『室町無頼』ネタバレ!あらすじ~結末を相関図付きで解説

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『室町無頼』は、室町時代を舞台に腐りきった世を憂い、百姓一揆を扇動した“ならず者”たちの命を懸けた戦いを描いた歴史エンターテイメント作品です。今回は映画化も決定している『室町無頼』のあらすじから結末をご紹介いたします。

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『室町無頼』あらすじ

舞台は飢饉続きの室町時代。

民は幕府への年貢(税金)に苦しみ、食糧不足が長引くことにより餓死者が続出。

貧しさに耐えかねた農民は、田畑や娘を売り、流民となって京都に押し寄せた。

これにより強奪、辻斬り、放火が頻発し、治安は悪化。

しかし、幕府にはそれらを取り締まる統率力も財力もなく混沌としていた。

15歳で浪人の父を亡くし天涯孤独となった才蔵は、独学で身に着けた棒術の腕を買われ、比叡山の僧兵を束ねる法妙坊暁信の土倉(現在の金貸し業)に用心棒として雇われる。

そんななか、無法者たち300名を束ねる骨皮道賢は、幕府に洛中の取り締まりを任される。

あるとき、金儲けに執着する法妙坊暁信の土倉を襲撃するが、そこで仲間が切り殺されるなか孤軍奮闘して立ち向かうさ才蔵を拾う。

才蔵を引き取ったものの、腕は立つが足軽稼業には向かず、共に行動すると暁信に土倉襲撃がバレてしまうため、道賢は才蔵を蓮田兵衛に預けることにする。

優男のような風貌ながら、卓越した剣技を持つ兵衛は、才蔵に兵法者として生きる道を与えるため、唐崎の老人に預けた。

時には命を落としかける血のにじむような修行を終えた才蔵は、強靭な身体と心を手にした一介の兵法者になり、兵衛の元に帰ってきた。

すべての準備を終えた兵衛は、嘆いた民衆が起こす一揆を扇動しようと動き出すが…。

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『室町無頼』登場人物&相関図

登場人物

才蔵・・・棒術の技量に長ける少年。没落した武家の出であるが、幼い頃親を亡くし、惨めな生活を送っていたところ、道賢に拾われる。しかし足軽集団では役に立たないため、、「粥三杯」で兵衛に譲り渡される。
蓮田兵衛・・・応仁の乱に先立ち、牢人と洛外の村落をまとめあげて大規模な一揆を首謀・指導する。
骨皮道賢・・・浪人たちをあつめて組織化し、いわゆる「足軽部隊」をつくる。その力を幕府に見込まれて治安維持を任される。兵衛の悪友にして、 宿敵。
芳王子・・・かつて道賢を愛し、今は兵衛の情婦である高級遊女。兵衛と道賢ふたりの間を取り持つ。
唐埼の老人・・・棒術の達人。兵衛の師匠。才蔵に棒術を叩き込む。
足利義政・・・民を顧みない室町幕府、第八代将軍。東山文化を築き後世に多大なる文化的影響を与えるも、国家は大混乱する。
名和好臣・・・足利義政に仕える有力大名。困窮している民を横目に贅沢な暮らしを送る。
伊勢貞親・・・国政と向き合い飢饉対策に悩む政所執事。道賢に一揆鎮圧の命を下す。
法妙坊暁信・・・比叡山の僧兵を束ねる。銭貸し業を営む。かつて才蔵は法妙坊暁信に土蔵の用心棒だった。
七尾ノ源三・・・前野朋哉九尺槍の使い手。 赤間と同様才蔵に挑み、兵衛の人となりに惚れて共に戦う。スタミナがあり馬鹿力の持ち主。
赤間誠四郎・・・遠藤雄弥抜刀術の使い手。修行中の才蔵と闘い命を助けられる。
馬切衛門太郎・・・十尺の金棒を振り回す巨漢の男。 赤間、七尾と同じく兵衛と才蔵に出会い、志を共にする。

