『少年と犬』あらすじから結末をネタバレ 犬を愛するすべての人に捧げる感涙作!

●記事内にPRを含む

直木賞受賞作の『少年と犬』は、東日本大震災で被災した犬が、出会う人々に無償の救いを与えながら、東から西へと旅をする物語です。今回は、映画化も決定した感動作『少年と犬』のあらすじから結末をご紹介します。

-Sponsored Link-

『少年と犬』あらすじと結末をネタバレ

『少年と犬』は、震災で飼い主を失った多聞(たもん)という雑種の犬が、東北から西に向かって旅をする物語です。

(多聞の名前の由来は、さまざまな福徳を招くご利益がある多聞天からきている)

道中で多聞は、犯罪に加担する男、うまくいかない夫婦、底辺に墜ちて殺人を犯す女、余命いくばくの老人という5組の人物に出会い、大切にされながらひと時生活を共にして、ある場所を目指していきます。

◆以下ネタバレを含みますので、未読の方はご注意下さい。

男と犬

中垣和正・・・震災で仕事と車を失い、不良だった先輩の元で盗品の配達の仕事をもらっている。
中垣麻由美・・・和正の姉。仕事を辞め認知症の母の世話をする。
ミゲル・・・外国人の窃盗団の一人。

中垣和正は、仙台のコンビニの駐車場で、「多聞(たもん)」という首輪をつけた犬を拾い、母のドッグセラピーも兼ねて飼うこうとにする。

ある日、外国人の窃盗団の運転手を頼まれた和正は、守り神として賢い多聞を犯行現場に連れていった。

計画は成功し、外国人の窃盗団にいたミゲルは多聞をいたく気に入り、100万円でゆずって欲しいと和正に持ち掛けるが、家族の一員となっていた多聞を手放さなかった。

そんななか、次の犯行にも参加することになった和正は、窃盗団を連れて逃げる途中に事故にあってしまう。

亡くなる寸前、和正はこちらに駆けてこようとする多聞を抱き上げるミゲルを見つけ、「ごめんよ、母さん、姉ちゃん」と呟き息を引き取った。

泥棒と犬

ミゲル・・・外国人の窃盗団の一人。多聞を連れて新潟に向かう。
ハーミ・・・トラック運転手。

ヤクザに終われ犬を連れて逃げたミゲルは、多聞に子どもの頃に懐いていた犬の名前「ショーグン」と名付けた。

新潟から船で国外に逃げようと考えたミゲルは、ヒッチハイクを思いたちハーミという外国人が運転するトラックに拾われる。

ミゲルは多聞と行動しながら、ゴミ捨て場を彷徨っていた貧しい少年時代を思いだし、「ショーグン」に助けられていたことを思い出した。

目的地に到着したミゲルだったが、多聞が仲間を探そうと南に行きたがっていることに気づき、首輪からリードを離してやった。

多聞は振り返りながらも、全力で駆け出していった。

その夜、ハーミはニュースで新潟港で身体に複数の切り傷がある身元不明の外国人の遺体が発見されたと知り、「アディオス、アミーゴ」と呟くのだった。

夫婦と犬

中山大貴・・・山スキーのトップランナーとして返り咲きたいと思っている。
中山紗英・・・大貴の妻。定職につかず趣味を優先する夫にウンザリしている。

富山県に住む中山大貴は、登山道でトレーニング中に熊から救ってくれた犬を拾って家に帰った。

妻の紗英は、犬の世話を押し付けられ、いつも勝手な大貴に腹を立てたが、犬がとても賢いことが分かり家族の一員として迎えた。

大貴はトンバ、紗英はクリントとそれぞれ名付け、毎日 犬に夫婦の愚痴や悩みを相談していた。

ある日、大貴はトレイルランニングに多犬を連れて行きますが、崖を滑落してしまう。

山岳救助隊が出動するも、大貴は遺体で発見され、紗英は「死んでほしかったわけじゃない」と呟いた。

そして、クリントはそのまま戻ってくることはなかった。

娼婦と犬

美羽・・・デートクラブで働く24歳の女性。
晴哉・・・美羽の元恋人。美羽が稼いだ金を持って失踪した。
木村・・・晴哉に金を貸している男。美羽に借金返済を迫る。

仕事帰りに滋賀県の林道を走っていた美羽は、道路に横たわる怪我をした犬を見つけた。

動物病院に連れていくと、犬のふとももに刃物でえぐられた傷があったものの命に別状はなかった。

治療を終えたら保健所に引き取られると聞いた美羽は、犬を引き取り「レオ」と名付けた。

美羽には晴哉という恋人がいたが、彼はギャンブル依存症のため美羽の稼いだ金を持って半月前に姿を消していた。

そして、最近 晴哉に金を貸していた木村という男が、美羽にその借金の肩代わりをしろと迫ってきた。

実は美羽は晴哉をナイフで刺して殺し、山に埋めていた。

