『嗤う淑女』ネタバレ!稀代の悪女が起こす衝撃の結末までを相関図付きで解説

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『嗤う淑女』は美貌と明晰な頭脳、巧みな話術を持つ女性・美智留と関わった人々が彼女を崇拝し、破滅へと向かっていく姿を描いたサスペンスミステリーです。今回はドラマ化でも話題となっている中山七里さんによる小説『嗤う淑女』のあらすじから結末をご紹介いたします。

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『嗤う淑女』あらすじ

地味で冴えない女子中学生・野々宮恭子は、クラスの女ボス・神野美香のグループからいじめのターゲットにされていた。

恭子がそんな鬱屈した時を過ごすなか、クラスに母方の従姉妹・蒲生美智留が転校してきたことで事態は一変する。

ある日、圧倒的な美しさの美智留に、美香の彼氏・浩一が交際を申し込むも玉砕。

自分の男を袖にされたことで自尊心を傷つけられた美香は、標的を美智留に定めて陰湿ないじめを行うようになった。

しかし美智留は艶っぽく微笑みながら、浩一を手玉に取って美香を辱め、見事にやりこめた。

さらに美智留は、再生不良性貧血で倒れた恭子の骨髄移植ドナーに自ら申し出て、恭子の命を救ってくれた。

それからというもの恭子は美智留を崇拝し、自分が受けた恩を返すため、ずっと彼女に寄り添っていこうと決心する。

急速に美智留との仲を深めていった恭子は、あるとき美智留に自宅の古びた団地に招待され、目の前で美智留が実父・典雄から性的虐待を受けているところを目撃する。

「私一人ではどうしようも出来ない」と肩を落とす美智留に、恭子は「どんなことをしても助ける」と話し、二人は共謀して典雄を自殺に見せかけ殺害した。

13年後ーー

美智留と共に人生を歩むと誓った恭子は、「ライフプランナー」と名乗る美智留の生活コンサルタントの仕事を手伝っていた。

そんななか恭子は、高校時代のクラスメイト・鷺沼紗代が借金返済に困っていると聞き、美智留を紹介する。

しかし、美智留からアドバイスを受けた紗代は、自身が行員として働く銀行から、億単位の金を架空口座を使って横領した後、駅のホームから身を投げて自殺してしまう。

その後も、美智留を信用して相談した人物が次々と事件を起こしていることが発覚する。

果たして、絶世の美女・蒲生美智留は稀代の悪女なのかーーそれとも…

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『嗤う淑女』登場人物&相関図

登場人物

蒲生美智留・・・父の会社が倒産後に母が他の男性と出ていき、古い雇用促進住宅に父と二人で暮らしている。従姉妹の野々宮恭子と同じ中学に転校してきた。圧倒的な美貌とモデルのような体型をしている。
野々宮恭子・・・美智留の従姉妹。地味でぽっちゃりした容姿。再生不良性貧血だったが美智留から骨髄移植を行い完治した。それ以降美智留に傾倒する。
野々宮弘樹・・・恭子の弟。就職に失敗し、家業の産業廃棄物業を手伝う。両親や姉から見下すような発言をされ鬱屈した思いを抱える。
野々宮孝之・・・恭子と弘樹の父。5年前にリストラされ、わずかな退職金で産業廃棄物業を興した。経営がうまくいかず、家業でさえ満足にできない弘樹を叱責する。
野々宮照代・・・恭子と弘樹の母。家業を続ける気はなく、弘樹に早く職を見つけろとせかす。
蒲生典雄・・・美智留の父。妻に出て行ってから美智留に暴力と性暴力を行っている。
神野美香・・・恭子と美智留の中学時代の同級生。クラスの女子ボス的存在。最初は恭子をいじめていたが、彼氏の浩一を振った美智留にプライドが傷つけられターゲットを美智留に変える。
鷺沼紗代・・・短大卒業後に帝都銀行に就職。仕事のストレスを買い物で発散するようになり、借金がかさんでいる。
古巻佳恵・・・大手カジュアル衣料品のパート勤めの主婦。あれこれ理由をつけて新しい仕事を探そうとしない夫に不満を持っている。
古巻登志雄・・・2年前に自動車メーカーの営業だったが、リストラされ、現在は小説家になるため執筆中。
麻生・・・捜査一課の刑事。美智留が数々の事件に関与していたことに気づき捜査する。
宝来兼人・・・東京弁護士会所属の弁護士。美智留を担当することになり、その美貌が話題になると弁護を引き受ける。

相関図

※無断転載ご遠慮ください。

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『嗤う淑女』結末までをネタバレ

美しい容姿と話術で、ターゲットの欲望を巧みに操り、自らは手を汚さずに成功してきた美智留。

そんな彼女が関わった事件は以下の通りです。

美智留が関わった事件

●恭子を洗脳し、性的虐待していた父を自殺に見せかけて殺害。

●買い物依存症だった銀行員・鷺沼紗代が横領するように仕向け、架空口座から3憶円を手に入れ、駅のホームから突き落とし殺害。

野々宮弘樹に、「父親を遠ざけない限り一人前にはなれない」「恭子から脅され、性的関係を強要されている」とそそのかし、家族を敵視した弘樹は父・孝之と姉・恭子を殺害して、大型焼却炉で焼く。

