘が瑠璃に乗っ取られ、幼くして子を失ってしまう辛さを経験することになってしまいます。

7歳の子供が前世の瑠璃のように振る舞う姿にはゾッとし、その邪悪さは映画「エスター」を思い出すほど。

生まれ変わった先の誰かしらを不幸にしながら、愛する人をただひたすら追いかける瑠璃の情念は、恐るべしです。

そして結末。三角とるりが再会できて、ハッピーエンド。

しかし、53歳の三角と7歳のるりが愛し合うのは、正木のときと同様に、色々と誤解を生むのではないかと心配になってしまいました。

それは、小山内堅にも言えることで、義理の娘・みずきが妻・梢の生まれ変わりだと知って、今まで通り一緒に生活することは難しいのではないでしょうか。

付き合ってる女性の娘に生まれ変わった妻。

愛する人に再会できる喜びもありますが、内心は複雑で、知らない方が幸せだったかもしれません。

色々と書きましたが、ありえない物語をありえそうと思わせてくれる構成や文体は素晴らしく、間違いなく面白い小説ですので、映画化を機にぜひ読んでみて下さい。

映画『月の満ち欠け』相関図キャストは⇒こちら


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