『不毛地帯』ドラマ相関図と最終回までのあらすじ山崎豊子による伝説の超大作!

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唐沢寿明さん主演の『不毛地帯』は、地獄のシベリアで重労働から生還した主人公が、商社マンとして静かな闘志を燃やし経済戦争に挑んでいく社会派ドラマです。今回は、2009年のフジテレビで放送された山崎豊子原作、伝説の超大作『不毛地帯』のあらすじから結末を相関図つきでご紹介いたします。

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『不毛地帯』相関図

『不毛地帯』は、国家レベルのスケールで政界や防衛庁内の利害が複雑に絡み合うストーリーなので、多くのキャラクターが登場します。

混乱しないためにも、相関図で登場人物をチェックしてから、あらすじに進んでみて下さい。

※無断転載禁止

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『不毛地帯』1話から最終回までのあらすじ

1話「物語」

陸軍士官学校を首席で卒業し、第二次大戦中は軍の最高統帥機関である大本営の参謀として作戦立案にあたっていた壹岐正(唐沢寿明)は、終戦を受け入れず、日ソ中立条約を破って侵攻してきたソ連軍に対する徹底抗戦を主張する関東軍を説得するため、停戦命令書を携えて満州に向かった。
そこで、関東軍の幕僚・谷川正治(橋爪功)らとともにソ連軍に拘束された壹岐は、戦犯としてソ連の軍事裁判にかけられ、強制労働25年の刑を宣告されると、一度送られたら二度と生きて帰ることはできないといわれたシベリア極北の流刑地ラゾに送られてしまう。

生死の境をさまよう過酷な強制労働を11年もの長きに渡って耐え抜いた壹岐は、昭和31年に帰国する。それからの2年間、壹岐は、強制労働によってむしばまれた体の回復と、シベリアから一緒に帰国した部下たちの就職の世話に専念した。その間は、妻の佳子(和久井映見)が大阪府庁民生課で働きながら家計を支えていた。

そんなある日、壹岐のもとに、士官学校時代からの親友で、防衛庁の空将補である川又伊佐雄(柳葉敏郎)がやってくる。川又は、この国を守るために一緒に働いてほしい、と壹岐を防衛庁に誘った。しかし壹岐は、自らが関わった作戦により、多くの兵士や民間人を死なせてしまった責任から、もう国防に関わる資格はない、と答えて川又の誘いを断った。

壹岐は、部下たちの就職が片付いたのを機に、かねてから誘われていた近畿商事への就職を決意する。近畿商事は繊維を中心に扱う商社だが、経済の発展を見越して、重工業化・国際化を推進しようとしていた。社長の大門一三(原田芳雄)に会った壹岐は、軍人時代のコネや肩書きを一切利用しないことを条件に、近畿商事に入社し、社長室嘱託として繊維部で働き始める。それを知った壹岐の長女・直子(多部未華子)は大喜びだった。母・佳子の苦労する姿をずっと見続けてきた直子は、二度と戦争には関わらないでほしいと願い、壹岐が防衛庁で働くことにも強く反対していたのだ 出展元:(C)フジテレビ

2話「黒い頭脳戦」

防衛庁の第2次防FX(=次期主力戦闘機)の受注が、国のためではなく、政治家の利権のために利用されていることを知った壹岐正(唐沢寿明)は、軍人時代の人脈を利用しないという自らの申し出を撤回して、社長の大門一三(原田芳雄)に東京支社航空機部への異動を申し出る。昭和34年7月のことだった。

第2次防FXの有力候補は、近畿商事が押すラッキード社のラッキードF104と、東京商事が推すグラント社のスーパードラゴンF11の2機だった。だが、東京商事航空機部の鮫島辰三(遠藤憲一)による裏工作によって、グラント社のスーパードラゴンF11が有利な状況にあった。

近畿商事東京支社長・里井達也(岸部一徳)は、壹岐に航空機部部長の松本晴彦(斉木しげる)を紹介すると、小出宏(松重豊)という男を壹岐の下につけた。小出は、防衛庁空幕の調査課出身なのだという。壹岐たちは、グラント社から総理側にG資金と呼ばれる巨額の賄賂が渡っていることをつかんでいたが、金の流れまではいまだ解明できていなかった。そのすべてを演出している鮫島は、すでに壹岐が近畿商事の航空機部に異動してきたことまでつかんでいた。

壹岐は、防衛庁の川又伊佐雄(柳葉敏郎)から、ラッキードF104の優秀性が記載された自衛隊調査団の報告書が、官房長の貝塚道生(段田安則)によって握りつぶされてしまったとの情報を得る。そこで大門は、自由党総務会長で反総理派の大物、大川一郎(亀石征一郎)の力を借りようとする。

同じころ、秋津千里(小雪)は、師匠の叶頼山(品川徹)に認められ、陶芸新人展に作品を出すよう命じられていた。

その夜、壹岐の家に、毎朝新聞の政治部記者・田原秀雄(阿部サダヲ)が訪ねてくる。田原は、壹岐が防衛庁入りの話を蹴って近畿商事に入社したのは、商社サイドからラッキードF104を推すためではないのか、などと言い出す。防衛庁担当である田原は、最近、壹岐に関する怪文書をよく目にするようになったのだという。壹岐は、佳子(和久井映見)のことを気にしながらも、田原の推測を否定した。すると田原は、川又が西部航空方面隊に左遷されるという噂を耳にした、と壹岐に告げる。出展元:(C)フジテレビ

3話「妻と娘の涙」

防衛庁の第2次防FX(=次期主力戦闘機)受注をめぐり、激しい戦いを繰り広げていた壹岐正(唐沢寿明)は、東京商事航空機部の鮫島辰三(遠藤憲一)が総理に流していた賄賂『G資金』のルートを解明するとともに、防衛庁から極秘文書であるグラント社のスーパードラゴンF11の価格見積表を入手する。これによって、ラッキード社のラッキードF104を推す壹岐たち近畿商事が勝利するものと思われた。

ところがその矢先、アメリカの空軍基地でテスト・フライト中だったラッキードF104が墜落事故を起こすという事態が発生した。近畿商事社長の大門一三(原田芳雄)は、一刻も早く墜落の原因などの詳しい情報を集めて対策を練るよう、東京支社長の里井達也(岸部一徳)に命じた。

同じころ、鮫島は、防衛庁官房長の貝塚道生(段田安則)に、ラッキードF104の欠陥データと墜落現場の写真を入手したことを報告していた。すでにそれらは、毎朝新聞記者の田原秀雄(阿部サダヲ)の手に渡っていた。

