『朽ちないサクラ』ネタバレ!あらすじ~結末を相関図付きで解説

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柚月裕子による小説『朽ちないサクラ』は、親友を失った県警事務員が独自に事件を捜査し、真相にたどりつくまでを警察組織の内情と公安警察との関係を交えながら描いた警察ミステリーです。今回は映画化も決定した『朽ちないサクラ』のあらすじから結末をご紹介いたします。

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『朽ちないサクラ』あらすじ

米崎県警の広報課の事務員をしている森口 泉は、市民からの苦情対応に追われていました。

平井中央署生活安全課が、ストーカーにあっていた女子大学生の被害届の受理を先延ばしにし、慰安旅行に出かけた2日間にストーカー殺人が起こってしまったからです。

この不祥事は米崎新聞がスクープとして報じ、世間は警察の怠慢を激しく非難しました。

警察署内では、なぜ米崎新聞だけが慰安旅行の件を知って報道できたのか?警察内部の誰かが情報を漏らしたのではないか?という疑惑が持ち上がります。

実は泉には心当たりがありました。

少し前に泉は、警察学校時代の同期で生活安全課で働く磯川俊一から慰安旅行の土産をもらい、親友で米崎新聞記者の津村千佳にお裾分けした際、口を滑らせてしまったのです。

泉は千佳に、口止めしたのに裏切ったと問い詰めましたが、千佳は「信じて。私じゃない。この件には何か裏があるような気がする」と話しました。

気まづいまま二人が別れて1週間後ーー千佳の遺体が川で見つかります。

肺のなかの水の成分から、千佳は自殺ではなく他殺の可能性が濃厚となり、警察は親友で事件前にも合っていた泉にも疑いの目を向けます。

上司の富樫も同席し、泉への事情聴取が捜査一課の梶山によって行われました。

泉はこれまでの千佳とのやりとりを正直に話すかわりに、捜査の進捗情報を教えて欲しいと頼みました。

泉は千佳の無念を晴らすため、同期・磯川と共に独自で千佳の事件の捜査を始めると、徐々に一連の事件の流れが見えてきました。

そしていよいよ事件への核心が迫ってきたとき、泉たちの前に大きな闇が立ちはだかり….。

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『朽ちないサクラ』登場人物&相関図

登場人物

【米崎県警】
森口 泉・・・4年前に一般職採用で県警に採用される。広報広聴課県民安全相談係の事務職員。29歳。小学生の頃に父が交通事故で亡くなり母子家庭で育つ。
富樫隆幸・・・広報広聴課の課長。以前は公安に所属するやり手だった。昔の呼び名は“公安のタカ”。
梶山浩介・・・捜査一課長。富樫と同期。津村千佳が殺害事件を捜査する。
臼澤・・・警備部公安課長、警視。梶山の4歳年下で交番勤務の頃に警察手帳を紛失した際に梶山に助けられる。
【平井中央署(通称:ひらなか)】
磯川俊一・・・生活安全課。26歳。警察学校の研修時代に泉と知り合う。泉に想いを寄せ月に一度のペースで食事するが恋人としての進展はない。
杉林正一郎・・・・生活安全課の課長。
辺見 学・・・生活安全課の5年のベテラン。35歳。相談者に真摯に向き合う誠実な職員だが、女子大生・長岡愛梨のストーカー被害に関してだけぞんざいに対応する。
百瀬美咲・・・生活安全課の臨時職員。27歳の美人。3年目の更新を行わず退職。
高田彰子・・・生活安全課の4年目の嘱託職員。磯川とは親子ほど年が違う。優しい性格で百瀬からの相談にも乗っていた。
【米崎新聞】
津村千佳・・・米崎新聞の県警担当記者。泉とは高校の同級生で親友。泉と同じく母子家庭で育つ。上司の兵藤とは不倫関係。泉と会った1週間後に遺体で発見される。
兵藤 洋・・・米崎新聞報道部のデスク。千佳の不倫相手。
【その他】
安西秀人・・・長岡愛梨を殺害した犯人。自称フリーター34歳。
神近甲永・・・宗教団体「テラス・ポース」の教祖。16年前に毒ガス事件を起こし逮捕され死刑判決をうける。

相関図

※無断転載ご遠慮ください。

◆以下、ネタバレを含みますので未読の方はご注意下さい。

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『朽ちないサクラ』結末までをネタバレ

もう一つの悲劇

磯川は、事件1週間の千佳の行動を調べ、彼女が小先市を訪れたことを知りました。

磯川は、同じ生活安全課の臨時職員として働いていた百瀬美咲が小先市出身だと突き止めます。

嘱託職員で百瀬の相談にのっていた高田は、司の 杉林課長不倫関係の末に捨てられ、雇用契約の更新をせずに退職していたことを明かしました。

小先市にある百瀬の実家に向かった泉と磯川は、百瀬が自殺したと彼女の父から告げられました。

百瀬は杉林課長への復讐のため米崎新聞のデスクの兵藤 洋に会い、平井中央署の慰安旅行の日程を教えたことも分かってきました。

しかしなぜ、自殺当日にハローワークにも通っていた形跡のある百瀬が、自ら命を絶たなければならなかったのか?

