『空白を満たしなさい』結末ネタバレ!本当の自分は1つじゃないとは?

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「もし亡くなった人にもう一度会えるなら…」そんな壮大なテーマを哲学的、宗教的、心理学的に描いたヒューマンサスペンス小説『空白を満たしなさい』の結末や考察をネタバレでご紹介いたします。

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『空白を満たしなさい』登場人物

土屋徹生・・・36歳男性。3年前に自殺して生き返った”複生者”。
土屋千佳・・・徹生の妻。
土屋璃久・・・徹生と千佳の一人息子。4歳。
土屋保・・・徹生の亡父。徹生が1歳半の時に心臓発作で逝去。
土屋恵子・・・土屋保の妻。徹生が亡くなってから千佳と確執ができる。
佐伯・・・徹生が勤務していた会社の警備員。醜い男。
安西・・・徹生のかつての上司。
権田・・・徹生の会社の工場長。クセはあるが徹生とは気が合う。
秋吉・・・土屋夫妻と家族ぐるみで付き合う。生き返った徹生をアルバイトで雇う。

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『空白を満たしなさい』あらすじ

3年前に会社の屋上から転落した 土屋徹生は生き返った。

彼の死は自殺ということになっていたが、幸せの絶頂のなか最愛の妻と幼い息子を残して、なぜ自分は死なねばならなかったのかは全く思い出せない。

そんななか、徹生は会社の警備員、 佐伯という男が自分を殺した犯人ではないかと疑う。

徹生は以前、ハトを蹴り殺していた佐伯に注意し、付きまとわれたことがあった。

自殺する少し前に佐伯は、脂肪の塊のような巨漢から強い悪臭を放ちながら、家族の幸せのために働く徹生をあざ笑ったことがあった。

自分は、格差と孤独への恨みをつのらせた佐伯に自殺にみせかけられて殺されたのだろうか?

深まる謎に向かって答えを追い求める徹生の行く末は?

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『空白を満たしなさい』ネタバレ結末

佐伯は犯人ではなかった

徹生が真っ先に犯人だと疑う佐伯は、とにかく不気味な存在です。

佐伯は、ぶよぶよの体を持ち「家族を養うことが幸せ?絶望的ですね。」「奥さんの遺伝子と私の遺伝子とを合体させてもらえませんか?」と、徹生を不快にあざ笑います。

私も、最初は佐伯が徹生に対して嫉妬して一方的に恨みをつのらせ殺したのだろうと思いました。

狡猾な佐伯なら、自殺に見せかけて徹生を抹殺できるでしょうし、現に徹生が亡くなったあと佐伯も姿を消しています。

あるとき、「復生者」の集まりに参加した徹生は、佐伯と再会し、徹生が自殺したときの防犯カメラの映像が納められたDVDを見ました。

そこには、自ら屋上のドアを開けて飛び降りる徹生の姿がありました。

佐伯は、徹生を殺してはいなかったのです。

そして佐伯は、「複生会」が行われていた施設のバルコニーから「俺はお前の父親だ。俺がお前を殺したんだ。」と謎の言葉を残して自殺してしまいます。

「俺はお前の父親だ」の意味

佐伯が「 俺はお前の父親だ」と言ったとき、「へ?どうゆう意味?」と思った方も多いと思います。

徹生の父は、彼が1歳半のときに突然心臓発作でぽっくり亡くなっており、徹生の父の記憶は、母の思い出話で語られる美化されたもので作られています。

徹生の誕生を心から喜び、家族を愛していた父親。

それは徹生の理想そのものでした。

徹生は、父のように家族を愛し懸命に仕事をしますが、佐伯と出会ったことで、生きることの意味を否定する自分に気づいてしまいます。

そして、父も徹生にとって肯定的ではありますが、今の自分とのギャップを感じさせる存在で、生きることを否定する自分に影響を与えます。

つまり、父も佐伯も「家族のために生きたい」と願う徹生を否定してくる存在ということで、佐伯は「俺はお前の父親だ」と発言したのでしょう。

徹生を殺したのは「分人」

徹生を殺したのは彼のなかの「分人」でした。

人間は、誰と付き合うかに応じて複数の「自分」が存在しており、それは「仮面をかぶる」というものではなく、対面している人、あるいは一人でいるときでも自分の思いを向けている人に応じて「本当の自分」がいるということ。

誰しも、仕事やプライベートの自分を使い分けていますよね。

この物語での考え方はつまり、人間は新しい人と関わるたびに、その人のために「分人」を生み出しているということ。

徹生は佐伯と出会い、彼の言葉に最初は反発しますが、次第に自分自身のなかに潜む佐伯に共鳴する部分を感じていきます。

仕事の疲労もあり、追い詰められた徹生は「生きる意味を否定する人格」を消してしまいたいと思うようになりました。

しかし、そのとき「分人」という考え方を知らなかった徹生は、「生きる意味を否定する人格」だけを消す方法が分からず、自分をまるごとを消す=自殺してしまったのです。

物語では、ゴッホの自殺は彼の分人同士の衝突が原因だったのではないかと触れられています。(上下二巻の表紙がゴッホだったことも、ここで回収されています)

ドラマ『空白を満たしなさい』相関図キャストは⇒こちら

最後に

ラスト、徹生は息子を抱きしめる寸前に目も開けられないほど眩しい光に包まれます。

これは、彼自身が抱えていた心のしこりを生き返ったことで解明し、「空白を満たし」成仏したと私は解釈しました。

死者が蘇るというトリッキーな設定ながら、美しい文章で哲学的に語られる「死生観」。

「いやな自分になった時には、”消す”のではなく、他のまっとうな自分を信じて静かに見守る。」

心を解放するような「分人主義」というメッセージは、コロナが長引く今こそ、自殺防止にも役立つのではないかと思います。

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