『そしてバトンは渡された』ネタバレ!原作のあらすじ結末
『そして、バトンは渡された』は、父親が三人、母親が二人いて、家族のカタチが七回も変わったヒロインが、それぞれの親から目いっぱいの愛情を受け取り、成長する姿を描いた作品です。そこで今回は、瀬尾まいこさんによる感動作『そして、バトンは渡された』のあらすじから結末のネタバレと登場人物、相関図をご紹介いたします。
『そして、バトンは渡された』相関図と登場人物
◆『そして、バトンは渡された』登場人物
◆森宮優子・・・女子高生。苗字は四回変わったが、明るく、素直に育つ。
◆森宮壮介・・・・現在の優子の三人目の父。東大卒のエリート。どこか抜けてるが真面目な人物。
◆泉ヶ原茂雄・・・二人目の父。不動産会社社長でお金持ち。包容力のある優しい紳士。
◆田中梨花・・・二人目の母。若くて綺麗なオシャレママで、自分の道を貫き通す強さがある。
◆水戸秀平・・・優子の実の父親。小学4年生まで一緒に過ごす。今は仕事でブラジルにいる?
◆早瀬賢人・・・優子の同級生。ピアノが上手い。
◆『そして、バトンは渡された』相関図
『そして、バトンは渡された』は、現在と過去をいったりきたりするストーリーで、家族のカタチが目まぐるしく変わっていきます。
途中で迷子にならないためにも、以下の相関図を参考にしてみてください。
優子 | 父 | 母 | |
1 | 水戸優子 |
水戸秀平 (実父) |
実母 (亡くなる) |
ー | |||
田中梨花 |
|||
2 | 田中優子 |
ー | |
3 | 泉ヶ原優子 |
泉ヶ原茂雄 |
|
ー | |||
4 | 森宮優子 |
森宮壮介 |
田中梨花 |
ー |
『そして、バトンは渡された』あらすじ
◆産みの親 水戸秀平
受験を控えた高校2年生(17歳)の森宮 優子は、父親が三人、母親が二人いる。
家族の形態は 十七年間で七回変わったけれど、優子は全然不幸ではなかった。
高校二年生になった優子は、担任の向井先生から進路相談のときに「困ったことやつらいことは話さないと伝わらないから」と言われるが、悩みがないことが悩みだった。
複雑な家庭環境だったが、どの親も優子には目いっぱいの愛情を与えてくれ、不満はほとんどなかったし、今の父親の森宮も例外では無かった。
優子の最初の名前は 「水戸優子」。優子の母は3歳のときに交通事故で亡くなり、父親の 水戸秀平と祖父母に育てられた。
◆二人目の母 田中梨花
小学校二年生になると秀平が、二人目の母親となる若くて美しい 田中梨花と再婚。
美人で若い継母だと、いじわるな部分を想像する人もいるかもしれないが、梨花は明るく笑顔が素敵な女性で、優子のことをとても可愛がってくれた。
そんな幸せな三人家族の生活も、秀平のブラジルへの転勤により崩れてしまう。
外国に行くことを嫌がった梨花は秀平と離婚し、優子は大好きな二人のどちらかに付いていくか自分で決めなくてはいけなくなる。
そんな優子に梨花は、「ブラジルに行けば今と全く違う生活になるよ。」と得意の話術で囁き、優子は友達と離れたくないと梨花を選び日本に残った。
それを境に名前が「田中優子」に変わり、優子はブラジルにいる父親に手紙を書いたが、返事はこなかった。
梨花は、秀平から養育費をもらっていたが、浪費グセが治らず働き始める。しかし、お金は毎月カツカツで足りなかった。
◆二人目の父 泉ヶ原茂雄
そんななか優子は小学六年生になり、友達の影響でピアノを習い始めたいと言い出した。
優子からお願いされることは めったに無かったため、梨花は張り切って、卒業祝いとしてピアノをプレゼントすることに。
しかし、梨花はただピアノを購入したわけではなく、優子に急な引っ越しをを告げ、大豪邸に連れていった。
梨花は、不動産屋を営む 泉ヶ原茂雄というかなり年上の男性と再婚を決めた。
優子にとって二人目の父となり、名前は 「泉ヶ原優子」となった。
泉ヶ原は、穏やかな生活で優子にもとても優しかったし、家事はすべてお手伝いさんがやってくれ、大きなピアノもあった。
誰もが羨むような裕福な生活だったが、梨花は次第にこの生活に窮屈さ感じ泉ヶ原家を出ていった。
◆三人目の父 森宮壮介
家を出ていった梨花だったが、泉ヶ原家にたまにやって来ては優子に「一緒にこの家を出よう」と誘った。
しかし、優子は自分の子どもでもないにのに、大切にしてくれる泉ヶ原に恩を感じ、独りにさせてはいけないと梨花の誘いを断っていた。
