『きよしこ』重松清原作のあらすじと結末ネタバレ

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吃音の少年が、人との出会いと別れを繰り返しながら、成長・自立していく重松清さんによる小説『きよしこ』。
今回は、NHKでドラマ化も決定している『きよしこ』の原作のあらすじと結末ネタバレをご紹介いたします。

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『きよしこ』原作あらすじ


きよしこ [ 重松清 ]

ある日、小説家の男の元に、うまくしゃべれない少年の母親から手紙が届いた。母親はテレビのドキュメンタリー番組で男をみて、「この人も言葉がつっかえてしまうんだ」と気づいた。子どものことを心配する母親は、男に「吃音なんかに負けるな。」と少年を励ますため手紙を書いてくれとお願いしてきた。

男は、手紙の返信をするかわりに、自分の少年時代の小説を書き「個人的なお話」として送ることにした。

男の名前は、白川清。小学1年生のきよしは、話すときに言葉がつっかえてしまう吃音。“どもり”のある少年。その どもりのせいで、きよしは、クラスメイトにからかわれ、思ったことを伝えられず、友達は1人もいなかった。

自分の名前もうまく言えない きよしは、自分の名前と似ている友達“きよしこ”が遊びにくるのをずっと待っていた。“きよしこ”というのは、クリスマスソング「きよし、この夜」を「きよしこ、の夜」と勘違いしていたことに由来する。「思ったことを話せる友達が欲しい。」けど、そんな友達は夢の中にしかいない。“きよしこ”はきよしの空想の中で生きる友達だった。

きよしの吃音の原因は分かっていないが、いつから どもり始めたのかは覚えている。それは、3歳より少し前、母親がきよしの妹を出産するため、きよしを父の実家に預けて行ってしまったとき。母親は、きよしが泣いてはかわいそうだと、事情も話さずにきよしを置いていった。しかし、何も知らないきよしは、朝起きると両親を探しまわった。そのとき「おはよう」「お母さんはどこにいる」などの言葉がひとつも出てこなかった。それが言葉が詰まった初めての出来事だった。

『きよしこ』は、そんな孤独な少年きよしが、父の仕事で何度も転校を繰り返しながら、様々な人と出会い、ケンカし、別れ、どんぐりを拾い、海まで自転車で走り、クラス会の台本を書き、闘い、成長していく物語。

ドラマ『きよしこ』キャスト・相関図とあらすじは⇒こちら


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『きよしこ』結末ネタバレ

きよしこ

きよしは、転校するたびに自己紹介をさせられたが、きよしは「きよし」の「キ」を発音するのが、とても苦手だったため、自分の名前を言うのが大嫌いだった。二学期の途中で引っ越した町でも、自己紹介にしくじり、からかいの対象になった。

そんななか、きよしは、子ども会のクリスマスイベントに参加することになった。そこには、しつこくちょっかいを出してくる同級生のマツザキやタナカもいた。そのクリスマス会で、きよしは自己紹介をするよう促された。案の定、声がつっかえて、胸が苦しくなったきよしは、その場から逃げ出してしまう。

帰宅すると、何もしらない両親からクリスマスプレゼントが渡された。しかし、それはきよしが欲しかった“魚雷戦ゲーム”のおもちゃではなかった。「魚雷戦」の「ギ」が言えないために、本当に欲しいものを伝えることが出来なかったのだ。

きよしは「ありがとう」を言おうとしたが、また息が詰まった。それを見て両親の顔も曇った。すると、きよしはプレゼントを何度もタンスの角に何度も叩きつけた。せっかくのクリスマスは台無しになり、「ごめんなさい」も言えず、きよしは、泣きながら眠った。

その夜、きよしの元に“きよしこ”がやって来た。きよしは、きよしこに、これまでの悲しかった出来事を話した。きよしこは「誰かに何かを伝えたいときは、その人に抱きついたり、手を握ったりして話せばいいんだ。 伝わるよ、きっと。」と言った。

次の日、きよしは両親に抱きついて「ごめんなさい。ぎょ、ぎょ、ぎょ、魚雷戦ゲーム」と本当に伝えたかったことを言葉に出した。それから、ポストを見るとクリスマス会で忘れたお菓子を、マツザキとタナカが届けてくれていた。