田原は、さっそく防衛庁の川又伊佐雄(柳葉敏郎)に取材を申し込んでいた。田原は、米軍の名パイロットでも事故を起こすような戦闘機を、日本のパイロットが乗りこなせるのか、などと川又に聞いてきたらしい。それを知った壹岐は、田原が握っているデータを把握するために、自ら彼に接触した。そこで田原は、ラッキードF104には致命的な欠陥がある、と壹岐に告げる。壹岐が会いにきたことで、彼が近畿商事の影の航空機部部長であることを確信した田原は、明日の朝刊を楽しみにしていてほしい、と言い残して去っていく。

その夜、壹岐は、旧知の仲である経済企画庁長官・久松清蔵(伊東四朗)を訪ねる。壹岐は、毎朝新聞の件を伝え、どうにかして記事を抑える策はないか、と久松に頼みこんだ。久松は、「君にも泥水を飲んでもらわなければならないよ」と壹岐に告げた。

一方、鮫島は、とあるクラブで壹岐の部下・小出宏(松重豊)が、防衛庁の芦田国雄(古田新太)の接待をしていることを知り、領収書の写しなどを入手していた。出展元:(C)フジテレビ

4話「俺が殺した」

壹岐正(唐沢寿明)は、防衛庁から近畿商事に流れた機密漏えい事件に関して、警視庁捜査二課から任意での出頭を求められる。壹岐は、防衛庁の第2次防FX(=次期主力戦闘機)の受注をめぐり、部下の小出宏(松重豊)にライバルであるグラント社の価格見積表を入手させた。その機密書類の出所は、川又伊佐雄(柳葉敏郎)の部下である防衛庁の芦田国雄(古田新太)だった。芦田とともに逮捕された小出は、会社側からトカゲの尻尾切りにあったことを知り、悪いのは壹岐だと証言していた。捜査当局も、すでに今回の事件の中心人物は壹岐だと断定していた。

近畿商事東京支社長・里井達也(岸部一徳)に電話を入れた壹岐は、任意出頭を求められたことを報告する。里井は、今回の件はすべて小出が独断でやったもので、近畿商事側には機密書類の類は一切ないと突っぱねるよう念を押した。

壹岐が警察に出頭したという情報は、防衛庁官房長の貝塚道生(段田安則)を通じて、東京商事の鮫島辰三(遠藤憲一)にも伝わっていた。鮫島は、ラッキード社派の政治家が今回の機密漏えい事件をもみ消すのではないかと危惧していた。すると貝塚は、検察庁が決定的な物証を得ている以上、捜査の打ち切りはない、と断言する。

出頭した壹岐は、警視庁捜査二課長の井上(藤木孝)の追求に対し、機密書類漏えいに関する近畿商事の関与や、小出への指示などを全面否定する。だが、井上ら捜査当局は、小出が隠した複写機の場所や、経済企画庁長官・久松清蔵(伊東四朗)の関与などもつかんでいた。その際、壹岐は、漏えいしたグラント社の価格見積表が、実は川又のものであったことを教えられる。それでも壹岐は、最後まで書類の存在を否定し続けた。出展元:(C)フジテレビ

5話「戦争と三人の女…」

昭和34年12月、壹岐正(唐沢寿明)は、近畿商事社長の大門一三(原田芳雄)に退職願を提出する。第2次防FXでラッキードF104の受注を獲得するにあたり、部下の小出宏(松重豊)が逮捕されるなど、会社に対して迷惑をかけた責任を取ろうとしたのだ。大門は、そんな壹岐の気持ちに理解を示しながらも、軍人が作戦失敗の責任をとって退職願を書かないのと同じように、企業の戦いにおいても安易に退職願を書くことは許されない、と返す。いまやるべきことは、川又伊佐雄(柳葉敏郎)の霊に花をたむけられるような仕事をすることだ、と大門は言うのだ。

退職を思いとどまった壹岐は、大門から鉄鋼部長のポストを与えられる。日本経済の重工業化が進むなか、繊維業が中心で鉄鋼業界とのつながりが弱い近畿商事を強化することが目的だった。
昭和39年3月、壹岐は、鉄鋼に強い大手問屋を傘下に収めることに成功する。大門は、壹岐の提案を受け、会社全体の経営戦略を指示するための部署を設立し、そのすべてを壹岐に任せることにする。

壹岐は、ロンドン支店にいた兵頭信一良(竹野内豊)やニューヨーク支店の海部要(梶原善)、香港支店の不破秀作(阿南健治)らを呼び寄せて業務本部を設立する。壹岐は、2年間で100名を繊維部門から非繊維部門に異動させるといった大規模な人事を行い、鉄鋼部門などの業績を伸ばしていった。
昭和42年4月、業務本部の成果を高く評価した大門は、壹岐を常務取締役に昇進させる。だが、副社長の里井達也(岸部一徳)や繊維担当専務の一丸(山田明郷)らは、壹岐のやり方に対して反発を強めていた。

そんな折、壹岐たちは、中東情勢が緊迫しているとの情報をつかむ。第三次中東戦争の勃発を懸念した壹岐は、情報収集に全力を注ぐ。一方、東京商事の取締役輸送機本部長に昇進していた鮫島辰三(遠藤憲一)も、中東情勢の変化を察知し、戦争が起きた場合に備えて動き出していた。出展元:(C)フジテレビ

6話「決戦」

壹岐正(唐沢寿明)、兵頭信一良(竹野内豊)ら近畿商事業務本部の面々は、イスラエルとアラブ諸国の関係が緊迫しているとの情報をつかみ、第三次中東戦争の勃発を予測する。もし中東戦争が起き、地中海と紅海を結ぶ重要な航路になっているスエズ運河が封鎖されれば、ヨーロッパ航路はケープタウン回りとなり、運賃の高騰や船の需要が高まることが予想された。この戦争はイスラエルが1週間から10日以内に勝利し、スエズ運河が長期に渡って封鎖されると分析した業務本部は、船舶部にタンカーを確保するよう指示する。

その一方で、壹岐たちは、紅子(天海祐希)の夫で、インドネシア華僑の実力者でもある黄乾臣(石橋蓮司)から、1万トン級の戦標船5隻を至急手配してほしいと依頼されていた。戦標船とは、第二次大戦時に建造された米・英の戦時標準船のことで、その多くは廃船になっているものの、中には貨物船として売買されて運航しているものもあった。壹岐は、近畿商事が東南アジア貿易を展開していく上で、重要な拠点となるインドネシアを押さえるためには黄の力が必要だと船舶部部長の峯(大高洋夫)に訴え、戦標船の手配を急がせようとした。しかし、業務本部のやり方に反発する峯は、中東戦争に関する壹岐たちの分析をも疑問視し、大型タンカーの発注を見直すとともに、戦標船の手配も拒む。

