『競争の番人』ネタバレ!原作の結末と犯人を相関図で紹介
新川帆立さん著『競争の番人』は、公正取引委員会を舞台にした小説です。警察でも検察でも税務署でもなく公正取引委員会。名前はよく聞きますが仕事内容を明確に答えられる人は少ないのではないでしょうか?そんな ちょっぴり地味な公正取引委員の世界を痛快に描いた『競争の番人』のあらすじから結末をまでを相関図をまじえながらご紹介いたします。
『競争の番人』登場人物&相関図
◆登場人物
【公正取引委員会審査局 第六審査】
◆白熊 楓・・・公取委の女性審査官。29歳。警察学校をある事情から中退して、公取委に転身。聴取対象者が自殺したことにより、ダイロクへ異動となる。
◆小勝負 勉・・・公取委のキャリア審査官。東大首席のエリートで経済取引局で5年ほど経験した後、ハーバード大留学を経てダイロクに異動となる。
◆桃園千代子・・・審査官。楓の上司。色気のある女性。
◆風見慎一・・・審査官。課長補佐。
◆本庄・・・女性審査長。
【白熊家】
◆白熊俊郎・・・楓の父。元警察官。
◆白熊三奈江・・・楓の母。心配性で過干渉気味。
【楓の関係者】
◆徹也・・・楓の婚約者で警察官。
◆甲賀佐知子・・・元公取委・委員長。楓の憧れの存在。
【カルテル疑惑のホテル3社】
◆天沢雲海・・・ホテル天沢Sオーナー。切れ者。
◆長澤俊哉・・・ホテル天沢Sのホテル長。30年以上勤務。
◆碓井健司・・・ホテル天沢Sウエディング部門長。
◆安藤正夫・・・Sクラシカルホテル社長。何者かに刃物で刺される。
◆政岡・・・温泉郷Sオーナー。
【下請けいじめの調査対象】
◆石田正樹・・・フラワーショップ石田の店員。安藤を刺した疑いで拘束される。
◆石田七瀬・・・正樹の妻。妊娠中。
◆青柳・・・新参の花屋ブーケドゥッフェ店長。センスが良く評判。
【豊島家】
◆豊島浩平・・・談合疑惑の聴取対象者。楓からの聴取後、自殺する。
◆豊島美月・・・浩平の娘。高校生。姿を消す。
◆相関図
『競争の番人』あらすじ
幼少期からなりたかった警察官をあきらめ、一般職採用で公取委委員会に入った白熊楓。29歳。
警察官になる夢は叶えられなかったが「国民を守り正義を実現するのは同じ」という信念のもと、公取委の審査局で働いている。
最近 楓は、談合疑惑の聴取対象者だった豊島敏郎が自殺したことにより、公正取引委員会審査局第六審査(通称:ダイロク)へ異動となった。
豊島浩平は市役所の職員だったが、長いこと続いてきた悪習である談合に関する証言をして捺印したあと、自ら命を絶った。
豊島の娘・美月からは「お父さんはなぜ死んだの?」と涙ながらに問われるが、白熊は「お父さんは悪くない」と言うことが精一杯だった。
ダイロクのメンバーは、化粧バッチリのデキる審査長・桃園千代子と審査官の 風見慎一。
そして、楓と同じく異動となった若者・小勝負 勉。
彼は20歳で司法試験に合格し、東大法学部とハーバード大学を首席で卒業したエリート。
優秀な人材が、ダイロクに異動になったことを喜ぶ風見だったが、やってきたのは毒舌で愛想のない若者。
そんななか、複数のホテルで行われているウエディング費用のカルテル問題が発覚。
不正を行う事業者を取りしまる正義の公安委員として、体育会系女子の楓と天才キャリア小勝負の凸凹バディが、はびこる悪を成敗する。
『競争の番人』ネタバレ結末
◆事件
白熊と小勝負は、ホテル3社で行われているウエディング費用のカルテル問題を調査するため栃木県へ向かう。
そんななか、二人はカルテル疑惑のある「ホテル天沢S」オーナー天沢雲海が、何者かに刺されそうになるところを発見。
白熊は、とっさに警察学校で習った絞め技で犯人を仕留めるが、公取委による内定調査がバレてしまう。
東京に戻った白熊と小勝負は、ホテルオーナー殺人未遂事件の容疑者石田正樹の証言の裏付けを取るように指示される。
しかし石田は、ホテルオーナーである天沢雲海と安藤正夫の刺殺未遂の犯行を否定し、話し合いをするために現場にいっただけで、刺すつもりはなかったと証言している。
白熊と小勝負は、拘留中の石田への接見するため出向くが、警察に拒否されてしまう。
◆下請けいじめ
手ぶらでは帰れないと、二人は石田の経営する花屋「フラワーショップ石田」を訪れた。
二人を手際よく応対したのは、妊娠中の石田の妻・七瀬。
七瀬は、長年「ホテル天沢S」に花を納入しているが、最近は挙式直前の花の変更、やり直し、追加作業は無料で行い、おまけにおせちやディナーショーのチケットなどを半ば強制的に購入させられていた。
以前、白熊は婚約者の徹也と式場見学に行った際、式当日でも急なプラン変更に柔軟に対応してくれるホテルがあることに関心したが、その裏では下請けが泣かされていることを知り、ハッとする。
