『火星の女王』結末までのあらすじを相関図付きでネタバレ
『火星の女王』は、100年後の未来である2125年の火星で謎の物体が発見されたことで起こる開拓民である火星の人と地球との確執を、壮大なスケールで描いた作品です。今回はNHKでドラマ化もされる『火星の女王』のあらすじをネタバレ有りでご紹介いたします。
『火星の女王』あらすじ
人類が火星への移住を果たしてから100年後の未来2125年
火星には約10万人の人間が暮らしていたが、ISDA(惑星間宇宙開発機関)は火星入植者を地球に帰還させ、支援を段階的に打ち切っていく地球帰還計画を推し進めていた。
理由は想定された量のレアメタルは採掘されず、薬品の精製、植物の栽培などもうまくいかず、当初の試算から大きく外れ採算がとれなくなってきたからだ。
一方、火星入植者たちは採掘したレアメタルと地球からの食糧や薬品を交換することで生活していたが、取引の不平等さと、勝手な都合で地球に戻されることへの不満を募らせていた。
火星の住民の多くはは様々な恩恵と引き換えにタグを埋め込まれ行動ログを取得されているが、自由を求め自らタグを外すタグレスという呼ばれる人も出てきた。
そんななかホエール社研究分門シニアマネージャー・リキ・カワナベは、火星の地底湖でドローン操作をしている結晶を変える性質をもったスピラミンを発見する。
ホエール社CEO・ルーク・マディソンは、すぐに記者会見を開き「新種の生命体を発見した」と発表。
このスピラミンは光速を超えて情報を伝達できる可能性を秘めており、火星に新たな希望を与えるものだった。
そして、今後 地球の団体などの力を借りることなく、自分たちで研究を進めていくと挑戦的に宣言した。
同じ頃、ISDA種子島支部の支部長・タキマ・スズキの娘で、視覚に障害を持つリリが地球に戻るネメシス5搭乗直前に、何者かに誘拐されてしまいー
『火星の女王』登場人物&相関図
◆登場人物
【火星】
◆リリ・・・火星生まれの火星育ち。13年前の砂嵐の事故で意識を失ったときに視神経に障害を負い、目が見えなくなった。地球への観光を夢見て、そのための重力訓練を終えていたが、火星を経つ直前に何者かに誘拐される。
◆リキ・カワナベ・・・地球生まれ、地球育ち。ホエール社研究分門シニアマネージャー。地球外知的生命の探求のため火星に移住した。火星の地底湖で結晶を変える性質をもったスピラミンを発見する。
◆AJ・・・カワナベの助手。
◆ルーク・マディソン・・・ホエール社のCEO。大学生のときにホエール社を起業し、小惑星地帯の発掘と輸送で世界一の企業となる。ISDAの支援を受けずに独力で火星にコロニー13を作った。ISDA(国際機関)と対立する。
◆ガレ・・・火星生まれ、火星育ち。火星副支局長。
◆マル・・・火星生まれ、火星育ち。火星の自治警察の捜査員。地球に戻る費用を捻出するため出稼ぎの仕事をこなす。
◆ミト・・・火星生まれ、火星育ち。マルの相棒。
◆ケイ・・・リリの大学のクラスメイト。家族が地球帰還し自分だけ火星に残る。リリが誘拐され自治警察の捜査に加わり彼女の行方を探す。
◆マイク・・・リリの大学のクラスメイト。父は砂嵐のときにISDAから倉庫を検査するように言われ谷底に落ちて亡くなった。MLF(マルス独立戦線)という反ISDAの学生団体に所属していた。
◆スックシリ(ポテト)・・・地球から火星に向かう宇宙船の船内で生まれた。孤児院育ち。母は地球での借金を免除してもらうため火星に移住したが、火星重力が合わずに病気で亡くなる。宇宙空港の保安員として働く。
◆ヴェシッチ(チップ)・・・小惑星の掘削作業員だった両親の元に誕生するが、両親は作業中に事故で亡くなり、孤児院に預けられた。採掘工。
【地球】
◆白石アオト・・・ISDA種子島支部で働く若手職員。火星で行われた研修でリリと出会い仲良くなる。誘拐されたリリの動向を調査するように指示される。
◆タキマ・スズキ・・・リリの母。ISDA種子島支部の支部長。元ISDA火星支部長。五年前にISDAから指令を受け取り地球に戻った。
◆芦部・・・ISDA職員。マネージャー。
◆白石恵斗・・・アオトの祖父。学者で元ISDAの研究者。カワナベは門下生。
◆金崎・・・アオトの祖父・白石恵斗の昔からの知り合い。恵斗の口利きでISDAで清掃員として働く。宇宙人研究会の会員。
◆相関図
※無断転載禁止 ※訂正 清掃員の名前が間違っています ×山崎 〇金崎 です。
『火星の女王』結末ネタバレ
カワナベによって発見されたスピラミンのアンプルが盗まれてしまう。
ホエール社のCEO・マディソンはISDAが宇宙船に乗せて地球に持ち出そうとしていると考え、ネメシス5の発射を遅らせるように手配した。
