『渚の螢火』ネタバレ!衝撃の結末と黒幕を相関図つきで解説

『渚の螢火』は、沖縄復帰直前に起こった100万ドルの強奪事件を背景に、戦後、米国に支配された沖縄での人間ドラマを描いた作品です。今回は高橋一生さん主演でドラマ化もされる『渚の螢火』のあらすじをネタバレありでご紹介します。
『渚の螢火』あらすじ
沖縄復帰に向けて、ドルから円に切り替わるため540憶円もの現金が、本土から沖縄に持ち込まれることになった。
そんななかで琉球警察は円ドル交換のため綿密に準備していたが、100万ドル(3憶6千万円)積んだ琉球銀行の現金輸送車が行方を絶ってしまう。
円ドル交換は新しい沖縄県への幕開けを飾る一大事業。
それが失敗したとなると琉球政府の信頼は地に落ちるどころか、日本政府が沖縄返還交渉で円と交換した米ドルを完全な形で引き渡すという約束も果たされなず、日米間の外交問題に発展する恐れがあった。
琉球警察幹部は真栄田を班長に秘密裏に事件解決を命じるが、リミットは約2週間後の復帰当日の通貨交換開始まで。
果たして100万ドルは欠損なく見つかるのか…。
『渚の螢火』登場人物&相関図
◆登場人物
【琉球県警本部】
◆真栄田太一・・・本土復帰特別対策室室長。成績優秀だったため玉城の計らいで東京の大学に留学し、本庁の捜査二課の出向の経験がある。ドル強奪事件の指揮をとるよう命じられる。
◆玉城泰栄・・・本土復帰特別対策室室長。戦後 米軍が住まわせた収容所で任命された民警察時代からのベテラン刑事。真栄田はもちろん他の警察官からも信頼が厚い。退官間近。
◆与那覇清徳・・・捜査一課班長。真栄田とは高校の同級生。なぜか真栄田を敵視する。真栄田が指揮するドル強奪事件の応援に入る。
◆新里愛子・・・本土復帰特別対策室事務職員。幼少期から警察官に憧れていた。トラック運転手の父から譲られたフォードが愛車。
◆比嘉雄二・・・石川署捜査課捜査員。高校時代はワルだったが、与那覇に憧れて警察官になった。
◆座間味喜福・・・最後の琉球警察本部長。戦前からの警察官で生き字引。初代沖縄県警本部長も務める。
◆喜屋武幸男・・・刑事部長。座間味本部長の下で戦後。刑事事件を捜査してきた。
【犯罪捜査局CID】
◆ジャック・シンスケ・イケザワ・・・米海兵隊で刑事事件を捜査する犯罪捜査局CIDの憲兵大尉。日系二世。ベトナム戦争で負傷しいぇ沖縄のCIDに配属された。
【その他】
◆川平朝雄・・・川平興行社長。タクシーやトラック輸送を手掛ける若手起業家。戦後に嘉手納でアギヤーとして略奪物資(戦果)を弱き者にもたらし名を馳せた過去を持つ。
【宮里ギャング】
◆宮里武男・・・宮里ギャングという不良仲間のリーダー。米兵狩りをしていた。喧嘩に強い。ヤクザのヒットマンをしていたことから相手の派閥に追われ大阪に身を隠し、現在は沖縄に舞い戻っている。
◆照屋ジョー・・・黒人と沖縄女性の間に産まれた。英語が堪能でAサインや基地で働いていた。
◆又吉キヨシ・・・空手上段者。
◆稲嶺コウジ・・・スリと鍵破りに長けた盗人。
◆知花ケン・・・女性をたらしこむのが得意。
◆相関図
※無断転載禁止
『渚の螢火』結末をネタバレ
◆犯人グループ
真栄田率いる警察は、現金輸送車の運転手・多比良の目撃情報から、ヤクザとのパイプもある宮里ギャングというグループが犯人だと突き止めた。
さらに拉致されていた現金輸送車に乗っていた行員・西銘が見つかり、真栄田と新里愛子はすぐに家に向かうが、西銘は何か隠しているようだった。
真栄田は、かつて本庁で親しかった同僚に連絡を取り、リーダー格の宮里について調べてもらうと、彼は沖縄にいる何者かに呼ばれて大阪から軍艦で帰郷したという噂があると言う。
宮里は孤児院育ちで年の離れた姉。宮里シズがいた。