するとそこに、戦標船の件は目途が立ったという黄からの電話が入る。情報を聞きつけた東京商事の鮫島辰三(遠藤憲一)が、黄の出した条件に見合う戦標船を手配していたのだ。それを知った壹岐は、副社長の里井達也(岸部一徳)に直訴し、1隻40万ドルを切る戦標船を手配できれば決裁するという約束を取り付ける。

兵頭が黄の説得に向かっている間、壹岐は、イスラエルに強いパイプを持つ日東交易の社長・安蒜公一(団時朗)を再び訪ね、戦標船の手配を依頼する。それに対して安蒜が出した条件は、日東交易が手がけているイスラエル・オレンジの輸入を、今後3年間、近畿商事が引き受ける、というものだった。

安蒜の力添えで、戦標船を1隻35万ドルで入手できるルートを確保した壹岐たちは、食品部部長の山本(岸博之)にイスラエル・オレンジの件を、峯には黄との取り引きを進めるよう依頼した。出展元:(C)フジテレビ

7話「妻との誓い」

第三次中東戦争の勃発に端を発した商社間の争いは、壹岐正(唐沢寿明)率いる近畿商事業務本部の迅速な情報収集と的確な分析により、同社のひとり勝ちで終わった。だがその結果、近畿商事内では、壹岐の活躍に危機感を募らせた副社長・里井達也(岸部一徳)の一派と業務本部との間の対立を生みだしてしまう。

同じころ、秋津千里(小雪)は、能楽師の丹阿弥泰夫(加藤虎ノ介)と会っていた。そこで泰夫は、丹阿弥流宗家である両親をはじめとする、三親等の係累まで書き記した紙を千里に手渡し、色々な親類がいるが自分は次男坊で煩わしい付き合いは一切しない主義だ、と伝えて彼女にプロポーズする。

昭和42年7月、近畿商事では、年に2度開催される経営全体会議が行われる。その席で壹岐たち業務本部は、重工業化に対応するために繊維部門のさらなる縮小を唱えた。だが、里井を中心とした反業務本部勢力は、繊維部門が社内一の売り上げを上げていることを理由にこの再縮小案に猛反発したため、会議は紛糾する。常務のひとりは、壹岐に対して、近畿商事に来てまで大本営の作戦参謀気どりはやめろ、とまで言い放った。

その夜、社長の大門一三(原田芳雄)は、里井とともに料亭を訪れる。そこで里井は、改めて壹岐の提案に反対した。すると大門は、何故もっと大きな立場に立って壹岐を使おうとしないのか、と里井に問いかける。それが近畿商事のナンバー2である里井の立場ではないか、というのだ。その言葉に喜んだ里井は、大門の方針に従うことを誓って頭を下げた。

そのころ、アメリカを始めとする各国政府は、国内産業保護の観点から外国資本の参入を事実上禁止してきた日本政府への批判を高め、中でも特に、自動車産業に対する資本の自由化を求めていた。資本の自由化が実現すれば、持ちこたえられるのはアイチ自動車と日新自動車だけで、近畿商事が輸出代理店となっている業界4位の千代田自動車などはアメリカのビッグ3、フォーク、ユナイテッドモーターズ、グレンスラーらに飲み込まれてしまう可能性が高かった。壹岐は、ビッグ3の上陸こそ、国際企業とのビジネスをつかむチャンスだと考え、兵頭信一良(竹野内豊)や海部要(梶原善)ら業務本部のスタッフに、アメリカ自動車業界に関する情報の収集を命じた。出展元:(C)フジテレビ

8話「愛妻の死!」

資本自由化の波を受け、国内では自動車産業の再編成が行われようとしていた。そんな折、米自動車産業ビッグ3の一角、フォーク社のフォーク二世会長(アレキサンダー・バリ)が突然来日する。その歓迎レセプションを仕切っていたのは東京商事だった。壹岐正(唐沢寿明)は、部下の兵頭信一良(竹野内豊)や海部要(梶原善)らにフォーク会長の来日目的を探らせようとした。だが、東京商事の鮫島辰三(遠藤憲一)に阻まれ、情報を得ることができなかった。

フォーク会長に会うことすらできなかった近畿商事社長の大門一三(原田芳雄)は、副社長の里井達也(岸部一徳)と壹岐に怒りをぶつける。その際、大門は、重要案件だった千代田自動車の経営立て直し問題にも言及した。そこで里井は、業界4位の千代田自動車を同5位の富国自動車を合併させるべく動いていると報告する。それに対して、密かに千代田自動車の自主独立の可能性を探っていた壹岐は、千代田自動車が富国自動車の赤字を抱え込み、株価が下落する可能性が高いこと、両社とも販売面が弱いために合併しても組織の弱点は補えないことを指摘し、里井と衝突する。

壹岐は、フォーク会長の来日目的を探るために、通産大臣に就任した久松清蔵(伊東四朗)を訪ねる。久松は、フォークの来日目的は資本の自由化要求であり、政府としては外資との合弁会社のみ認める方針だと壹岐に告げた。壹岐は、中小の国内自動車メーカーを外資から守るためには合併による企業体質の強化しかない、と考えている久松に、千代田自動車と富国自動車の合併話を切り出した。久松によれば、通産省ではすでに両社を合併させる青写真ができあがっているという。そこで壹岐は、久松の力添えで、両社の合併話を引きのばしてほしい、と頼み込む。

壹岐が帰宅すると、谷川正治(橋爪功)が訪ねて来ていた。谷川は、シベリア長期抑留者の会が機関紙を発行して10年になったのを記念して、湯呑を作ったのだという。壹岐は、その出来栄えに感心しながらも、まだ自分はこの湯呑を使う心境には至っていない、と答えた。谷川は、そんな壹岐の思いを受け止め、11年間家を守ってくれた佳子(和久井映見)にも感謝しなければならないな、と声をかけた。その言葉に、佳子は、最後の帰還船でも帰ってこられなかった抑留者の家族のことを思うと、いまの自分は幸せだと答えた。出展元:(C)フジテレビ

