『満天のゴール』ネタバレ!あらすじ~結末 ドラマ化決定の感涙医療小説

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藤岡陽子さんによる小説『満天のゴール』は、過疎化が進む丹後半島を舞台に、シングルマザー、医師、老女、3人の人生と共に、生と死を温かいまなざしで綴る物語です。そこで今回はドラマ化も決定している『満天のゴール』のあらすじから結末をご紹介いたします。

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『満天のゴール』登場人物&相関図

登場人物

川岸奈緒・・・夫に裏切られ、故郷・京都の北端に位置する丹後地方に逃げ帰り、看護師として働き始める33歳のシングルマザー。
川岸涼介・・・奈緒の息子。10歳。
三上高志・・・海生病院で地域医療に奮闘する医師。35歳。
早川順子・・・奈緒の集落の隣人で、人生をあきらめ、無気力に生きる高齢女性。72歳。
鴨井徳仁・・・三上が受け持つ患者。元神主で一人暮らし。癌を患いながらも自宅療養をしている。
内山寛之・・・奈緒の夫。ホテルマン。響子と不倫し、奈緒に別れを告げる。
篠田響子・・・寛之の不倫相手。ワインソムリエ。寛之の子を身ごもる。

相関図

※無断転載ご遠慮下さい。

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『満天のゴール』あらすじ

33歳になる奈緒は、夫・内山寛之の裏切りにあい、さらに離婚まで切り出され、逃げるように10歳になる息子・涼介を連れて故郷に戻ってきました。

過疎化が進みゴーストタウン化した故郷・京都の丹後地方の実家では、結婚以来 顔を見ることもなかった父・耕平が一人暮らしをしています。

父とは、母を病気で亡くしたときの出来事が確執となり、奈緒は世話になりながらも素直に接することができないでいました。

そんななか、父が涼介と出かけている最中に交通事故に遭い、地元の海生病院に入院。

奈緒はすぐに病院にかけつけますが、そこで地域医療に奮闘する医師・三上と出会います。

また、奈緒と同じ集落に住む隣人・早川順子という老婆が意識を失っているところを助け、顔見知りとなります。

その後、夫に捨てられて離婚に応じることにした奈緒は、東京に戻らず故郷に移住することを決意。

ワーキングマザーとなった奈緒は、かつて看護学校に通い免許をとったものの一度も就職したことのなかったペーパー看護師として海生病院で、三上と共に働き始めました。

三上に付いて医療過疎地域で往診診療を行う奈緒は、ある日 彼のあまりに寂しげで暗い孤独の影をまとった表情を見てしまいます。

一方、人生をあきらめ命が早く尽きることを待ち望む早川を、なんとか元気づけたいと思った奈緒と涼介でしたが、彼女の日記帳から重大な秘密を知ることとなります。

早川という老女に隠されていた真相とは?三上が時折見せる孤独な顔の正体とは?

以下ネタバレとなりますので、未読の方はご注意下さい。

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『満天のゴール』結末ネタバレ

奈緒と父の確執とは

奈緒が父親に対してどこか余所余所しいのは、母親が亡くなったときのある出来事がきっかけです。

奈緒が20歳くらいの頃、母が長年患っていた肺の手術を海生病院で受けることになりました。

奈緒は手術の前日も心配で母を見舞っていましたが、そこに年配の看護婦がやってきて「手術をやめなさい。お母さんを転院させなさい。」といきなり忠告してきたのです。

訳が分からなかったけれども、看護婦のただならぬ言葉に恐怖を感じた奈緒は、父に手術を中止するように懇願しますが、聞き入れてもらえませんでした。

そして母は手術の2日後に合併症のため亡くなってしまい、その出来事により奈緒は父と距離を取るようになっていきました。

その後、奈緒はそのときの看護婦を探しましたが、病院で見かけることもなく分からず仕舞いで、このときの記憶の嫌悪感から看護婦になることも辞めてしまったのです。

早川の過去に何があったのか?

