ドラマ『櫂』ネタバレ!最終回までのあらすじを相関図・キャスト付きで解説

時代という運命に抗い高い志を持って生きた女性を描いてきた宮尾登美子さんの小説『櫂』。今回は1999年に松たか子さん主演でNHKでドラマ化された『櫂』の最終回までのあらすじを相関図付きで振り返ります。
『櫂』登場人物&相関図
◆登場人物
◆富田喜和(松たか子)・・・夫・岩伍の行動に振り回されながらも耐えて来たが、次第に自分の意見を言うようになり女性の権利に目覚める。夫が営む女衒という仕事を良く思っていない。青竹に着物を着せたと言われるほど真っ直ぐな性格。
◆富田岩伍(仲村トオル)・・・芸妓娼妓紹介業を営む。父は大きな床屋を営んでいたが酒と博打の借金のため自殺、母は男と駆け落ちしたため親類縁者ををたらいまわしにされ育つ。
◆巴吉(藤谷美紀)・・・浄瑠璃の一種の女義太夫。岩伍の妾となり綾子を身ごもる。
◆照(千堂あきほ)・・・富田屋の経理をしているが、実は岩伍の愛人。元芸者で息子が一人いる。
◆小笠原梅(林美智子)・・・喜和の母。
◆染勇/豊美(麻生久美子)・・・裏長屋のお巻という女性の娘。貧しいため「大貞楼」にやって来る。男を手玉に取るのがうまく高知一の芸妓となる。幼少期より岩伍に想いを寄せる。
◆菊・・・岩伍が満州に行った際、薬屋に10円で売り飛ばそうとされていたところを助けられた少女。垢だらけで乞食同然だったが、喜和が一から躾をして育てる。
◆牛和歌(中江有里)・・・芸子。立花という学生と恋仲になり足抜けするが…。
◆富田綾子(井上真央)・・・岩伍と巴吉の子ども。岩伍が巴吉と別れ富田屋に連れきて、喜和に育てさせる。
◆佐和島真太郎(長門裕之)・・・南海随一の料亭・陽暉楼の店主。岩伍を雇い入れる。
◆大貞(加賀まりこ)・・・芸妓娼妓紹介業「大貞楼」の女将。岩伍とは大阪にいた頃からの仲。岩伍の不始末を喜和に押し付ける。
◆相関図
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『櫂』あらすじと結末ネタバレ
◆「馬の首」との出会い
大正六年の土佐高知。
16歳の小笠原喜和は、宮相撲の力士・富田岩伍に一目ぼれし、岩伍が世話になっている芸妓娼妓紹介業「大貞楼」の女将に嫁にしてもらえるように口をきいてもらう。
賭博師の岩伍は堅気の娘は無理だと断るが、直後に負けがこんでいた流れ者に刺されてしまう。
大事にならずに済んだ岩伍の看病をすることになった喜和は、かいがいしく世話するが、そこで岩伍の幼少期を知ることになる。
岩伍の父は大きな床屋を営んでいたが、酒と博打の借金のため自殺、母は男と駆け落ちしたため親類縁者ををたらいまわしにされ育ったという。
「大貞楼」の女将・大貞は、南海随一の料亭「陽暉楼」で働くことになった岩伍は所帯を持って落ちついた方が良いとして喜和との結婚を勧めた。
青竹に着物を着せたような一本木の喜和のような女性の方が、岩伍のためになると考えたのだった。
岩伍と喜和は無事に祝言の日を迎え、粗末な家で暮らすことになったが、賭博師の岩伍はたまに家に帰ったかと思えば、金目のものを持ち出していくという有様だった。
喜和の両親はそんな暮らしをする娘を心配したが、なぜか喜和はそんな結婚生活が楽しくて仕方がなかった。
そんななか喜和は妊娠し、長男・龍太郎を出産。岩伍は喜びを隠せない。
それから2年後ー岩伍は満州からの帰りに、薬屋に売り飛ばそうとされていた少女を10円で買い取り連れて帰る。
その少女が自分の幼少期と重なり、見過ごすことができなかったのだ。
垢だらけの乞食同然の少女は菊と名付けられ、岩伍は押し付けるように喜和に育てさせた。
喜和の優しさに触れた菊は次第に心を開き、気立ての良い娘になっていった。
◆人助け
ある日、岩伍は芸妓娼妓紹介業をやると言い出し、喜和は反対するが、「娘たちが貧乏から抜け出すため、人助けのためだ」と告げる。
ここでも親戚中をたらいまわしにされ、疎まれながら育った岩伍の暗い幼少期が垣間見える。
