『季節のない街』ネタバレ！ドラマのキャストとあらすじ

山口周五郎による小説『季節のない街』が、宮藤官九郎が企画・監督・脚本でドラマ化されます。本作は1962年に刊行され戦後の貧民街を舞台に、架空の列車を運転する障がいのある少年、夫を入れ替える妻たち、悪妻をもつ顔面神経症の男性など、ありのままをさらけ出して生きる人たちの姿を描いた群像劇です。そこで今回はドラマ『季節のない街』のキャストとあらすじ、原作をネタバレ有りでご紹介いたします。

ドラマ『季節のない街』あらすじ＆キャスト

◆あらすじ

“ナニ”から12年──この街には、“ナニ”で被災した人々が身を寄せる仮設住宅があった。今もまだ、18世帯ものワケあり住人が暮らしていたが、月収12万超えると『即立退き』とあって、皆ギリギリの生活を送っていた。主人公の田中新助こと半助は、街で見たもの、聞いた話を報告するだけで『最大一万円！』もらえると軽い気持ちで、この街に潜入する。だが、半助こそ“ナニ”によって何もかも失い、ただ生きているだけの男だった。しかし、ギリギリの生活の中で、逞しく生きるワケあり住人らを観察するうち半助は次第に、この街の住人たちを好きになっていく。そんな中、仮設住宅が取り壊されるという噂が街に流れはじめるのだが……

原作では戦後の困窮した長屋街が舞台（横浜のスラム街をモデル？）であることに対し、ドラマは“ナニ”で被災した仮設住宅という設定になっています。

ドラマの企画・監督・脚本を担当する宮藤官九郎さんと言えば、朝ドラ『あまちゃん』で東日本大震災を題材にしていましたので、今回も同じ震災を思わせる内容になるのかもしれません。

◆キャスト＆登場人物

半助/田中新助◆池松壮亮

“ナニ”によって何もかも失い、ただ生きているだけの男。街の人々の暮らしぶりを報告するだけで報酬がもらえるとあって、1匹の猫とともに街にやってきた。

タツヤ◆仲野太賀

青年部のリーダー。半助を強引に青年部に入れる。

オカベ◆渡辺大知

酒屋の息子。青年部メンバー。

◆

小説では風の吹溜まりに塵芥（ちりやゴミ）が集まるようにできた貧民街とありましたが、そこに住む人々は

住人たちが極めて貧しく、九割以上の者がきまった職を持たず、不道徳なことが公然とおこなわれ、前科者やよた者、賭博者や乞食さえもいる

といった具合です。

登場人物のバリエーションも豊富で、架空の電車を運転する知的障がいの少年、の夫を交換し合って暮らす妻たち、血の繋がらない子供を五人も養う男、自宅に忍び込んだ泥棒をかばうたんば老人、姪を妊娠させてしまう呑んだくれの男、物乞いの親子など、ヘビーで滑稽な人たちばかり。

ドラマでは、青春群像エンターテイメントということで、池松壮亮さん、仲野太賀さんと渡辺大知さんなど若者からの視点で、貧民街の人々の様子が描かれるようです。

『季節のない街』原作ネタバレ

歴史小説家のイメージが強い山本周五郎さんですが、この『季節のない街』は、人間の悲喜こもごもな人生をユーモアたっぷりに描いた群像劇です。

登場人物は貧民街とその周辺に住む人々で、15の話からなる短編集となっています。

①街へゆく電車

「街」の住人ではない六ちゃんは、母親のおくにさんと暮らしている。知的障がいのある六ちゃんは、毎日 他人には見えない電車を懸命に運行している。おくにさんは、そんな息子の六ちゃんを見て思い嘆くが、六ちゃんは母親の頭のほうがおかしいと考えている。

②僕のワイフ

「街」へ越してきた島さんは、いつもきちんとした身なりをした好人物だが、片足を少し引きずっていて、たまに顔面に発作が出る。奥さんは、近所付き合いを一切せず、客が来ても挨拶もしないため悪妻と陰口をたたかれている。そんななか島さんは同僚を夕飯に招く。彼らは妻のぞんざいな対応に憤慨して罵倒するが、島さんが逆上して飛びかかり苦労を共にしてきた妻を擁護する。

③半助と猫

半助の飼っている猫のとらは、半助の側を離れない。外に出るととらは、ナンバーワンのボス。犬さえ威嚇し、犬より強い。そんなか半助は博奕打ちは連れ去られてしまい…。

④親おもい

放蕩者でいつも金を無心にくる兄を母は可愛く思っている。家のためにコツコツ貯金する真面目な弟は、そんな兄に嫌気がさし家を出るが、兄が交通事故にあってしまう。助かる見込みがない大けが。母は自分に黙って、兄の枕元に通帳と印鑑が置いた。兄にとりすがる母を残し、弟は病室を出る…。

