『花腐し』ネタバレ!映画原作のあらすじから結末
芥川賞受賞作『花腐し』が、綾野剛さん、柄本佑さん、さとうほなみさんが出演で映画化されます。今回は原作となった小説『花腐し』のあらすじ~結末をご紹介します。
『花腐し』あらすじ
2000年に芥川賞を受賞した『花腐し』は、中年男性の悲哀を幻想的に表現した作品で知られる松浦寿輝さんによる小説です。
映画は、『共喰い』(2013)、『火口のふたり』(2019)を手掛けた荒井晴彦監督により制作されていますが、物語は大幅にアレンジされています。
タイトルは万葉集にある「卯の花、腐(くた)し」からとられたもので、適度な水分は花の美しさを引き出しますが、長雨の中で卯の花は腐っていくことを歌ったものです。
ここからは、主に小説の方のあらすじ~結末を簡単にまとめてみました。
◆『花腐し』あらすじ
栩谷は、共同で経営していた友人に騙され、倒産寸前のデザイン会社の借金を背負うことになった。
「あなたは傘の差し方もしらない人なのね」
ぼんやりと過ごす日々のなかで栩谷の頭に浮かぶのは、10年以上も前に亡くなった恋人の祥子のことばかり。
そんななか栩谷は、暴力団と五十歩百歩のようなことをやっている小さな消費者金融の社長の小坂から、借金返済と引き換えに ある仕事を頼まれる。
その仕事は、小坂が所有している取り壊しが決定した古アパートに居座る男・伊関を立ち退かせることだった。
アパートの部屋を訪れた栩谷は、伊関が部屋でマジックマッシュルームを栽培し、若い女に与えて良いようにしていると知る。
現実と過去と幻想が入り混じるなか、栩谷のなかに再び祥子が現れ囁く…。
『花腐し』登場人物
◆栩谷・・・恋人も仕事も失い、鬱屈した日々をおくる男。46歳。
◆伊関・・・栩谷が立ち退きを迫るアパートの住人。怪しげなキノコ栽培。
◆翔子・・・栩谷の2年ほど同棲した恋人。海に入水して亡くなる。
◆アスカ・・・伊関の部屋にいた若い女。水商売をしている。
◆小坂・・・新宿の小さな消費者金融の社長。所有してるアパートに住む伊関を立ち退かせるよう栩谷に頼む。
『花腐し』結末をネタバレ
栩谷は、マジックマッシュルームによって幻覚症状が現れた女を横目に「これはこいつの問題だ。おれには関係ない」と、古アパートを出て夜の歌舞伎町を向かいました。
祥子の幻想を追いもとめるうちに、目についた小料理屋に飛びこんだ栩谷でしたが、そこに伊関と先ほどバッドトリップしていた若い女・アスカもやってきました。
アスカが店に出勤したあと、酔いのまわった栩谷は伊関のアパートで飲み直すことにします。
伊関とウィスキーを飲んで酩酊した栩谷は、マジックマッシュルームの臭気のせいもあり、気持ちが悪くなって眠ってしまいます。
夢と現実をさまよう栩谷のうえに、アスカが覆いかぶさり、裸の体を重ねてきました。
バッドトリップした栩谷は、新宿一帯が炎に包まれて自分の体にも火が移り、やがて腐敗してく幻覚を見ます。
それから祥子と出会った頃の記憶が蘇り、深い眠りにつきました。
栩谷が目を覚ましたときには日が暮れかかっており、部屋には誰もいませんでした。
古アパートを出て階段をおりて上を見上げると、踊り場に祥子の幻影がみえました。
栩谷は彼女を追うように、降りてきた階段をまた上りはじめるのでした。
『花腐し』感想
「腐敗していく性と生」がテーマらしいですが、雨、怪しげなキノコ、むせるような腐敗臭が漂うじっとりとしたお話でした。
文学的で少々難解なところもありつつ、人生を投げ出した男の徒労感や哀愁が漂い、洗練された文面にはセンスを感じました。
登場人物ではダメダメ中年男よりも、俗っぽいアスカが人間味があって魅力的なキャラクターでした。
それにしても、綾野剛さん主演の映画とは内容がだいぶ違いますね。
映画は、
斜陽の一途にあるピンク映画業界。栩谷は監督だが、もう5年も映画を撮れていない。梅雨のある日、栩谷は大家から、とあるアパートの住人への立ち退き交渉を頼まれる。その男・伊関は、かつてシナリオを書いていた。映画を夢見たふたりの男の人生は、ある女優との奇縁によって交錯していく。
というあらすじ。
映画の内容を期待して小説を読むと「マジックマッシュルーム?なんじゃそら?」となりそうですのでご注意を。
とはいえ、刹那的、倒錯的な湿度高めの世界観は表現されていると思いますので、映画で気になった方は小説の方も手にとってみて下さい。
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