『#真相をお話しします』あらすじを(少し)ネタバレで解説
結城真一郎さんの小説『#真相をお話しします』は、令和という時代を反映したテーマで描かれたサスペンスミステリーです。違和感を抱えたまま不穏な雰囲気で進行するストーリーからあっと驚く結末は、「騙された…」と頭を抱えること間違いなしです。今回は、映画化も決定した『#真相をお話しします』のあらすじを少しネタバレ有りで解説いたします。
『#真相をお話しします』少しネタバレありのあらすじ
◆惨者面談
【登場人物】
◆片桐・・・「家庭教師アットホーム」でアルバイトをしている現役東大生。
◆矢野真理・・・「家庭教師アットホーム」に問い合わせをしてきた母親。
◆矢野慎一・・・真理の夫。現在は海外赴任中
◆矢野悠・・・真理と慎一の息子。小学6年生
家庭教師の仲介営業マンの大学生・片桐は、問い合わせのあった矢野家を訪問しますが、母親との会話はかみ合わず、子どもは怯えた様子でした。
なぜか母親はゴム手袋を外そうとせず、悠くんが通っている塾を尋ねると激怒。
この違和感の原因には恐るべき真相が隠されていました。
実は、母親と思っていた女性は隣人で、ゴミ出しトラブルの末に矢野家の妻を殺害。
しかし、突然 片桐が訪問してきたため、追い返すと不審に思われると思い、女は矢野家の妻に成りすまして対応していたのです。
矢野家の人間を殺して何食わぬ顔で、片桐に対応していただけでも恐ろしいのですが、さらに男の子にも秘密があったのです…。
◆ヤリモク
【登場人物】
◆僕・・・妻子持ちながら、マッチングアプリで女性を物色。
◆美雪・・・僕の娘。大学三年生。最近、高価なバッグやピアスを持つようになったため、両親からパパ活を疑われている。
◆奈々子・・・僕の妻。
◆マナ・・・僕がマッチングアプリで出会った女性。
マッチングアプリに勤しむ既婚男・ケントは、この日もマナという女性のアパートに上がり込むことに成功しました。
しかし、マナは美人局の実行役で、ケントが風呂を出るなり、男が家族のプリクラをチラつかせ、全部バラすと脅してきました。
するとケントは、おもむろにバタフライナイフを取り出し、男の咽を切り裂きました。
実は、ケントの娘・美雪はマッチングアプリでパパ活をしており、父のケントはそれを辞めさせる方法を考えていました。
そして、同年代の女の子がマッチングアプリで出会った男の犠牲になっている事件を起こすことで、美雪に警告を促していたのです。回りくどいww
その後、返り血をシャワーで流し、部屋を出ようとしたケントですが、ベッドの下にあるものを発見し…。
◆パンドラ
【登場人物】
◆翼・・・不妊治療の経験から精子提供を行う。連続幼女誘拐殺害事件の犯人に似ている。
◆香織・・・翼の妻。以前、不妊で悩んでいた経験から翼の精子提供に賛成する。
◆真夏・・・翼と香織の娘。高校2年生。
◆宝蔵寺雄輔・・・連続幼女誘拐殺人事件の犯人。
◆美子・・・翼が精子提供した女性。
◆翔子・・・翼が精子提供して生まれた子。14歳。
朝、ニュースを見ていたら、娘の真夏が連続幼女誘拐殺人事件の犯人が、父の翼の顔に似ていると言い出しました。
真夏は、翼と妻・香織が、不妊治療の末に授かった一人娘で、両親に似ずスポーツ万能で快活な性格をしています。
翼は、子どもをなかなか授からず苦労したので、香織の許可を得て精子提供を行っていました。
そんななか翼が出会ったのが、依頼者の美子でした。
美子は疲れた顔をしており、出会ったばかりなのに、すぐに精子提供をしてほしいと訴え、2ヶ月後に「妊娠できました」と翼に報告がありました。
15年後ー。
翼の精子提供で生まれた美子の娘・翔子が、翼に会いたいと連絡をよこしてきました。
そこで祥子は、自分の血液型、そして美子がなぜ翼を選び、精子提供を急かした理由を語り始めますが…。
◆三角奸計
【登場人物】
◆桐山・・・・東京で働く。年上の女性と不倫中。
◆茂木・・・桐山の大学時代の仲間。既婚者。大阪の外資系不動産ファンドの営業マン。桐山をリモート飲み会に誘う。
◆宇治原・・・桐山、茂木の大学時代の仲間。リモート会議で突然、殺意を表明する。
◆ミナミ・・・桐山がマッチングアプリで知り合った女性。
◆有村ほの香・・・宇治原の婚約者。どうやら浮気をしているらしい。
