『怪物の木こり』ネタバレ!あらすじ~結末を相関図付きで解説
小説『怪物の木こり』は、サイコパスVS猟奇殺人鬼というB級映画さながらの設定と「あっ」と驚くようなトリックで「このミステリーがすごい! 」大賞受賞したサイコ・スリラーです。そこで今回は、亀梨和也さん主演で映画化もされる『怪物の木こり』のあらすじ~結末をご紹介いたします。
『怪物の木こり』登場人物&相関図
◆登場人物
◆二宮 彰・・・29歳。弁護士。サイコパスで意に反する人間は冷酷に処分する。児童養護施設出身。
◆荷見映美・・・24歳。二宮が顧問を務める不動産会社の社長令嬢。
◆杉谷九朗・・・二宮の高校の同級生で二宮の本性を知る唯一の人物で協力者。親が経営する杉谷医院の脳神経外科医。サイコパス。
◆戸城嵐子・・・品川署捜査一課の刑事。脳泥棒の真相を追う。
◆乾 登生・・・嵐子の相棒刑事。以前に担当した元容疑者の剣持を今でも監視している。
◆栗田・・・科捜研のプロファイラー。脳泥棒のプロファイリングを行う。
◆北島信三・・・当時、静岡児童連続誘拐殺人事件を担当した刑事。現在は引退している。
◆剣持武士・・・妻の咲を保険金目当てで殺害したと疑われた元容疑者。妻の件は事故として処理された。
◆渡辺伸夫・・・剣持の妻・咲の父親。
◆東間 翠・・・静岡児童連続誘拐殺人事件の犯人。脳神経外科医。26年前 誘拐した子どもの脳に脳チップを埋め込む人体実験を行っていた。
◆相関図
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『怪物の木こり』あらすじ
◆あらすじ
敏腕弁護士の二宮 彰は、意に反する人間を日常的に冷酷に処分してきたサイコパス。
ある日、仕事を終えた二宮は、マンションの地下駐車場で「 怪物マスク」を被った男に襲撃され、手斧で頭をかち割られそうになる。
頭部に損傷を受けつつも九死に一生を得た二宮は、必ず「怪物マスク」の男を探し出し復讐しようと決意する。
一方その頃、世間では殺害後に頭部を損壊して脳を持ち去るという「脳泥棒」による猟奇的事件が連続して発生していた。
捜査一課・戸城嵐子たち警察は捜査をすすめるなか、二十六年前に起こった日本の歴史上最低最悪と称される「 東間事件」が関係していることが浮かび上がってくるー。
◆東間事件とは
26年前ー。静岡県で、児童連続誘拐殺人事件という日本の歴史上最低最悪と称される「東間事件」が起こりました。
犯人は脳神経医師だった東間 翠で、彼女は誘拐した子どもたちに脳チップを埋め込むという人体実験を行っていました。
彼女の屋敷からは、手術に耐えることが出来なかった幼児15人の遺体と、4人の生存者が発見されました。
東間は、脳に脳チップを埋め込むことでサイコパスの神経回路を持った子どもを生み出し、児童養護施設に送り込んで、大人になるまで観察するという恐ろしい計画を実行していたのです。
◆二宮の変化
二宮は、「怪物マスク」の男に襲われて頭部を怪我して以来、自分のなかに ある変化が起きていることに気づきました。
これまで、人の命を奪うことに罪悪感を持たないどころか、人に共感することさえ出来なかった二宮ですが、なぜか最近は虐待する子どもを見ては動揺したり、映画を観ることが好きになりました。
さらに、利害関係の一致から互いに形だけの交際をしている荷見映美に対しても、温かい気持ちが芽生えて始めていました。
二宮のサイコパス仲間である脳神経外科医・杉谷九朗が彼の脳のCTを撮影したところ、原因は二宮の頭に埋め込まれた脳チップの故障であることが判明します。
実は二宮は、 「東間事件」の被害者で、彼のサイコパスな思考は脳チップによって人工的に作られたものだったのです。
損傷を受けた二宮の脳チップが機能しなくなったことで、彼は本来の共感能力を取り戻しつつありました。
◆「脳泥棒」を捜査する警察
一方、警視庁捜査一課の刑事・戸城嵐子たち警察は、殺害後に頭部を損壊して脳を持ち去るという「脳泥棒」の捜査をすすめていました。
そして、被害者全員が児童養護施設に出身で、性格や行動に問題があることや被害者の一人には脳チップが埋め込まれていた事実を突き止めていました。
脳泥棒は快楽を求めて脳を持ち去ったのではなく、脳チップを狙って脳を盗んでいるのではないかー。
脳チップが絡んだ過去の事件といえば「東間事件」しかなく、被害者たちは、あのとき東間に誘拐された子供たちであることが分かってきました。
『怪物の木こり』結末をネタバレ
◆人質
二宮も「脳泥棒」と「東間事件」の関連に気づいた頃、彼の携帯にメールが送られてきました。
そこには、口元をガムテープでふさがれて寝転がる荷見映美の画像が貼り付けられていました。