9話「哀しい女」

壹岐正(唐沢寿明)は、妻の佳子(和久井映見)を事故で失った悲しみから逃れるかのように、ひたすら仕事に没頭した。近畿商事社長の大門一三(原田芳雄)は、そんな壹岐の心情を察し、アメリカ近畿商事の社長としてニューヨークに駐在してはどうか、と持ちかける。

一方、近畿商事が輸出代理店を務めていた千代田自動車は、社運をかけて開発した新車115タイガーを販売したものの、アイチ自動車のカロナや日新自動車のレッドバードといったライバル車に惨敗してしまう。しかも、近畿商事副社長の里井達也(岸部一徳)が中心となって合併話を進めていた富国自動車側からは、合併は白紙に戻したいとの申し出もあったのだ。里井は、自主独立路線も合併の道も断たれた千代田自動車との取引にはもはや何のメリットもないとして、手を引くべきだと大門に進言した。

千代田自動車の技術担当常務・小牧徹也(小野武彦)は、千代田自動車はもう終わりだ、と壹岐に告げる。他社がより低価格の対抗車をぶつけてきたのは、小出宏(松重豊)がタイガーの情報を漏らしたせいだ――小牧はそういって涙を流した。

ニューヨーク行きを決心した壹岐は、交換条件としてひとつだけやりたい仕事がある、と大門に願い出る。それは、千代田自動車と米自動車産業ビッグ3の一角、フォーク社との提携を実現させたい、というものだった。大門は、それを了承すると、自ら千代田自動車サイドやメインバンクとの交渉役を買って出て、この件は社内でも極秘扱いにするよう壹岐に命じた。

その夜、壹岐は、娘の直子(多部未華子)にニューヨーク赴任の話を伝える。すると直子も話したいことがあるという。そこで直子は、鮫島辰三(遠藤憲一)の息子・倫敦(石田卓也)と結婚したい、と切り出す。直子と倫敦は、鮫島からも結婚を反対されていた。だが、直子の決心が固いことを知った壹岐は、倫敦との結婚を許す。出展元:(C)フジテレビ

10話「恋と野望」

アメリカ近畿商事の社長に就任した壹岐正(唐沢寿明)は、経営が悪化していた千代田自動車と、米自動車産業ビッグ3の一角、フォーク社との提携を画策した。交渉は困難を極めたが、陸軍士官学校の同期でもある韓国の光星物産会長・李錫源(榎木孝明)の助力を得た壹岐は、フォーク会長(アレキサンダー・バリ)との会談に成功し、千代田自動車との提携に関する委任状を取り付ける。社長の大門一三(原田芳雄)に委任状を届けるため、帰国することになった壹岐は、途中、韓国に立ち寄り、李のもとを訪れた。李の仲介により、崔大統領(鶴田忍)に会う機会を得た壹岐は、ソウルで地下鉄の敷設計画があり、日本の援助を必要としていることを知る。

帰国した壹岐は、副社長の里井達也(岸辺一徳)を訪ね、千代田自動車とフォーク社の提携に際し、連絡に行き違いがあったことを謝罪すると、崔大統領から得た韓国の地下鉄計画の情報を伝える。それは、里井抜きで提携話を進めたことに対する、壹岐からの手土産だった。里井は、その話に飛びつき、自ら大門に伝えて対策を立てる、と答える。その際、里井は、副社長のひとり、一丸松次郎(山田明郷)が次期社長の座を狙って積極的に派閥作りを進めている、と切り出し、壹岐に意見を求めた。それに対して壹岐は、次期社長は、大門を長年支えてきた里井をおいて他には考えられない、と答える。

東京本社に顔を出した壹岐は、一丸に呼び止められる。一丸は、計画が差し戻された韓国の合繊プラントが、壹岐の交渉のおかげで再検討されることになり、喜んでいた。別れ際、一丸は、里井のことを持ち出し、壹岐が東京に戻ったら関連会社に出すつもりでいるから気をつけたほうがいい、と忠告する。

その夜、壹岐は、銀座で開かれていた秋津千里(小雪)の個展に顔を出す。壹岐が帰国した日に、ちょうど千里から案内状が届いたのだ。2年ぶりの再会を果たしたふたりは、互いに目に見えない結びつきのようなものを感じていた。そこで壹岐は、千里にとって一番思い入れが強い作品だという青磁の壺を譲ってもらう約束をする。出展元:(C)フジテレビ

11話「嫉妬に殺される男」

壹岐正(唐沢寿明)は、副社長の里井達也(岸辺一徳)とともに、千代田自動車との提携を目指して米自動車産業ビッグ3の一角、フォーク社との交渉に臨んだ。千代田自動車側は、フォーク社の出資比率を25%以下にしたいと主張していた。それに対してフォーク社側は、重要決議に拒否権を行使できる33.4%以上でなければ交渉には応じない、としていた。 そこで里井は、腹心である業務本部長の角田保(篠井英介)とともに新たなプランを作成する。それは、壹岐たちが進めてきた提携話を白紙に戻し、フォーク社と千代田自動車が対等の出資比率で新たな合弁会社を作るというプランだった。

壹岐らとともにデトロイトのフォーク社を訪れた里井は、フォーク会長(アレキサンダー・バリ)との会談を行った。その席でフォーク会長は、新たな合弁会社を作るという里井の提案に強い興味を示し、千代田自動車の経営状況を調べた上で検討する、と答える。

里井は、さっそく社長の大門一三(原田芳雄)に連絡をとり、来月フォーク社が日本に覆面調査団を派遣するところまでこぎつけたことを報告する。里井は、調査団の受け入れ準備も自ら主導するつもりでいた。そんな里井に、壹岐は、千代田自動車がフォーク社と合弁会社を作るプランに納得するとは思えない、と進言する。仮に50対50の対等出資で合弁会社をスタートさせても、あっという間にフォーク社に飲み込まれてしまう危険性があるからだった。一方、フォーク社にしても、千代田自動車の経営状況が予想以上に悪化していることを知ったらこの話から手を引く可能性が高かった。
しかし里井は、壹岐の言葉をさえぎり、自分の案が通らなかったからといって水を差すのは止めろと言い放つ。そのとき、突然、里井が苦しそうに胸を押さえて倒れこんだ。壹岐や角田は、救急車を呼んで里井を病院に運んだ。狭心症の発作だった。出展元:(C)フジテレビ

