『愛されなくても別に』ネタバレ!生きづらさを抱えた少女たちの結末は?

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虐待、貧困、束縛 望まない愛…『愛されなくても別に』は、親に人生を奪われた少女たちが自分の居場所を求めて、もがきながらも必死に生きようとするシスターフッド小説です。今回は映画化も決定した武田綾乃さんによる『愛されなくても別に』のあらすじをネタバレ有りでご紹介します。

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『愛されなくても別に』あらすじ

大学生の宮田陽彩は、母親から毎日のようにかけられる「愛してる」という呪詛のような言葉に縛られ、時間やお金、人生そのものを奪われ続けてきた。

アルバイトと家事、大学生活のなかで疲弊する陽彩は、このままだと「母親を殺してしまう」と家出を決行し、同じコンビニで働く江永雅のアパートに居候することに。

同じく親に虐待されてきた江永。

傷付き合った二人は、お互いに様々な「気づき」を与え合いながら、自分だけの人生を取り戻すため模索していく。

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『愛されなくても別に』登場人物

登場人物

宮田陽彩・・・私立大に通う19歳。母子家庭。浪費家の母から家に8万入れることを強要され学業以外の時間をコンビニのアルバイトに費やす。
江永雅・・・陽彩と同じ大学、同じアルバイトで働く21歳。元父親は殺人犯との噂があり、母からは身体を売ることを強要され家計を支えてきた。
木村水宝石・・・陽彩と同じ大学に通う。過干渉で束縛する母の元を離れるも、母は度々上京し、監視されている。新興宗教にハマっている。
堀口順平・・・陽彩のアルバイト先の先輩。大学を二年留年している。

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『愛されなくても別に』結末

陽彩

両親が離婚したことから宮田陽彩は小学1年生の頃から母と二人暮らしをしています。

母からは高校卒業後は就職するように言われましたが、高校時代と同じように8万円を家にいれること、家から通える大学にすることなどを条件に進学を許してもらいました。

母は浪費家で、家事は一切せず、子どもの行事に参加したことはなく、交際相手をころころと変えていました。

睡眠時間を削り、大学生活とバイト、そして家事一切をこなしている陽彩は疲れ切っていましたが、毎日 母から吐かれる「愛してるわ、陽彩」という言葉で縛られていました。

万が一の保険のために奨学金を借りてはいましたが、借金を背負うことが怖くて手をつけず、奨学金が振り込まれる預金通帳は母に預けていました。

そんななか陽彩のもとに父親が現れ、再婚した妻との間にできた子どもの教育費がかかるから養育費を払うことを免除してほしいと言ってきます。

母から父からは養育費を貰っていないと聞かされていた陽彩は愕然とし、母に預けてあった奨学金の通帳を確認すると残高はわずか三万円でした。

家族は幻想、愛だけ与えられて家政婦のようにコキ使われる自分。

陽彩は、このままでは母親に手をかけてしまうと思い、そのまま家を出て血の繋がっただけの母に別れを告げました。

江永

母親の元から逃げたといっても陽彩には行くところもありませんでしたが、同じ大学に通うアルバイト先の同僚・江永雅が住むところがないならと3万円で居候させてくれることになりました。