泉は米崎新聞のスクープに関係していた二人が、同時期に亡くなったことは無関係ではないと考えました。

カルト教団の影

泉は、千佳は自分の濡れ衣を晴らそうと情報漏洩をした百瀬に接触しようとしていたことをを富樫に報告しました。

富樫は、その情報の代わりとでも言うように、女子大生ストーカー事件の犯人である安西がカルト教団・ソノフの信者だったことを教えました。

そんななか、ストーカー事件の被害届の受理を引き延ばしてた辺見 学が生活安全課を突然退職しました。

磯川は、いつも相談者に真摯に対応していた辺見が、なぜ女子大生のストーカーの件だけ冷たく対応していたのか不思議に思っていました。

辺見がソノフから何らかの圧力を受けていると推測した磯川は、彼に事情を聞くと「もう、何を信じればいいのかわからない。世の中には、知らない方がいいこともある」という言葉を残し去っていきました。

サクラ

泉はすぐに、辺見が辞職したことを富樫に伝えると、富樫は警察官が辞める理由は、自分の職務に失望するときと警察組織に不満や疑問が生じたときだと答えました。

すると、その場にいた捜査一課の梶山は、「サクラ=公安警察」が絡んでいるのではないかと呟きます。

梶山の言葉から、泉は辺見に圧力をかけていたのはソノフではなく公安警察ではないかと推測します。

ソノフは、ストーカー殺人の犯人が信者だと世間に分かれば、都合が悪いと考えて、千佳や百瀬を消したとも考えられます。

そんななか、富樫はかつて所属していた公安から、カルト教団ソノフの信者の極秘リストを梶山に手渡しました。

梶山は、すぐに千佳が殺害された近辺のNシステム(自動車ナンバー自動読取装置)を調べ、不審なレンタカーを発見します。

車を借りたのは、ソノフの信者でコンビニバイト店員の浅羽弘毅という男でした。

彼が犯人だと確信を持った梶山は、部下に浅羽を引っ張るように指示しますが、なんと浅羽はバイトに行く途中に交通事故で亡くなってしまいました。

その後、警察の捜査により浅羽のパソコンからは千佳を監視した形跡が残されており、千佳の毛髪も見つかりました。

こして一連の事件は、被疑者死亡のまま書類送検となり、犯人は裁かれることなく終わりを迎えました。

黒幕

泉は千佳の母親に事件の報告をしました。

すると千佳の母親は、娘の事件の1週間前にどのように過ごしていただけでも知りたいと話しました。

泉は梶山に頼み込み、浅羽のパソコンに残されていた千佳の行動記録が記された紙を手に入れました。

すると、浅羽が米崎新聞が警察の不祥事を報じた日から千佳の行動をマークしていたことに気づきます。

スクープが報じられた夜、泉は千佳と店で会い情報漏洩の件について問い詰めました。

この時点で、千佳が特ダネのネタ元を調べようとしている事実を浅羽が知っているわけがありません。

自分と殺された千佳が会っていたことを知っている数少ない人物といえば、磯川、富樫、梶山しかいません。

そして泉は、かつて“公安のタカ”と呼ばれた富樫が黒幕だと気が付いたのでした。

結末

親友の千佳、百瀬は命を落とし、被害者二人の不倫相手だった兵藤と杉林は左遷、辺見は辞職に追い込まれ、それぞれの遺族たちには深い悲しみが残りました。

多くの人々が苦難をむかえるなか、カルト教団の逮捕劇を演じた公安警察だけが“利”を得ました。

泉は富樫を小料理屋に呼び出し、女子大生ストーカー殺人の犯人・安西と事故死した浅羽は、カルト教団の信者であり、公安のスパイだったのではないかと質問しました。

コンビニのアルバイトだった浅羽が、車を所有しギャンブルをするほどの金があったのも公安から金を得ていたからだったのです。

そして、事件の核心に迫ろうとしていた千佳と百瀬を口封じのために消し、二人を殺した浅羽も公安が手を掛けたのだと問いました。

富樫は、安西と浅羽がスパイだった事実を隠蔽するために、泉に味方するふりをして暗躍していたのです。

泉は自分の出した結論をすべて富樫にぶつけましたが、富樫は証拠がないとはぐらかし「この仕事を辞めてもいいぞ。理不尽なことが多すぎる」と言い残し、店を出ていきました。

泉は、警察の不条理さを感じながらも、自分に何ができるのか分からないけれど何がせずにはいられないと感じました。

そして、警察職員を辞めて、試験を受け直して、犯罪捜査に関わる警察官なろうと決意するのでした。-おわりー

『朽ちないサクラ』感想

『朽ちないサクラ』は、親友を失った県警事務員が独自に事件を捜査し真相にたどりつくまでを、警察組織の内情と公安警察との関係を交えながら描いたサスペンスです。

犯罪捜査に関わることのない警察事務員が、巨悪に立ち向かっていく姿や、警察の行きつけの店の細かな描写などは柚木ワールド全開。

一方で、全く関係のなさそうな被害者ともう一人の被害者が繋がり、カルト教団も絡んでくる展開には興味をそそられましたが、ラストは少し尻つぼみに感じました。

二人を殺害した犯行の動機もちょっと弱い。

ある意味、公安警察が暗躍していたという結末はリアルといえばリアルですが、それならば富樫をもっと追い込んで正当に裁いて欲しかったです。

泉がもう一度警察官になると締めくくられていたので、シリーズ化を見越しての終わり方だったのでしょうね。

単なる決意表明ではなく、“国家のためなら個人の犠牲があっても仕方ない”という公安の考えを覆すような、泉の活躍を次回はぜひ見ていたいです。

中途半端な関係の磯川くんとの進展にも期待!。

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