『イクサガミ』ネタバレ!明治初期のデスゲームの結末と登場人物&相関図
今村省吾さんによる小説『イクサガミ』は、明治の東海道を舞台に大金を目指して繰り広げられるバトルロワイヤルを描いた壮大な物語です。今回は、個性的なキャラに加え、幕末〜維新の英傑も登場して盛り上がる『イクサガミ』のあらすじ~結末を相関図付きでご紹介します。
『イクサガミ』あらすじ
西南戦争が起こった次の年の明治11年「武芸の優れた者に※金十万円与える」(※当時の巡査の初任給は4円)という怪文書が日本全国に出回り、京都の天龍寺に腕に覚えがある292人が集結した。
そのなかに、かつて剣客として活躍した28歳の嵯峨愁二郎の姿があった。
愁二郎は、コレラにかかってしまった妻子を救うために大金が必要だった。
皆が半信半疑で待つなか、「蠱毒(こどく)」というゲームのルール説明が始まり、参加者の首には各1つづつ木札が下げられた。
蠱毒(こどく)とは、蛇、蛙、百足、蛾、虱など百の虫を一つの壺に入れ戦わせるという呪術。生き残ったものは神気を帯び、それを祀ると幸運を得られるとされる。
木札には1枚=1点の価値があり、参加者はその木札を奪い合いながら東京を目指し、1か月後に選ばれし者たちから勝者が決定する。
「こどく」のルールは全部で7つ。
①銘々に東京を目指す。
②道中7か所のチェックポイントを通過すること。※下図参照
③それぞれのチェックポイントは、必要な点数がないと通過できない。
④「こどく」については他言無用。
⑤1か月後に東京にいなくてはならない。
⑥途中に逃げ出したり、首から下げた木札を外せば失格とみなす。
⑦1つでもルールを破れば処罰される。
「こどく」主催者・槐(えんじゅ)によりゲーム開始が告げられると同時に、そこかしらで木札の奪い合い=殺し合いが始まった。
そんななか、愁二郎は屈強な男たちにターゲットにされる12歳の少女・香月双葉を助ける。
さらに、参加者のなかには過去に一度対峙した因縁の相手や、恨みをかった愁二郎の義兄弟たちもおり、道中で襲いかかってくる。
果たして愁二郎は、多少の剣の心得がるものの まだ子どもの双葉を連れて、東京まで辿りつけるのか?「こどく」の目的は?
『イクサガミ』登場人物&相関図
◆登場人物
【コドク参加者】
◆嵯峨愁二郎・・・「京八流」後継者の一人で奥義「武曲」と、長男・一貫から譲り受けた「北辰」を習得。兄弟同士で戦う鞍馬での継承戦を逃げ出した過去を持つ。「刻舟」という名の剣客として戊辰戦争や上野戦争に参加するが、明治維新後は刀を捨てた生活をしていた。コレラを患う妻子のため大金が必要になる。
◆香月双葉・・・旧亀山藩士・香月栄太郎の娘。12歳。母をコレラから救うため豊国新聞を頼りに京へやって来た。
◆柘植響陣・・・元伊賀同心(忍者)。強い上方訛りがある。声色を自由に操る特技を持つ。愁二郎たちに手を組むように持ち掛ける。
◆祇園三助・・・愁二郎の弟。「京八流」後継者の一人で奥義「禄存」を習得。
◆化野四蔵・・・愁二郎の弟。兄弟のなかで一番の才能を持つ。「京八流」後継者の一人で奥義「破軍」を習得。昔は愁二郎を慕っていた。
◆壬生風五郎・・・愁二郎の弟。「京八流」後継者の一人で奥義「巨門」を習得。
◆蹴上甚六・・・愁二郎の弟。「京八流」後継者の一人で奥義「貪狼」を習得。
◆烏丸七弥・・・愁二郎の弟。「京八流」後継者の一人で奥義「廉貞」を習得。
◆衣笠彩八・・・愁二郎の妹。「京八流」後継者の一人で奥義「文曲」を習得。継承戦を逃げ出した愁二郎を憎む。
