『朝が来る(原作本)』ネタバレ!あらすじから結末まで
養子を育てる夫婦の元に、「子どもを返して欲しいんです。」という1本の電話がかかってくる。
しかし、子どもの生母だと名乗る女性は、別人だったというミステリーから始まる辻村深月さんによる小説『朝が来る』。
そこで今回は、映画化もされ話題になっている『朝が来る』のあらすじ・結末ネタバレをご紹介いたします。
『朝が来る』あらすじ
主な登場人物
◆栗原佐都子〈41〉・・・専業主婦。武蔵小杉のタワーマンションに暮らす。
◆栗原清和〈41〉・・・佐都子の夫。建設会社で働く。
◆栗原朝斗〈6〉・・・照葉幼稚園の年長組。養子として栗原家に迎えられた。生母は片倉ひかり。
◆片倉ひかり・・・朝斗の産みの親。
◆麻生巧・・・片倉ひかりの彼氏。朝斗の実父にあたる。
『朝が来る』あらすじ
武蔵小杉のタワーマンションに住む栗原清和と佐都子夫妻は、長く苦しい不妊治療の末に、朝斗を特別養子縁組で迎えた。
二人は、朝斗が養子であることを隠すことなく育て、息子は6歳となり幼稚園に元気に通っている。
そんな平穏な日常の栗原家に「子どもを返して欲しいんです。」と1本の電話が入る。
その電話の主は、朝斗を14歳で産んだ生母・片倉ひかりと名乗り、「私が産んだ子ですから返して欲しいんです。もし嫌なら、お金を用意してください。」と言った。
夫婦は話し合い、その女性に会ってみることを決めた。
養子縁組を斡旋する民間団体「ベビーバトン」から住所を聞いて、栗原家にやってきた ひかりは、短いスカートを履き、髪を明るく染め、肌の荒れた不健康そうな女性だった。
夫妻は、「・・・あなたは、誰ですか。私たちは一度、ひかりさんに会っていますが、お金を持ち出すような女性ではないと思います。あなたは、朝斗のお母さんではありませんね。」と、ひかり を名乗る女性の要求をキッパリ断った。
そこに、幼稚園から朝斗が帰ってきた。
夫の清和は「朝斗です。どうします。会いますか。」と女性に聞くと、「私、はー」と口ごもり、会うことなく帰った。
その後、女性から連絡がくることはなかった。
『朝が来る』結末・ネタバレ
女性の正体
1か月後ー。
栗原家に警察官が訪れ、「この女性に見覚えはありませんか。行方不明になっています。」と尋ねてきた。
写真の女性が、朝斗の母親と名乗った彼女だと気づいた佐都子は、「この人は、確かにうちを訪ねてきました。この人は一体、誰なんですか。」と言うと、警察官は、「片倉ひかりという女性です。窃盗と横領の容疑がかけられています。」と答えた。
栗原夫妻が追い返した、あの女性は朝斗の母親に間違いないことを知った、佐都子は「私たちは、なんてことを…」と泣き出したい気持ちになった。
栗原夫妻が朝斗の養父母となるまで
栗原夫妻は、29歳の頃から不妊治療を始めたが、清和が無精子症であることが判明する。そしてタイミング法、顕微授精などの治療を行うが、うまくいかず、最後は治療をあきらめ二人で人生を歩むことを決意していた。そんな時に、偶然テレビで養子縁組の存在を知り、ベビーバトンで、片倉ひかりの産んだ男の子を養子に迎えた。
片倉ひかりの歩んできた道のり
片倉ひかりは、教師である夫妻の次女として、栃木県に生まれ育った。
頭の固い両親は、子どもの行動や身なりにいちいち口を出し、ひかりは窮屈に感じていた。
中学生になると、ひかりは麻生巧という同じ歳の年齢の男子生徒と交際し、肉体関係を持つようになった。
そんなある日、ひかりは体調不良で、母親と病院を受診したが、告げられたのは、妊娠していること、胎児は22週を過ぎており、堕胎することが不可能ということだった。
「好きな人の子どもを産み育てたい」と願ったひかりだったが、両親は中学生なのに育てられるわけがないとして、生まれてくる子どを養子縁組に出すことを決めた。
出産と別れ
お腹がふっくらしてきた ひかりは、広島にあるベビーバトンという民間団体で出産するまで過ごすことになった。
ここには、様々な事情を抱えた妊婦たちが集まり共同生活を送っており、ひかりは、風俗嬢をしていたコノミという明るい女性と同室になり楽しく過ごした。
赤ちゃんの胎動がしっかり確認できるようになると、ひかりはお腹に毎日話しかけ、手紙を書き、この子と暮らし、誕生日をこれからお祝いすることは出来ないけれど、 ここで過ごした一日、一日を覚えておきたいと思った。
出産の日には、栃木から広島まで、両親と姉が来てくれ、20時間の陣痛の末、ひかりは男の子を産んだ。
5日後、赤ちゃんを渡す日が、やってきた。
ひかりは、愛おしそうに赤ちゃん抱いたあと、ベビーバトンの浅見に頼み、ひかりの子どもの両親となる人に会いたいとお願いした。
浅見に連れられ現れた夫婦は、真面目で優しそうに見えた。
ひかりは、別れの悲しみを断ち切るように、養母になる佐都子の手を握り「ごめんなさい。ありがとうございます。この子をお願いします。」を繰り返し、養父の清和は「朝斗と名付けます。」と力強く言った。
家出