●リストラされ、再就職もせず作家を目指す夫を持つパート主婦・古巻佳恵に、夫の死亡保険金を3憶に増額させ、事故にみせかけ夫を殺させた。

この様に、分かっているだけで美智留は、4つの事件に関わっていました。

しかし、美智留に騙されて犯罪を犯した者 全員が、彼女を未だに崇拝し恨んでいないところから、犯罪が露呈することはありませんでした。

疑惑

着々と地位を築き、金を手にしていた美智留でしたが、刑事の麻生が野々宮家の事件を捜査している最中に、一時同居していた蒲生美智留に疑問を抱いたことで、窮地に立たされます。

麻生は、横領事件で自殺した鷺沼紗代のバッグの中から美智留の名刺が出てきたことを知り、住所や勤務先を調べますが、それがすべて架空だったことを突き止めます。

そして、夫に保険金3憶円をかけ事故にみせかけて殺した妻・古巻佳恵が、相談にのってもらっていたと蒲生美智留の名前を出したことで、麻生のなかで彼女への疑惑が確信に変わりました。

麻生はまず美智留が父と暮らしていた部屋の隣に住んでいた老人の元を訪れ、美智留が父から暴力を受け忌み物にされていたことを知り、彼女が父を殺した動機を知りました。

さらに、鷺沼紗代が自殺したときの映像を解析すると、美智留が彼女を突き飛ばし駅のホームに転落させていたことが分かったのです。

決定的な証拠を掴んだ警察は、美智留を全国に指名手配し逮捕に至りました。

裁判

取り調べのなか、最初は涼しい顔で事件への関与を否定していた美智留でしたが、紗代をホームに突き落とす証拠映像の写真を突きつけられると、観念したように「弁護士を呼んで下さい」と話しました。

美智留に弁護を依頼されたのは宝来兼人という人物です。

宝来は美貌の美智留を面会で一目見た途端、裁判に勝とうが負けようが自分の事務所の宣伝になると打算し弁護を引き受けました。

しかし、宝来は債務整理専門で刑事裁判はほとんど担当したことがなかったため、全く役に立ちません。

そして、美智留側は明らかにされた数々の証拠に反論することもできず、窮地に立たされてしまいます。

ドンデン返し

誰しもが美智留の有罪を確信するなか、美容整形外科医の石原が美智留の証人として呼ばれました。

宝来に「この法廷のなかで、あなたの手術を受けた患者はいますか。」と問われた石原は、なんと施術したのは美智留だと答えました。

さらに石原は、美智留と呼ばれている被告人の手術前は、恭子だったと写真を指差しました。

つまり、裁判に立っている被告人は、蒲生美智留ではなく、野々宮恭子だったのです。

(弘樹が犯行に及んだ当日、美智留の部屋のクーラーの調子が悪く、恭子が部屋を変わってあげていた。美智留はそのとき美容パックをしていたため顔の判別が難しかった。)

検察側は、野々宮恭子殺害現場に残されていたDNAが美智留のものと一致していると反論しますが、宝来は中学時代に美智留は恭子に骨髄移植をしたので、両者の血液DNAは一致すると一蹴しました。

こうして美智留の顔をした恭子は、無罪を勝ち取ることができました。

結末

判決後、女は「今度は誰をどんな風に陥れてやろうか」と心躍らせていました。

実は恭子として無罪になった「女」は、美智留だったのです。

野々宮弘樹が恭子と父の孝之を殺害したあと、美智留は、腕は確かですが暗い経歴を持つ顧客を多く抱える整形外科医を訪ね、恭子の顔に変身する手術を受けました。

顔にあったアザもその時に消し、恭子の顔に馴染んだ頃に、裁判に出廷した整形外科医・石原の元を訪ね、再び自分の顔に戻していたのです。

美智留は、紗代の事件でホームの監視カメラに撮られたことから、恭子に身代わりになってもらおうと計画し、弘樹の劣等感を刺激して、恭子を殺害させたのです。

そして自分が蒲生美知留でないと証明するには、一度 法廷に立つ必要があったため、古巻佳江に保険金殺人を持ち掛け、取り調べで自分の名前を出させたのでした。

こうして美知留は、2度の整形手術を行い、美貌と知恵と行動力を駆使して勝利したのでした。-END-

『嗤う淑女』感想

弱っている人を嗅ぎ分け、虚栄心を刺激し、共感し、信頼させる手法で、自分の手を汚さず欲望を満たしてきた美知留。

客観的に見れば”悪女”に間違いないのだけれど、利用された人誰もが、彼女を恨むどころか崇拝しているところに、興味をそそられます。

貧しく悲惨な環境から、己の美貌と知性で這い上がっていく美知留は、有吉佐和子さんにによる小説『悪女について』の主人公・富小路公子、『白夜行』の雪穂にも似ていますが、本作はエンタメ感が強めの印象。

騙される人物たちも善人ばかりでなく、愚かで、打算的で、分かりやすいほど欲深いので、美知留の清々しい悪女っぷりが引き立ちます。

そして、美知留の凄さといえば、なんといっても忍耐力。

良い種を選び、ヒマを惜しまず世話をして、立派に育ったところで大きく収穫する。

自分の体を傷つけてまで骨髄ドナーになったり、時には親身になって相談に乗りながら、虎視眈々とチャンスを伺います。

結末で、短期間で誰にも気づかれず二度の整形することは無理があるように感じますが、美知留ならそこも上手くやるんだろうなと思わせてくれるのは、筆者のキャラクターを描く力があるこそ。

骨髄移植の伏線をDNA鑑定で鮮やかに回収するのも良かったです。

なお、『嗤う淑女』には続編『ふたたび嗤う淑女』『嗤う淑女 二人』がありシリーズ化されています。

美智留のダークヒーロ―ぶりをもっと堪能したい方は、続編の方もチェックしてみて下さいね。

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