白熊は身重の七瀬が置かれている状況に同情するが、小勝負は現在の経営の仕方から脱却するように諭したことで二人の意見は対立してしまう。
◆一斉調査
数日後 ダイロクのメンバーは、ブライダル業界による納入業者いじめの疑いがある「天沢グループ」の一斉調査を開始する。
そんななか、ホテル長の長澤がノートパソコンを持ち出し、車で逃走。
すぐに白熊はママチャリに乗り、死に物狂いで長澤を追いかけるが、なんと長澤はノートパソコンを川に投げ捨てた。
とっさに川に飛び込み、ノートパソコンを確保する白熊だったが、川の水は冷たく意識を失いそうになる。
そこに愛車のハーレーで駆け付けた小勝負が白熊を助けた。
東京に戻った白熊は、データ復旧の専門家・紺野守里にノートパソコンのデータの取り出しを頼んだ。
◆違法植物
しばらくたった頃、白熊は七瀬のことが心配で、再び「フラワーショップ石田」を訪れた。
そこで白熊は、以前店頭にあったオリエンタルポピーで売られた植物が作業部屋に置かれていることに気づく。
よく見るとその植物は、アヘンの材料となり日本では販売や栽培が禁止されているハカマオニゲシだった。
白熊が違法植物であることを指摘すると、七瀬は雲海がうまく処分してくれるから、黙っていて欲しいと懇願した。
七瀬は迷いながらも一刻も早く処分するように指示して、見逃すことにした。
◆花屋の調査
ある日、テレビに出演した天沢雲海が、「自分たちが納入業者をいじめていると公正取引委員会の検査を受けたが、むしろ花屋にいじめられているのはホテル側だ。」と告発した。
天沢の主張によれば、古くからの花屋6店舗が共謀して、ホテル側にこの6店舗以外と取引をしたら、今後付き合いをしないと言ってきたらしい。
Sクラシカルホテルのオーナー安藤が襲われたのも、地元の花屋から新参の花屋に乗り換えたことが理由だと言う。
公正取引委員会は業界全体を等しく調べるため、花屋にも立ち入り調査に入ることになった。
もちろん花屋のなかには「フラワーショップ石田」も含まれており、白熊は違法植物が見つからないことを願った。
しかし白熊の不安は的中し、「フラワーショップ石田」の違法植物は発見され警察に通報された。
七瀬は「自首しようと思ったが、白熊さんにこっそり処分すればバレない」とアドバイスされたため警察には言わなかったと、白熊に罪をなすりつけた。
七瀬に裏切られショックを受ける白熊に、小勝負は「お人好しすぎる」と呆れながらランチをおごった。
◆婚約者の浮気
仕事でもうまくいかないなか、白熊のもとにエリという女性から電話がある。
彼女は、婚約者・徹也の元カノで浮気相手だと言うが、徹也が白熊を選び別れを切り出されたことに腹が立って連絡してきた。
恋愛経験の少ない白熊は、不思議と徹也に怒りは湧かなかったが、このまま結婚して良いのか迷ってしまう。
◆ホテル長の証言
小勝負の計らいで、白熊が七瀬の事情聴取を行うことになった。
七瀬は、十数年前から6店舗の花屋で結託して取引関係を固定していたこと、新規参入の花屋がSクラシカルホテルと取引を始め、自分たちが契約を切られ焦っていたことを話した。
さらに、天沢グループからの過度な要求の音声データ、メモなどの納入者いじめの証拠も提供する約束をした。
これにより本格的に、ホテルと花屋の調査に取り掛かることになった。
そんな白熊と小勝負の元に、「ホテル天沢S」の料理長・長澤俊也が訪ねきた。
パソコンの件で雲海に解雇された長澤だったが、現在 有給消化中でまだホテル長の権限を持っていたため、天沢ホテルの立ち入り検査を許可してくれるという。
都合の良い申し入れに、二人は「雲海の罠では…」と疑ったものの、この好機を逃すのはもったいないと、立ち入り調査を行うことにした。
白熊は長澤に、パソコンのデータには雲海が善意団体と寄付金額が記録されていたことを話した。
長澤がいうには、雲海は下請けを泣かせて利益を得るなど、稼ぎ方にはこだわりがないが、金の使い方には潔癖なまでのポリシーがあるという。
つまり、いじめで吸い上げた金を、後継者育成や新しく画期的なプロジェクトに投資していたのだ。
◆宿泊台帳発見
「ホテル天沢S」の立ち入りの日。
長澤からカルテル資料の保管場所に案内された白熊と小勝負だったが、なんと彼に部屋に閉じ込められてしまう。
しかし、そこには宿泊名簿があり、そのなかにカルテル絡みの人物たちばかりが利用する部屋があることが分かった。
そこには、Sクラシカルホテルの安藤、温泉郷Sオーナーの政岡….そして、かつて白熊が聴取して自殺した市役所職員・豊島敏郎の名前もあった。
ホテルの一室は、談合には最適な場所。
雲海は、この部屋の特別使用料金も善意団体に寄付に回していた。
◆美月が犯人?
