『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』ネタバレ!あらすじ~驚きの結末まで

童話の世界で起こる残酷な事件を、赤ずきんが解き明かす『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』は、かわいらしい表紙とは裏腹に、後味が悪いダークミステリーです。今回は、青柳碧人さんによる『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』のあらすじ~結末をネタバレ有りでご紹介いたします。
『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』登場人物
本作では「赤ずきん」の童話には関係ないシンデレラやヘンゼルとグレーテルなどが登場しますが、主人公の「赤ずきん」は探偵ポジションとなり、彼らの周囲で起こる事件を解決に導いていきます。
◆登場人物
◆赤ずきん・・・ある場所にクッキーとワイン届けるため、バスケットを抱えて旅をしている。
◆シンデレラ・・・義母と義姉たちにいじめられる灰だらけの少女。
◆王子さま・・・お妃を探すためお城で舞踏会を開く。
◆ヘンゼル&グレーテル・・・継母に森に置き去りされお菓子の家に監禁されてしまう。
◆オーロラ姫・・・魔女の呪いによって100年の間眠りについている王女。
◆エレン・・・売れるマッチを発案した、マッチ売りの少女。
『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』あらすじとネタバレ
赤ずきんが、ある場所に赤ワインとクッキーの入ったバスケットを届けるため、旅に出るところから物語が始まります。
まずは、最初に出会うシンデレラのお話から…
◆ガラスの靴の共犯者
魔女に魔法をかけてもらった赤ずきんはシンデレラとかぼちゃの馬車でお城の舞踏会に向かいますが、途中で男をひき殺してしまいます。
二人は遺体を森のなかに隠し、舞踏会へ足を踏み入れますが、なぜか会場にいるほとんどの女性がガラスの靴を履いていました。
そんななか、「炭焼きハンスの死体が発見された」という情報が王様にもたらされました。
そして12時の鐘が鳴り、シンデレラと赤ずきんは急いでお城をあとにしました。
シンデレラの家に泊まらせてもらった赤ずきんでしたが、眠ることができずに森のなかを散歩していると、シンデレラの姉・マルゴーが駆け寄ってきました。
赤ずきんは、「ハンスを殺したのは自分かもしれない」と言うマルゴーを城の兵に引き渡しますが、なにかが引っかかりました。
翌日、王子様がガラスの靴を持ってシンデレラの家を訪れますが、足がぴったりはまったシンデレラはお妃ではなく、犯人として逮捕されてしまいました。
ネタバレ
赤ずきんと出会う前、シンデレラは舞踏会に行けない腹いせに、継母のエメラルドのネックレスを森に隠そうとしました。
しかし、その現場をハンスに見られてしまったため、とっさに彼を殺してしまいました。
そして、犯行をマルゴーになすりつけるため彼女をハンスの家におびき寄せますが、うっかり自分の顔を見られてしまい、履いていたガラスの靴で殴り、命を奪いました。
そのとき、衝撃でガラスの靴のヒールが吹っ飛び、マルゴーの襟巻に引っかかりました。
目を覚ましたマルゴーは、目の前にハンスの遺体があることに気が動転し、疑われては困ると思い、走ってくる馬車の前にハンスの遺体を転がしたのでした。
ヒールを見つけることができなかったシンデレラは、鳩のお墓に欠けたガラスの靴を埋めて証拠隠滅をはかりました。
だから赤ずきんと出会ったとき、シンデレラは裸足だったのです。
赤ずきんの推理により、王子は鳩のお墓から掘り出したガラスの靴をシンデレラに履かせて、犯人の特定を行いました。
◆甘い密室の崩壊
ヘンゼルとグレーテルにミートパイをごちそうになった赤ずきん。
帰ってこない継母・ソフィアを探しにお菓子の家に向かうと、倒れた食器棚の下敷きになり、ソフィアは亡くなっていました。
さらに、奥のかまどからは魔女の焼け焦げた遺体が見つかります。
腑に落ちない赤ずきんは、森の管理者で狼のゲオルグと再びお菓子の家を訪れます。
主の魔女が亡くなったいま、家は朽ち果てていくばかり。
そんななか、赤ずきんは屋根のビスケットだけが他のお菓子と違って湿気を帯びておらず、比較的あたらしいことに気づきました。
ネタバレ
継母により森に置き去りにされたヘンゼルとグレーテルは、魔女に監禁されますが、かまどに魔女を突き飛ばして命を奪い、脱出しました。
そして家に帰ると、金貨を見つけたと継母をお菓子の家に誘い出し、食器棚を倒して殺害。
内側にあるすべての扉と窓に鍵をかけた二人は、椅子を足場に天井の穴から脱出し、魔女をそそのかして用意させた新しいビスケットで蓋をしました。
こうしてヘンゼルとグレーテルは逮捕されますが、赤ずきんは兄・ヘンゼルが妹・グレーテルに歪んだ愛情をもっていることを知るのでした。
◆眠れる森の秘密たち
お姫さまが眠り続ける国を訪れた赤ずきん。
国の首相を助けたことで屋敷に泊めてもらうことになりましたが、そこで働く召使いの息子・メライが、人の命を奪ってしまったと知らされます。
メライは無実を訴えましたが、逮捕されました。
事件があった頃、事件現場の近くで火事があり井戸が使えなかったために、メライは廃墟にあるポンプで水を飲んだと話しました。
そして、そのときカップルが逢引きしているところを目撃しましたが、今のところ該当する人物は見つかっていません。
