『正欲』キャスト相関図！タイトルの意味や多様性の矛盾とは？

「多様性」という言葉に問いを投げかける朝井リョウさんによる小説『正欲』が映画化されます。そこで今回は映画『正欲』のキャスト・相関図と原作から見どころをご紹介いたします。

『正欲』キャスト一覧

◆寺井の家族と周囲の人々

寺井啓喜◆稲垣吾郎

横浜検察庁の検察官。自分の力でマイホームを持ち、妻と子を養う。「普通」であることが当たり前だという考えを持つ。

寺井由美◆未発表

啓喜の妻。

寺井泰希◆未発表

啓喜と由美の小学生の息子。不登校児。教育のあり方に疑問を抱く動画に触発され、自身も動画チャンネルを開設して動画投稿し始める。

◆夏月の周囲の人々

桐生夏月◆新垣結衣

地元広島のショッピングモールにある寝具店で働く。「幸せ」の概念を押し付けてくる人を冷めた目で見ている。同じ異常性癖を持つ同級生の佳道とふとしたきっかけで再会する。

佐々木佳道◆磯村勇斗

夏月の同級生で、彼女と何らかの秘密を共有している男性。両親が亡くなったことをきっかけに中学3年まで暮らしていた広島に戻ってくる。

◆八重子の周囲の人々

神戸八重子◆東野絢香

学園祭の実行委員を務める大学生。容姿にコンプレックスを持ち、男性の性的な視線に嫌悪感を抱く。

諸橋大也◆佐藤寛太

八重子が思いを寄せる、ダンスサークル所属の美しい大学生。彼も秘密を抱えている。

『正欲』相関図

『正欲』の相関図はただいま作成中です。

『正欲』あらすじ

横浜検察庁検事の寺井啓喜は、不登校の息子が教育のあり方に疑問を抱く動画に触発され、自身も動画チャンネルを開設して動画投稿し始めたことが受け入れられないでいる。

「睡眠欲は私を裏切らないから」という理由で寝具店の販売員として働く桐生夏月は、同じ異常性癖を持つ同級生の佐々木佳道とふとしたきっかけで再会する。

学園祭の実行委員を務める大学生で、容姿にコンプレックスを持つ神戸八重子は、「性的」な目で他人を見ることに嫌悪感を持つ。男性に見られることに恐怖心を抱いていた八重子だったが、ミスコン出場者の諸橋大也からだけはそんな気持ちを感じないと気づく。

それぞれの世界で生きてきた3人だったが、寺井の息子がYouTubeでチャンネルを開設したことをキッカケに、人生が重なり合う。

しかしその繋がりは、”多様性を尊重する時代”にとって、ひどく不都合なものだった――。

「正欲」とは？「多様性」の意味とは？

◆タイトル『正欲』とは？

「正」しさと「欲」望という反対のイメージを組み合わせたタイトル『正欲』。

正しい欲求とは一体何なのでしょうか。

この作品では、「正しくない」とされる「性欲」を持った人たちと、それを「正しくない」と判断する側の人たちが交互に登場します。

『正欲』には性的欲求の他に、人間の生存欲求や承認欲求も含まれます。

「睡眠は裏切らないから」と寝具店で働く夏月、「食欲は裏切らないから」と食品会社で働く佳道。

啓喜は、自分の価値観を教え導くことに喜びを感じ検事の仕事をしています。

また啓喜の息子・泰希は、承認欲求を満たすためYouTuberを目指しています。

みな自分たちの欲を正当化しようとして生きていますが、それが難しい場合もあります。

例えば、夏月、佳道、大也の勢いよく飛び出す水や、水風船が割れて弾ける水の性的興奮を覚え水フェチ。

水の興奮する夏月たちは、マイノリティのなかのマイノリティ。

原作では、「多様性」を声高に掲げる人ほど

「想像を絶するほど理解しがたい、直視できないほど嫌悪感を抱き距離を置きたいと感じるものには、しっかり蓋をする。」

と指摘しています。

私たちの考える「正欲」は、自分の想像の範囲内で処理できるもので、自分の理解の範疇を超えるフェチズムは「変態」なのです。

こんなに多くの欲望が渦巻く世界で、全てを理解しよう、されようっていうのが無理なのかもしれませんね。

◆「多様性」という言葉の矛盾

「多様性」という言葉には、全体をまとめて包み込むようなイメージがあります。

世の中の多くの人間は、「多様性」という言葉を使う時とても気持ち良く感じます。

しかし、その言葉の裏を意地悪く読み解けば、「理解できるよ」「受け入れますよ」という姿勢を示し、自分が排除されないように「多様性」という言葉を利用しているのではないでしょうか。

原作では、大也が自分の内面にくすぶっていた気持ちを八重子に爆発させるシーンがあります。

自分が想像できる”多様性”だけ礼賛して秩序整えた気分になってそりゃ気持ちいいよな。お前らが大好きな”多様性”って、使えばそれっぽくなる魔法の言葉じゃねえんだよ。
自分にはわからない、想像もできないようなことがこの世界にはいっぱいある。そう思い知らされる言葉のはずだろ。

マイノリティは、LGBTQや障碍者だけじゃない。

窒息フェチ、拘束・緊縛フェチ、匂いフェチ、色んな性的嗜好もあることもある程度理解できる。

だけど、小児性愛だけは犯罪にならなくても絶対に「NG」という方も多いのではないでしょうか。

彼らも、生き辛さを抱えているのは同じなんですが…。

この小説のいやらしいのは、冒頭に小児性愛者集団の逮捕記事をもってくることで、読者に「多様性を認めながら線引きをしているのはあなたじゃないですか。」と突き付けてくるところです。

『正欲』という作品は、「多様性」という言葉の本質をとらえずに思考停止をしている人々に、冷や水を浴びせるような問題作であることは間違いありません。

朝井リョウ『正欲』の詳しいあらすじ～結末は⇒こちら

2022.09.29

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『正欲』公開日

朝井リョウさんによる『正欲』は、「本当に正義を理解している？」「あなたが思う“多様性”ってその程度？」と価値観を思いっきり揺さぶられる作品です。

なお映画『正欲』は、2023年全国ロードショーです。お楽しみに。