競馬で大穴を当てた晴哉は、美羽に金を返すどころか別の女性にステーキをごちそうしていたのだった。

美羽はレオと出会い、自首することを決めた。

そして、レオの首輪に手紙をくくりつけ、本当の家族に再会させるために森に放した。

老人と犬

弥一・・・猟師をする余命いくばくの老人。

島根県の山で猟をしていた弥一は、ガリガリに痩せた犬を拾い「ノリツネ」と名付けた。

ノリツネにはマイクロチップが埋め込まれており、飼い主は岩手におり、名前は「多聞」だと分かった。

弥一は末期がんを患い、残りわずかな人生をノリツネと穏やかに暮らしたいと考えていた。

そんななか山に熊が出て、経験豊富な弥一に猟友会から手伝ってほしいと要請が入った。

病気でボロボロになった身体でノリツネと共に山に入った弥一だったが、他の猟師に熊と間違われて撃たれてしまう。

弥一はノリツネに「飼い主を探しに行け」と言い残して息を引き取った。

少年と犬

内村徹・・・震災で岩手から熊本に一家で移住してきた。
・・・徹の息子。震災のショックから口がきけなくなった。
出口晴子・・・釜石に住んでいた多聞の飼い主で、震災のとき津波に流され亡くなってしまう。

熊本県に住む内村徹は、林から飛び出しあやうく轢きそうになった犬を家に連れて帰った。

内村は釜石から熊本に家族で移住してきており、マイクロチップの情報で犬も岩手からやって来ていると知り、不思議な縁を感じていた。

内村には光という息子がいたが、3歳で体験した震災がトラウマになり、言葉を発しなくなって絵を描くことばかりしていた。

しかし、多聞が家にやって来てから光は外に出かける、言葉を話すようになり、みるみる症状が良くなっていった。

光と多聞は、運命的な恋に落ちた男女のように、絆が強く、信頼し合っているように見えた。

そんななか、多聞の話を聞いた岩手の知り合いが、徹に電話をかけてきた。

驚くことに、光と多聞は岩手県にいる頃に出会っていた。

震災前、多聞の飼い主だった出口晴子は、港の近くになる公園へ散歩に来ていたが、光も祖母に連れられて、この公園を訪れていた。

多聞は光のことになると目の色を変え、兄弟にようにじゃれ合い遊んでいた。

しかし、出口が津波で亡くなり、しばらく多聞は公園などを周って飼い主を探していたが、ある日姿を消していたのだった。

そして多聞は、南へと向かいながら飼い主を渡り歩き、傷を負いながらも光がいる熊本県にたどり着いた。

ようやく安らげる場所を見つけた多聞だったが、ある日 熊本が地震に襲われてしまう。

家の壁が倒れたが、多聞が覆いかぶさり守ってくれたため光は助かった。

一方、多聞は家の梁が体に刺さり亡くなってしまった。

それからしばらくして、徹のもとに中垣麻由美という人物からSNSを通してメッセージが届いた。

「わたしの弟が、一時期、あの犬と暮らしておりました(中略)弟は不慮に事故で亡くなり、多聞もまた姿を消しました。」

メッセージを呼んだ徹は仙台にいるという中垣という女性に、返信することにした。-おわりー

『少年と犬』感想

賢くて優しくて勇敢な犬・多聞が、常にある方向を見ながら飼い主を渡り歩いていく姿に不思議を感じ一気に読みました。

人々は、闇や悩みを抱え、孤独と死の匂いを嗅ぎ取れる能力がある多聞に引き寄せられるように多聞に出会います。

最初の飼い主は「守り神」と言っていたけれど、立て続けに人が亡くなるのを見ると「死神」じゃないかと思うこともありました。

しかし、多聞を飼うことになった人々は、皆 これまで一緒に暮らしてきたように信頼し、心のより処にしていきます。

そして、命尽きるそのときに救いを見出し、短い間だけど家族になった多聞の幸せを願うのです。

多聞は、飼い主たちの生き様を静かに見守り、導き、最後を見届ける。本当に神様のような存在です。

そんな誇り高き犬が、長い旅を終えてようやく出会えた一人の少年。

ラストは、その少年を庇って命を落としてしまうけれど、震災で最初の飼い主を守れなかった多聞にとって、大切な存在を守り通した亡くなり方は、ある意味幸せな最後だったと思いたいです。

『少年と犬』は犬好きなら絶対に刺さることはもちろん、そうでない人もこんな犬なら傍にいてほしい、飼ってみたいと思える作品です。

本作は、2025年春に映画化されるそうですが、原作とは少し違う設定とのことなので、この機会にぜひ小説も読んでみてくださいね。

-Sponsored Link-
  1. この記事へのコメントはありません。