『凶犬の眼』ネタバレ!あらすじから結末を相関図と共に解説
『孤狼の血』シリーズ第2弾となる『凶犬の眼』は、広島県北の駐在所になった日岡が、西日本の巨大な暴力団抗争に巻き込まれるというストーリー。大上の遺志を継いだ日岡と、仁義を貫く豪傑な男との駆け引きも見どころです。そこで今回は、小説『凶犬の眼』のあらすじから結末をネタバレしていきます。
『凶犬の眼』時系列と相関図
◆『孤狼の血』シリーズの時系列
『孤狼の血』のラストでは日岡が大上の遺志を継いで、ベテラン刑事になった様子が描かれていましたが、『凶犬の眼』ではそのラストから少し時間を巻き戻し、大上が亡くなった2年後の平成2年が舞台となっています。
シリーズの時系列は以下の通り。
①『暴虎の牙』(昭和編)
↓6年後
②『孤狼の血』
↓2年後
・映画『孤狼の血LEVEL2』(オリジナルストーリー)
③ 『凶犬の眼』
↓
④『暴虎の牙』(平成編)
日岡は呉原東署捜査二課から左遷され、田舎の駐在所に勤務してから、マル暴に復帰するまでの物語です。
◆相関図
『凶犬の目』は、日本最大の暴力団組織 「明石組」の組長と若頭が暗殺されるところから始まります。
・暗殺部隊のリーダーは、明石組から分裂した「心和会」の「浅生組」若頭の 富士見亨
・計画を指揮したのは、同じく「心和会」の「義誠連合会」会長の 国光寛郎
事件後、富士見と国光はすぐに姿を消し、警察は指名手配犯として行方を追っていました。
「明石組」は、すぐに「心和会」に報復を開始し、『※明心戦争』の火ぶたが切って落とされます。
※明心戦争は、1984年に始まった山口組と一和会の間に起こった 『山一抗争』を元に描かれており、「ヤクザの鑑」と称された 石川裕雄という人物が国光寛郎のモデルです。
組織や登場人物が多いので、以下の相関図を参考にして下さい。
『凶犬の眼』あらすじから結末ネタバレ
◆左遷された日岡
尾谷組と五十子会の凄絶な抗争事件から2年後。
日岡は広島県北の田舎の駐在所に左遷された。
広島県警のあらゆる 不祥事が記されたノートを、大上から日岡が引き継いでいると睨んだ広島県警は、日岡を僻地へ追いやった。
いわば厄介払いだ。
日岡の元上司で広島県警捜査四課課長の斉宮は、「3年で戻す」と言っていたがアテにはならない。
駐在の仕事は無いに等しく、日岡の心のなかには、使命感も熱い思いも薄れ、虚無感が漂っていた。
◆国光との出会い
そんななか、日岡は、馴染みの小料理屋『志乃』を訪れた際に、旧知の間柄である 一ノ瀬守孝や 瀧井銀次が、一人の男をもてなしているところに遭遇する。
吉岡と呼ばれるその男の顔を見て、日岡は記憶を辿った。
変装はしているが、明石組4代目組長の武田の暗殺事件の首謀者として、全国に指名手配されている国光寛郎に間違いなかった。
尾谷組初代組長の尾谷憲次と北条組組長の北柴兼敏と兄弟分であるため、北柴の子分である国光の逃亡を一之瀬が手助けしていているようだった。