姉が15歳になった頃に孤児院を出て、シズはAサイン(特飲店)で働きながら宮里と暮らしていたが、その頃に米兵に命を奪われていた。
なかなか突破口が開けない警察だったが、新里と比嘉が宮里が出入りしていた特飲店「サザンクロス」に潜入し、美人局によって西銘を陥れた由紀恵という女性の素性を聞き出した。
◆呼び出し
そんななか米海兵隊で刑事事件を捜査する犯罪捜査局CIDが、現金輸送車襲撃事件で使用された銃について話を聞きたいと言ってきた。
これまで慎重に米軍にバレないように捜査してきた真栄田たちは、情報が漏れたことに驚いたが、おそらく金を握らされた沖縄人のスパイが情報提供したものだろうと推測された。
与那覇がふと、この事件はアメリカが裏で手を引いているのではないかと言い出した。
そこで真栄田は、顔なじみでもあるCIDのジャック・シンスケ・イケザワに会いに行くことを決めた。
イケザワはドルを積んだ現金輸送車については把握していなかったものの、琉球警察が米軍が関わっているかもしれない事件について報告も無しに捜査していることを指摘した。
真栄田はイケザワの追及をうまくかわし、なんとかその場をやり過ごした。
◆銃撃戦
次に真栄田は与那覇と共に、宮里の情婦・正美の店を訪れ「沖縄のヤクザが本土からきたヤクザを懸賞金までかけて血まなこで探している」と焚きつけた。
正美は二人が店を出ると、一目散にタクシーに乗って宮里の元に向かい、真栄田たちもその後を尾行した。
与那覇らが宮里の張り込みをするなか、真栄田は騒ぎになったときにアメリカが騒がないようにイケザワに現金輸送車襲撃の事実を伝え協力を仰いだ。
そんななか宮里グループと米軍ではない白人のグループが銃撃戦を始め、宮里武男は銀色のジュラルミンケースを両脇に抱え逃走した。
この銃撃戦で照屋、知花と又吉は亡くなり、真栄田は瀕死で病院に運び込まれた稲嶺に誰から現金輸送車を襲うように頼まれたのか聞いた。
稲嶺は「エス、ワイ」と答え、それが国務省の秘密保安部門(Gメン)だと判明する。
◆19年前の事件
真栄田が国務省の武装組織がなぜ宮里のグループに指図してドルを奪ったのか考えていた頃、稲嶺は「ねぇねぇの仇を取ってくれ」と言い残して息を引き取った。
19年前ーー宮里の姉・シズは体を売っていた最中に首を絞められ命を奪われたたが、今年になって同じ手口で3人の商売女性が亡くなっていた。
真栄田は、いずれの捜査も上からの指示で打ち切りになったことを喜屋武刑事部長に尋ねると、ある事務官の名前をあげた。
その事務官はオーガスト・ミラーといい、彼19年前にシズ殺害を疑われながら赴任して間もなく、急にアメリカに召還されていた。
そしてミラー書記官は、国務省の秘密保安部門の意向で沖縄が本土復帰する直前に再び那覇の総領事館に赴任し、発生した3件の事件現場にも足を運んだ形跡があることが分かった。
現在、ミラーは領事館にも姿を見せず公務も一切行っていなかった。
そんななかシズと正美が過去に交流があり、そのよしみで正美が実家で宮里を匿っていることが知らされた。
イケザワは、銃撃戦や稲嶺の容態急変などが警察が核心に迫るタイミングで発生していることから、真栄田たちの情報を国務省の武装組織に流れている可能性を指摘した。
◆結末と黒幕
真栄田は正美の実家近くにあり、宮里が潜伏している砂浜の倉庫を突き止め、宮里を発見した。
するとそこに、この場所を知らされていないはずの玉城泰栄が駆けつけ、真栄田に襲いかかってきた。
気を失った真栄田が目を覚ますと、机には100万ドルが入ったジュラルミンケースと傍らには玉城と川平興行社長・川平朝雄の姿があった。
国務省に雇われていたスパイは玉城だった。
川平は玉城が戦後まもなく兵隊崩れとして収容所を襲い、その際に11歳だった宮里シズを襲っていたことを明かした。