乗り換え案内

小学校の先生に勧められ、「おしゃべりサマーセミナー」に参加することになったきよしは、そのプログラムで加藤くんに出会った。加藤くんは、きよしよりも吃音の症状が重く、きよしと仲良くなりたいが言葉が出ないため、嫌がらせばかりしてきた。きよしも、そんな加藤くんの気持ちに気づき何度も「バスで一緒に帰ろう」と言おうと思うのだが、うまく声が出せずにいた。

そんななか、父の仕事の人事異動できよしはまた転校することになった。一方、「おしゃべりサマーセミナー」では、「きよし」の「キ」さえつっかえなくなれば…と考えていたきよしだったが、それさえもうまくいかなかった。

「おしゃべりサマーセミナー」のプログラムも終わりに近づいた頃、PTA副会長の女性がやって来て「ここでは、同じ悩みや苦しみを持った人ばかりだから恥ずかしがらないで。気にするから余計に言葉が出なくなるの。笑われても自信を持って話すのよ。」と訳知り顔で話した。きよしは、そんなことを言う大人に限って、スラスラと滑らかに話すことを知っていた。

そしてその女性は、きよしに「顔を上げなさい。トイレ行きたいなら、ちゃんと言わなきゃわからないでしょ。」と小さい子どもに話すように言った。きよしは悔しくなって机を何度も床に叩きつけた。それを見た加藤くんも、うなりながら拳で机をたたいた。その日から、きよしは加藤くんのちょっかいに反応するようになり、加藤くんも嬉しそうにした。

最後の授業の日、きよしと加藤くんは、バスで同じシートに座った。二人は、テキストの表紙にかわるがわる落書きをしたり、肘でつつき合ってじゃれあった。しかしバスの乗り換えのためお別れする時間になった。加藤くんは顔を真っ赤にして絞り出すように「らい、ねん、」と言った。きよしは、「ごめんね」の「ご」が出ないため「引っ越しするんだ。もうすぐ。」と答え別れた。

きよしは加藤くんのことを忘れないために、夏休みの思い出の作文に書いた。加藤の「カ」は発音しづらいため「佐藤」に変えて。

どんぐりのココロ

小学5年生になったきよしは、五回目の転校をした。転校には慣れたはずなのに、自己紹介のときに言葉がつかえ、友達を作ることができなかった。そんなきよしと友人になったのが、昼間から酒を飲んでいる おっちゃんだった。

きよしは、週のほとんどおっちゃんのいる神社へ行き、おっちゃんにどんぐりの種類を教わったり、野球のバッティングなどをして遊んだ。

おっちゃんは、きよしが、どもりだと気づいていたが、慰めたり、励ましたりもしなかった。ただ「そんなん。どーでも、ええやんか。」と、そのままを受け入れてくれた。そして、おっちゃんは「今度、二人乗りで海に行こう。」ときよしを海に誘った。

その夜、近所の人から、きよしがアル中の石川さん(おっちゃん)と遊んでいると聞いた母親は、「あんな怖い人とは遊んではダメ。」と言った。きよしは心の中で「ええやんけ。」と思った。

ある日、学校でクラス対抗のソフトボールの試合が行われた。きよしはそこでホームランを打ったことで、友達と打ち解けることができた。そして放課後に野球の練習に誘われた。その日は、おっちゃんと海に行く約束をしていたが、すっぽかした。それからおっちゃんには会いにいかなくなり、おっちゃんのことも忘れていった。

そして、また父親の転勤が決定した。きよしは引っ越しの前におっちゃんに会いにいくことにした。しかし、いつまで経ってもおっちゃんは姿を現さなかった。きよしは、おっちゃんに話したいことがあったのに…と少し悲しくなった。それから、きよしは思いっきり自転車を漕いで海に行き「ええやんけぇ。」と怒鳴り、どんぐりを海に投げた。

北風ぴゅう太

小学校6年生になったきよしは瀬戸内海の町に引っ越した。そしてお別れのクラス会の劇の台本を書くことを担任の石橋先生から任された。きよしの文章を書く才能を見抜いていた石橋先生だったが、先生の娘は心臓の病気で手術を控えており、学校を休みがちだった。