12話「裏切りの極秘調査」

千代田自動車との間で新たな合弁会社を作るという近畿商事の提案に興味を示したフォーク社は、日本に覆面調査団を派遣する。千代田自動車の経営状態を調査するためだった。
壹岐正(唐沢寿明)は、調査団の責任者で、海外企画担当マネージャーのアーリックマン(ブレット・コールマン)が来日していないことに気づき、その行方を追っていた。ほどなく、調査団を出迎えるために帰国していた八束功(山崎樹範)から連絡があり、アーリックマンは、ホノルルでメルボルン行きの飛行に乗り換え、オーストラリアに向かったとの情報が入る。フォーク社側の説明によれば、オーストラリア・フォークで緊急事態が発生したためだという。不安を拭い去れなかった壹岐は、塙四郎(袴田吉彦)に、近畿商事の支店網を使ってアーリックマンが本当にオーストラリアにいるかどうか調べるよう指示する。

一方、副社長の里井達也(岸部一徳)と業務本部長の角田保(篠井英介)は、フォーク調査団を案内する販売店のリストを八束に渡す。それは、千代田自動車の販売店の中でも、比較的経営が安定している店を選んだものだった。フォーク社が事前調査に基づいて販売店を指定してくることを危惧した八束は、調査団メンバーの経歴だけでも調べておくべきではないか、と里井たちに進言した。しかし里井は、壹岐に何を言われたかは知らないが口を挟むな、と八束に言い放つ。

あくる日、里井たちは、調査団メンバーとの会合に臨む。その席で、調査団のラディ(エリック・ボーシック)は、里井たちが提示した販売店リストを拒否し、自分たちが用意してきたリストを提示する。すでに彼らは、独自の情報を元に、経営が悪化している販売店をリストアップしていた。

同じころ、壹岐は、海部要(梶原善)からの報告で、フォーク調査団が里井たちの販売店リストを拒否したことを知る。そこに飛び込んできた塙は、アーリックマンがオーストラリアに立ち寄った形跡がないことを壹岐たちに伝える。出展元:(C)フジテレビ

13話「喰うか喰われるか」

壹岐正(唐沢寿明)は、社長の大門一三(原田芳雄)に同行して、次期総理の呼び声も高い自由党の幹事長・田淵(江守徹)の邸宅を訪れる。その席で田淵は、千代田自動車と米・フォーク社の提携話を持ち出し、国益絡みの問題に関しては、関係省庁より先に党の了承が必要だ、と言い出す。壹岐は、田淵がこの提携話に一枚噛んでおきたいという思惑で大門を呼び出したと察し、両社の交渉を詰めた上で改めて助言を仰ぎたい、と答えた。

一方、出張から戻った副社長の里井達也(岸辺一徳)は、田淵の一件を知るや否や壹岐を呼び出し、怒りをぶつける。社長である大門が電話1本で駆けつけるなど不見識極まる、というのだ。壹岐は、田淵に会っておきたくて大門を急きたてたのではないか、という里井の疑念を否定すると、オーストラリアに立ち寄ったとされていたフォーク調査団のひとり、アーリックマン(ブレット・コールマン)が、実は東京商事の鮫島辰三(遠藤憲一)と行動をともにしていたことを伝える。すると里井は、不安材料を並べていたずらに危機感をあおるような戦法は通じない、といって壹岐の言葉に耳を貸さないばかりか、副社長命令で壹岐を提携プロジェクトのメンバーから外してしまう。

心臓の発作で倒れたばかりの里井は、医師から海外出張などを控えるよう助言されていた。だが里井は、妻の勝枝(江波杏子)や腹心である業務本部長の角田保(篠井英介)の反対を押し切って単身デトロイトに向かい、フォーク社との交渉を一気に詰めようとする。ところが、フォーク社のアジア渉外担当・プラット(ニコラス・ペタス)は、そんな里井にいきなり新たな条件を提示した。それは、フォーク社と千代田自動車の間で新たに設立する合弁会社の出資比率をフォーク51%、千代田49%に変更してほしい、というものだった。

帰国した里井は、大門とともに千代田自動車の森社長(大林丈史)、村山専務(田村亮)、小牧常務(小野武彦)と会い、フォーク社側の意向を伝えた。するとそこに、毎朝新聞夕刊の早刷りを手にした角田が飛び込んできた。その一面に掲載されていたのは、フォーク社が東和自動車と提携する意向を東京商事に正式に伝えた、という田原秀雄(阿部サダヲ)が書いたスクープ記事だった。遅れてやってきた壹岐は、フォーク会長(アレキサンダー・バリ)から届いたばかりの手紙を大門に手渡す。そこには、千代田自動車との交渉を打ち切る、と記されていた。激しいショックを受けた里井は、胸をかきむしるようにしてその場に倒れ、病院に運ばれてしまう。出展元:(C)フジテレビ

14話「百億の賭け」

アメリカ近畿商事から東京本社に帰任した壹岐正(唐沢寿明)は、専務取締役に就任する。それは、壹岐が社長の大門一三(原田芳雄)に次いで、近畿商事のナンバー2になったことを意味していた。

それから半年後の昭和45年12月、イランで石油鉱区が売りに出されるという情報をつかんだ石油部長の兵頭信一良(竹野内豊)は、石油開発を手がけたいと壹岐に直訴する。今回、売りに出される鉱区は、兵頭が以前から目をつけ、情報収集を続けていたサルベスタン鉱区である可能性もあるという。石油開発にすべてを賭けようとしている兵頭の強い決意を知った壹岐は、ただちにイランに向かうよう指示した。同時に壹岐は、イランへの経済協力として同国の液化天然ガスを関東電力に導入させるべく動き始める。

大門を訪ねた壹岐は、さっそく石油開発の件を切り出した。石油開発にかかる費用はおよそ200億円。石油が出れば1000億円以上の利益が見込まれていた。開発費用は、日本石油公社から最大で50パーセント支援してもらうことができるという。開発に失敗した場合でもその返済は免除されるというものの、石油が出なければ100億円もの費用が無駄になる。大門は、その場での決断を避けた。

一方、兵頭は、近畿商事テヘラン事務所を拠点にして情報収集を開始する。だが、売りに出されるのがどこの鉱区なのか、つかむことができなかった。焦りを隠せない兵頭は、イラン石油公社の筆頭理事に会うために、以前から何度か接触してきていたブローカーとコンタクトを取る。しかし、兵頭のミスから、その計画も失敗に終わってしまう。

壹岐は、第三次中東戦争の際にも協力を仰いだ国際ロビイストの竹中莞爾(清水紘冶)の事務所を訪ねる。そこで壹岐は、リビアの元石油大臣で、現在は石油コンサルタントをしているハバシュという人物が今回イランで売り出される鉱区を知っているとの情報を得る。壹岐は、兵頭に連絡し、ハバシュが滞在しているパリに向かうよう命じた。出展元:(C)フジテレビ