料亭「陽暉楼」の主人佐和島真太郎の後ろ盾により、芸妓娼妓紹介業「富田屋」をスタートさせた岩伍。
大貞から花柳界の心構えを諭される喜和は、近所にあいさつ回りに向かうが、そこの長屋にいた少女・豊美が働きたいとやって来る。
岩伍は、早速 豊美を「大貞楼」に預けることにしたが、喜和が豊美の実家に米を届けにいくと母親・お牧が首を吊って亡くなっていた。
貧しさは不幸だと、豊美を必ず幸せにしてやると誓う岩伍。
お牧を弔った帰り道、喜和は廃娼運動を訴える女性たちからチラシを渡されそうになり複雑な気持ちを抱く。
その後も様々な事情を抱えて身売りする少女は後を絶たず、「富田屋」は繁盛していき、喜和の弟・昭彦も「富田屋」で居候しながら学校に通うことになった。
しかし、喜和は女の身売りのために成り立っている生活を受け入れることができず、岩伍に意見するが「本当の貧乏を知らないお前に何が分かる」と殴られる。
それは、岩伍が喜和から心変わりする始まりだった…。
それから3年後ー岩伍は面倒見の良い紹介業者として名を上げていき、町会長を務めるまでになっていた。
そんななか喜和は、岩伍が女義太夫・巴吉と良い仲で、家まで借りていることを知る。
◆岩伍の裏切りと綾子の誕生
近所で噂になっている岩伍が骨抜きにされたという女義太夫・巴吉をこっそり見に行った喜和。
義太夫とは浄瑠璃の一種で、巴吉は今でいうアイドルのような存在だった。
巴吉は、岩伍から妻は野花のような女だと聞かされ、興行で後ろの方でこちらをじっと見ている女性がいたことに気づく。
岩伍は喜和が巴吉を見に行ったと知り「俺に恥をかかすな。みっともない。」と叱りつけた。
我慢ならなくなった喜和は、息子の龍太郎を連れて実家に戻るが、心配した大貞が訪ねてくる。
大貞は、巴吉が身ごもっている子どもを富田屋で引き取るなら、巴吉と岩伍を別れさせてやると話す。
巴吉が妊娠していることもさることながら、愛人の子どもを育てることはできないと思い悩む喜和。
そんななか龍太郎が血を吐いて倒れる。結核だった。
病院に駆けつけた岩伍は、喜和に全部お前のせいだと責めるが、喜和は「自分の不始末を全部押し付けといて」と言い返し、殴られる。
岩伍は龍太郎のこともあり大貞に諭され、巴吉と別れる決心を固める。
そして龍太郎が亡くなって間もなく、巴吉は女児を出産した。
一晩だけでも娘と一緒にいたいという巴吉を説得し、大貞は産まれたばかりの赤ん坊を富田屋に連れてくる。
息子を亡くしたばかりの岩伍は、赤ん坊を見て目を細めるが、喜和は2階から降りてこようとはしない。
赤ん坊は「綾子」と名付けられ、祝いの席が設けられるが、喜和は家の表に巴吉の姿を見つけた。
大貞によって追い返される巴吉だったが「一目だけでも会いたい」と泣いて縋っていた。
喜和は自分も辛いが、もし巴吉の立場だったらどうだろうかと考え、女性であることの不運を感じた。
◆女性の権利
ある夜 綾子の泣き声が急に止んだことが気になった喜和は乳母のとこに向かうが、綾子は寝入ってしまった乳母の下敷きになっていた。
喜和は必死に綾子の名前を呼ぶと、ようやく泣き声をあげた。
喜和は今後は綾子と一緒に寝ることに決め、それからは自分の娘のように愛情を持つようになった。
綾子はすくすくと育ち「富田屋」の宝物のように扱われ、喜和と岩伍の関係も修復していった。
年号が大正から昭和に変わった頃、大貞楼の芸子・牛和歌が立花という東京の学生と足抜けを計画していることが分かる。
さらに喜和が、女性の人権を訴えている矯風会に出入りしていると知った岩伍は、叱りつける。
岩伍たちが牛和歌を探し回る一方、喜和は牛和歌を匿って立花が船で迎えに来るのを待っていたが、見つかってしまう。
喜和は牛和歌を見逃してくれないなら、自分が足抜けを手伝ったことを大貞楼はじめとする花柳界にバラすと岩伍を脅した。
岩伍はそれでは面子が潰れると考え、不本意ながら牛和歌と立花を逃がしてしまう。
牛和歌が消えたあと、岩伍は喜和が自分への復讐のために今回の件を起こしたと考えて責めるが、綾子に「お母ちゃんをいじめるな。お父ちゃんは嫌い」と言われ何もできなくなってしまう。
