映画『市子』ネタバレ!あらすじ~結末を相関図付きで解説

映画『市子』は、プロポーズを受けた翌日に突然姿を消した一人の女性の壮絶で過酷な半生を、彼女に関わった人々の証言から浮彫りにしていく物語です。今回は舞台版の『市子』のあらすじとネタバレをご紹介いたします。
『市子』登場人物&相関図
◆登場人物
◆川辺市子・・・恋人の前から忽然と姿を消す。複雑で壮絶な過去を持っている。
◆長谷川義則・・・市子と3年間暮らしている恋人。
◆川辺なつみ・・・市子の母。性依存症。
◆小泉雅雄・・・ソーシャルワーカーで市子の母・なつみの元恋人。
◆北秀和・・・市子の高校時代の同級生。市子のストーカーになる。
◆北見冬子・・・失踪した市子と接触していた女性。
◆田中宗介・・・市子の最初の恋人。
◆山本さつき・・・市子の幼なじみ。
◆梢・・・市子の学生時代の友人
◆後藤修治・・・市子を捜索中の刑事。
◆相関図
※無断転載ご遠慮ください。
『市子』あらすじ
映画『市子』は、劇団
◆あらすじ
2015年8月。白骨化した遺体が山中から発見された。
その遺体には不可解な点が多く残されており、刑事の後藤修治は調査を開始した。
ちょうどこの頃、川辺市子は3年間ともに暮らしてきた恋人の長谷川義則からプロポーズされた翌日に、忽然と姿を消してしまう。
途方に暮れる長谷川のもとを訪れたのは、市子を探す刑事の後藤だった。
長谷川は、市子が違う名前を名乗っていたこと、彼女の壮絶な過去と真実を知るのだった…。
断片的な記憶と想像でしかない推測で語られる“市子”とは一体 何者なのか。
『市子』ネタバレ
◆市子の生い立ち
バブルがはじまる少しまえの1987年、東大阪市のとある団地で川辺一家は暮らしていました。
DVを行っていた父は失踪してすでにおらず、性依存症の美しい母はスナックで働いていました。
市子は1987年、なつみが21歳のときに生まれました。
父が誰だかわからず、なつみの前夫の行方不明のため、市子は無戸籍児として育ちました。
市子が無戸籍となったのは、離婚後300日問題のためです。
離婚後300日問題とは、離婚が成立してから300日以内に妊娠・出産した子供は民法第772条により、前の夫の子供と推定されるのですが、なんらかの事情で、前夫を法律上の父親とさせたくないため戸籍上の届けを出さぬままに育てられる子どもがいるという問題です。
元夫からDV被害を受けていたなつみは、出生届けに加害者の父親の名前が記載されることで、嫌でも関わりができてしまうことを避けるために、市子の出生届けを提出しませんでした。
◆戸籍交換
1988年に市子の母である川辺なつみは、同じ性依存症の資産家の男と再婚し、市子が3歳のときに妹の月子を出産しました。
しかし、なつみはアルコール依存症になり、バブル崩壊のせいで夫は借金を背負い離婚。
その後、なつみはある男と交際しますが、彼には「ツキコ」という娘がいました。
「ツキコ」は難病である筋ジストロフィーを発症し、外出することさえままならぬ身でした。
ある日 なつみは、男手一つで苦労して娘の介護にあたる男に「ツキコ」を引き取り養育する代わりに、自分の娘の「月子」を小泉に育ててもらいたいと提案しました。
(次女の「月子」は、「ツキコ」と同じ1990年生まれ。)
●川辺月子→小泉ツキコ
●小泉ツキコ→川辺月子
この頃 市子は、近所のさつきという少女と仲良くなり、よく一緒に遊んでいましたが、幼稚園に通うことはなつみから許されることはありませんでした。
◆再び戸籍交換
なつみは借金返済のため、時には身売りをしながら必死に働きました。
なつみが家に男を連れ込むため、居づらくなった市子と月子はさつきの家に居座るようになっていました。
そんななか、月子の病状が進行し立ち上がることもできなくなってきました。
そこでなつみは、市子と月子の名前を交換するように指示し、無戸籍だった市子は、妹の「川辺月子」の戸籍で生きていくことになりました。
難病持ちの「小泉ツキコ」だった少女は戸籍上いなくなり、なつみは月子にこれからは外に出てはいけないと言い聞かせました。
●川辺市子→川辺月子
◆月子として生きる市子
小学校に通えることになった市子(10歳だが、月子として7歳で入学したことになる)。
8歳(本当は11歳)で初潮を迎えた市子に、周囲は驚きます。
そんななか、市子は友人たちに名前のことや本当の年齢を打ち明けますが、嘘つき呼ばわりされ、自分は「市子」でいてはダメなんだと思うようになっていきます。
一方、月子は歩行困難となりソーシャルワーカーの小泉雅雄が、川辺家をおとずれるようになりました。
15歳になった市子は、修学旅行のお風呂で自分の身体に違和感を感じていました。
そんな市子の身体に小泉は興味を示しながらも、なつみと肉体関係を持つようになりました。
◆悲劇
友人である梢が田中宗介と付き合い出し、次第に学校で孤立していった市子は、寂しさから出会い系サイトの利用をはじめます。
15歳になった月子はほぼ寝たきり状態となり、市子はめんどうをみるためバイトを辞めてしまいます。
小泉はその頃から、市子にセクハラ行為を行うようになりました。
高校に入学した市子(20歳)は、北秀和からストーカーされますが、田中宗介と交際をはじめます。
はじめての恋に夢中になった市子は、呼吸器が必要にまでなった月子の介護をおろそかにしていきました。
そして、あるとき月子の酸素マスクを外し命を奪いました。
母親は、市子に「ありがとう」とお礼を言い、同居していた小泉は、月子の遺体を生駒山中に埋めにいきました。
その後、小泉は市子に乱暴しようしますが、抵抗した市子に刺殺されます。
偶然その場を見ていた同級生の秀和は、小泉の遺体を線路に横たえ自殺にみせかけたのでした。
『市子』感想
現在、日本には戸籍を持たない人が800人以上います。
『市子』は、そんな無戸籍問題を背景に、失踪した女性の実像に迫るミステリーです。
彼女に関わった人々が記憶を辿って語り、その断片的なエピソードから「市子」の壮絶な人生が浮き彫りになる過程は、心が締め付けられるような苦しさを感じます。
戸籍上存在しない子どもは、学校や地域からこぼれ落ち、最後の砦ともいえる行政や役所にまで気づかれることはありません。
市子も存在しているのに、“いないもの”として扱われ閉鎖的な環境で育ち、早くから「自分は何者なのか」という問いと対峙していきます。
戸籍がなければ、就職、携帯電話の契約、家を借りること、銀行口座の開設…に困り、自立することさえままなりません。
市子が追い込まれ「誰かになりすます」ことでしか生きる術を見いだせなかったことは容易に想像できます。
『市子』はフィクションでありながらも、昭和~平成への出来事と一緒に描かれているので、自分の身近で起きているような生々しさを感じます。
私は「無戸籍」という言葉は知っていましたが、恥ずかしながらこれまであまり気にしたことがありませんでした。
『市子』の物語は、当たり前にあるはずの物を持たず、苦しんでいる人がいることを知ると同時に、「普通」や「日常」を見つめ直すきっかけをもらった作品でした。
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