相関図

※無断転載ご遠慮ください。

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『室町無頼』結末までをネタバレ

三人にとっての運命の女性

男臭い物語のなかで紅一点、道賢、兵衛、才蔵にとってのミューズとも呼べる女性が登場します。

その名も芳王子

彼女は由緒ある家の娘でしたが、国の内乱に巻き込まれ家族を亡くし京都に流れついた女性です。

そして、孤児となり町を彷徨っていたところを、遊女・まきに拾われ育てられました。

まきの跡を継ぐように高級遊女になった芳王子は、“濃厚な甘み”を感じる道賢と出会い恋に落ちました。

しかし、道賢は稼業とはいえ、他の男と寝る芳王子に苛立ち、次第に疲れ果てていきました。

このままでは、道賢らしい小さいことにこだわらない朗らかさが失われると思った芳王子は、道賢と同じく“濃厚な甘み”を醸し出す兵衛に相談。

兵衛は、芳王子に半端な哀れみなどかけずに、自分に乗り換えて、道賢にきっぱり別れを告げるのが彼のためだと諭しました。

他の男に気が移ったと知った道賢は、芳王子に激しく暴力を振るいましたが、相手が兵衛だと知り何とか気持ちを抑えることができました。

こうして兵衛の情婦となった芳王子でしたが、その後も道賢が傷を負ったときには治療したり、兵衛との仲を取り持ち、国を変えようとする男たちの手助けをしていきます。

また、女を知らずに命を落とすかもしれない才蔵を気にかけ、半ば強引に手籠めにして、彼の過酷な運命に一時の安らぎを与えました。

土一揆

ついに蜂起の日がやってきました。

一揆を扇動する兵衛は、立場上一揆を制圧する側の道賢に密約を持ちかけ、才蔵をはじめとした七尾ノ源三、赤間誠四郎、馬切衛門太郎らを従え戦場を駆け回ります。

しかし、奮戦虚しく兵衛、道賢は、戦場で倒れてしまいますが、この民衆が起こした一大ムーヴメントは、生き残った才蔵によって引き継がれていきます。

才蔵は応仁の乱のあとも、兵衛、道賢のように民を味方につけ六尺棒を手に、幕府相手に一揆を成功させていきました。

結末

兵衛が亡くなって16年後ーー。

才蔵はある尼僧を訪ねました。

この尼僧こそ京で名を馳せた高級遊女・芳王子でした。

芳王子は才蔵が生きて、立派な男に成長したことを喜びました。

そして、空にかかった虹を見上げながら、兵衛、道賢が夢見た未来に思いを馳せるのでした。-おわりー

『室町無頼』感想

ブラジル移民した日系人たちの苦悩を描いた『ワイルド・ソウル』の作者・垣根涼介さんの作品にハズレはないと思い、手にとった本作。

土一揆という言葉は知っていても、それに関わった人物や時代背景をいまいち知らなかったのですが、さすが垣根さん。

一見地味になりそうな題材を、一流エンターテイメントに仕上げていました。

何と言っても登場人物である道賢、兵衛が魅力的。

置かれた立場は違っても、志を同じとする生き様が、なんともかっこ良い!

血生臭い戦いのなかで一瞬の煌めきを放ち、いさぎよく散っていく姿は、爽快感もありました。

また、屈強な男たちを手玉に取る芳王子、彼らに才能を見出され、過酷な修行を耐え抜く青年・才蔵の成長も見どころの一つ。

悪僧の法妙坊暁信という人物も、道賢、兵衛らに翻弄され、人間臭く立ち回る姿は悲哀があってどこか憎めません。

私利私欲に溺れ、税金をむしりとっていく幕府。

圧政に苦しみ、不満を抱く民衆を見ていると、閉塞感のある現代の日本と重なる部分が多く、時代は違えど共感できました。

残念ながら道賢、兵衛は、平和な世を見ずに亡くなってしまうのですが、二人が守り、育てた才蔵がその遺志を引き継ぎ、未来につなげるラストも素晴らしい。

蓮田兵衛や骨皮道賢、馬切衛門など実在の人物が起こした「一揆」という史実を元に、ワクワクするような肉付けを施した本作は、まさに映画化にピッタリです。

躍動感ある文章によって、ブレない男たちの熱い信念と命を懸けた戦いが、描かれた痛快な『室町無頼』。ぜひ原作の方も読んでみて下さいね。

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