江永の両親も陽彩以上に酷いもので、小学6年生のときに父から乱暴され、それを知った母は父を殴って江永を連れて逃げました。

まだ幼かった江永は母に捨てられることが怖く、母に指示されるまま体を売って生活費を稼いできました。

そんななか、父親が交差点でひき逃げ事件を起こし被害にあった7名のうち3名が亡くなりました。

父はそのまま逃走して行方が分からず、地元では江永の父が犯人だという噂がすぐに広まりました。

江永はこのままでは人生がめちゃくちゃになると感じて母親を残して四国から上京したのでした。

そして大学行くための学費を稼ぐためSNSで客をとって再び体を売る生活をしていたところ、あるとき 若い男から行為の際に首を絞められます。

実はその男は、父が轢いた被害者の息子で、江永を見つけ出し復讐を実行したのでした。

木村

陽彩は、大学で木村水宝石(あくあ)と言う女性の学生に、休んだ日のプリントを写真でとらせてもらいました。

見るからに裕福そうで真面目な木村でしたが、決して下の名前を明かそうとしません。

木村は過干渉で束縛する母の元を離れていますが、母は数時間ごとに連絡がし、娘の行動を監視するように頻繁に地元から上京してきます。

そんな閉塞感のある生活から抜け出したいと、木村は新興宗教にハマり、陽彩も勧誘をうけました。

陽彩は宗教施設を訪れる前に、木村の母に連絡を取り木村が怪しげな宗教にハマっていることを伝えました。

母はすぐに上京して、木村を無理やり宗教施設から連れ出しますが、木村はひとまず陽彩と二人だけで話がしたいと言い出しました。

木村は、自分を苦しめているものが何かも知らないで勝手に母に教えるなと陽彩にナイフを向けました。

なんとか陽彩は刺されずに済みましたが、木村もまた毒親によって人生を狂わされた子どもだったのでした。

結末

親から逃れ、やっと自分の足で自立をはじめた江永陽彩は、なんとか生き延びることができるという気持ちになっていきました。

あるとき江永は陽彩からかけられた言葉で助かったと明かしました。

それは江永が被害者の息子から首を絞められた帰り道のこと。

気持ち悪さを我慢できなくなった江永は、陽彩が働くコンビニで吐いてしまいました。

バイトの先輩の堀口が処理することを拒否したため、陽彩が片付けを担当し、その際に江永に「大丈夫ですよ」と何気なく声をかけました。

それは江永の体調を気遣ったものではなく、こちらで掃除するから大丈夫という意味で言った言葉でしたが、江永はその一言で救われたのでした。

だから江永はその日以来 体を売ることを辞め、陽彩が働くコンビニに面接にいったのでした。

それを聞いた陽彩は、江永が生きていてくれて本当に良かったと感じたのでした。

ある夜、陽彩がバイトのシフトに入っていると、母親がアルバイト先をつきとめてやってきました。

陽彩に謝りたいと思って会いに来たという母は「愛してるわ、陽彩」と言いますが、陽彩は「家族を辞める」と宣言して、完全に母と決別しました。

それから江永と共に20歳の誕生日を迎えるため酒を購入して、アパートに帰ったのでした。

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『愛されなくても別に』感想

世の中には様々な家庭があり、なかには暴力を振るわれ、精神的にも縛られ、もがいている子どもたちがいる。

物語に登場する3人の少女たちも、母親との歪んだ関係に問題を抱えています。

そのなかの木村は、他の二人に比べて裕福で母親から家事を押し付けられることも体を売ることを強要されることもありません。

一見問題がなさそうな木村ですが、母からの異常な干渉で精神的に追い詰められ、新興宗教に救いを求めていきます。

誰の不幸が一番マシかというのは客観的に推し量れるものではなく、当事者にとっては他人が大したことないと思うことでも苦しい時間であることは間違いありません。

血の繋がった家族だから…愛され、愛さなくてはいけない呪縛。

しかし、愛してるは免罪符にはならないというように、絆を深めていく陽彩と江永。

家族に愛されなくても、幸せを求めて生きたい。

日本に住んでいれば、自分の人生を自分で生きるというのは当然の権利のように思えるけれど、それすら叶えることができない子どもがいることがとても悲しく感じました。

ラストは、江永に助けられていたと思っていた陽彩が、実はもっと前に江永を助けていたということが分かります。

そして陽彩が親の呪縛を跳ね返し、江永や堀口と他愛もない会話をして誕生日を祝おうとする描写で終わります。

同じような苦しみを抱えてきた同士だからこそ理解し合い、最後はそれを生きる力に変えていく二人の姿にジーンときました。

これからが人生第二章ともいえる希望のあるラストで読後感も良かったです。

親だからといって子どもの生き方を決めることはできないし、子どもも親に従う義務はないけれど、家族を辞める決断をして行動できる子どもはどれだけいるでしょうか。

逃げ出すことに躊躇する子どもたちに、少し乱暴ではあるけれど「家族に愛されなくても別に関係ない。自分の人生を生きていい」というエールを送る本書。

登場人物たちのリアルで軽妙な会話も魅力なので、映画化されるこの機会にぜひ小説の方もじっくり読んでみてくださいね。

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