映画『福田村事件』とは?事件現場・加害者や生存者などネタバレ

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『福田村事件』は、関東大震災直後の混乱のなかで、群衆が朝鮮人だと勘違いして日本人の命を奪ったという負の記憶を描いた作品です。今回は井浦新さん&田中麗奈さん主演で映画化もされる『福田村事件』のあらすじネタバレをご紹介いたします。

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『福田村事件』とは?

福田村事件の場所と被害者

福田村事件は、関東大震災から6日過ぎた大正12年9月6日、千葉県東葛飾郡福田村(現在の千葉県野田市)三ツ堀の利根川の渡し場に近い香取神社近くで起こりました。

被害者は、香川県三豊郡(現在の観音寺市および三豊市)からやって来た薬売り行商人15名(5家族で構成)で、全員が被差別部落の人たちでした。

リヤカーのような大八車に荷物を積んだ一行は、利根川の渡し賃の交渉をする間、この場所で休んでいました。

足の不自由な夫婦や1歳の乳幼児を含む6人は、神社の鳥居で涼をとり、若い夫婦2組、青年2人、2歳から6歳までの子供3人は15mほど離れた雑貨屋の前で腰を下ろしていました。

そんななか 交渉がはじまってすぐ、船頭が「言葉が変だ!」と叫び出し、現場は物々しい雰囲気に包まれました。

加害者は地元の自警団

すると突然 釣鐘のようなものが鳴らされ、駐在所の巡査をはじめとして竹やりや日本刀、猟銃を持った地元の自警団が集まってきました。

日本人か?」「四国から来たんじゃ」などのやり取りのあと、一行は君が代を歌わされましたが自警団の男たちは納得しません。

讃岐弁が千葉県の人には理解できなかったのです。

そこで巡査は、本庁に指示をあおぐため現場を離れますが、その直後に惨劇が起こります。

男たちは、乳飲み子を抱く母親の全身を竹やりで刺し、とび口で男性の頭を割り、川を泳いで逃げようとした者には日本刀で斬りつけました。

駐在の巡査が本署の部長と共に戻ってくると、雑貨屋の前にいた子ども3人、妊婦1人を含む9人は全員亡くなっていました。

鳥居の前にいた他の人たちは、この事態を呆然と見つめるしかできませんでした。

事件後

事件のあと、襲撃した福田村と隣の田中村(現在の柏市)の自警団数十人のうち8人が殺人罪で逮捕されましたが、彼らは「郷土を朝鮮人から守った我々は志士であり、国が自警団を作れといった結果、誤って命を奪ってしまった」と主張しました。

行商人の生存者6名は証言の準備をしておくよう命じられましたが、結局 裁判に呼ばれることはありませんでした。

そして、すぐに8人は、昭和天皇即位に伴う恩赦もあって全員釈放され、悪意はなかったとして、村費から見舞金まで出されましたが、犠牲者には謝罪も賠償もありませんでした。

こんな仕打ちがあっても、被害者の遺族からは、抗議や不満はなかったとされています。

また、主犯格の1人は、出所後に村長となって合併した市の市議にもなったそうです。

こうして「福田村事件」は歴史の闇に葬られ、1979年に事件の遺族らからの調査申し出がなされるまで世間の目に触れることはありませんでした。

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『福田村事件』なぜ起こった?

朝鮮人への偏見

日韓併合で朝鮮が日本の植民地になってから、朝鮮人への偏見・差別が加速しました。

そして震災直後、朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだというデマが関東地域で広まり、6000人を超える朝鮮人が惨殺されたとも言われています。

内務省は戒厳令を出し、各地の警察や自警団に治安維持の最善を尽くすように指示しましたが、そのとき「混乱に乗って朝鮮人が凶悪犯罪、暴動などを計画しているので注意すること」という内容があったため、被害が拡大しました。

行商への偏見

「福田村事件」の被害者は日本人でしたが、そこまで大きな問題になりませんでした。

それは、彼らが被差別部落出身で香川では部落産業とされていた行商人だったからとも言われています。

仕事を制限される人々にとっては、行商は生きるための仕事であり、彼らは乳飲み子を抱えながら家族総出で遠い場所まで出向きました。

しかし、当時の防犯ポスターには「あやしい行商人をみたら警察へ連絡せよ」という文言も見られ、彼らは浮浪者と共に、地域で監視し排除する対象でした。

このように「福田村事件」の背景には、いくつもの人権問題が複雑に絡んでいます。

集団心理

心が予想もしない出来事に突然直面したとき、人は自分の解釈が求める情報に飛びつくことで、不安をやわらげ安心しようとします。

妊婦や幼い子どもにまで容赦なく牙を向けた福田村事件の加害者たち。

犯行後も「朝鮮人が襲ってくるから」「国に褒められるから」と自分たちの正義を信じ、反省する姿はみられません。

集団で行動すると、自分の責任ではない感覚になり、物事の重大さを認識しづらくなります。

現代でも、直接的に暴力振るわずともSNSへの書き込みなどで、誹謗中傷、デマなどで多くの人々が傷つけられており、「集団心理」の恐ろしさは今も続いています。

最後に

100年もの間、闇に葬られてきた「福田村事件」は、森達也監督により映画化され、2023年9月1日に公開されます。

井浦新さん、田中麗奈さん、瑛太さんら実力派俳優も出演されていますので、この機会にぜひこの惨劇を多くの方に知って頂きたいです。

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