脳チップの故障で、本来の人間らしい自分が戻ってきている二宮には映見を見捨てることなどできません。
二宮はすぐに杉谷に助けを求めて連絡しようとしますが、そこであることに気づきます。
『怪物の木こり』の絵本を取り出した二宮は、ある一節に目を留めました
「木こりさんは木こりになれる怪物じゃなくて、怪物になれる木こりなんだよ。だから、いつも木こりのすがたをしてるんだよ」
「そういえばハンスのいうとおりだぞ。ぼくは怪物じゃなくて木こりでいるときのほうがながい。ぼくは怪物じゃなくて、ただの木こりだったのか?」
怪物の木こりはきゅうにじぶんのことがわからなくなりました。
二宮は、怪物の木こりの意味が分かると同時に、「脳泥棒」の正体に気づきました。
◆犯人
深い森の中に建つ別荘に呼び出された二宮は、東間事件の最初の被害者である剣持武士が犯人だと見抜きました。
ちなみに剣持は、かつて妻を保険金目当てで殺害した元容疑者でした。
そして、その事件を担当していたのが嵐子の先輩刑事・乾 登生。
乾は剱持の容疑がはれた後も、ずっと監視していました。
かつての剣持は、自分に尽くしてくれた妻の命さえも無慈悲に奪うような凶悪な人物でした。
しかし、その事件の際に乾に殴れたことで脳チップが故障し、倫理観が復活。
自分がやったことに「罪悪感」を抱くようになっていきました。
剣持は、次第に自分の存在を憎むようになり、その矛先は自分と同じ境遇にある他の東間事件の被害者に向けられていきました。
剣持は人体実験でサイコパスになった同胞を探し出し、自分自身に対して歪んだ復讐をしていたのでした。
◆元怪物たち
ちなみに、ここから二宮と剣持の直接対決が始まりますが、読者はすでに剣持が亡くなることを知っています。
この小説では構成上に時間軸をずらすトリックが施されており、嵐子はすでに剣持の遺体を確認して、彼の脳を盗んだ真犯人(二宮)を探していることが明らかになっています。
話を戻して、二宮は剣持に「妻・咲の父である渡辺伸夫を人質にとっている」とハッタリをかまし、その隙に背後にまわった杉谷が注射器を剣持の首に刺しました。
元怪物で人間の心を取り戻しつつある二宮は、同じ境遇の剣持に「人間に戻ってよかったと思うのか?」と質問をしました。
剣持は、生前の妻の気持ちを知ることができたことで、 幸せの意味を知れたが、同時に絶望を感じたと答え、
「いずれ、お前はあの映美という女を殺すだろう。そんなことはしないと思っているだろうが、きっとそうなる。だから、そうなる前に自ら命を断て。わかったか?」
と二宮に忠告をしました。
そして最後は剣持の望み通り、彼の頭めがけて二宮が斧を振り下ろしたのでした。
◆結末
二宮が剣持を葬ったことで、連続して起きていた「脳泥棒」の事件は幕を閉じました。
映美も無事に救いだし、警察にもマークされずに済んだ二宮は見事に勝利しました。
そして二宮は、剣持の脳から回収した脳チップを自分の壊れた脳チップと交換できることになりました。
これで、以前のようなサイコパスに戻ることができます。
しかし二宮は、「サイコパスに戻るか? それとも普通の人間になるのか?」迷っていました。
彼の頭のなかでは、歌を歌う映美の姿が浮かび、『幸せ』に触れたことで その身を焼いた剣持の言葉が思い出されていました。
そして「幸せを恐れない」。
そう決心した二宮は「 手術はしない。俺は怪物には戻らない」と杉谷に伝えたのでした。-END-
『怪物の木こり』感想
最初は、サイコパスVS脳泥棒、斧、人体実験というB級の臭いがプンプンな設定ということで期待はしていませんでしたが、2つの視点で進行する物語や構造のトリックなど意外に凝ったお話でした。
文章の粗さや医学的な説明の薄さはありつつも、ジェットコースター的な展開でツッコミを入れる隙を与えず、強引に最後まで持ってかれた印象です。
脳泥棒と二宮の姿を想像すると、ジェイソンに狙われるレクター博士に見えてくるから面白いwww
また「怪物の木こり」というシュールで残酷な童話が、ストーリーのアクセントになってました。
「オズの魔法使い」に出てくる「ブリキ」の木こりは、人間の心が欲しくて旅をしますが、その設定を参考にしているのでしょうか。
猟奇的なシーンも多いですが、童話の要素のおかげか?最後はハートウォーミングな着地に成功しているところも珍しい作品です。
サイコパス仲間の杉谷九郎の人物像や二宮と映美とのその後、「いつかお前は恋人を殺す」は現実となるのか?など気になる部分も残されているので、ぜひ続編も見てみたいです。
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