栃木の実家に戻ったひかりは、再び学校に通いはじめたが、彼氏の巧はよそよそしくなり、関係は終わった。
親戚も、ひかりが妊娠したことを知っており、嫌いな叔父から「バカを見たな。」と言われ、その無神経さに腹が立った。
その後、母親の言うままに、姉と同じ名門の女子高に受験するが失敗し、公立の高校に進学したが、ひかりは荒れ始めた。
髪を染め、好きでも無い男と寝て、両親の財布から金をくすめるようになり、それがバレそうになると、ひかりは家を出て広島のベビーバトンに向かった。
浅見に頼み、ベビーバトンで働かせてもらっていたが、この団体は、浅見の高齢により活動を終了することが決まった。
両親の元に戻りたくないという ひかりに、浅見は、住み込みで働ける新聞販売店を紹介してくれた。
家族にも愛している人にも見捨てられ、唯一、大切にしたいと思えた自分の子どもとも引き離された、10代のひかりは、その不安を受け止めるだけの余裕はありませんでした。
転落
新聞配達店で働き始めた ひかりは、仕事の過酷さに根をあげそうになりながらも、頑張って働いていた。
ある日、トモカという女性が新聞配達店で働くことになり、ひかりと同室になった。
ベビーバトンにいたコノミに似ているトモカに、ひかりは心を許し、自分の生い立ちをすべて話した。
しかし、トモカはいつからか、ひかりに「お金を貸して。」というようになり、そのまま返済をせずに、新聞販売店を辞めて失踪した。
数日後、男二人が新聞配達店にやってきて、ひかりに「柳原好子の保証人になってるから、金を返済しろ。返すあてがないなら、風俗店を紹介するよ。」と言った。
トモカの本名は、柳原好子と言って、無断で保証人の欄に ひかりの名前を書いたようだった。
最初は、ひかりも「私は保証人になった憶えはありません。」と断っていたが、頻繁にやってくる男たちに恐怖を覚え、ついには広島の新聞配達店を逃げ出し、電車に乗り、行く当てもなく横浜で下車した。
犯罪
横浜に降り立ったひかりは、住み込みのホテルの清掃の仕事に就くことが出来た。
しかし、そこにも借金取りの男たちがやって来て、「ひかりちゃんに払ってもらえないなら、栃木のお母さんのとこに行かなくちゃならないなぁ。」と脅した。
それから、毎日、男たちはひかりの住む社員寮を訪れ、プレッシャーをかけてきた。
耐えられなくなった、ひかりは、すぐ返すつもりでホテルの事務所の金庫にあった金を盗み、男たちに渡した。
しかし、金が無くなったことはすぐにバレ、責任者で祖父のように慕っていた浜野から「軽い気持ちでやってしまったかもしれないけど、これは犯罪だ。来月には本部の人がやって来るから、それまでに返さないと警察に行くことになってしまうよ。」と言われた。
「返せます。すぐに。」そう言った、ひかりは、ベビーバトンで働いていたときに盗み見た栗原夫妻の住所を思い出していた。
栗原家を訪れた ひかりは、朝斗が自分のことを“広島のお母ちゃん”と呼んでいることを知った。
そして、佐都子から、自分がかつて、朝斗に読んで貰おうと書いていた手紙を渡された。
ひかりの胸は、胸がしめつけられるようだった。
その時、「ただいまー」と朝斗の声が聞こえた。
「会っていきますか。」という清和に、ひかりは、自分には会う資格がないと、「申し訳ありません。私は“広島のお母ちゃんではありません”」と言って去った。
結末
ひかりは、その後、働いていたホテルには戻らず、ビジネスホテルやネットカフェを転々としながら1か月を過ごした。
そして、「今日ここで終わりにしてしまおう。」と歩道橋の下を流れるように走る車を、何時間も見ていた。
すると、背中に“どんっ”という強い重みを感じ、振り返ると そこには、ひかりを抱きしめる佐都子と、傍らに立つ朝斗が居た。
佐都子は、 「ごめんなさいね。分かってあげられなくて。ごめんなさいね。追い返してしまって。」と言った。
朝斗は、ひかりが広島のお母ちゃんだと分かると、屈託なく「ええ?広島のお母ちゃん?」と言った。
それを聞いたひかりは、「私はー。私はー。ごめんなさい…。」と言い、子どものように大声で泣いた。
それから佐都子は「一緒に行こう」と言葉をかけ、ひかりを放しまいとして抱きしめ続けた。-END-。
映画『朝が来る』キャスト相関図とあらすは⇒こちら
最後に
10代の妊娠、特別養子縁組というシビアなテーマでしたが、ラストは優しく包み込まれるような希望のあるもので読後感は良かったです。
不妊治療という長いトンネルを抜けて母親になった佐都子だからこそ、母親になれなかった ひかりに共感することができたのでしょう。
行く当てもなく彷徨う ひかりの描写は、どこか角田光代さんによる『八日目の蝉』を思わせ、最後は思わず、目頭が熱くなりました。
「子どもを産めなかった側」と「子どもを手放さざるを得なかった側」という2つの視点から描かれた『朝が来る』は、2020年10月に永作博美さん、
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