奈緒の集落の隣人である老女の早川は、看護婦の仕事をしていましたが10年ほど前に辞めてしまいました。

また、若い頃は東京で結婚して子どももいましたが、その子どもを9歳の頃にインフルエンザ脳症で亡くすという辛い過去を背負っていました。

その後 早川は夫とは離婚し、息子が亡くなったのは自分のせいだと罪の意識を背負いながら、東京で訪問介護の看護師として働いていました。

そんななか、早川は十一歳にして難病を患う祖母の介護を一人で担う、上松高志という少年に出会います。

母親を早くに亡くし、アル中の父親からは背中に熱湯をかけられ大火傷を負ったこともある高志でしたが、そんななかでも看護師として早川が来るのを楽しみにしていました。

そして、早川も高志のことを可愛がっていました。

ある日二人は夏祭りに出かけましたが、早川が高志の手を引いてアパートに戻ると、彼の祖母は痰を咽に詰まらせて亡くなっていました。

あの日、高志は早川に「家にはお父さんがいて、おばぁちゃんのことは任せてある」と嘘をついてお祭りに行きました。

高志を救うために早川は咄嗟に「自分が介助をするのを忘れていた」と、訪問介護センターの所長に報告して罪をかぶりました。

そして、早川は責任をとって退職

故郷に戻り、海生病院で再び看護職に就いたという いきさつがありました。

あのときの看護師は…

ここで勘が良い人はお気づきでしょう。

奈緒に「手術をやめなさい。お母さんを転院させなさい。」と忠告した看護師は早川でした。

早川が東京から戻ってきて海生病院で働いている頃、偶然にも奈緒の母を受け持つことになったのです。

奈緒の母親の手術は特殊なものではありませんでしたが、母の主治医にとっては不慣れなものでした。

それを知った早川は「そのような状態で手術をするものではない」と言って声をあげましたが、経営を第一とする院長の方針で手術が中止されることはありませんでした。

奈緒の母が亡くなった後、早川は担当医と病院を糾弾するために証拠を集めていましたが、それを面白く思わない病院関係者の告げ口により懲戒免職にされました。

いくら奈緒が忠告してくれた看護師を必死に探しても見つからなかったわけです。

また、奈緒が初めて早川と会ったときに「どこかで会ったことがある」と感じたのも、このときの記憶が残っていたからでした。

三上先生と早川の関係は?

もう一人の主人公ともいえる医師の三上は、早川が自分の患者でもないのに彼女の家を見つめていたり、会うことを避けているような行動をとっていました。

実は、早川が東京で交流していた少年・上松高志は、三上でした。

奈緒と涼介は、偶然にも三上の背中の火傷の傷を見てしまい、彼が早川の日記に綴られていた高志だと確信していました。

高志は祖母が亡くなった日以来、姿を見せなくなった早川に嘘をついたことを謝れないままでした。

そのときからずっと、高志は「自分のせいで祖母は亡くなり、早川も看護師を辞めるはめになった」と罪悪感を背負ってきました。

里親に育てられ三上高志となっても、年に一度は観光客のふりをして丹後地方にやって来ては早川の安否を確認していました。

それから早川は何らかの病気を患っていると知った三上は、求人募集に応募して海生病院で働くことを決めたのでした。

結末 満天のゴールとは?

奈緒が早川と三上を再会させ、二人はようやくあの時のわだかまりを解くことが出来ました。

そして、三上は早川に了承を得て、彼女の大腸がんの手術の執刀医になりますが、開腹してみるともう手遅れの状態でした。

さらに術後に早川の容態が急変。

早川は三上に「あなたは、いつでもいい子だった。私は最後にあなたに幸せしてもらってゴールを迎えるの。高志くんのお母さんになりたかったの…」と喘ぐように話しました。

こうして、早川は三上、奈緒、涼介に見守られながら息を引き取り、満天のゴールを迎えたのでした。

三上は、動かなくなった早川の手を取り「お母さん、たくさんの星をありがとう…」と呟きました。

タイトル「満天のゴール」とは?・・・高志が少年の頃、頑張った日だけ早川から星のシールをもらえました。シールを集めることが嬉しかった高志は、医師になってから早川から教えられた「死ぬことはゴール」になぞらえ、お年寄りの患者にも頑張った日の数だけシールを渡していました。患者は命尽きるその日が「満天のゴール」となるように、日々を大切に生きているのです。

『満天のゴール』感想

冒頭から、モラハラ夫の不倫にめちゃくちゃ腹が立ちますが、それは序章に過ぎず、物語は過疎化の進む丹後半島に移ってからが本番となります。

早川や三上の謎めいた過去を描きつつ、医療過疎、終末医療、ヤングケアラー、児童虐待など現代の問題も自然に絡めて綴られています。

著者の藤岡陽子さんは現役の看護師として従事されているとあって、医療現場のリアルな様子や患者への温かく優しい眼差しを感じることができました。

また、登場人物の会話のなかには、心に響くものが多くあり、

「奈緒。一段一段や。仕事の上達は階段を上がるのと同じや。上がるのをやめてしまったらそこから先の景色は見えへんぞ。」

「誰にも救ってもらえないのなら、あなたが救う人になればいい。救われないなら救いなさい。」

「自分の頑張りに星をくれる人がいる。それだけで人は生きられるのかもしれない」

など、苦しいときに希望を見出せるような言葉が散りばめられています。

登場人物のキャラクターに目を向ければ、一番魅力的なのは涼介くん。

旦那に未練タラタラで不倫されても まだヨリを戻そうとしている奈緒に比べ、まだ10歳なのに天真爛漫で強い涼介くんは、本当に頼りになります。

純粋な心を持ち、怖れを知らない彼は、奈緒だけでなく、三上や集落のお年寄りを勇気づけ、励まし、時には道を踏み外さないよう諭してくれる存在です。

『満天のゴール』は、限界集落に暮らすお年寄りの命を支える医療従事者のお話であり、「死」というゴールに向かう人たちの尊い生き様を見守る作品です。

亡くなることは辛いだけではなく「人生のゴール」という捉え方が素敵で、自分もシールを集めるように一日一日を大切に生き「満天のゴール」を目指したいなと思います。

あと心残りは、三上先生と奈緒の関係。これからどうなるのか?ちょっと気になりますね。続編も読んでみたいです。


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