◆カムイコチャ・・・アイヌ人。本名はイソンノアシだが神の子という意味のカムイコチャと呼ばれる。図抜けた弓矢の名手。故郷の大地を和人から守ため参加。
◆貫地谷無骨・・・「乱切りの無骨」と呼ばれ、参加者のなかでも最強クラスの腕前を持つ。戊辰戦争で上官を斬りつけ追われていたが、京都・天龍寺に姿を現す。
◆菊臣右京・・・大太刀の使い手。長い髪をした一重の美形。汚名を晴らしたい者たちのために金を必要とする。花山院家に使える青侍で秘伝「太刀四十二ケ条」を習得。
◆狭山進次郎・・・元御家人の跡取り。父が営む居酒屋がコレラのせいで経営が悪化。その借金返済のため参加。剣技を持っていないため首領格の番場から脅されつつ「こどく」を進んでいく。
◆岡部幻刀斎・・・朧流の継承者。70歳位の老人。京八流の見届け一族。
◆赤山宋適・・・今治藩に仕えた医者で、武器は医療刀のメス。博打の借金がかさみ参加。
【こどく主催者】
◆槐(えんじゅ)・・・京都・天龍寺にて、「こどく」のルール説明、開始の合図を行う。
◆橡(つるばみ)・・・愁二郎を担当する。
【その他】
◆志乃・・・愁二郎の妻。この時代には珍しい女医で緒方洪庵の塾で医学を学んだ。私財を投げうってコレラに苦しむ人の治療に当たっていたが、自らもコレラに感染してしまう。
◆赤池一貫・・・四年前に亡くなった愁二郎の兄。奥義「北辰」を愁二郎に伝授する。
◆相関図
※無断転載ご遠慮ください。
『イクサガミ』結末までをネタバレ
『イクサガミ』は全3部作からなる作品で、現在「天」「地」「人」までは発行されていますが、完結となる「神」はまだ発売されていません。
今回は、「天」「地」「人」までのあらすじと結末をネタバレします。
◆以下ネタバレを含みますので、未読の方はご注意下さい。
◆愁二郎の過去
愁二郎と双葉には、義兄弟である衣笠彩八、祇園三助、化野四蔵が襲いかかり、狂気の人斬り・貫地谷無骨が執拗に追ってくる。
二人は、元伊賀同心の柘植響陣などの助けを借りながら何とか窮地を切り抜け、アイヌのカムイコチャ、大太刀の使い手・菊臣右京、とも対峙する。
かつて愁二郎は、五条大橋に捨てられていたのを師匠に拾われ、同じく拾われた義兄弟と共に鞍馬の山中で修行しながら育った。
義兄弟たち8人は最古の剣術「京八流」の継承者で99%同じことを学び、残りの1%だけ愁二郎の「武曲」彩八の「文曲」、四蔵の「破軍」などの奥義をそれぞれ習得。
ある日、師匠は8人を集め3日後に「京八流」の継承者を選ぶために継承戦=殺し合いを行うと告げた。
もし逃げ出せば、「京八流」から遥か昔に別れた「朧流」の岡部幻刀斎が草の根を分けてでも探し抹殺しに来るという。
しかし、愁二郎は血の繋がりはないとはいえ、同じ釜の飯を食った兄弟たちと命を取り合うことは出来ないと、掟を破って前日に逃走した過去があった。
今回の参加者のなかには、京八流の見届け人であり始末人でもある幻刀斎も潜んでおり、またとない機会を狙っていると考えられる。
◆暗躍する人物たち
第3チェックポイントに向かっていた愁二郎、双葉、響陣は川を渡ることになり、番場に脅され「こどく」に参加していた狭山進次郎と出会い行動を共にすることになった。
そんななか都内某所の洋飾が施された部屋では、政府関係者が集まっていた。
明治になってから横井小楠、大村益次郎などの国士が暗殺され、江藤新平、岩倉具視などの暗殺未遂が起きていた。
目まぐるしく変わる今の日本で、政治を担う英雄の命を奪われることは、国益を損なうのと同じことだった。
