ドラマ『春燈』あらすじから結末を相関図・キャスト付きでネタバレ

高知の置屋の娘に生まれた宮登美子さんの青春時代を描いた『春燈』。今回は『藏』『櫂』と並ぶ松たか子さん主演NHKドラマ3部作である『春燈』のあらすじから結末を相関図付きで振り返ります。
『春燈』登場人物&相関図
◆登場人物
◆富田綾子(松たか子/大野麻耶)・・・
◆富田喜和(真野響子)・・・結婚した頃は夫・岩伍の行動に振り回されながらも耐えて来たが、次第に自分の意見を言うようになる。夫が営む女衒という仕事を良く思っていない。岩伍と愛人との間にできた綾子を溺愛している。
◆富田岩伍(藤竜也)・・・芸妓娼妓紹介業「富田屋」を営む。
◆富田健太郎(高知東生)・・・岩伍と喜和の息子。岩伍を手伝う。
◆照(江波杏子)・・・夫に先立たれ生活に困って娘をうりにきたところ岩伍と出会い愛人となる。わがままな綾子に気を遣い、母親代わりになろうと懸命に綾子の世話をする。
◆譲・・・照の連れ子。綾子と同じ年。
◆恒子・・・照の連れ子で譲の妹。
◆小夜子(広岡由里子)・・・健太郎の妻。
◆巴吉(香野百合子)・・・綾子の実母。元女義太夫。岩伍と別れ関西で暮らす。岩伍が一番愛した女性。
◆三好(東根作寿英)・・・小学校の教員。レコード鑑賞会で綾子と出会い、綾子が後に赴任する山間部の国民学校で再会する。実家は農家。
◆相関図
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『春燈』結末までのあらすじ
◆複雑な家庭環境
綾子は高知の芸妓娼妓紹介業「富田屋」を営む父・岩伍と愛人との間に産まれ、義母・喜世によって育てられた。
綾子は何かと厳しい岩伍よりも、血は繋がらないが自分を溺愛する優しい母に懐いていた。
実は綾子は岩伍と女義太夫・巴吉との間にできた子どもだったが、喜和がちょうど女児を流産したときに引き取ったため、我が子同然に育ててきた。
ある日岩伍は、喜和に仕事のことで意見され腹が立ったため殴るが、綾子に「お母ちゃんをいじめるな」と日本刀で斬りつけられそうになる。
このまま綾子を喜和の家に置いておくと、とんでもない娘になると思った岩伍は、愛人・照と暮らす「富田屋」本店に綾子を住まわせようと考える。
そんななか綾子は修学旅行先の神戸で、友達の親戚女性とお茶を楽しんだが、その女性は実は綾子の実母だった。
綾子は本能的に、この女性のことは喜世に話してはいけないと思って、黙っていた。
修学旅行から帰ってきた綾子は、岩伍が喜和と離婚するとを知らされ、朝倉町で一緒に暮らすことを命じられるは激しく抵抗する。
岩伍は綾子の性根を叩き直すと2階の部屋に連れていくが、そこで岩伍は自分のせいで綾子に辛い思いをさせたこと、喜世は本当の母親ではないことを明かした。
綾子はそんなことは全部知っていて、それでも母と一緒にいたいと言い張った。
それからしばらくして、喜世は岩伍からの慰労金で居ぬきの店を買い取り うどん屋で生計を立てることにした。
ある日 喜世は学校に行き、綾子の成績が下がっていること、県立女学校へ進学するには家庭環境も重視され、父親がいないと合格は厳しいと聞かされる。
そこで喜世は綾子のために、岩伍が住む朝倉町から学校に通わせることを決心する。
◆父の仕事への偏見
岩伍が照と暮らす朝倉町で生活することになった綾子だったが、喜世に甘やかされて育ったため傍若無人に振る舞う。
綾子は絶対に県立女学校に受かってみせると思っていたが、結果は不合格。
照の連れ子の譲が海南中学に合格したことも、綾子のプライドを傷つけた。
そんななか綾子は、自分が受験に落ちたのは芸妓娼妓紹介業という親の仕事のせいだと知らされ、岩伍を責めた。
「貧乏人を助けるため」と誇りを持って仕事をしていた岩伍は綾子を叩き、職業差別されたことに憤った。
それから附属中学に進学した綾子だったが馴染めず、編入試験を受けて私立高坂高女に通った。
ここでも成績優秀な綾子は学年1位をとり、岩伍は女が学問ができても…と言うが目を細める。
ある日、親友の高村蕗子に家に招かれた綾子は、自分の家とは違い、文化的な暮らしをする蕗子の家族に感銘を受ける。
一方 富田家では、照とその子どもたちが、自分たちを使用人のように扱う綾子に不満を抱えていた。
◆絶交
親友・ 蕗子が、父の病気のため休学することになり綾子は心を痛めていた。
ちょうどその頃、富田屋に娘を三人売りたいという婦人がやってくるが、その女性は蕗子の母だった。
蕗子の父は高知では名の知れた高村五郎という弁護士だったが、三年も病気で寝込み、借金を返すこともできず困っていた。
一方、綾子は洋楽に興味を持ち、市内のレコード鑑賞会に月に一度訪れていたが、そこで教師をしている三好という男に出会い、音楽の話で盛り上がった。