「いま、国光を捕まえ、手柄をたてれば、所轄に戻れる。」
日岡は身体から汗がドッと吹き出し、心臓の高鳴りを感じた。
そんな日岡の手の内を読んだのか、変装した国光は、自ら挨拶にやってきた。
「あんたが思っとるとおり、わしは国光です。指名手配くろうとる、国光寛郎です。のう日岡さん、ちいと時間をつかい。わしゃァ、まだ やることが残っとる身じゃ。じゃが、目処がついたら、 必ずあんたに手錠を嵌めてもらう。約束するわい」
日岡は、国光の所在を所轄には知らせず、動向を注視することにした。
日本最大の暴力団組織のトップの命を奪った男が言った「やること」とは、一体何なのか知りたかった。
◆国光再び
2か月後、なんと国光は日岡の勤務する駐在所に顔を出した。
国光は、中津郷に建設するゴルフ場の開発責任者になりすまし潜伏しに来たのだった。
田舎であれども、工事現場の人間なら出入りしていても目立たない。
日岡は国光の真意を測りかねていた。
そんななか、国光は日岡を呼び出し、口止め料だと1千万円を差し出した。
「国光さん。あんまり警察を舐めんほうがええですよ。わしゃァ、しがない田舎の駐在かも金で自分を売るような真似はせん。そこまで腐っとらん。」
日岡は国光を睨みながら、 金の受け取りを拒否した。
すると、国光は笑い出し風呂敷包みの中身が羊羹であることを明かした。
「話には聞いとったが、やっぱりあんたは、みんなのいうとおりの男やった。もし金をそのまま受け取るような人やったら、明日にでもここから身をかわそう思てたんや。」
国光は、日岡が金次第で裏切る奴かテストをしていたのだった。
「わしは、約束は守る男や。まあ、わしを信じてつかい」
国光と腹を割って話したことで、彼の人と成りが見えてきた。
暴力団は社会の糞だけれども、国光は、堆肥になる糞かもしれないー。と、日岡は思うのだった。
一方、ひょんなことから国光の素顔と、背中に彫られた入れ墨を、日岡に想いを寄せる豪農の娘・祥子に見られてしまう。
日岡の中に不安が広がった…。
◆不穏な動き
それから間もなく、尾谷組2代目組長・一之瀬守孝が日岡を訪ねてきた。
尾谷組や瀧井組が傘下となる「仁正会」では、会長である綿船の急死により、理事長の溝口明と本部長の笹貫幸太郎が跡目問題で揉めていたが、結局は溝口が二代目を襲名した。
新体制になった仁正会だったが、その裏で不穏な動きがあった。
役職を外されて一舎弟の身分になった 笹貫が、旧五十子会・旧加古村組の残党である烈心会の 橘一行と手を組もうとしていた。
一之瀬は日岡に、笹貫や橘と密会していた人物が乗っていた車のナンバーを特定して欲しいと頼んだ。
日岡は、仁正会内部の情報を自分に流すことを条件に、この頼みを聞き入れた。
数日後、車の所有者は、甲斐田組という小さな賭博組織の若頭・村越信広の情婦だと判明した。
村越は、瀧井組の若頭である佐川義則と兄弟分の間柄。
裏切者は誰なのか?目的は?
◆明心戦争勃発か?!
