『笑うマトリョーシカ』ネタバレ!あらすじ~最終回までの結末を相関図付きで
次期総理候補が誰かの操り人形だったらーーそんな人間の心の闇を描いた早見和真さんによる『笑うマトリョーシカ』が、ドラマ化されることが決定しました。そこで今回は、ロシアの代表的な人形になぞらえて二転三転する展開が魅力の『笑うマトリョーシカ』のあらすじから結末をご紹介いたします。
『笑うマトリョーシカ』あらすじ
高校の同級生・鈴木俊哉に押し上げられるように、27歳で政治家となり40代という若さで官房長官に登り詰めた清家一郎。
イケメンともてはやされカリスマ性を備えた清家のもとに、自伝「悲願」について取材するべく新聞記者記者・道上早苗が訪れた。
取材を通して清家には中身がないと感じた道上は、彼の出自や高校時代の友人、大学時代の論文、恋人などを調べていき、隠された過去に迫る。
そして、これまで清家がスポットライトを浴びるタイミングで、彼に関わる人物が交通事故で亡くなっていることを突き止めた。
果たして、清家は誰に操られているのかーーいくつも起こった不審な事故の真相はーー。
『笑うマトリョーシカ』登場人物&相関図
◆登場人物
◆清家一郎・・・松山の名門高校福音学園出身。二十七歳で代議士・武智の地盤を引き継ぎ政治家となる。
◆鈴木俊哉・・・清家の政務秘書官。清家とは高校時代からの付き合い。
◆佐々木光一・・・清家の地元愛媛で後援会長を務める。清家とは高校の同級生で、地元で親から引き継いだ小料理屋「春吉」の店主を務める。
◆和田島芳孝・・・政治家。一郎の父とされる。
◆武智和弘・・・代議士。和田島の派閥の幹部。次期総理大臣と期待されている。かつて福音学園の生徒会長を務めた。地元愛媛の遊説の際に自動車事故で亡くなってしまう。
◆羽生雅文・・・現在の総理大臣。
◆清家浩子・・・清家の母。ホステスをしていた頃に和田島と出会い、清家を身ごもり、未婚の母となる。
◆三好美和子・・・大学時代の清家の恋人。脚本家志望。
◆道上香苗・・・東都新聞記者。
◆山中尊志・・・東都新聞記者。道上の先輩で独立するにあたり道上を誘う。
◆鈴木由紀・・・・俊哉の妻。道上とは記者時代の知り合い。
◆西島君弘・・・清家が大学時代に卒論を提出したゼミの教授。
◆田所礼子・・・浩子が再婚した相手のヘルパー。
◆相関図
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『笑うマトリョーシカ』結末までをネタバレ
◆清家の卒論
清家一郎は大学時代の卒論に、ナチス時代にヒトラーのブレーンだったエリック・ヤン・ハヌッセンを題材に選んでいました。
その卒論で清家は、ヒトラーに取り入り国家まで支配しようとしたハヌッセンという人物を激しく批判していました。
新聞記者の道上早苗が、清家のゼミの教授だった西島に話を聞きにいくと、当時 鈴木俊哉は清家にかなり執着しているように見えたといいます。
また、鈴木は清家の母・浩子とも肉体関係にあり、浩子に頼まれて清家とその恋人・三好美和子を別れさせようと必死だったことが分かりました。
中身がない清家にとってハヌッセンは、鈴木と浩子で、その異常なまでの束縛に苦しんでいたのではと道上は推測します。
◆不審な事故
清家が官房長官になるまで、彼の周囲では不振な出来事がいくつか起こっていました。
●清家の大学時代の恋人・三好美和子が突然音信不通になる
●代議士・武智和弘が事故死。その結果、清家が地盤を引き継ぎ27歳で当選。
●鈴木俊哉が43歳のとき交通事故に巻き込まれる。幸い命に別状はなし。
●清家の母・浩子の最初の結婚相手・清家嘉和が交通事故死。
鈴木も事故に巻き込まれた被害者であるならば、やはり裏で清家を操り、事故に見せかけて邪魔者を消した犯人は母・浩子の可能性が高くなりました。
この謎を解くカギは、浩子と三好美和子という二人の女性が深く関係していると感じた道上は、愛媛にいる浩子と美和子の実家を訪ねることにしました。
◆清家の母の生い立ち
70歳を過ぎてもなお妖艶で若々しい清家浩子は、これまで女の武器を利用して一郎を支えてきました。
浩子の本名は、劉浩麗といい中国人の母と日本人の父の間に生まれた子どもでした。
母は戦時中に日本兵だった男に弄ばれ、子を宿したせいで故郷を追われ、皮肉にも憎むべき日本に渡ってきました。
スナックでホステスをしながら浩子を育てた母は、優しかったものの時折、日本人の男性を口汚く罵り、「復讐」という言葉を口にしました。