喜和から岩伍への復讐は、彼が一番大切にする綾子を自分の味方にすることだった。
綾子が10歳になった頃、喜和が突然 倒れてしまう。
◆緊急手術と女性の自立
喜和の子宮には赤ん坊の頭ほどの腫瘍ができていたため、手術が行われた。
手術は終わり、綾子の呼びかけで無事に目を覚ました喜和に、岩伍はこれまでの感謝を伝え、もう一度夫婦をやり直したいと言った。
その矢先、南海随一の料亭「陽暉楼」の主人佐和島真太郎が亡くなり、後を任された岩伍はますます多忙を極め、再び喜和とすれ違うようになっていった。
「陽暉楼」の裏手に事務所を設けた岩伍だったが、事務員として働くことになった山崎照と男女の関係になっていた。
喜和は薬の影響で髪の毛が抜けるようになった。
一方 綾子は学校で「芸人の子だから音楽が得意なんだ」と言われと喜和に相談した。
喜和は綾子に本当の母親でないことが知られないように学校に出向くが、そこで矯風会の婦人で出会い、女性の自立について教えられる。
そんななか公娼制度廃止が叫ばれるようになり、矯風会と娼妓紹介業者たちは対立を深めていたが、ついにその年に公娼制度廃止が可決された。
しかし公娼制度が廃止されても、何も変わることなく遊郭は平然と営業を続けていた。
岩伍はこれまで通り精力的に仕事をし、夜は照とす過ごしているため家にはほとんど帰ってこなくなった。
さらに岩伍は、綾子を照がいる浦戸町の事務所から女学校に通わせたいと言い出し、「陽暉楼」にも連れて行き自分の仕事への誤解を解こうとした。
しかし綾子は岩伍と住むことを断り、喜和と一緒にいることを望んだ。
◆最終回の結末
大貞は、染勇(豊美)は昔から岩伍に惚れていたが、岩伍がその気持ちを利用して商売をしていたことを喜和に明かした。
高知県の名士・板倉製紙の社長と並ぶまでになった岩伍は、「貧しい者のために」と働いていた昔とは変わってしまったと大貞は寂しそうに話す。
そんななか喜和は、岩伍から弟の昭彦の扶養になるように命じられ、菊は本店が引き取ると突然命じられる。
岩伍はますます勢いに乗り、全国各地の女郎を引き抜き、大阪や満州、大連などに送り込んでいた。
ある日、偶然 矯風会に足を止めた喜和は、ミシンの技術を学ぶことで女性が仕事を得て、自立することができると知る。
岩伍は板倉のような人間と付き合う体裁のために、照を大連の支店に異動させ、喜和と綾子を浦戸町の本店に住まわようとするが、喜和は「あんたは貧乏人から手を合わせてもらいたいだけ。貧乏人を食い物にしている」と言い捨てた。
それを聞いた岩伍は思わず手をあげるが、綾子は喜和を守るため刀で岩伍を斬りつけた。
この一件により、喜和と綾子は家を出て実家に戻るが、綾子が女学校への進学を止めたと耳にする。
話によると父親はいない家の娘は、いくら頭が良くても合格は難しいという。
喜和は綾子を岩伍に返す決心をし、一方の岩伍は昔を思い出し自分たち夫婦はどこでどう道を間違えたのか考えた。
家に戻ると喜和は綾子に、自分の子ではないと伝えて学問を続けて欲しいと、岩伍と暮らすように勧めた。
最初は涙ながらに喜和と別れることを嫌がる綾子だったが、説得されて浦和町に移った。
その後、女性活動家の協力により足踏みミシンを習って自立のために動き出した喜和。
岩伍の商売に関わり体を張った大勢の女性たちの涙が、喜和の進むべき道を教えてくれた。
タイトルの「櫂」というのは、水をかいて舟を進めるオールのことを指す。
女性一人が生きるためには、手に職をつけて何がなんでも働いてお金を稼がなければならない。
お嬢様育ちの喜和にとって、足踏みミシンは自立するためのオール。
櫂は浮かべたままでは流されてしまう。
だから喜和は、櫂を操って自分の進みたい道に力強く漕ぎ出すのだった。-おわりー
宮尾登美子原作、松たか子主演による3部作『蔵』の結末と相関図は⇒こちら
宮尾登美子の自叙伝的作品『櫂』に続く『春燈』の結末と相関図は⇒こちら
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