⑤牧歌調

土木工事で働く増田と河口そしてそれぞれの妻たちは、泥酔の末に自然と夫婦交換してしまう。しかし、しばらくすると何ごともなかったように元の組み合わせに戻ってしまう。

⑥プールのある家

廃車をすみかにする父と子。父は定職に就かず豪邸を建てることばかりを語っている。子どもが食中毒になっても成すすべを知らず、ただ空想の建設をしている。子どもが亡くなったあと、塚穴の前で父が両手を広げると、生前 子どもが希望していたプールが出現する。

⑦箱入り女房

飲む打つ買うのうち打つが大好きな徳さんのところに性癖のかわったくに子さんというが嫁に来たお話。

⑧枯れた木

孤独で無感動に生きるマットレス作りの平さんのもとに、かつての妻が訪ねてくる。妻は自分が犯した姦通罪を謝罪するが、平さんは口を閉ざしたまま。やがて諦めたように彼女は去っていく。

⑨ビスマルクいわく

｢憂国塾｣塾頭の寒藤清郷は、｢ビスマルクいわく…｣が口癖。

⑩とうちゃん

子だくさんのブラシ職人・沢上良太郎と相手誰とも知らず妊娠をくりかえす妻・みさお。近所の噂を聞いた長男は、父に自分たちの出生を問う。父は親子関係が信頼のうえで成り立つことを説き、親子の絆は確認される。

⑪がんもどき

少女のかつ子は、病に伏せる叔母・おたねと怠け者で呑ん兵衛の京太の養女。かつ子は二人に代わり、身を粉にして働くが、京太に乱暴され妊娠してしまう。命を絶とうと決意したかつ子は、好意を抱いていた酒屋の岡部少年を刺し警察の拘束される。一命をとりとめた岡部に真意を問われたかつ子は、自分が亡くなったあと忘れさられるのが怖かったと答えた。

⑫ちょろ

空想的事業家の“ちょろ”こと土川春彦の事業話を春彦の同居人ばんくんは我慢強く聞く。

⑬肇くんと光子

こしかけに廃品回収業を手伝う福田肇は、妻の光子の虚言癖に悩まされ、彼女としばしば衝突する。

⑭倹約について

東の長屋に住む塩山慶三には妻・るいと娘3人の家族がいる。塩山家は質素、勤勉で善良な市民のお手本のような生活をおくっている。そんななか 娘のはるが結核にかかるが、夫婦は治療よりも、どうしたら金をつかわずに済むか考えた。そうこうしているうちに ふきが亡くなり…。

⑮たんばさん

「街」の賢者的存在の彫金師・たんばさんは、自宅に押し入った泥棒を警察からかばい、荒れ狂う男も意表をつく対応でなだめ、浮浪者の哀しみを読み取り、自ら命を絶とうとする者の人生も肯定する。

『季節のない街』感想

『季節のない街』には、現実の世界に「普通」の人間が存在しないように、物語のなかには個性的なキャラクターが多く登場します。

彼らに共通しているのはその日暮らすことが精一杯で、うわべの体裁を整える余裕もなく、ありのままに生活していること。

下品で狡くて、堕落したどうしようもない人間が多いですが、鈍く淀んだなかにキラリと輝くものも持っている。

感情、欲望むき出しで、ありのままに生きる姿は、不思議と不快ではなく どこか滑稽です。

物質的に恵まれ、虚飾にまみれた現代に暮らす私たちにとっては、自分をさらけ出している街の人々は、ある意味うらやましく見えるかもしれません。

なかなか壮絶なエピソードもありますが、私たちの親や祖父母世代の空気感もあり、どこか懐かしさも感じさせてくれます。

貧しいけれど、自由に生きられた時代。

やるせないけど、温かい。

臭い物に蓋をすることなく、「在るもの」を「在る」として書かれたリズミカルな文体は、仏教や古典落語のようなものも感じられます。

物語のなかに救いの手を差し伸べるヒーローは出てきませんが、ままならない現実を淡々と生きる人たちの姿には、きっと力をもらえるはずです。

ぜひ映画化で興味を持った方は、原作の方も手にとってみてくださいね。

なお、ドラマ『季節のない街』は、全10話構成で8月9日から公式動画配信サービス「Disney＋（ディズニープラス）」スターにて配信されます。

そしてこのたび、Huluとディズニープラスのセットプランが誕生しました。

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