そこで政府関係者たちは、手強い暗殺者たちを集め、自分たちが返り討ちに合わないように殺し合いをさせ、暗殺を未然に防ごうと考えた。
思惑通り「こどく」には、己の武力に自信を持ち、政府に恨みを持つ困窮者たちが大勢集まった。
一方、愁二郎たちを救ってくれた菊臣右京は、貫地谷無骨に、斬首され亡くなってしまう。
この時点で残り84人。
◆「地」のネタバレ
東京に辿りつくまでに、参加者は最高でも9名に絞られることになっていた。
手強い相手も増え、元会津藩の薙刀使い・ 秋津楓、元イギリス軍人のラストサムライ・ギルバートらがいた。
そんななか双葉が何者かにさらわれ、追った先には愁二郎の義弟の祇園三助も姿を現し、兄弟たちが顔をそろえた。(甚六は消息不明)
そして、愁二郎は戦人塚で彩八、四蔵、三助と京八流の継承戦をするが幻刀斎に阻まれてしまう。
そこで兄弟たちは、協力して幻刀斎を討つことになった。
なんとか第3チェックポイント池鯉鮒にたどり着いた愁二郎たちだったが、最後尾で通過した罰である「黒札」を渡され、全ての参加者から標的にされる。
いち早く、「こどく」の首謀者が国家と警察だと気づいた愁二郎は、郵便局長の前島密から内務卿の大久保利通に黒幕の存在を知らせる。
大久保は初代警視総監の川路利良を使って、富士山麓の本部を落とすことを命じるが、実は、黒幕は川路利良で、三菱、住友、三井、安田4大財閥と組んで、旧時代の亡霊である士族を滅ぼそうとしていることが判明する。
その後大久保は、警察からも命を狙われてしまい、四蔵が一時助けるも紀尾井坂で討たれてしまう。
また、「こどく」のゲームの話の合間に、幕末時代の最強の少年で仏生寺弥助の子・刀夜のエピソードが挟まれる。
刀夜という少年は、何者なのか?
残り23人で三部作「人」へ続く。
◆最新巻「人(じん)」ネタバレ
弱わき者は投打され、蠱毒の参加者はぐっと数を減らして強者たちが揃った。
揃い京八流継承戦からの逃亡者を刈る幻刀斎。
響陣は黒幕本拠地へ向かい、愁次郎は、双葉と進次郎を彩ハに託して甚六を探しに行く。
ここでも蟲毒の掟を逆手に取り機転をきかせた進次郎は大活躍し、双葉も凛とした強さをみにつけ応戦する。
愁二郎は再会した甚六と一緒に戦うことになり、その後 横浜で力尽きた甚六の奥義を継承することとなる。
そして、とうとう愁二郎、双葉、響陣、彩八、四蔵は東京へとたどり着き、参加者は9人に絞られた。
次巻「神」へ。
『イクサガミ』感想
『イクサガミ』は、次々に現われては消えていく強くアクの強い登場人物たちと、バトルシーンの疾走感、没入感が素晴らしい作品です。
バトルシーンは往年の少年ジャンプのようと思ってたら、漫画化されてましたwww
幕末の剣客、アイヌ民族、碧眼の騎士などメインキャラの華麗な技はもちろん、一見、足手まといになるような双葉や進次郎が活躍を見せたりするのでワクワクします。
そして、なんといっても第2の主人公ともいえる人斬りサイコキラー貫地谷無骨と戦う爺さん幻刀斎の圧倒的な武力は恐ろしすぎる。
三助が命がけで伝えた幻刀斎の弱点=骨がないってどういうことなんだろう。少年・刀夜は、無骨の少年時代?
また大久保利通や前島密など実在する歴史上の人物が登場しますが、現実離れするより重厚感が増しているのがこの物語の凄いところ。
単純な剣戟バトルだけでなく、電報などを使った情報戦など文明開化を匂わせる描写も良い。
あとは、ここまで広げた大風呂敷をどう着地させていくのか(道中はまだ浜松当たりなのに本当に4巻で追わるのか?)楽しみです。
この記事へのコメントはありません。