そんななか、優子が中学三年生になった頃、梨花は中学生の時の同級生である ここに本と、結婚をしたいと言い出した。
梨花は、優子が中学を卒業した春休みに泉ヶ原に、森宮と籍を入れたこと、優子を引き取りたいと申し出た。
しかし 泉ヶ原は、驚く様子もなく梨花との離婚をあっさりと受け入れ、優子は少し寂しい気持ちもありましたが泉ヶ原家を後にした。
そして、優子は三人目の父親の苗字に変わり 「森宮優子」となった。
梨花、優子、壮介、三人の生活が始まって2か月後、梨花は「探さないでください。」と書置きを残して出ていった。
その後、梨花から再婚したいからと離婚届けが届いたが、森宮はあっさり判を押し承諾し、梨花の父親となる決意を固めていた。
優子も、梨花が自分を置いていったことよりも、自分よりも大切な人が出来たことが嬉しく思った。
◆以下ネタバレとなります。知りたくない方はご注意下さい。◆
『そして、バトンは渡された』結末ネタバレ
◆トラブル
高校三年生になった梨花は、一人の男子生徒を巡って友人トラブルとなり、クラスの女子から無視されるようになったが、さほど気にしていなかった。
しかし、梨花の複雑な家庭環境が噂になり始め、大げさになって誤解されては困ると、梨花は三人の父親と二人の母親がいることを説明。
それを聞いたクラスメイトたちは、驚きながらも、優子の堂じない態度に「強い」「肝が据わっている」と感心する者たちも出てきた。
そんな話を優子から聞いた森宮は、優子を元気づけようと、少しズレてはいるがニンニクたっぷりのスタミナ餃子を沢山作った。
そんな森宮を見て、自分は世渡りがそんなにうまくないこと、
そして、不器用な自分を、いつも親になってくれた人たちは、フォローしてくれたことに気づかされた。
◆初恋から結婚
3年間ピアノに打ち込んできた優子は、合唱コンクールでクラスの伴奏者に選ばれた。
その練習中に、優子は早瀬賢人という男子生徒が弾くピアノの音色の虜になった。
しかも、その早瀬から優子は「ピアノが上手いね。」と褒められ、早瀬のことが気になり始める。
その頃、優子は森宮とささいなことからギクシャクしてしまう。
本当の親子でなく、表面上でだけで話しているからうまくいかなんだ…と落ち込む優子だったが、合唱コンクールの前日、森宮の学生時代の曲を弾いたり、一緒に歌ったりしたことがキッカケで、二人は今よりも一層 絆を深めた。
合唱コンクールは上手くいったが、その後、早瀬に彼女がいることを知った優子は、失恋してしまう。
高校卒業後、短大に進学した優子はその後、山本食堂という小さな家庭料理の店に就職。
そこで働いている最中に、初恋の相手 早瀬と再会し、交際することに。
早瀬は、イタリアから帰国したところだったが、音楽かシェフの道に進むか定まっていなかった。
二人は結婚することにしたが、森宮は反対。
森宮は、音楽が楽しめるファミリーレストランを作りたいと、すぐに外国に行ってしまうような早瀬に優子を渡したくなかったのだった。
それから何度も、早瀬は結婚の挨拶にいったが、森宮は結婚を許さなかった。
そこで、優子は先に、泉ヶ原、梨花など歴代の親たちに結婚を報告しにいくことにした。
◆梨花が急に消えた理由
音信不通だった梨花の居場所を知っていたのは、泉ヶ原だった。
梨花は重い病気を患い、病院に入院し、泉ヶ原と再婚し金銭面など世話をしてもらっていた。
梨花が、最初に泉ヶ原家を出て行ったのは、窮屈なこともあったが、優子にこんな生活をさせていたらダメな人間になってしまうと思ったからだった。
そのため、経済的に自立できるようになったら迎えにいこうと働いてお金を貯めていた。
そんな矢先、健康診断で病気が発覚し、優子に迷惑をかけないように母親であることをあきらめ、これから優子を大切に見守ってくれる人物を探した。
それが森宮壮介だった。森宮は梨花の予想通り、優子との生活を楽しみ大事にしてくれた。
そして、梨花の病気のこと、優子を想う梨花の強い気持ち、すべてを知った泉ヶ原は、梨花の面倒を見るために再婚したのだった。
◆実父から手紙の返事が来なかった理由
ブラジルにいったっきり、優子が書いた手紙に返事をくれなかった実父・水戸秀平のその後も分かった。
梨花は、優子が見舞いにきた数日後、荷物を送ってきた。
その中には、秀平から優子に宛てた手紙が何通も束になって入っていた。
秀平は、ブラジルに行ってからも十日に一度、優子に手紙を出していた。
しかし、梨花は優子が「ブラジルに行って、お父さんと暮らしたい。」と言い出すのが怖くて手紙のことは秘密にしていたのだった。