15話「邪魔者は消えろ!」

石油開発に乗り出した壹岐正(唐沢寿明)と兵頭信一良(竹野内豊)は、イランのサルベスタン鉱区が売りに出されるという情報をどの商社よりも先に入手した。その情報を元に、壹岐たちは日本石油公社総裁の貝塚道生(段田安則)に会い、近畿商事の単独入札と、開発資金援助の内諾を得る。それを知った東京商事の鮫島辰三(遠藤憲一)は、近畿商事の単独入札を阻止するために五菱商事、五井物産と手を組み、貝塚に圧力をかけた。その結果、サルベスタン鉱区は、近畿商事、東京商事、五菱商事、五井物産の四社連合で入札することになった。だが、他社がそれぞれ30%の出資比率であるのに対し、近畿商事だけが10%という屈辱的な決定が下されてしまう。

貝塚の決定に激怒した壹岐は、日本石油公社とは手を組まずに今回の入札に挑むことを決意。技術力と資本力を持つ海外の石油開発会社を探した壹岐たちが目を付けたのは、米の独立系石油会社・オリオン・オイル社だった。

ある夜、クラブ『ル・ボア』を訪れた壹岐は、黄紅子(天海祐希)と再会する。近畿商事が石油ビジネスに乗り出すという情報をすでに聞きつけていた紅子は、親交があるイランの前王妃からも、近畿商事について尋ねられたという。その席で、紅子がオリオン・オイル社のリーガン会長(チャールズ・グラバー)と面識があることを知った壹岐は、仲介役を頼んだ。それを引き受けた紅子は、来月、リーガン会長が夫の黄乾臣(石橋蓮司)に会いに来る際に、兵頭とともにジャカルタに来るよう告げる。

一方、仕事に復帰した副社長の里井達也(岸部一徳)は、社長の大門一三(原田芳雄)から石油開発の件を相談される。里井は、日本石油公社グループから離脱して海外の会社と組むのは非常識だとし、失敗すれば会社の屋台骨を揺るがし、大門の進退にもかかわる、と主張する。出展元:(C)フジテレビ

16話「地獄からの招待状」

石油開発に乗り出した壹岐正(唐沢寿明)と兵頭信一良(竹野内豊)は、イラン・サルベスタン鉱区の国際入札に際し、商社連合の日本石油公社グループから離脱し、米独立系石油会社オリオン・オイルと組むことを決意する。
社長の大門一三(原田芳雄)は、反対派だった副社長の里井達也(岸部一徳)を関連会社に出向させた。壹岐の要望を受けての決断だった。さらに壹岐は、大門とともに自由党幹事長の田淵(江守徹)を訪ね、近畿商事の後ろ盾になってもらいたいと依頼した。石油利権を握る政治家たちと組んでいる日本石油公社総裁の貝塚道生(段田安則)や東京商事の鮫島辰三(遠藤憲一)らによる妨害工作に対抗するためだった。

ところがその矢先、近畿商事がオリオン・オイル社と組んで国際入札に参加すること批判する記事が新聞各紙に掲載される。日本石油公社グループからの離脱は国益を無視した行為だというのだ。それを受け、貝塚は、近畿商事の行動は利益を独占しようというものであり極めて遺憾だとのコメントを発表する。

一方、兵頭は、近畿商事テヘラン事務所を拠点に、国際入札の決定権を持つイラン国王とその周辺の人物に関する情報収集を続けていた。国王の決断に影響力を持つ側近とコンタクトを取り、各国の入札価格等の情報を得ることが最重要任務だった。

近畿商事への非難が高まる中、取引先からのは、オリオン・オイルと組むなら今後の取引を白紙に戻すという電話が相次いだ。壹岐は、オリオン・オイルとの入札が事実だと認めた上で、今回の決断はあくまでも日本石油公社グループが入札できなかった場合の安全弁だと取引先に説明するよう社内各所に指示する。

そんな折、壹岐の前に、元近畿商事社員の小出宏(松重豊)が現れる。小出は、壹岐の部下として自衛隊の2次防FX受注に関わり、機密漏えいの疑いで逮捕された後、千代田自動車が開発を進めていた新車115タイガーの情報を買い取いとってもらうための仲介をしてほしいと接近してくるなど、壹岐にとって何かと因縁のある相手だった。小出は、壹岐のことが心配で訪ねてきたとうそぶくと、近畿商事が日本石油公社グループに戻れるよう仲介してくれる人物が待っている、と告げる。その相手とは、大物総会屋の林田正道(梅野泰靖)だった。

林田の屋敷を訪れた壹岐は、オリオン・オイルと組んだのは国益を考えた上でのことだと説明した。それに対して林田は、佐橋総理は自分の友人だから石油公社グループに戻れるよう力になりたいと告げた。しかし壹岐は、その申し出を受けようとはしなかった。出展元:(C)フジテレビ

17話「暗号と密約」

石油開発に乗り出した壹岐正(唐沢寿明)と兵頭信一良(竹野内豊)は、イラン・サルベスタン鉱区の国際入札に際し、ライバルとなる他社の入札価格に関する情報を入手するために、イラン国王の側近である医師ドクター・フォルジ(アルフレド・ベナベント)に接触する。壹岐たちは、イラン前王妃と親交が深い黄紅子(天海祐希)の協力でフォルジと面会の約束を取り付けた。だが、フォルジが面会の場所に指定してきたのは、ソ連の首都モスクワだった。シベリアで11年間も過酷な抑留生活を送った壹岐にとっては、二度と足を踏み入れたくない国だった。が、覚悟を決めた壹岐は、娘の直子(多部未華子)の反対を押し切ってモスクワへと向かった。

一方、五菱商事、五井物産とともに日本石油公社グループとしてサルベスタン鉱区の国際入札に臨む東京商事の鮫島辰三(遠藤憲一)は、日本のトップ企業を集めた経済ミッションをイランに派遣し、同国政府へのアピールに成功していた。そんな折、兵頭がテヘランから姿を消しているという情報を得た鮫島は、近畿商事が何らかの行動を起こしているのではないかと不審を抱く。

谷川正治(橋爪功)は、壹岐の家を訪ねた。谷川は、ソ連に向かった父を心配する直子に、朔風会にも帰国後にソ連を訪問したメンバーが4人いる、と話す。続けて谷川は、自分たちがシベリアにいたのは20年も前のことで、今回は正式なビザを発給されているのだから心配することはない、と言って直子を安心させようとした。

