『近畿地方のある場所について』は本当に怖いのか?考察とネタバレ!
今流行っている『近畿地方のある場所について』を読みました。本作は一風変わったホラー系の話でモキュメンタリー(ドキュメンタリー風フィクション)と呼ばれるお話で、時系列がバラバラの短いエピソードが最後に繋がっていく構成になっています。今回は映画化もされる『近畿地方のある場所について』をネタバレ有りでご紹介します。
『近畿地方のある場所について』結末までを簡単に考察
近畿地方のある場所にまつわる出来事を時系列バラバラに、コラージュのように張り合わせたようなモキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)作品です。
掲示板の書き込みやインタビューで語られるエピソードにはリアリティがあり、『変な家』で知られる雨穴さんのホラー版といった感じです。
読者は複数の短編を読みすすめるうちに少しづつ共通点を見出していき、自分にも呪いにかかったかも?と不安に思いながら結末にたどり着くという構成になっています。
◆ある場所とは
※無断転載禁止
本作では「ある場所」について「●●●●●」と伏字で表現しています。
「ある場所」は近畿地方にあり県境をまたがる山の周辺を指し、この一帯には心霊スポットや自〇スポットが多数存在しています。
山が南北に伸び、東が奈良県で東西に分かれているとあるので関西の方なら生駒山がモデルだと想像する方もいるかもしれませんが、この周辺にはダムはないので、特定の場所ではなく様々な心霊スポットを集めた架空の場所の可能性があります。
山の上には神社があり、山の西側には、ダム、 トンネル、国道があり、東側には幽霊マンション、お札屋敷が存在し、それぞれ怪異現象が目撃されています。
東京でライターをしている背筋(この本の著者)は、オカルト雑誌の編集者をしている友人の小沢から、近畿地方にある「●●●●●」に関しての調査を依頼されます。
そしてある日、小沢は「●●●●●」に行くと言い残して失踪し、背筋は「●●●●●」に関する噂、都市伝説、ネットの書き込み、雑誌への投稿などつなぎ合わせ恐ろしい事実を知るのでした。
◆3種類の「怪異」の正体
この本のなかでは、時系列がバラバラに多くの怪異がされていますが、ほとんどが以下の3種類についてのエピソードです。
●大きな口の男(まさる、ましろさま、まっしろさん)
●ジャンプ女&アキラくん
●呪いのシール
●大きな口の男
真っ白な巨体で大きな口の男は、山に住んでおり「おーいおーい」「おいでー かきがあるよー」と、山に誘います。
ターゲットは子どもを産んでいない女性で、結論から言うと明治時代に神として神社に祀られたこの辺の村に住んでいた「まさる」という男です。
まさるは、村人から「柿があるか?」と聞いたら嫁がもらえるという風習を吹き込まれ、村中な女に「柿があるからおいで」と家に誘い、気味悪がられていました。
ある日、まさるの家の近隣の女性が殺され、疑われたまさるはリンチにあって瀕死の状態になりました。
まさるはそのまま女が殺害された凶器となった大きな石に、自ら頭をぶつけ亡くなってしまいました。
あまりに惨い最期だったため、村人たちはは一緒の墓に入れたくないと、一旦 男を林のなかに埋めて墓標替わりにその大きな石を置きました。
それから間もなく、その石に自分で頭をぶつけた村の女性が大勢亡くなったことから、山の上に神社を建て、あの石を祀って「まさるさま」と名付けました。
それからというものまさるは鎮まり、平穏が戻ったのですが、祠にあった石をある者が盗んでから、またまさるにまつわる怪異現象が起こるようになったのです。
●ジャンプ女
ジャンプ女とは、いじめを苦に自殺した男の子の母親で、後に様々なところで目撃されれる赤いコートを着た女性です。
この母親は、息子・アキラくんが首つりで亡くなった際、息子を下ろそうと手を挙げて必死にジャンプしていた姿が付近の住民に目撃されていました。
この母親は、かねてよりカルト教団「スピリチュアルスペース」に入信しており、アキラくんを亡くしたあとは一層熱心な信者となり、家の塀はもちろん家のなかにもお札のようなシールのようなものを貼り出しました。
母親はアキラくんを蘇らせるために呪術的な儀式を行い、「了(あきら)」の名前ののシールを配布することで縁を広げて、命の供物(生贄)を得ようとしたのです。
そして、「スピリチュアルスペース」が祠から持ち出した石(まさるさま)を盗んで自宅に持ち帰ったことで、アキラくんの怪異が誕生しました。
それからしばらくして、その母親も家で首を吊っているのが発見され、家主がいなくなったその家は「お札屋敷」と呼ばれるようになっていきます。
◆呪いのシール
お札シールには鳥居のなかに人の絵があり、四隅に「女」か「了(あきら)」の文字が書かれた2種類があります。
これらのシールは教団の信仰の一環や布教活動に使われ、先ほどのアキラくんが亡くなったあと、母親が儀式の中で使用して家中に貼っていたものが広まったと考えられています。
「女」の方は、神社が廃れ、石も盗まれたため、まさるさまが自身の存在を広め、山周辺に居る人々をおびき寄せようとしたものです。
山の東側のマンションの子どもたちが行っていた「まっしろさん」の遊びもそうで、そのなかでアキラくんは身代わりとなって亡くなったとされています。
「了(あきら)」の方はアキラくんへの贄を求めるために、母親がアレンジしたもののようです。
◆結末
この本は背筋さんが、小沢さんが居なくなった過程を記録し、ある場所について調査する名目で「カクヨム」というネット小説投稿サイトに投稿を始めたことがキッカケとされていますが、実はその目的は違いました。
背筋さんは、失踪した編集者の小沢くんを探すために投稿したのではなく、「呪い」を広めるために書いた(書かされていた)のです。
背筋さんがカルト教団「スピリチュアルスペース」に潜入したときに、アキラくんの母親であろう女性と会ったことも確認されています。
背筋さんは、大勢の人々を呪いに晒してしまうことに葛藤しながらも、この本を公表して広めることで、自分の命を守ろうとしたのです。
だから何度も「これでお終いです」と読むことを止めさせたり、「皆さんに嘘をついてしまって本当にごめんなさい。」という記述があったのです。
最後に
呪いは怖いけど、先が気になる…本作の面白さは「自分も呪いに巻き込まれたのではないか」という余韻だと思います。
SNSの書き込みなど現代を反映するような記述もありますが、オカルト雑誌、TV特番のアメリカの超能力捜査官の透視、こっくりさんのような遊びなど、どこか昭和の懐かしさも感じる作品でした。
袋とじの写真にもワクワクしちゃいますね。
小学生時代にオカルトブームの洗礼を受けた方の方はハマるかもしれませんが、呪いが伝染していった先のオチはテンプレなので、怖さはあまりなかったです。
私的に土着ホラーが好きなので、明治時代のまさるさんのエピソードが好きでした。
女性を誘うアイテムが「柿」というのも、気味が悪いですねw
『変な家』など、今流行りの考察系ホラーとしては良く出来た作品だと思いますので、映画化されて気になった方は手にとってみてください。

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