ある夜 綾子は、岩伍に高村家の娘3人(蕗子の姉たち)が売られたことを知ってショックを隠せず寝込んでしまう。
岩伍は、綾子に知られないようにしていたのに、照の不手際でバレてしまったことに憤るが、照は自分がどれだけ綾子に気を遣い、母親になろうとしていたか訴える。
綾子はじばらく学校を休み、久しぶりに登校すると蕗子に呼び出され「姉たちのことを口外したら許さない。もう話かけないで」と絶交書を渡される。
手紙には岩伍の仕事は憎むべきもので、その父に養われる綾子も恥べきだと書かれてあった。
そんななか蕗子が自殺未遂を起こし、綾子は三好に父の仕事について相談する。
三好は高知県議会が一度公娼制度廃止を可決したが、今も公然と遊郭は営業しているというのが現状だと教えてくれた。
綾子は岩伍に商売を辞めてくれと頼むが聞き入れてもらえなかったため、廃娼運動に参加すると言い殴られる。
◆大学進学への壁
東京の大学に進学したい綾子だったが、岩伍にはこれ以上綾子に勉強させたら良くないと考え反対。
大学には照の息子・ 譲に行かせることも決定しており、兄・ 健太郎もそれでは綾子が可哀そうだと岩伍に訴えた。
綾子は喜和に相談し、大学進学の費用を工面してもらうことになったが、またもや岩伍に阻まれる。
このままでは父の思うままに流されてしまうと思う綾子だったが、そう思っても何も出来ない自分が情けなかった。
ある日 綾子は、買われた女性を大阪まで連れて行く使いを引き受けると、列車のなかで「自分は東京にそのまま行くから、あなたたちも逃げなさい」と足抜けするように勧める。
しかし女性たちは、そんなことしたら親戚にも迷惑がかかり、見つかったらきついお仕置きをされると言って、断った。
大阪に到着すると綾子は、照から教えてもらった実母の巴吉を訪ねるが、顔を見ただけで会わずに高知に戻った。
そんななか綾子は、自分と照の連れ子・譲が一緒になれば…という噂を耳にして愕然とする。
◆結末
父の思惑を知った綾子は、父の支配から逃れるため代用教員として山間部の学校へと赴任することを決める。
岩伍は反対したが、半ば逃げるように綾子は赴任先の国民学校に到着した。
するとそこに三好の姿があり、二人は再会を喜んだ。
綾子は素朴で従順な子どもたちに勉強を教えることに やりがいを感じ、いつしか三好とも良い関係を築いていた。
一方、こんな山間部でも岩伍の息がかかっており、毎度 世話をやいてくれる近所おばさんも父が頼んだものだったと知った綾子は、自分が本当に自立していなかったと感じた。
ある日 校長から三好がどうしても綾子を嫁にしたいと言っていると聞かされた綾子は求婚を受け入れるが、彼に結婚後は遠くに行きたいという条件を出した。
そして綾子は三好を連れて岩伍に挨拶に行くが、岩伍は会おうとはしない。
しかし綾子が中国の大連に行くと聞いた岩伍は、「自分の傍から離れないでくれ」と泣いて懇願するが、綾子の気持ちは頑なでとうとう中国へ旅立ってしまう。
岩伍は喜世に、これまで自分たちは綾子を取り合ったきたが、とうとう二人の手の届かない場所に行ってしまったと寂しそうに話した。
一方 列車に乗った綾子は、ようやく父の影響が及ばない土地で自由になれると、晴れ晴れとした気持ちを抱くのだった。-おわりー
『春燈』感想
NHK『蔵』『櫂』に続き観た『春燈』は、宮尾登美子さんの青春時代を描いた自叙伝的な作品です。
『櫂』では母を慕う健気な少女だったのですが、今回の『春燈』ではワガママ娘に変身。
綾子は父の愛人と連れ子を使用人のように扱い、口達者で勉強もできるのでプライドも高い。
ただ宮尾さん本人がありのまま書いているということもあって、綾子の傲慢さもなんだか自分への懺悔のように見えてきます。
それだけ『春燈』の綾子は、傲慢なお嬢様。
父の仕事に嫌悪して徹底的に反発する割には、家の財力に頼って綺麗な服を着て、女学校にも当たり前のように通うような甘ったれ。
おまけに愛人・照は決して意地悪ではないのに、使用人扱いをして、その連れ子にも蔑むような態度を取っています。
綾子の はちきん(=男勝り)な性格は、彼女が忌み嫌う いごっそうな(=信念を貫く男)父譲りというのも、血の宿命のように感じます。
母の喜和は、夫と中国に行った綾子のことを辛抱できない性格だから根を上げると言っていましたが、『朱夏』という作品では、彼女は満州で親の助けもなく子どもを産み育てているから驚きです。
実家の稼業への恥ずかしさと、父の支配から逃れたいばかりに、安易な思いつきで教師になり結婚した綾子に危なっかしさも感じますが、それが若さゆえの勢いに感じて微笑ましくもありました。
宮尾登美子原作、松たか子主演による3部作『蔵』の結末と相関図は⇒こちら
宮尾登美子原作『櫂』の結末と相関図は⇒こちら

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