翌日、警備員によって発見された白熊と小勝負は宿泊名簿のデータを上司の桃園に提出した。
その後、七瀬から電話があり天沢ホテルと取引をやめたこと、赤ちゃんが無事に産まれたと連絡があった。
その際、七瀬はホテル同士が密会する場合、納入業者が伝達役として約束をとりつけていることを明かした。
報告を受けた桃園は、温泉郷Sオーナーの政岡に取り入り、カルテル現場をおさえる計画をたてた。
そんななか、豊島敏郎の娘・美月が安藤刺殺未遂の容疑者として、警察に捜索されているという情報が入った。
白熊は、安藤が入院している部屋を張り込み、美月を発見する。
父の自殺の原因を作ったホテルオーナーたちを憎んでいた美月だったが、実は犯人ではなかった。
◆真犯人
桃園の働きで、ホテル3社のカルテル密会日が分かった。
盗聴器で部屋のなかの様子をうかがっていたダイロクのメンバーは、事件の真相を知ることになった。
雲海は長年、自分のホテルの一室をカルテルの密会場所として提供していたが、どこからか部屋の録音データが流出し、それに安藤が関わっていることを突き止めた。
しかし雲海は、安藤が何者かに刺され、音声データを奪われたと思って焦り、警察よりも早く犯人を見つけ口封じしをようと必死だった。
そこで雲海は、時間稼ぎのため「フラワーショップ石田」の石田正樹に違法植物販売をバラすと脅して、包丁を持って呼び出し警察に逮捕させた。
その間に、雲海は従業員のウェディング部門長・碓井健司が録音データを撮り、安藤を脅して刺殺しようとしたことを突き止める。
そして雲海は、碓井を監禁していた。
すべての悪事がバレてしまった雲海は、白熊の首にカッターを向けて抵抗するが、逆に白熊に絞め技をかけられて失神してしまう。
こうして雲海は逮捕され、複数の罪に問われた。
その後 白熊は、婚約者の徹也と別れ、小勝負に見送られながら九州に異動となった。
『競争の番人』感想
名前はよく聞くけれども「公正取引委員会とは、なんぞや?」と興味をそそられた本作。
お仕事小説多々あれど、公正取引委員会の職員を描いた物語は初めてではないでしょうか?
公正取引委員会とは、財務省に虐められ、経産省に馬鹿にされ、検察からは疎まれ、弱いながらも闘う、競争の番人。
カルテル、談合、独禁法など不公正取引を排除し、強者の横暴を許さない正義の機関です。
新川帆立著でヒットした『元彼の遺言状』よりは現実味があり、自分たちの生活に直結するような話なので、私は本作の方が好みでした。
高圧的でキャラで押し切る剣持麗子より、不器用だけど一途な主人公 白熊楓の方が共感できます。
体育会系で運の悪さは天文学的のノンキャリ女子と毒舌系エリートキャリア男子の凸凹コンビが、世にはびこる悪を暴いていくストーリーは痛快そのもの。
お仕事系エンターテイメントとしても映像化向きで、月9でドラマ化されるのも納得ですし、坂口健太郎さんが小勝負役にドンピシャではないでしょうか。
さらに、恋愛の甘酸っぱいシーンもあり、ハプニングを乗り越え距離を縮めていった白熊と小勝負のその後の関係も気になりますので、ドラマではぜひ描いて欲しいですね。
ドラマ『競争の番人』キャスト相関図は⇒こちら
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