『ブラック・ショーマン名もなき町の殺人』ネタバレ!あらすじ~結末を相関図付きで解説

東野圭吾さんによる『ブラック・ショーマン名もなき町の殺人』は、教師だった父が何者かによって命を奪われたことにより、娘と元マジシャンの叔父が、自ら真相を探っていくミステリーです。今回は福山雅治さん主演で映画化も決定した『ブラック・ショーマン名もなき町の殺人』のあらすじから結末をご紹介いたします。
『ブラック・ショーマン名もなき町の殺人』あらすじ
都内の建築会社で働く神尾真世は、故郷で父が亡くなったと連絡を受け生家に戻るが、そこで何年間も音信不通だった叔父・神尾武史と再会する。
武史は、かつてアメリカで“サムライゼン”という名で活躍していたマジシャンで、真世は叔父と共に警察の手を頼らずに真相を解明しようと決意する。
そんななか真世と武史は、父が亡くなる前に計画された真世の同級生・針宮克樹による漫画「幻脳ラビリンス」にちなんだ町おこし事業に注目する。
父の教え子が絡んだ、観光客を呼ぶための華々しい「幻ラビ・ハウス」と名付けられ計画は、コロナ禍により頓挫していた。
中学校で教師をし、慕われていた父はなぜ殺されなければならなかったのか。
犯人は誰なのか。その動機はーー
『ブラック・ショーマン名もなき町の殺人』登場人物&相関図
◆登場人物
【真世の家族と婚約者】
◆神尾真世・・・都内の建築会社勤務。おなじ会社の社員・中条健太との結婚を控えている。
◆神尾武史・・・神尾英一の弟で真世の叔父。アメリカで“サムライゼン”という名でマジシャンをしていた過去がある。現在はバーを経営。
◆神尾英一・・・真世の父。元中学校の教師。自宅で何者かに首を絞められ命を落とす。
◆中条健太・・・真世の婚約者。
【真世の中学の同級生】
◆針宮克樹・・・真世の同級生。中学生の頃は目立たない存在だったが漫画家となり、「幻脳ラビリンス」の作者として大成功を収め一躍町のヒーローとなる。
◆津久見直也・・・釘宮の親友で彼が漫画を描くことを応援していた。真世とは両想いだった。中学時代に白血病のため亡くなる。母は美容院を営む。
◆池永桃子・・・真世の親友。夫の良輔が単身赴任のため、子どもと共に実家に戻っている。良輔は同じ中学の5年先輩で武史が担任を務めた。
◆原口浩平・・・酒屋「原口商店」を手伝う。神尾英一殺害の第一発見者。
◆九重梨々香・・・見た目の言動も派手。現在は都内の有名広告代理店に勤めている。中学時代は女子のリーダー的存在。成功した釘宮に目を付け、「幻ラビ」関連の仕事を担当し、マネージャーのように振る舞う。
◆柏木広大・・・地元で有名な「柏木建設」の副社長。町おこしに「幻ラビ・ハウス」計画するも、コロナ騒動で中止になる。
◆牧原 悟・・・三つ葉銀行員。「幻ラビ・ハウス」計画の資金集めに協力していた。
◆杉下快斗・・・IT企業を起こし、成功したエリート
◆沼川伸介・・・地元で居酒屋を経営している。
【その他】
◆森脇敦美・・・英一の教え子。父は有名な実業家。
◆相関図
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『ブラック・ショーマン名もなき町の殺人』犯人と結末をネタバレ
被害者遺族の真世と武司は、警察からの事件状況を教えてもらえず独自に事件解決にあたります。
武司はお葬式でカメラを仕込み、父・英一の交友関係を探ったり、警察の携帯電話のデータを拝借。
真世は同級生たちに会い、聞き込みをしながら身辺調査を行った結果、思いもよらない真相が浮かび上がってきました。
◆同窓会に集められた容疑者たち
真世を含む英一の教え子3年2組の同窓会がレストランで開かれ、二次会は母校の中学校で行われることになりました。
あの頃のように教室の席につく容疑者たち。
そこにチャイムが鳴り、栄一そっくりに扮装した武史が現れ、教壇に立ちました。
武史は、これからホームルームと言う名の「反省会」を開き、卒業してから十五年を振り返ろうというのです。
武司が指名した人物は3名。
◆柏木広大・・・地元で有名な「柏木建設」の副社長で主体となって町おこしに「幻ラビ・ハウス」計画。中止後は次の計画を立案中。
◆牧原 悟・・・三つ葉銀行員。「幻ラビ・ハウス」計画の資金集めのため栄一から紹介された資産家に出資を頼んでいた。
◆九重梨々香・・・有名広告代理店に勤め「幻ラビ」に関連する仕事を管理。英一が亡くなった日にある人物と密会していた。
このなかに犯人はいるのでしょうか。
◆「幻ラビ・ハウス」計画の資金の行方
「幻ラビ・ハウス」プロジェクトを自身が経営する建設会社を主体として進めていた柏木広大と、銀行員の牧原 悟。
武史は「幻ラビ・ハウス」で集めた資金に目をつけ、その出資者について質問をしました。
一番大きな出資をしていたのは森脇和夫という人物で、以前 資産管理に困っていた森脇を牧原に紹介したのは英一でした。