幼かった川平もその収容所に入っており、シズを慕っていた川平はとっさに砲弾の欠片で、彼女を襲う日本兵の顔を斬りつけた。
玉城の顔には現在 右耳から頬にかけて引きつるような切り傷があった。
川平はシズを失ったあと、起業家として成功して総領事館に入り込み、絶大な信頼を得た。
そしてミラー書記官が再び沖縄に戻ってくると知り、彼の今回の計画を持ち掛けて復讐の機会を得たのだった。
川平はかつて「ねぇねぇ」を襲った玉城に銃を向けて撃ち抜いた。
玉城が絶命するなか、川平や宮里グループを裏で操っていた事務官・オーガスト・ミラーが現れた。
ミラー書記官はジュラルミンケースを渡すように指示するが、川平が「あなたはシズ・ミヤザトを知っていますか?」と尋ねた。
ミラー書記官はとびきり美しい女性で、暴漢に刺されて命を落としたことを思い出したように答えた。
しかし、シズは暴漢に首を絞められて殺害されたことしか報じられておらず、刺されたことは捜査関係者と犯人しか知り得ないことだった。
シズ殺害を自供したミラー書記官は、ナイフを持って飛び出してきた宮里武男によって刺されそうになるが、ミラーは発砲して制した。
亡くなる武男を見て、川平はミラー書記官を撃ち、真栄田にジュラルミンケースを持っていけと告げて、火を放った。
真栄田は、ジュラルミンケースをつかんで無我夢中で逃げ出した。
騒ぎがおおきくなるなか、真栄田は東京にある産婦人科医院に電話をかけた。
電話口にでた義母は、元気な男の子が産まれたことを話した。
その日は五月十五日。沖縄返還の日だった。-おわりー
『渚の螢火』感想
沖縄復帰直前に起こった100万ドルの強奪事件を背景に、戦後、米国に支配された沖縄の悲劇を発端する人間ドラマを描いた『渚の螢火』。
つい最近、真藤順丈さんによる小説『宝島』を読んだばかりだったので、戦果アギヤー、米軍が公認するAサイン、沖縄抗争、復帰運動などのエピソードの下地があり、すんなりとストーリーに入れました。
青い海、空、サトウキビ畑…本土の人間にとって沖縄は、美しく、癒しの島というイメージでしたが、数えきれないほどの悲劇が戦中、戦後がだけでなく今現在も続いていることも知っておかなければなりません。
タイトルにある「螢火」というように、過酷な生活を強いられ蛍のように短い一生を終えた戦争孤児たちの想いが切なかったです。
終盤は少し駆け足に感じましたが、玉城が裏切者だったことに驚くと同時に、川平がドル札強奪を国務省に持ちかけ、弟の宮里共にねぇねぇの仇を撃つラストはよくまとまっているなと感じました。
また離島・本土・本島の間で揺らぐアイデンティティを持つ真栄田、その真栄田を敵視する与那覇、切れ者の女事務員・新里、日系二世のアメリカ憲兵イシザワなどキャラクターも魅力的。
真栄田と与那覇の関係の変化も良かったです。
そのなかでも印象的だったのが、本土育ちの真栄田の妻が「沖縄返還」と話すことに対して真栄田が違和感を持ったシーンです。
沖縄人は「復帰」という言葉を使うのに対して、本土の人はアメリカが主語で善意により返してもらったという「返還」だと無意識に思っています。
そんな些細な言葉の違いからも、沖縄人と本土との認識の差を感じました。
戦争中はに唯一の地上戦となった沖縄は、戦後も理不尽な生活を強いられ、沖縄県になって良かったと手放しで喜べる状況ではなかったと考えさせられました。
警察ミステリーとして楽しめることはもちろん、沖縄の史実を知れるという点においても、とても良い作品ですのでドラマ化も楽しみにしたいと思います。
戦前~戦後の沖縄を舞台に3人の若者の姿を描いた小説『宝島』の結末までのあらすじは⇒こちら
この記事へのコメントはありません。