『夜、鳥たちが啼く』ネタバレ!原作の結末と映画との違いは?

邦画

1990年に自ら命を絶った不遇の作家・佐藤泰志の連作短編集『大きなハードルと小さなハードル』のなかの『夜、鳥たちが啼く』を読みました。本作は、夫に裏切られ、転がりこんできた子持ちの女性と孤独な男性との関係を繊細に描いた物語で、山田裕貴さんと松本まりかさん共演で映画化も決定している注目作です。そこで今回は、『夜、鳥たちが啼く』のあらすじからネタバレと感想をご紹介いたします。

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『夜、鳥たちが啼く』あらすじ

25歳の慎一が住む借家に、友人の妻・裕子(28歳)が3歳の息子・アキラを連れて転がり込んできました。

とはいっても同棲ではなく、借家の母屋に裕子とアキラが、その横に建てられたプレハブに慎一が生活しています。

裕子の夫だった邦博は、慎一の大学時代からの友人で、今は別の若い女性と暮らしているようでした。

家賃を折半し、互いに干渉しない生活に不満はなかった慎一ですが、裕子が男遊びしていると知り心がザワつきます。

ある夜、また男を漁り終えてフラフラと帰宅した裕子を見かけた慎一は、彼女を自分の住むプレパブに誘いました。

そして二人は、これまでの距離感が嘘だったように、朝まで3度も関係を持ちました。

『夜、鳥たちが啼く』ネタバレ

一線を越えてしまった二人ですが、これまでの関係は表面上は変わりません。

しかし、慎一は

僕はふたりがあの借家から実際にいなくなることを考えたくはなかった。

と思うほど、裕子に惹かれていました。

だからといって、慎一は裕子に求婚するわけでもなく、この居心地の良い共同生活をできるだけ長く続けたいと願うズルイ男でもありました。

一方、裕子は関係を持ったことで慎一と再婚したいと思うのではなく、約束通りに新しい家を探して出ていく決意をしていました。

夫に裏切られた裕子は、もはや男性に何も期待はしていなかったのです。

裕子とアキラが自分から離れていこうとしていることを知った慎一は、ついに

「結婚もしてないのに、別居だし、家庭内離婚だ。おもしろいじゃないか。そんなふうに暮らしていかないか。どうだい」

と自分の気持ちを伝えます。

「あたしはもう結婚は厭(いや)よ。知ってるからあんたは今そういったんでしょうけど。きっと他人にはいいかげんな、気楽な、今時の若い者に見えるし、その分、こっちは気楽じゃないわよ。あんたの両親だって…」

ある日突然、25歳の男のところにやって来て、そのまま住み着いた子持ちの女。

確かに、慎一の両親や近所の人は「結婚はしないのか?」「籍は入れないのか」と事実婚を認めてくれないかもしれません。

しかし、慎一はそんなことよりも裕子とアキラとの、この生活を手放したくないと思ったのです。

自然に、なるようになるものがあればそれでいい。

そう決意した慎一の心は自由でした。

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『夜、鳥たちが啼く』感想

『夜、鳥たちが啼く』タイトルの意味

物語の序盤に、慎一が幼稚園にあるドーム式の鳥かごを覗くシーンが登場します。

ギンケイやキンセイがせかせか地面を動き回り、止り木には大型インコが並んで、咽をぐつぐつ鳴らしたり、ドームの金網を嘴(くちばし)で突いたりしている。どうしたわけか、こいつらは夜、眠らない。不眠症の鳥たち。

ふつうであれば夜 寝るはずのインコが、活発になるというのは、なんだか不気味ですよね。

この普通でないインコたちは、どこか慎一たちと重なります。

結婚しないまま奇妙な共同生活をおくる慎一と裕子は、狭い田舎では噂の的。

常識に背いて生活する慎一たちは、世間一般から見ると、夜に啼く鳥たちと同じく普通ではない存在です。

ラストでは、慎一と裕子、アキラがゴルフ場のフェンスのなかで花火を眺めるシーンがあります。

幼稚園の鳥たちは、今夜も啼くだろうか。

昼間は好奇の目に晒される慎一でしたが、この夜の花火大会では鳥かごのインコたちと同じように解放されます。

親や近所のしがらみを忘れ、自分たちらしく生きていこうとする慎一たちは、多様性を認めようとする現代の私たちにもにも刺さりますね。

感想

物語は、慎一と裕子の核心に触れない煙に巻くような会話文で進行していきます。

20代の若者とは思えないほど達観した二人には、人生に疲れるにはまだ早いよ…。と言いたくなります。

また、籍を入れずに事実婚を選択することは、そこまで世間の常識から外れることなのか?

確かに、親くらいは結婚を反対するでしょうが、後ろ指を指されるほどの罪はないなぁ。と、今の時代とは少しズレたものを感じました。

しかし、今より40年ほど前ならば、周りと違う人生を選択することは珍しく、慎一の性格からしても、かなり勇気がいることだったことは想像できます。

登場人物は、自分のことを多くは語りませんが、生々しい感情を含んだ文体からは、それぞれの人物の気持ちの揺らぎが感じられる作品でした。

焦燥感と微かな希望を含んだラストシーンは、心地よい余韻を残して良かったです。

作者・佐藤泰志

作者の佐藤泰志さんは、社会の底辺でもがき苦しみながら生きる人々の生活を描いた函館出身の小説家。

芥川賞に5度、三島賞に1度 候補に挙がりながら受賞を逃し、41歳という若さで自ら命を断った不遇の作家です。

主人公の男性が「いらだち」や「焦燥感」を抱えていることが多いのも、たぶん、佐藤さん自身が投影されているからでしょう。

近年は、『そこのみにて光輝く』『オーバーフェンス』『きみの鳥はうたえる』などの作品が、20年以上の時を経て次々と映画化され再評価されています。

映画『夜、鳥たちが啼く』

山田裕貴さん、松本まりかさん共演で、城定秀夫監督で映画化される『夜、鳥たちが啼く』は、12月9日(金)に公開されます。

映画では原作と少し(だいぶ)違って、主人公の慎一は小説家。(原作ではコピー機のセールスマン)

同棲中だった恋人に逃げられ、鬱屈した日々を抱える青年だそう。

一方、裕子は親として強くあろうとする孤独な女性で、息子のアキラは、父親に去られ深く傷つき、唯一母親以外の身近な存在となった慎一を慕うという設定のようです。

小説のなかでは、アキラが慎一に懐いている描写はなく、どっちかというと大人びた対応をしているという感じでした。

ファンとして映像化はもちろん嬉しいですが、多くは説明せず、かすかに揺れ動く感情を読み取れるような瑞々しい描写は残して欲しいなと願います。

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