火事になったのは鍛冶屋のスムスの家で、彼は国宝である「王家の鎧」をお城から盗み出して家に保管していたことを自供しました。
首相は今回だけは大目に見るとして、「王家の鎧」を城に返しにいったスムスと赤ずきんたちは、ついでにオーロラ姫の様子を見ようと塔のてっぺんの部屋を訪れました。
しかし、その部屋にオーロラ姫の姿はありませんでした。
ネタバレ
赤ずきんは、これまでの状況を整理し、鋭い推理力で事件の真相を暴きました。
事件の少し前、大工のナップは召使のグリジェに恋をして、オーロラ姫の眠るベッドで過ごすことを思いつきました。
そしてナップは、オーロラ姫の部屋にある糸車の手回し車を滑車として利用し、両側に椅子を一脚づつくくりつけました。
片方の椅子にはグリジェを乗せ、もう片方の椅子にはオーロラ姫を乗せて下に下ろしました。
その際、オーロラ姫の体が、「王家の鎧」を盗んで持ち帰るスムスが停めた荷車の上に落ちてしまいましたが、彼女は火の災難から逃れる魔法をかけられていたため無事でした。
逢引きしていると思われたカップルは、オーロラ姫に付いたスス洗っている ブルクシだったのです。
メライを犯人に仕立てあげようとしたのは、隣国から首相の養子として送り込まれたゲーネンという男でした。
実はトロイは、オーロラ姫と首相の息子で正当な王位継承者で、ゲーネンが彼を邪魔に思ったことが動機でした。
◆少女よ、野望のマッチを灯せ
最終章の舞台は赤ずきんの旅の最終目的地であるシュペンハーゲンで、赤ずきんVSラスボスの戦いになります。
シュペンハーゲンでは、ガルへンという男がマッチ工場を経営していました。
彼のマッチは粗悪品でしたが安いため、街の人々はそのマッチを購入していました。
おかげでガルヘンは儲かり、裕福な生活をしていました。
そのマッチ工場の片隅に、ガルへンの遠い親戚で身寄りのないエレンという9歳の女の子・エレンが住み込みで働いていました。
エレンはガルヘンからマッチを売ってくるように命じられますが、質の悪いマッチはなかなか売れません。
そんななか、エレンのもとに天使が現れ「エレンが触れたマッチを擦って願いごとをすると、燃え尽きるまでは好きな夢を見られる」という不思議な力を与えてくれました。
しばらく幸せな夢を見たエレンでしたが、しょせんそれは幻。
そこでエレンは、現実でも金持ちになってやろうと、ガルへンの家を焼き払い、ガルへンの工場と遺産を全て相続しました。
その後、エレンのマッチは「マッチを擦りながら願いごとをすると、夢の時間が訪れる」と評判になり、商品は飛ぶように売れました。
13歳にして大成功を収めたエレンでしたが、彼女の野望はこれだけでは終わりませんでした。
ネタバレ
赤ずきんがシュペンハーゲンまで旅を続けた理由は、エレンへの復讐のためでした。
赤ずきんの祖母は、エレンのマッチの中毒者となり飲まず食わずを続けて廃人となり、亡くなっていました。
お菓子の家の事件で出会った狼のゲオルグの手下であるテントウムシのエイミーは、エレンのスパイが反エレン組織にまぎれていると忠告。
赤ずきんは毒入りのクッキーと火薬入りのワインボトルを持ち、エレンのマッチの被害者による集会に参加しました。
しかし、その集会にいた赤ずきんを始めとした参加者は捕まり、牢屋にぶち込まれてしまいました。
これは、オーロラ姫の事件のときの大工のナップが、エレンの牢獄がマッチの箱のようにスライドする仕組みになっていると教えてくれたため、わざと赤ずきんは捕まったのです。
しばらくして、牢獄にいた囚人たちかなぜか抜け出し、エレンのマッチの直営店を次々と襲撃したという情報が入ってきました。
赤ずきんはマッチ箱のような牢獄を利用し、仲間たちと共に窓のない空間にスライドして、いなくなったように見せていました。
現場の直営店では赤いずきんを被った人物が多数目撃されており、エレンは私設の兵隊を総動員して捜索にあたったが、捕らえることはできません。
この町中に現れた”赤いずきん”の正体は、魔女のバーバラの魔法によるものでした。
その夜、エレンの工場は赤ずきんとデンマーク国王の兵隊に包囲されました。
エレンは、私設の兵隊を動かさないとデンマーク国王と約束したのに、それを破ったことと、マッチの中毒性への批判から逮捕されました。
復讐を終えた赤ずきんは、母親への土産でも買って帰ろうと街をあるいていたところ、兵隊から逃げてきたエレンを見かけました。
「この世は全て私のものよ」そう呟くエレンは、呆けたような顔でマッチを擦り続けていました。-END-
『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』感想
『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』は、誰もが知っている童話が同じ時間軸で登場します。
赤ずきん、シンデレラ、ヘンゼルとグレーテル、ねむり姫、マッチ売りの少女が共演する様子は、ありえない設定ながらワクワクしますね。
最終章では、これまでの話が繋がり、赤ずきんの旅の目的も明かされて、一つの新しい童話が誕生したようなまとまりを感じました。
過去の事件に関わった登場人物も絡んできて「あーあの人ね!」となる仕掛けも面白い。
可愛らしい童話とは対照的に、起こる事件は残酷で後味の悪いというか胸糞悪いものばかりでしま。
そして、犯人は子どもだけに動機も単純なものが多いのですが、そのシンプルさが妙に恐ろしく、純粋さと残酷さのギャップが凄かったです。
サクサクと読めるダークミステリーをお探しの方にはぜひオススメしたい1冊です。
この記事へのコメントはありません。