きよしは、クラス会の劇で「マッチ売りの少女」を題材に、少女がマッチをするたびに小学校の思い出が表れ、最後のマッチで少女が中学生になるというハッピーエンドの物語を書き上げた。そして配役も、きよしが決定し、自分は一番セリフの少ない“北風役”にした。そして、「ピ」をうまく発音できないので、セリフは「ピュー」から「ヒュー」に書きかえた。

台本を読んだ石橋先生は、きよしを褒めたが、通行人AとかBにも人生があるから名前をつけてやれと、1つだけやり直しを与えた。きよしは、「名前…先生がつっ、つっ、つけて下さい。」とお願いした。そして先生は照れ臭そうに、きよしの役名を「北風ぴゅう太」と名付けた。きよしは嬉しい反面、ぴゅう太ならセリフは「ヒュー」よりも「ピュー」の方がいいなと思った。

そんななか、先生の娘の手術が、発表会の3日前に決り、先生は劇に当日の朝も学校に姿を現さなかった。きよしのクラスの劇が始まったとき、一人の生徒が石橋先生が客席にいるのを見つけた。先生はいつものように笑って、両手でおおきな〇を作った。きよしは、台本にはなかったが、ステージから降りて「ぴゅううううううう~」といいながら先生のお尻を押してステージにあげた。先生は鼻をすすりながら、ぴゅう太と同じように両手を広げ走った。

ゲルマ

中学2年生になってきよしは、ゲルマという ちょっと迷惑なクラスメイトと友達になった。ゲルマというのはゲルマニウム・ラジオを作って市の科学展で銅賞をとったことに由来する。ゲルマは、きよしのことを「どもる」から「ドモ」と悪びれもせずに名付けたが、きよしは「ゲ」の発音が苦手なため「藤野くん」と呼んだ。

ゲルマには、かつてギンショウという親友がいた。ギンショウという名は、いじめられっ子だったため、ゲルマが自信をつけさせようと、ギンショウの作った一球ラジオを科学展に出して銀賞をとったことに由来する。

そんなギンショウは、ゲルマの筆記用具や金を盗みはじめたことをキッカケに、クラスメイトの学級費や給食費を盗んだ末に捕まった。そんなときでも、ゲルマは、金は自分が使って、筆記用具は自分が落としてギンショウが拾ったものだ と主張してギンショウをかばった。

そんななか、ギンショウが更生施設から学校に戻ってくることになった。ゲルマはきよしに「ギンショウと友達になれ。明日、学校に来たら最初に話しかけろ。」と言い、前もって、きよしをギンショウの元に連れていった。ギンショウは、施設で悪いことを覚え、ゲルマの不良の兄のグループに入っていた。そして、きよしの吃音を笑った。ゲルマは「笑うな!」と怒鳴った。

その足で、ゲルマはきよしに手作りのラジオを見せてくれた。きよしは海を渡って飛んできた目に見えない電波を捕まえるラジオに魅了された。

次の日、ギンショウが登校してきた。誰もギンショウには話しかけず、ギンショウも誰とも話さなかった。きよしも、ゲルマに頼まれていたが、どうしても喉が締め付けられるようで声をかけられなかった。

そんなある日、ギンショウはゲルマに「キャロルのカセットテープ返せよ、お前、兄貴の部屋から盗んだだろう。」と言った。そのテープは、確かにゲルマが無理やりきよしに借し、今まさに、きよしのカバンに入っている。ゲルマが「泥棒に泥棒と言われたくないわ。」というと、ギンショウがポケットから彫刻刀を取り出した。

きよしは、焦って「藤野(ゲルマ)あった!あった!キャキャキャキャロルのテ、テ、テ、テープ。」と言い、ほら!とギンショウに見せた。ギンショウは顔を歪め、彫刻刀をきよしの鞄に突き立てた。

ギンショウはそのまま少年課の警察に連れられ、再び施設に入った。ゲルマはこれ以上、ギンショウを悪い道に誘わないでくれと兄に頼んだが、聞き入れてもらえなかったので殴りかかり、返り討ちにあって目にアザを作った。

ギンショウ事件のあと、きよしとゲルマは疎遠になった。その後、進学校に入学したきよしと、工業高校に入ったゲルマは街でばったり出くわした。ゲルマは不良の友人に、きよしを殴れと命令された。ゲルマは友人の手前、コワモテを作っていたが手を上げることはなかった。きよしは自転車で逃げながらも「ゲッツ、ゲッ、ゲルマ!ほいじゃあ。またの。」と手を振った。ゲルマはチラリと少年を上目遣いに見て、うつむいた。

