『ロスト・ケア』あらすじ~結末をネタバレ!犯人(彼)の正体は?

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3年間で43人を殺害した「彼」に死刑判決が下った。被害者は1人を除いてすべて介護の必要な老人だった。戦後犯罪史に残る凶悪事件を通して、介護現場の矛盾、社会システムがもたらす歪み、善悪の意味を問うた葉真中 顕による小説『ロスト・ケア』のあらすじから結末を犯人ネタバレでご紹介いたします。

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『ロスト・ケア』登場人物&相関図

登場人物

大友秀樹・・・検事。父親を有料老人ホーム「フォレスト・ガーデン」に入所させた。
佐久間功一郎・・・介護付き有料老人ホーム「フォレスト・ガーデン」の課長。大友の旧友。
斯波宗典・・・有料老人ホーム「フォレスト・ガーデン」に勤務する介護士。
団 啓司・・・有料老人ホーム「フォレスト・ガーデン」のセンター長。
ケン・・・裏社会の人物。佐久間に薬を流している。
羽田洋子・・・認知症の母を自宅介護しながら幼い息子と暮らすシングルマザー。

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『ロスト・ケア』あらすじ

3年間で43人を殺害するという戦後犯罪史に残る凶悪事件が起こる。

被害者は1人を除いてすべて介護の必要な老人。

逮捕された「」には責任能力があり、死刑判決が下った。

検事の大友秀樹は、「彼」の動機のを探るうちに、介護現場に溢れる悲鳴、社会システムがもたらす闇を知り、善悪の意味と対峙していく。

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『ロスト・ケア』結末と犯人ネタバレ

大友秀樹

検事の大友秀樹は、中学校から大学までの同級生で介護付き老人ホームに勤める佐久間功一郎を頼り、父を「フォレスト・ガーデン」に入所させた。

「フォレスト・ガーデン」は高級老人ホームで大友の父は、億単位の金を支払い、至れり尽くせりの生活を送れることになった。

大友は父が施設に入れたことに安心はしていたが、「介護はビジネスだ。金があるのに使わない老人から金を集めて循環させる。」と言い切る佐久間に違和感を持っていた。

一方、佐久間は、表面上は大友の友人ぶっているが、いつも安全な場所から「正しさ」を振りかざす彼の偽善者ぶった発言が大嫌いだった。

そんななか、「フォレスト」は介護保険制度の違反により、介護事業から撤退することになってしまう。

幸い、大友の父の「フォレスト・ガーデン」は介護保険に頼っていないため存続されることになったが、佐久間と連絡が途絶えたことに不安を持っていた。

佐久間功一郎

「フォレスト」が潰れそうになっているなか、佐久間は以前から覚せい剤を買っていたケンと会った際に「会社の顧客名簿のデータを売ってくれ。」と頼まれた。

佐久間はデータを渡すかわりに、「老人詐欺のビジネスに一枚噛ませろ」と交換条件を出し、ケンと手を組むことになった。

老人の心理をよく理解している佐久間は、振り込め詐欺で年寄りを次々と騙し、金を巻き上げた。

成功を手にした佐久間は、次第に独立してもっと儲けたいという欲を出し、ケンの元を離れようとしていた。

しかし、その裏切りがケンにバレてしまった佐久間は、ビルの屋上から突き落とされ消されてしまう。

斯波宗典

「フォレスト・ガーデン」で働く介護士の斯波宗典は、痴呆になった父の介護をしたことで、その大変さを身をもって知っていた。

綺麗ごとでは済まされない介護の重さと人間の尊厳を学んだ斯波は、父が亡くなったあと、すぐに介護ヘルパーの資格を取り、フォレストの求人募集に応募したのだった。

フォレストは処分されてしまったが、「やるべきことはやる」と、斯波は懸命に働き続けた。

事件発覚

あるとき大友は、亡くなった佐久間が残したUSBのデータから、部下の椎名と共に「フォレスト」の施設利用者が大量に亡くなっていることを知った。

要介護の老人たちは、煙草から抽出したニコチンを注射され亡くなっていた。

さらに、死体の発生日時を詳しく調べていくと、ある介護士のシフトの休みと変死体発生に相関性が見られた。

犯人?