大学時代の友人である桐山、宇治原、茂木はリモート飲み会を開催していました。
桐山は現在、マッチングアプリで知り合った「ミナミ」という彼女がいましたが、ミナミは婚約者がいることを肉体関係があるまで明かさなかったため、結果的に桐山は浮気をしている状態です。
桐山は、ミナミの存在を宇治原、茂木には話していません。
茂木は、既婚者ですが、妻と娘は実家に帰省中のため今夜はマンションで一人。
宇治原は、恋人・有村ほの香にプロポーズしたものの東京から大阪に転勤になり、しかも ほの香は誰かと浮気しているのではないかと疑っていました。
茂木と宇治原は、大阪にある同じマンションの向かいに住んでおり、偶然の再会から、桐山も誘ってリモート飲み会をしようという話になったのでした。
宇治原は喉のポリープ手術を終えたばかりで、声が出せないためチャットのでの参加をしていましたが、宇治原は“今から、あいつを殺しに行く”と桐山にメッセージを送ってきました。
宇治原は、ほの香のスマホにGPSを仕込んでおり、今夜 その浮気相手であろう宇治原を刺し違えてでも命を奪おうというのです。
桐山は茂木に「絶対に宇治原を家にあげるな」と警告しますが…。
◆#拡散希望
【登場人物】
◆渡辺珠穆朗瑪(わたなべちょもらんま)・・・・教育熱心な両親の方針で、東京から自然豊かな島に移り住んできた小学六年生。通称“チョモ”。
◆立花凛子・・・島生まれ島育ちの同級生。YouTuberになりたいと思っている。
◆桑島砂鉄・・・チョモと同じく、東京から島に移り住んできた同級生。
◆安西口紅(あんざいるーじゅ)・・・島に移り住んできた同級生。家は資産家。通称“ルー”。
◆田所・・・島にやってきたところ何者かに殺されたYouTuber。チョモも会っていた。
珍しい名前の離島育ちの仲良し小学生四人組。
そのなかの渡辺珠穆朗瑪(わたなべちょもらんま)通称“チョモ”は、先日島を訪れていた田所というYouTuberが殺害されたというニュースを目にします。
田所は少し前に島を訪れ、チョモたちに接触してきていたのです。
興奮したチョモは、両親にそのことを話しますがスルーされ、代わりに毎日の日課である母親への一日の振り返りを促されました。
渡辺家には他にも奇妙な決まりごとがあり、絶対に入ってはいけない”秘密の部屋”も存在します。
仲良し4人組の一人、島生まれ島育ちの凛子がついに最新のスマホを手に入れました。
凛子は、開設して10年目になる「ふるはうす☆デイズ」というグループがYouTubeで大人気だと話しました。
一方、田所が亡くなったニュースを境に、優しかった島の人たちの態度が余所余所しくなっていきました。
ある日、ルーがチョモの家にやって来て、今日 体育館でチョモと凛子が話していた内容を執拗に聞いてきました。
そして、18:12頃、ルーは両親に至急帰ってくるようにメールで伝えられ、チョモの家を後にしました。
そんななか、凛子が崖から落ちて亡くなったと連絡が入ります。
凛子が亡くなった経緯を不審に思ったチョモは、凛子の家に向かい彼女のスマホを見せてもらいました。
その画面には、衝撃の事実が映し出されていたのです。
奇妙な名前が付けられた子ども、急に距離を置き始めた島の住人、入ってはいけない部屋…。
その隠された秘密とは一体…。
『#真相をお話しします』感想
『#真相をお話しします』というタイトルと表紙の子供の絵がインパクトあったので手にとった作品。
本格ミステリーというよりは「世にも奇妙な話」の原作となるようなライトな短編集で、序盤から感じる違和感が次第に確信に変わり、二転三転して結末に向かっていく「新感覚」なヒトコワ系。
随所に仕込まれた謎が、最後にすべて回収されていくので爽快感がありますが、伏線の見せ方が丁寧すぎるゆえ「ああ。やっぱりね」大体予想できてしまう。
私は、真相が斜め上からやってくるのを期待しすぎたせいもありますね。
でも、真相からさらに進んだ社会風刺を効きた皮肉めいたオチは面白く、令和という時代を反映した内容ばかりのエンターテイメント作品なので、映像化も納得です。
ラストありきの一点突破という感じはありますが、サクッと終わる感じのイヤミスなので、気負わずに隙間時間に楽しめる小説でした。
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