『花まんま』の秘密をネタバレ!不思議で切ない物語の結末は?

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朱川湊人さんの直木賞受賞作『花まんま』は、幼い妹が急に大人びた口調で誰かの生まれ変わりだと言い出すことから始まる、少し怖くて心温まるお話です。今回は有村架純さん、鈴木亮平さんにより映画化も決定した『花まんま』のあらすじから結末をご紹介いたします。

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『花まんま』あらすじ

長距離トラックの運転手だった父を事故で亡くした加藤俊樹は、大阪の下町で母、妹のフミ子と暮らしていた。

母の細腕一つでの生活は苦しかったが、親子三人で力を合わせての暮らしはそれなりに楽しいものだった。

しかし、フミ子が四歳になった冬、彼女は母のお腹にいた時のことを話し終えると、突然嘔吐して病院に運ばれた。

幸い ただの風邪で3日ほどで退院できたが、その出来事を境にフミ子は薄暗い部屋でボンヤリしたり、ふさぎ込むようになってしまう。

そしてある日、自分は「重田喜代美」という女性の生まれ変わりだと言い出した。

それから3か月後、フミ子は俊樹に自分の記憶にある彦根市に連れていって欲しいと懇願し、二人は母に内緒で出かけるが…。

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『花まんま』結末をネタバレ

◆以下ネタバレを含みますので未読の方はご注意ください。

二人は、電車で彦根市のとある町に到着しました。

「あぁ、やっぱり・・・・・・この町、知ってるわ」

フミ子は、小さな甘味屋であんみつを食べたこと、そこの文具屋にいる中年女性が同級生だと話して、懐かしがりました。

そんななか、近くでやせ細った白髪の老人を見つけたフミ子は「あの人、お父ちゃんや」だと言いましたを

そこで、俊樹は老人と言葉を交わしていた文具屋のフミ子が同級生だという女性に尋ねてみました。

女性によると、白髪の老人は十年近く前に不幸な事故で、年頃の美しい娘を亡くしていました。

当時、会社に勤めていた老人は、娘が痛くて苦しんでいるときに、お昼ご飯を呑気に食べていた自分を憎み、それ以来 生きるために最低限の食べ物しか口にできなくなったそうなのです。

フミ子は、重田喜代美として亡くなったときのことを覚えていました。

エレベーターガールとして働いていた喜代美は、ある日 異常者の男に背中を刺され命を奪われていたのです。(今のフミ子の身体には、ちょうど刺された場所である背中に水滴を上下に伸ばしたようなアザがあります。)

それから近くの公園で母が作った弁当を食べることにした俊樹とフミ子でしたが、フミ子は先ほどの痩せた父を思い出し、食がすすみません。

フミ子は、俊樹と重田の家族を見るだけで、接点を持たないと約束していたので話かけることもできません。

そこでフミ子は、俊樹にある頼み事をしました。

それは、空になった弁当箱に公園で咲いていたツツジの花をぎっしり詰めたものを、老人に届けてほしいというものでした。

それは、ご飯の部分を白いツツジに見立て、真ん中には日の丸弁当のように赤いツツジが丸めて押し込まれていました。

俊樹は怪訝に思いながらも、おままごとで作ったような弁当箱を喜代美の父である重田仁(ひとし)に渡しにいきました。

すると家には、喜代美の墓参りにきた兄弟や家族が勢ぞろいしており、彼らは俊樹がいたずらを仕掛けたと思って問い詰めました。

そんななか、弁当箱を開けた仁はぶるぶると震えながら

「箸箱に木の枝が二本、ちゃんと長さを揃えて入れてあるがな。(中略)喜代美がいつもやってたヤツやで」

と言いました。

仁は箸を持ち、本当にご飯を食べるように白いツツジを持ち上げ、口に放り込む真似をしました。

喜代美が子どもの頃、公園に一緒に行ったときにいつもやっていたことです。

その様子を見た姉は、喜代美は天国で父さんにご飯を食べてほしいと心配しているから、この子に弁当箱を持たしたんだろうと言いました。

そして、仁が弁当箱を頼んだ人について尋ねようとした途端、俊樹はその場から逃げ出しました。

待っていた喜代美の元に戻った俊樹は、大阪に戻るためにバスに乗って駅に向かいました。

すると駅の改札には、先ほど会った重田仁とその家族が立っていました。

仁がフミ子を見つけると「おまえ、喜代美やね?」と尋ねて肩をつかもうとしましたが、俊樹はとっさに仁とフミ子の間に割り込みました。

「この子は、そんな名前やないっ!フミ子や。俺の妹や。」

俊樹は叫び、力いっぱいフミ子を抱きしめました。

それから、俊樹とフミ子は住所も名前も教えることなく、重田の家族と改札口で別れました。

時は経ち、フミ子は喜代美が亡くなった二十一歳になりました。

あの一見以来、重田喜代美の話を一切しなくなったフミ子は、同い年の真面目な男性との結婚を控えています。

俊樹は、喜代美の知らない年齢になったフミ子にホッとすると同時に、これからも妹を守っていきたいと思うのでした。-おわりー

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『花まんま』感想

朱川湊人さんによる『花まんま』は、表題作をはじめ6つの短編が収められ、死後の魂にまつわる不思議な話が詰まった作品です。

昭和時代の懐かしい日常の隙間に、ふとあらわれるゾクッとする出来事や、子どもの頃に体験する摩訶不思議な世界。

今回ご紹介した『花まんま』も、4歳になる可愛い妹が高熱をきっかけに、急に難しい漢字をノートに書いたり、縁もゆかりもない土地の場所を聞いてきたりと別人のように変わってしまう恐ろしさが、兄を通して描かれています。

しかも、前世の記憶を聞き出してみると、妹は異常者に刺されて亡くなった被害者であることも分かります。

前半はフミ子の言動に少し怖さを感じましたが、後半で記憶にある家族に会いに行ったところから、なんとも切ない気持ちになりました。

亡くなった喜代美は、自分のせいでお父ちゃんがご飯を食べられずガイコツのようにやせ細った姿に衝撃を受けます。

しかし、兄に言い聞かせられていたため、なんとか自分が直接会わずにお父ちゃんを救おうと考えます。

それが、子どもの頃に公園でお父ちゃんに作った「花まんま」です。

お父ちゃんは、「花まんま」を渡されて喜代美のことを思い出し、フミ子を見て喜代美が生まれ変わって幸せに暮らしていることを知りました。

『花まんま』は生まれ変わりについて描かれていますがオカルトチックなものではなく、死後の魂の存在や神様への敬虔な気持ちなどが、昭和のノスタルジーと共に思い出せる物語でした。

また、お兄ちゃんが必死に喜代美に近づこうとする妹を引き留め、フミ子として嫁ぐまで守り通した姿にもジーンとしました。

ホラー小説として位置づけられているようですが、人間の哀愁と懐かしい匂いがする怪談話といった方がしっくりくるような気がします。

なお本作は、有村架純さん、鈴木亮平さんにより2025年に映画化が決定しています。

原作のお話を生かしつつストーリーを膨らませた作品になるそうなので、この機会にぜ小説の方も読んでみて下さいね。

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