一方、自治警察の捜査員のマルは、リリの誘拐、火星での盗難、暴動などが同時に発生し対応に追われていた。
そんななかISDAにリリを誘拐した犯人から地球帰還計画を即時中止するように要求が入り、マディソンはスピラミンと共に火星国を建国することを宣言する。
ISDA内ではマディソンがスピラミンを軍事利用する前に水爆を積んだ平和維持軍を送り込み「独立の撤回」と「スピラニンの引き渡し」を要求しようという開戦の意見も出た。
一方、白石アオトは20年前に祖父・白石恵斗が、地球から火星に何かを運ぼうとしていたことを知る。
リリの捜索を続けていたマルは、リリの大学のクラスメイトでISDAに恨みを持つマイクがリリ誘拐の主犯格ではないかと推測し、同じくリリの友人のケイにマイクと連絡を取るように頼む。
マイクはISDAがタグを付けた人の生活をログを得ることで、広告マーケティングのデータを集めて利益を得ており、タグを付けていないタグレスの人は利用価値がないと切り捨てられる運命にあることを明かした。
その証拠に22年前に発生したパンデミックでISDAはタグレスに薬を配らず、タグレスの人口を減らそうとまでしていた。
だから今回の地球帰還計画でも、タグレスは置き去りにされることは目に見えている。
そこでマイクは、支部長の娘・リリを誘拐して、ISDAに監視されることなく火星に住み続けられるように交渉したいと考えていた。
しかし、自治警察によってマイクたちのアジトは特定されたことでリリは保護され、突入時にヴェシッチ(チップ)が空気銃で撃たれ亡くなってしまう。
そしてこの事件によりリリの生い立ちがテレビで紹介されると、一部の人たちによりリリは「火星の女王」と呼ばれるようになる。
マディソンはリリを火星の人々が団結する象徴にしようと目論み、彼女を火星の大統領に任命した。
一方、ISDAはマディソンが数年前から「E」という部署をつくり、核や大量の爆薬を集め兵器開発を行っていると疑っていた。
実はリリを誘拐したのはマディソンだった。
マディソンは盗まれたスピラミンが積まれたネメシス5の発射を遅らせるために、リリを誘拐して時間稼ぎをしたのだった。
カワナベは、マディソンがスピラミンを兵器利用して地球と火星の戦争を起こそうとしていると危機感を持ち、自分が副大統領となって彼を監視することにした。
スピラミンの発見により分断されつつある火星と地球。果たして宇宙戦争は回避できるのか、そしてリリは無事に地球に辿りつくことができるのか…
おおまかなネタバレはここまでとなります。壮大な物語の結末と真相はぜひ、ご自身の目を確かめてみてくださいね。
『火星の女王』感想
ザ・SFともいえる王道のストーリーに、小川哲さんらしいユーモアと独創性が加わった『火星の女王』。
本作はNHK100周年のドラマのために書き下ろされたにふさわしく、壮大なスケールで物語は進行していきます。
フィクションではありますが、人類が火星に移住することも そう遠くない未来に実現するのではいかと思わせる緻密さとリアリティがありました。
一番 興味深かったのはスピラミンという物質。
火星でカワナベにより発見されたスピラミンは、光速を超える速さで結晶構造を変化させる特性を持っています。
スピラミンは火星の人々にとって、地球に頼らず自立するための希望の光ですが、マディソンのような人物が使えば恐ろしい兵器にもなります。
この毒にも薬にもなるスピラミンによって地球と火星の力関係がどう変化するのかも注目するポイントです。
そして、地球と火星が9千万キロメートルというとてつもない距離があることも忘れてはいけません。
生配信でも片道5分、往復10分のタイムラグがある地球と火星では、スムーズな対話も成り立たず、コミュニケーションも円滑にはいきません。
そんな異なる環境のなかで生まれた文化や価値観は、潜在的に差別意識や敵対心が生んでいき、やがて地球と火星は対立していきます。
それはまさに、現在世界で問題になっている移民や紛争にも通じるものがあります。
物語では感染症の特効薬を巡る争いのエピソードも登場しますが、これはコロナ化のときのパンデミックにより格差が拡大した様子と酷似しており、貧困や差別によって切り捨てられた人々の苦悩も描かれています。
こういった複雑な人間ドラマも魅力で、地球生まれ地球育ちの人、火星生まれ火星育ちの人、火星から地球に戻った人、地球から火星に移住した人…など多様なバックボーンを持つ登場人物それぞれの視点がストーリーに深みを与えています。
本作は今の国際情勢とリンクする部分が多く、科学やSFが苦手な方でも手にとりやすい作品となっていますのでドラマで興味を持った方はぜひ原作も読んでみて下さいね。
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