斯波はある日、介護事業所長・団啓司が施設利用者の自宅の合い鍵を作っていることを知った。

斯波は団が休みの日に、待ち伏せをひて利用者の家から出てきたところ声をかけた。

「団さん。ずっと見てました。梅田さんの家で何をしていたのですか?」

「あ…。いや…。」

そして団は、斯波の頭めがけて鉄の塊を振り下ろした。

真犯人「彼」の正体は?

先ほどの状況から、団が99%犯人だと思われでしょうが、実は団は犯人ではなく、読者はミスリードされていました。

団は管理職であったが給料は安く、生活の苦しさやストレスから、利用者の家に忍び込み金品を盗んでいただけで、高齢者たちを殺してはいなかった。

では、真犯人は誰か?

それは、団を見張っていた斯波宗典だった。

動機

大友らのデータ分析により逮捕された斯波は、「僕がやったことは介護です。ロスト・ケア(喪失するための介護)です。要介護老人を殺すことで、彼らと彼らの家族を救った」と取り調べで語った。

父の介護を経験した斯波は、30代でありながら、総白髪で老人のような風貌になっていた。

斯波は父も殺したがバレることは無かったため、自分と同じ境遇の家族を看病疲れから解放するため43人を毒殺していた。

大友は「死をもって救うとは まやかしだ」とやり場のない怒りをぶつけるが、斯波は、

「検事さん、あなたがそう言えるのは、絶対穴に落ちない安全地帯にいると思っているからですよ。あの穴の底での絶望は、落ちてみないと分からない。もしも死が救いでなく諦めだとしたら、諦めた方がましだという状況を作っているのはこの世界だ!」

と語った。

フリーターで穴の縁ギリギリを歩いてた斯波は、父が倒れ、介護という一押しで穴に落ちてしまった。

大友は斯波の動機を知るうちに、

殺人は絶対的悪で、それを裁く法律は絶対的に正しいのか。法律のもとに人を殺す「死刑制度」は殺人ではないのか。平和に見える日本社会のエアポケットに落ちた人々に、安全地帯から綺麗事を言う人間こそが悪なのではないのか。

という問いを突き付けられる。

そして、大友の耳には、かつて自分が犯罪者に向けた「悔い改めろ!」という言葉が、自分に向けられていることに気づいた。

映画『ロスト・ケア』キャスト相関図は⇒こちら

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『ロスト・ケア』感想

物語のなかで、

人口推計というのは、十年、二十年くらいなら大きく外れることはまずないんです。今、高齢化だなんて言ってますけど、こうなることは二十年、いやもっと前に分かっていたんです。

という話が出てきます。

「高齢化」という問題がある程度分かっていながら、解決せずに放置してきたツケが、私たちに回ってきている現実。

日本では平均寿命と健康寿命の差は、男性では約9年、女性では約12年と言われています。

つまり、その年数が介護に必要になってきます。

蓄えがあれば、良質な介護施設に入れますが、お金がない人はデイサービスなどを受けつつ家族の世話になるしかありません。

もっとお金がなく家のない人は、生活保護も受けられず、わざと犯罪を犯し刑務所に入りたがる老人もいるそうです。

一昔前には「家族介護」が美風とされていましたが、実際には家族の負担は大きく、介護が原因で鬱やノイローゼを発症するなど綺麗ごとでは済まされない部分があります。

トイレ介助、食事の介助、風呂の介助…認知症の患者の場合は、世話をするたびに「殺される」と叫ばれ抵抗され、時にはセクハラを受け、暴力を振るわれる。

どんなに誠意を尽くし笑顔で受け流しても、感謝されることなく悪人扱いされる日々は、介護者にとってまさに地獄です。

介護対象の相手を殺してしまいたいけれど、できない現実。

そんな彼らを地獄から救うために、代わりに手を下した犯人。

現実に起こった、相模原の施設での事件や医師による安楽死事件も思い起こさせます。

冒頭で登場した

「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい」

という言葉が、終盤になって胸に刺さります。

しかし、あえて私は「死は救済」以外の道があると信じたいですし、模索していきたいと思いました。

介護現場の盲点をついた『ロスト・ケア』は、年老いた親がいる人、いつかは老いる人々全ての方に読んでもらいたい一冊です。


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