母の口にする「復讐」は、幼少期から浩子の心に蓄積されていき、思春期を迎える頃には自分の美貌で男をコントロールすることを覚えていきました。
超高級クラブで売れっ子となっていた浩子は、あるとき政治家の和田島芳考に気に入られ、体の関係を持ちました。
今では次期総理と評価されている和田島でしたが、実際は自分の意思というものがなく、これまで母に操られるまま進路を決め、政治家になったという男でした。
母を亡くし自信を失っていた和田島に目をつけた浩子は、今度は自分が和田島を操ってやろうと考えました。
そして、ある日 彼の子どもを身ごもります。
浩子はホステス上がりの女が和田島と一緒になることは彼の政治生命においてマイナスにしかならないと考え、結婚はせずに一郎を出産。
ホステス時代の客であった清家嘉和に近づき、母と一郎を連れて、嘉和のふるさと愛媛で暮らすことにしました。
しかし、次第に嫉妬に駆られた嘉和は、一郎や母にも辛く当たり、浩子は堪らず和田島に泣きつき助けを求めました。
その矢先、清家嘉和は自動車事故により亡くなります。
恐らく、和田島が何らかの手を打って嘉和を消したことは明らかでしたが、浩子はそれを口に出すことはせず、愛媛の家を相続し自由を手に入れたのでした。
◆清家の恋人の正体
道上、記者時代の知人である鈴木の妻・由紀と鈴木、浩子は、清家の後援会長で彼の同級生である佐々木の店に集まりました。
遅れて、浩子の精神科医で現在の夫・小松政重、小松のヘルパー・田所礼子が個室に入ってきました。
実はこの田所礼子という女性こそが、失踪した清家の大学時代の恋人・三好美和子でした。(三好美和子も偽名で本名は真中亜里沙)
当時、清家は母と鈴木に干渉され不満を募らせていました。
亜里沙は、そこに漬けこみ清家に依存させます。
そして、27歳で代議士になったら浩子を捨て、官房長官になるまでは鈴木を利用するというシナリオを描きました。
そして計画を実行するため亜里沙は自ら姿を消し、清家に愛媛の地盤を引き継がせるため愛人関係にあった代議士・武智和弘を交通事故に見せかけて葬りました。
しかし、鈴木が43歳に巻き込まれた交通事故に関しては、亜里沙は関与していないとキッパリと否定しました。
◆現在の清家を操っているのは?
道上は、浩子と亜里沙の告白を聞いたあと、官房長官になった清家に会いに行きました。
清家はこれまで操られるフリをしながら、自分は冷静だったと答えました。
「ヒトラーがハヌッセンを切ったとき何を思っていたか分かりますか?」
「そんなのわかりませんよ」
「見くびるな、ですよ。おそらくね」
軽んじた扱いを受けていた清家は復讐のため、自分を見くびっていた母、鈴木、亜里沙を彼らにとって最悪なタイミングで切り捨てたのでした。
そして清家は強引に道上との会話を終わらせ、執務室に戻ると眼下にある首相官邸を見下ろしたのでした。-おわりー
『笑うマトリョーシカ』感想
清家にとってのハヌッセンは誰か?つまり清家を操っているのは誰か?という人間の心の闇に迫った不思議なミステリー作品でしたが、面白かったです。
母や鈴木、恋人に支配されたフリをしながら、逆に彼らを利用していたのが清家だったと分かったときは、本当に背中がゾクッとしました。
生前の代議士・武智が言っていた「寝首をかかれるのは案外清家のようなタイプ。」というのも、あながち間違いではなかったと言うことですね。
次々と小さな人形が出てくるマトリョーシカになぞらえて手を替え品を替え展開される構成は見事で、自由に中身を入れ替えられる清家こそが、最後に笑うという結末も鮮やかでした。
「見くびるな」の通り、弱いと思っていた清家が憎悪をひた隠して復讐を遂げたとは…。
今 活躍している政治家が誰かに操られていても、有権者の自分たちには知りようがないことを考えると、とても恐ろしいことですね。
一方で、清家が「ホンモノ」か「ニセモノ」なのかは最後まで分かりませんでした。
「ホンモノ」と「二セモノ」の境界線というのは曖昧であり、本当の自分が何者かも分からないのに、他人を評価することなんて出来るわけないということ。
相手を自分の物差しではかり、「軽んじる」「見くびる」ことの人間の怖さや愚かさを思い知らせてくれた作品でした。
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