壹岐たちは、ドクター・フォルジの代理人であるソ連医学アカデミーのドクター・ペトロシャンの別荘を訪れた。そこで壹岐たちは、フォルジがイラン・イスファハンの名門一族の出身であること、内乱があり、当時10歳だったフォルジの目の前で一族が殺されるという過酷な体験をしていることを知る。ほどなく、別荘にやってきたファルジと面会を果たした壹岐は、敢えてイスファハンのことを口にした。するとフォルジは、差しだそうとしていた手を引っ込めて、シベリアには何年いたのか、と返す。思い出したくない話を敢えて口にしたのは、自分がどれほどの覚悟でソ連に来たのか、わかってもらうためだった。出展元:(C)フジテレビ

18話「汚れた英雄」

石油開発に乗り出した近畿商事は、アメリカの独立系石油開発会社オリオン・オイル社と組んでイランのサルベスタン鉱区を落札した。日本石油公社の支援を得た近畿商事は、東京商事からも5%の出資を受け、石油の掘削工事を開始した。

落札から3年8ヵ月後、副社長となった壹岐正(唐沢寿明)は、アメリカ近畿商事時代の部下・塙四郎(袴田吉彦)を呼び寄せて秘書にする。人事、総務、業務、海外事業の四部門を掌握した壹岐は、事実上、近畿商事の経営全般を指揮する権限を有するようになっていた。一方、石油部長だった兵頭信一良(竹野内豊)は、石油、ガスなどを統括するエネルギー部門の担当常務に昇進していた。

サルベスタンではすでに3本の井戸を掘っていたが、石油は一滴も出なかった。現在、四号井<よんごうせい>の掘削を進めているものの、これまでに合計50億円もの掘削費が泡と消えていた。

その矢先、四号井が深さ4750フィートで逸泥を起こし、いつ暴噴するかわからない危険な状態に陥っているとの連絡が入る。逸泥とは、坑井内の循環泥水が地層中の空洞や亀裂、浸透性の高い地層などによって失われる現象をいい、坑壁の崩壊や掘管の噴出といった重大なトラブルを引き起こす。ただちに現地に向かった兵頭は、石油があると思われる深度5000~8000フィートまで掘り進める方法を模索した。だが、これ以上掘るのは不可能だという現場責任者の判断から、兵頭も四号井の廃坑を決断するほかはなかった。

四号井の廃坑を受け、日本石油公社の山下総裁(矢島健一)は近畿商事に対する支援の打ち切りを決定する。壹岐は、四号井で良好な貯留層の存在が認められたことから、社長の大門一三(原田芳雄)に五号井の掘削を願い出た。しかし大門は、公社が手を引いた以上資金繰りができないとして、サルベスタンから撤退すると言い出す。壹岐は、かつての大門なら五号井を掘るといったはずだ、と返した。その言葉に激怒した大門は、自分の正当性ばかり主張して現実から目をそらすな、と怒鳴った。出展元:(C)フジテレビ

『不毛地帯』最終回の結末

最終回「約束の地」

近畿商事は、副社長の壹岐正(唐沢寿明)、エネルギー部門の担当常務である兵頭信一良(竹野内豊)を中心に、イラン・サルベスタン工事の掘削を開始した。だが、60億円もの費用を投じて4本の井戸を掘ったにもかかわらず油田を掘り当てることはできなかった。その最中、最後の望みを託した五号井が、ガス暴噴を起こしたとの連絡が入る。それ以来、現地からの報告は途絶え、電話も繋がらない状態が続いたため、壹岐は焦りを隠せなかった。

2日後、壹岐のもとにようやく現地にいる兵頭からの連絡が入る。2日間に及ぶ徹夜の作業で、五号井はようやく正常循環に戻ったという。壹岐は、ガス暴噴は油がある兆候だという兵頭の言葉を信じ、すべてを彼に任せて掘削の再開を指示する。

そんなある夜、壹岐のもとに東京商事の鮫島辰三(遠藤憲一)がやってくる。そこで鮫島は、近畿商事社長の大門一三(原田芳雄)が綿花相場で苦戦している話を切り出した。近畿商事のメインバンクである第三銀行の頭取が、その件で大門のことを心配していた、というのだ。

あくる日、綿花部長の伊原(上杉祥三)は、大門に進退伺を出す。綿花相場で49億円もの損失を出した責任を取って、大門を守ろうというのだ。しかし大門は、皆に知られて逆に自分の立場が悪くなる、といって伊原が出した進退伺を破り捨てた。
大門は壹岐を呼び出し、伊原に進退伺を出すよう迫ったのではないか、と問いつめた。壹岐は、それを認めると、早急に綿花相場から手を引いてほしいと大門に迫った。聞き入れられない場合は役員会議で決議を出す、という壹岐の言葉に危機感を抱いた大門は、タクボ工業を訪れ、里井達也(岸部一徳)に会った。そこで大門は、壹岐を近畿商事から出すのなら戻る、という里井が出した条件を聞き入れると約束する。

別の日、壹岐のもとに、アメリカ近畿商事の海部要(梶原善)、八束功(山崎樹範)がやってくる。海部らは、千代田自動車とユナイテッドモーターズの提携を進めており、ようやくユナイテッドモーターズ側が会合の席についてくれたのだという。

サルベスタンでは五号井の採掘が進められていたが、依然、石油が出る兆候はなかった。そこにやってきたオリオン・オイル社のリーガン会長(チャールズ・グラバー)は、リスク覚悟で水圧破砕を試すべきだと主張する。水圧破砕は、威力がある分、予期しない地層の崩壊を招く危険性もあった。が、リーガンは、すでに損益ラインをオーバーしている以上、このまま石油が出るのを待つだけなら降りる、というのだ。決断を迫られた兵頭は、しばらく考えた後、水圧破砕にすべてを賭ける覚悟を決める。

同じころ、近畿商事では役員会議が開かれていた。伊原がノイローゼで神経科に入院した件と合わせて、綿花相場での巨額損失について切り出したのは財務本部長の武蔵稔(中原丈雄)だった。しかし大門は、綿花相場の件より60億円を無駄にした石油開発の方が問題だと言い出し、経営を立て直すために里井を副社長として呼び戻すことにした、と役員たちに宣言する。

役員たちの前で里井が副社長復帰の挨拶をしている最中、壹岐の秘書・塙四郎(袴田吉彦)が役員会議室に飛び込んでくる。サルベスタンの五号井から石油が出たという知らせだった。日産2~3万バーレル以上の噴出状態だという。業務本部長の角田保(篠井英介)や武蔵は、壹岐に祝福と労いの言葉をかけた。壹岐は、涙を浮かべながら役員たちに礼を言った。