一億もの資産を持つ森脇は、若い頃にマネーロンダリングで不正に得た金を遺産として家族に遺すのは罪悪感があり、慈善団体に寄付したいと話をしていました。
牧原はそれならと、地元の活性化のために「幻ラビ・ハウス」の出資を持ち掛けました。
しかし、途中まで建設されていた「幻ラビ・ハウス」はコロナ禍により中止されてしまいます。
そんなか、森脇自身も病気のために亡くなり、娘の森脇敦美は父の預金が消えていることに気づき、英一に相談していたのです。
森脇の出資した1憶円を着服しようとしたことが英一にバレそうになり、柏木と牧原が犯行に及んだと疑いがかけられましたが、二人は犯人ではありませんでした。
柏木は、森脇の1憶円は家族には内緒にという話だったので返金はできなかったが、次の町おこし計画に回そうとしていたのでした。
◆九重梨々香の密会相手
大手広告代理店に勤める九重梨々香は、漫画家として成功した針宮克樹に目をつけ、「幻ラビ」に関して受ける仕事の決定権を持っていました。
中学時代 地味で目立たない存在だった釘宮にとって、華やかな梨々香は憧れの存在で、舞い上がっていました。
武史はそんな梨々香が、英一が亡くなった日に、既婚者のIT企業社長・杉下快斗とホテルで密会していたことを指摘しました。
梨々香は、「幻ラビ」のオンライン化ゲームに関するビジネスのため杉下と寝たのでした。
しかし、梨々香には英一を殺害する動機はなく、単に仕事のために釘宮と杉下を利用していただけだったのです。
◆真犯人
そんななか、葬儀のときの映像が真世の目に留まりました。
実は、葬儀の日に武史は英一の遺影の目にカメラを仕込み、参列者がちゃんと遺影を直視しているのか観察していました。
そのなかで、うつむいたまま焼香し、遺影を見ることなく横を向いて画面から消えた不自然な人物がいました。
針宮克樹です。
なんと英一を殺害したのは釘宮だったのです。
英一は、これまでの教え子の文集や作文を丁寧に自宅で保管していました。
英一は今度の同窓会で、釘宮の親友で、中学時代に白血病で亡くなった津久見直也の作文と共に、親友だった釘宮の友情を紹介したいと思っていました。
将来漫画家になりたかった津久見の作文には、「幻脳ラビリンス」の原作ともいえる物語のアイデアが綴られていました。
英一は、「幻脳ラビリンス」は津久見が作ったストーリーを釘宮に託して漫画にした美しい友情の作品だと勘違い。
二人の絆を、同窓会の場で皆に発表したいと釘宮に提案しました。
盗作したことがバレると思った釘宮は焦りながらも、英一の提案をうまくごまかしながら断りました。
同窓会での発表はなくなったものの、今後いつ盗作がバレか分からないと思った釘宮は、作文の存在を消すため英一の自宅を放火することを思いつきます。
そして事件当日、英一がいないことを確かめ自宅を訪れた釘宮は、タオルとオイルライターを取り出して火をつけようとしました。
しかし、英一は東京から帰宅しており部屋から「誰だ!警察に通報するぞ」と出てきたのです。
釘宮は揉み合いになりながら、咄嗟にそばにあったタオルで、英一の首を絞めたのが事件の真相でした。
『ブラック・ショーマン名もなき町の殺人』感想
姪の真世はもちろん警察までを翻弄する元マジシャン・武史の刑事とは異なるショーマン的な推理が面白い。
遺影にカメラを仕込んだり、警察の携帯電話を情報を抜き取るグレーな捜査から、扮装の技術、相手の心理を読むメンタリストの一面まで、彼の鮮やかなテクニックは、王道な事件をドラマテックに盛り上げてくれます。
歯に衣着せぬ発言と自分勝手でどケチな武史のキャラは、映画化されるにあたり湯川先生を演じた福山雅治さんで納得。
最後の変装に意味があったのかは置いといてwショー仕立ての謎解きは、映像化にピッタリですね。
一方で、コロナ禍で観光客が減った街など時勢を盛り込んだ設定は、マジシャンという強烈な設定にリアルさがプラスされて、フィクションとのバランスも良い。
そして、プロローグで触れられた武史の“サムライゼン”として活躍した過去、帰国後は身を隠すように路地裏のバーに留まっている理由は不明のまま。
エキセントリックな叔父さんの魅力は十分堪能できたので、今度は過去に戻って人間的な厚みの部分も描いてもらいたいです。
また、ほんどの伏線は回収されたのですが、真世の携帯にメールを送った健太の元カノの正体の謎は残されたまま。ぜひ今後のシリーズで明かして欲しい。
私的には『白夜行』のような重めのストーリーが好みですが、『ブラック・ショーマン名もなき町の殺人』は東野圭吾さんのなかでも、サクッとライトに楽しめる作品。
『ガリレオ』シリーズが好みの方にもおすすめなので、映画化の予習としてぜひ読んでみてくださいね。
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