二年後にブラジルから日本に戻ってきた秀平は、優子に会いたいと必死に梨花に頼んでいたが、 何よりも大切な優子を奪われることが怖く、梨花は秀平に優子を会わせなかった。
梨花によると、現在、秀平は再婚し、娘が二人生まれ新しい家庭を築いていた。
それを知った優子は、秀平の生活を邪魔してはいけないと、自分の結婚報告はしないことにした。
そして、改めて二人は森宮に結婚の承諾をもらいにいく。
泉ヶ原や梨花が、素直に祝福しているのに、自分だけが反対しているのは、小さい人間のような気がして、森宮は渋々結婚を許すことにした。
◆タイトル“バトン”の意味
優子と早瀬の結婚式当日ー。
優子の親族には、少し痩せたが美しい梨花、お祝いに300万もの大金を用意してくれた泉ヶ原、さらに、手紙を読んだ森宮により、水戸秀平も招かれた。
優子に似て端正な顔立ちの水戸は森宮に「今日まで育ててくれたこと、連絡してくれたこと、感謝してもしきれません。」と頭を下げた。
優子も素直に「お父さん」と呼び、秀平は「こんなに大きくなって」と涙をこぼした。
そんな水戸に、優子とヴァージンロードを歩かせようとしていた森宮だったが、本番直前にその役は森宮に変更されていた。
森宮は自分は新参者の親だから…と遠慮したが、周りから 「優子が巣立つ場所は、当然森宮くんだ。」と言われ、森宮は幸福感に包まれた優子の隣に立った。
そして、式場の扉が開けられ、光の射す道の先には早瀬の姿を見たとき、森宮は思った。
本当に幸せなのは、誰かと共に喜びを紡いでいる時じゃない。自分の知らない大きな未来へと大きなバトンを渡す時だ。あの日決めた覚悟が、ここへ連れてきてくれた。
バトンとは、人生の節目に訪れる家族の「愛」。
これからも「幸せな未来」へのリレーはずっと続いていく。ーEND-
映画『そして、バトンは渡された』実写化の相関図・キャストは⇒こちら
『そして、バトンは渡された』の感想
作者の瀬尾まいこさんは、関西出身で国語教師の経歴を持つ方で、過去の作品と同じく、今回もとっても優しいものでした。
「親が何度も変わった」などと聞くと、さぞや苦労してきただろう…と一般的には思いがちですが、優子は総じて幸せな人生を歩んでおり、味方になってくれる大人に囲まれて育ったという設定にまず引き込まれました。
物語の構成は、現在と過去を行き来するものなのですが、現代のパートでは、森宮の作る二日連チャンの餃子、始業式のカツ丼、長文メッセージのオムライスなど、クスッと笑える温かい料理が出てくるので、本当に家に戻ってきたようにホッとします。
美味しい食べ物は、本当の親子以上にふざけ語らう 優子と森宮のあたたかい関係性を象徴しています。
そして、過去と現代をつなぐものとしてのピアノも重要な役割を果たしています。
幼少期からピアノを心のよりどころにしてきた優子。
梨花は優子に本物のピアノを与えるためお金持ちと結婚、泉ヶ原はグランドピアノの調律をかかしませんでした。さらに森宮は、あれこれ考え電子ピアノを買ってくれました。
ピアノは、各親たちの優子への愛の証明でもあり、優子の将来の旦那さまとの出会いも生み出しました。
そんなピアノというアイテムは、過去と未来のバラバラになりがちなエピソードも、うまくまとめてくれています。
そして、最後のクライマックスシーンは、全員が揃う結婚式。ここでタイトルを回収するあたりもニクイ演出。
向井先生が言った「あなたみたいに親にたくさんの愛情を注がれている人はなかなかいない」という言葉を象徴するように、みんなが優子の幸せを願い、みんなが優子の本当の親だったということで締めくくられます。
現実では、なかなかあり得ない綺麗なお話ですが、「血がつながらなくても、親子の絆はこうあって欲しい」という願いを叶えてくれる作品でした。
最後に
親が変わる?家族の形態が7回変わる?それは、どんな理由だろう?と気になって一気に読んでしまった『そして、バトンは渡された』。
読み終えると、児童書のような優しい文章が心に残り、これからの人生の節目にまた読みたいなと思える作品でした。
2019年に本屋大賞を受賞した本作は、2021年10月29日に映画が公開されます。
映画では、優子は永野芽郁さん、梨花は石原さとみさん、森宮は田中圭さんが演じると聞いて、キャスティングはなかなかなピッタリ。期待が高まりますね。
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