壹岐は、大門とともに記者会見を行い、油田発掘の報告をする。その席で壹岐は、今回の成功は、失敗のリスクを恐れなかった大門の勇気が一番の要因だ、と褒め称えた。入り口でそのようすを見ていた里井は、静かに会見場を後にした。

会見を終えた大門と壹岐は、社長室に戻った。そこで壹岐は、大門にいきなり勇退を迫った。「石油開発を始めるときから、お前の腹の中には社長の椅子に座るっちゅう野望があったんやな。何が国益や、何が使命感や!」。大門は、壹岐を怒鳴りつけた。

あくる日、毎朝新聞の一面には、大門が綿花相場で巨額の損失を出したという記事が掲載された。壹岐が、毎朝新聞の田原秀雄(阿部サダヲ)に情報を流したのだ。それを見た大門は、怒りが収まらず、新聞を放り投げ、踏みつけて暴れた。大門は、やってきた里井に、大株主や主力銀行の支持を取り付けるよう命じた。だが里井は、すでに勝負はついているとし、近畿商事復帰の話を白紙に戻してほしい、と言い出す。大株主や金融筋だけでなく、社内の人間もすべて壹岐を支持するいま、大門には彼を切る力はない、というのだ。

一方、黄紅子(天海祐希)は琵琶湖を訪れていた。そこに秋津千里(小雪)を呼び出した紅子は、壹岐と結婚しないのか、と尋ねた。すると千里は、壹岐とはもう結婚がどうという間柄ではないのかもしれない、と答えた。千里は、妻となることで陶芸の制作を乱されたくないという思いがあった上、亡くなった佳子のように壹岐を支えることができないとも考えていたからだった。そんな千里に、「あなたと亡くなった奥様は違うのよ」と紅子は声をかけ…。

別の日、壹岐は、大門に呼ばれて大阪本社を訪れる。そこで大門は、近畿商事の社長を退いて、会長に就任することを壹岐に告げる。すると壹岐は、会長ではなく相談役になってほしいと進言し、胸のポケットから辞表を取り出した。石油開発に成功したいまこそ世代交代を断行し、これからは組織で戦うべきだというのだ。

壹岐の思いを受け止めた大門は、集まった役員たちの前で社長を退くことを発表する。壹岐も退任すると知った兵頭らは、驚きを隠せなかった。

壹岐は、直子(多部未華子)と誠(斎藤工)を呼び、これからは谷川正治(橋爪功)の遺志を継いで朔風会の仕事をやっていくと伝える。直子は、迷惑をかけ通しですまなかったと頭を下げる父に、「長い間、お疲れ様でした」といって微笑んだ。

千里に会いに行った壹岐は、いままでのことを詫び、ふたりの関係を終わらせようとした。しかし千里は、壹岐への思いはこれからも変えられないのだから待っている、と答える。

数日後、壹岐は、シベリアに向かうため、羽田空港にいた。そこに現れた鮫島は、近畿商事が千代田自動車とユナイテッドモーターズの資本提携に成功したという新聞記事を見せ、このままでは済まない、辞めたと見せかけて奇襲攻撃を仕掛けるつもりだろう、などと言い出す。出発ゲートに向かう壹岐を追いかけた鮫島は、その背中に向かって、「まだ勝負はついてないぞ!壹岐正を倒せるのはこの鮫島だけだ!辞めるな!」と叫んだ。

シベリアの地に降り立った壹岐は、雪原の中に広がる日本人墓地を訪れる。シベリア抑留の過酷な日々を思い出しながら、静かに手を合わせる壹岐。その目からは涙が溢れて…。出展元:(C)フジテレビ

『不毛地帯』感想

原作者の山崎豊子さんの希望で『白い巨塔』に引き継続き、主演を務めることになった唐沢寿明さん。

ドラマ自体は、視聴率低迷で後半は駆け足の展開になりましたが、そんなことを差し引いても傑作に数えられる作品でした。

11年のシベリア抑留から帰還し、商社で航空自衛機の売り込み、米国との自動車提携、石油発掘と辣腕を振るう壹岐。

最初は、戦争責任者として二度と過ちは犯さないと誓ったものの、魑魅魍魎とした商社の世界では綺麗ごとはいってられず、静かな闘志を燃やしながら時には汚い手を使うことも。

脂ギッシュなおじさま、付きまとう新聞記者、タバコの煙、鳴り響く黒電話、ホステスの嬌声、密談…ギラギラした昭和のクオリティも高い。

硬派な物語の箸休めとして盛り込まれる、友情、家族愛、陶芸家との許されぬ恋などの人間ドラマも物語に花を添えます。

小雪さんの役柄は不評だったようですが、私的には壹岐のベールに包まれたプライベートをのぞき見するようで楽しめました。

本作はとにかく演技派が勢ぞろいで、キャスティングに成功していましたね。

話題性だけのアイドルやモデル上がりは登場せず、あらゆる種類の硬派な俳優たちが、ヒリヒリするような演技合戦を繰り広げます。

なかでも、大門社長役の原田芳雄さん、里井副社長役の岸部一徳さん、ライバルの商社マン鮫島役の遠藤憲一さんが印象に残りました。

大門社長の栄光から終焉まで、その大門に長年仕えてきた里井副社長の悲哀、目的を達成するため獲物に食らいついて話さない鮫島。

壹岐が近畿商事を去るときにライバルの鮫島が「辞めるな~」と叫んだのは、彼らしい。

鮫島の仕事の精力のもとは壹岐正。張り合いを失った彼も引退に向かっていくんでしょうね。

ストーリーは、伊藤忠をモデルにした経済戦争を描いていますが、常に根底にあるのは太平洋戦争での過酷な体験。

壹岐が石油開発に反対する里井から真珠湾攻撃の話を持ち出されたときも、「かつて武力で得ようとした石油を日本の将来のために平和な形で得たい」と、過去の自分の過ちを悔い、恩返ししようとする姿が心に残ります。

『不毛地帯』は、戦争を経験した日本人の「戦後の生き方」を問い続けた山崎豊子さんの遺志を引き継ぐような傑作ですので、令和でもぜひ再放送して頂きたいです。

唐沢寿明主演『白い巨塔』の相関図と最終回の結末は⇒こちら

山崎豊子原作ドラマ「運命の人」最終回までのあらすじと相関図は⇒こちら


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