交差点

中学3年生のきよしは、野球部に入部し市内大会を控えていた。そんななか、転校生の大野が野球部に入部した。大野は、野球がうまく、正岡のポジションを奪ったため、嫌がらせを受けていた。あまりものの転校生の辛さが分かるきよしは、すぐに大野と友達になった。

帰りは、少し遠回りしてでも、大野と一緒に帰り、色んな話をした。

市内大会の日、きよしのチームは、対戦校と接戦になったが、きよしのエラーで負けてしまった。正岡をはじめとした3年生は、負けた原因を大野になすりつけた。きよしは、友達だろう。転校してきたからって、そんなこと言うなと怒った。

そんなある日、きよしはまた父に転勤の話が出たことを知らされた。子どもの進学もあるし転勤は断ってくれと言う母と、それなら出世は出来ないと言う父は、口論になった。ちょうどそのとき、きよしに正岡から電話がかかってきた。正岡は、「調子の悪いきよしの代わりにレギュラーになった。俺も最後の試合に出たいから許してくれ。」と言った。

次の日、レギュラーのユニフォームを正岡に渡した。きよしは涙が出そうになった。その日の帰り道、大野は「突き指したから、明日の試合頼む。俺はもともと転校生で余りもの、お前を補欠にしてまで、試合に出たくない。」ときよしに言ってきた。

きよしは、「アホなこと言うな」と言って、自分があげた黒いシャツを返せと言った。大野から返してもらったシャツには“Never Give Up”と書かれてあった。きよしは「がんばるけん。」と言いたかったが、詰まってしまった。大野は、「がんばれ」と言われたと勘違いして「俺、がんばるから。」と言った。

きよしが家に帰ると、父は転勤を断ってきたと言った。母はそれを喜び、きよしもその声を聞いて笑顔になった。

東京

高校3年生になったきよしは、大学受験を控え、ワッチという女性と付き合っていた。

ワッチは、祖母の介護をし看取った経験から、きよしが言葉に詰まっても気持ちを先回りして読むことが出来るので、きよしの言いたいことが分かるという。前向きで明るく、誰かを励ますことが好きな優しい子だった。

喫茶店に二人で言っても、きよしが「コ」と詰まればワッチは「コーヒー」を注文してくれた。きよしは本当は紅茶が欲しかったけど、言い出せなかった。

ワッチはきよしより年上でY大の2年生。きよしがY大を受験して一緒に過ごせることを楽しみにしていた。しかし、きよしは地元のY大ではなく東京のW大に進学して教師になりたいと考えていた。

「東京に行きたい」と母親に話すと、誰の助けもない東京に行ったら苦労するからと反対をした。ワッチにもW大に行くことを話すと、ワッチは「わけがわからない。アホ違う?」と言った。そしていつもように、ワッチがウェイトレスに「コーヒー2つ」と注文しようとしたとき、きよしは「こっ、こっ、紅茶」と言った。ワッチは「私が通訳してあげるのに。」と言った。きよしは、東京に行けば優しく通訳してくれる人もいないんだと思い、勇気を出して注文したのだった。

最後にワッチが「東京に行けば、私みたいに通訳してくれて好きになってくれる女の子なんかいないよ。」と言った。きよしは「がんばる」と言おうとしたが言葉が出なかった。ワッチは「ごめんね」と言われると勘違いしたらしく「謝らなくていいよ。聞きたくない。」と大宰府のお守りを渡し去っていった。

きよしはその後、駅で東京行きの切符を買いにいった。すると、そこに「きよしこ」がいた。駅員がきよしに「どちらまで?」と聞くと、きよしは「東京」と言うため、深呼吸をして声を出した。

最後に

『きよしこ』を読むと、吃音ではなくても子どもの頃に上手く言葉に出して伝えられなかった悔しくて、懐かしい記憶がよみがえります。

この物語では、主人公きよしの吃音が治ることも、悩みが解決することもありません。しかし、辛い現実に直面しても、きよし少年の心には明るい未来が灯っています。

じんわり心があたたくなるような不思議な短編集『きよしこ』に興味を持った方は、吃音の国語教師を描いた重松清さんの『青い鳥』もぜひおすすめします。

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