組長と若頭を殺された明石組は、やはり黙っていなかった。
心和会のトップの浅生直巳会長の自宅にロケット弾が撃ち込まれたのだ。
警察の研修合宿をしていた日岡は、気が気ではなかった。
国光が今どうしているのか、一刻も早く知りたかったが、合宿が終わるまで中津郷には帰れない。
そして、3日間の合宿を終えた日岡はバイクを飛ばし、国光が潜伏する工事現場に向かったが、そこに国光の姿は無かった。
それから2日後、今度は明石組等々力会系若狭組の組長・若狭勝次が銃撃された。
これで、全面戦争勃発だと恐れた日岡。
国光は明石組幹部をさらに襲撃するつもりでいたが、心和会は全面戦争を避けるためその計画を許さなかった。
明石組の勢力は、心和会7倍。
心和会の負けは明らかだったからだ。
「正直言うとな、そんときにわしは、ああ、これでこの戦争は負けや、そう思うた。向こうが動揺しとるあんときが、明石組に勝てる最後のチャンスやったんや。そこを逃したら、負け戦になる。太平洋戦争と同じじゃ。土台、国力が違うねん。長期戦になったら、わしらに勝ち目はない。わしァ最初から、そう思うとった」
そこで、国光は落としどころを考え、手打ちするために根回しをした。
国光は、中津郷を離れている間、親父にあたる北柴兼敏に付き添い、極道界の重鎮である目蒲総裁と、関東成道会の磯村会長に会っていた。
二人が仲裁に動けば、明石組も手打ちを考え、北柴組長の安全も確保される。
国光は日岡に、
「(明石組を)手打ちに持ち込んだら、もう心配はいらん。親父っさん(北柴)の身は安泰や。わしが娑婆におる意味も、のうなる。わしがあんたのお縄につく日も、そう遠くない、思うで。安心し。わしは、約束は守る男や」
と言い切った。
◆立てこもりと国光の約束
1か月後、日岡の元に、国光ら4人がゴルフ場建設現場の事務員を人質に取って立てこもったという情報が入ってきた。
しかし、ただの駐在員が事件現場に駆け付けることなど許されるはずがなく、日岡は一睡もせずに動向を見守っていた。
※警察に国光のことを通報したのは、日岡に惚れている 畑中祥子。国光が来てから、自分を見てくれなくなったという嫉妬心から起こした行動だった。
翌朝、日岡は斎宮に、すぐに現場に来るように指示された。
国光は、人質の女性と中津郷駐在の日岡を交換を要請してきたと言うのだ。
日岡だけは、その意味に気づいていた。
明石組と心和会の手打ちは進み、抗争の終わりは近い。
国光は約束を守るため、 自分に手錠を嵌めさせようとしているのだ。
「日岡、すまんが…警察官として、民間人と…いや民間人の、命を、救ってくれ」
何も知らない斉宮は、日岡に苦しそうに頭を下げた。
日岡は、大上からもらった狼のジッポーを指でなぞり、殉職の覚悟も決めて、盗聴器が仕掛けられた服に着替え、国光の元に向かった。
潜入すると、日岡は国光に盗聴器があることを知らせ、大芝居を打ってその盗聴器を破壊した。
国光は、現場の捜査本部に電話をかけ、明日の午後3時までに現金3億円と装甲車を用意するように指示。
これは、手打ちが行われるまでの時間稼ぎだった。
日岡は、頭がキレる国光に改めて感心した。
テレビで、立てこもりと手打ちが行われる明石組本部の中継を見ながら、国光は 「わしと、兄弟分にならへんか」と日岡に切り出した。
警察官が極道の兄弟分になる。ありえないことだ。
しかし、日岡は「大上ならどうするか?」と思いを馳せ、国光に向かって頷き、盃を交わした。
そして、手打ちが終了した様子がテレビで伝えられると、国光は日岡に目を閉じるように言い、日岡の頬をナイフで切りつけた。
「大したことないみたいやな、安心せい。まァ、傷跡は残るかもしれんが…」
国光は、日岡が犯人たちと揉み合った際に匕首で切られたというシナリオを描いていたのだ。
日岡は、4人を制圧したことを捜査本部に連絡し、国光の首に銃口を当てながらプレハブを出た。
斉宮は「よくやった!」と叫び、レポーターやカメラマンたちからも拍手が沸き起こった。
捜査員に押し倒された国光は、「待たんかい。手錠は、この駐在にはめさしたれや」両手を日岡にゆっくりと差し出した。
国光は約束を守り通した。
◆消えない火種
その後の裁判で、国光は無期懲役、他3人はそれぞれ懲役15年~20年を言い渡された。
国光は裁判官に、
「一連の抗争で命を落としたものに対して冥福を祈ります。それが仁義というものです」
と語った。
明心戦争は終結したかに思われたが、国光の親分にあたる 北柴組長が、青酸カリにより毒殺される。
警察は自決だと判断したが、誰がみても他殺であることは明白だった。
明石組の報復であれば、それと分かるように銃殺されるのが普通だが、毒殺というのは何かがおかしい。
北条組長は仁義に厚い親分として知られている。
国光も異様なほど北柴を慕っていたため、この事態に我慢がならなかった。
しかし、国光は塀のなか。どうすることも出来ない。
そこで、日岡は兄弟分となった日岡に、犯人さがしを託した。
◆結末
日岡は情報を得るため、兵庫県警一の不良刑事で情報通の千寿光隆と密会した。
「北条が服毒したっちゅう青酸カリが発見されたのは、若い者が運んだコーヒーカップからや。当然、警察はコーヒーカップやら皿やらスプーンやら、指紋を調べるわな。ここで面白いもんが出てきた。杉本の指紋や。よう考えてみい。仮にも組長本人がやで、自分でコーヒー淹れるわけないやろが。そんなん、若い者の仕事や」
杉本は暴力団対策法に苦しんでいたため、明石組に乗り換えようとしていた。
その手土産として北柴組長の命を差し出したのだった。
国光は、昔ながらの仁義の男。
組長を裏切った身内を許せるはずはなかった。
その後、乗り捨てられた車のトランクから、リンチを受けた杉本の惨殺死体が発見される。
◆
平成5年、明心戦争は完全に終結した。
そんななか、よその刑務所で問題を起こした 横道重信が国光のいる旭川刑務所に押送されてきた。
国光と同じ工場に配属された横道は、作業用のキリを国光の胸に突き立て「親分の仇や!」と叫び、彫刻刀で首を掻っ切った。
元明石組構成員・横道は、明石組組長の報復として、国光の命を狙ったのだった。
国光は肩を抱くように横道を引き寄せた。
国光の目が親の仇を討った男に向けられ、ニヤリ、と笑うように歪んだ。
『凶犬の眼』感想
真の極道とはなにか?を突き付けられる『孤狼の血』シリーズ第2弾。
他の作品よりエグさは控え目で、舞台が田舎なこともあり、どこか牧歌的です。
大上の遺志を継いだとはいえ、ガミさんの熱量、破天荒さには及ばない日岡に、物足りなさは感じましたが、日岡と極道の国光が、兄弟の盃を交わすシーンは、シビれました。
正義と仁義は、一字違い。やはり、警察とヤクザは同じ穴の狢ということ。
正義を振りかざす人は多いですが、仁義を通す人は少なくなっている現在。
仁義を貫き通す国光は実に魅力的で、その男振りに惚れてしまいます。
「極道の世界で抗争になれば個人的恨みはなくても相手の命を殺る。しかし死んだ者の冥福は祈る。それがヤクザの仁義である」
と裁判所で語り、最後は、親分の仇を取るため、自分を刺した男に「その気持ち分かるぞ」とばかりにニヤリとする国光。
一本筋が通った男!かっこよすぎでしょう!
35歳ですよ。映画になったら誰が演じるのかも今から楽しみです。
展開も、国光と日岡の会話の中に出てくる「墓を汚す杉の木」の意味が最後に分かるエピローグ。最後まで気が抜けませんね。
この最後から、完結編『暴虎の牙』に続いていきます。
そして、今回も晶子さんの作るご飯が美味しそうなこと!蛸飯食べたい。
孤狼の血シリーズ完結編『暴虎の牙』あらすじから結末は⇒こちら
『凶犬の眼』映画化は?
現在、映画『孤狼の血』の3作目が予定されているようですが、どのシリーズが原作になるか明かされていません。
映画『孤狼の血Level2』のラストが、原作の二作目「狂犬の眼」に繋がるような終わり方だったので、期待は高まります。
一方で、レベル0で完結編ともいえる『暴虎の牙』の内容も盛り込まれるかもしれませんので、今後の情報を待ちたいと思います。
なお、 映画『孤狼の血』相関図&キャストと結末については以下の記事にまとめていますので、ご覧ください。
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