『リラの花咲くけものみち』ネタバレ!あらすじ~感想を登場人物・相関図付きで
『リラの花咲くけものみち』は、引きこもりだった15歳の少女が、北海道の豊かな自然のなかで仲間と共に命に向き合い、獣医師になるまでの物語です。今回はNHKでドラマ化もされる『リラの花咲くけものみち』をネタバレ有りでご紹介いたします。
『リラの花咲くけものみち』あらすじ
『リラの花咲くけものみち』の舞台は、北海道の中部に位置する江別市の北農大学。(ちなみにモデルとなったのは酪農学園大学)
母を小4で亡くし、継母からネグレクトを受け、祖母・チドリに引き取られた岸本聡里は、獣医師になる決意をし、ここ北農大学に進学した。
聡里は、自然豊かな大学で動物や仲間と交流しながら、獣医師になることの厳しさややりがいを感じながら命の重さと向き合います。
時に残酷な判断を下さなければならない獣医師の試練に挫折しそうになる聡里ですが、少しづつ前向きになり、たくましく成長していきます。
『リラの花咲くけものみち』登場人物
◆登場人物
◆岸本聡里・・・獣医師を目指す北農大学獣医学群の学生。幼い頃に母を亡くし、父が再婚した継母とうまくいかず不登校になり愛犬・パールと引きこもっていたところ祖母に引き取られた過去がある。
◆梶田 綾華・・・北農大学獣医学群の学生で聡里のルームメイト。医者一家に生まれたが医学部に落ち、当てつけのように獣医学に進学した。
◆久保残雪・・・聡里の同級生。鳥類オタクで父も鳥類学者。名前は童話「大造じいさんとガン」から付けられた。暇さえあれば野鳥の観察をしている。いつも聡里のことを気に掛けている。
◆加瀬一馬・・・獣医学類の上級生。動物病院で働きながら動物保護のボランティアをしている。聡里が怪我をした迷い犬を見つけ、困っていたところを助ける、聡里が淡い恋心を抱く相手。
◆静原夏菜・・・獣医学類の上級生で、女子寮の寮長。実家は牧場を営んでいる。獣医師の仕事が甘くないことを知っており、時に厳しい一面を見せるが、面倒見が良い先輩。
◆久恒先生・・・一馬のバイト先、ナナカマド動物病院の院長。保護した動物は無償で診ている。
◆能見正也・・・牛、馬など家畜専門の獣医師。やむを得ず厳しい選択をすることもあり、聡里に獣医師という仕事の厳しさを教える。
◆牛久チドリ・・・聡里の祖母。心臓の病で娘・有紀子(聡里の母)を亡くし
◆岸本孝之・・・聡里の父。再婚後は仕事の忙しさや友梨への配慮から、辛い思いをしている聡里のことは放置した。
◆岸本有梨・・・聡里の父の再婚相手で聡里の継母。聡里を疎ましく思っている。
◆岸本唯・・・聡里の父と有梨との間に生まれた子ども。聡里の異母妹。
『リラの花咲くけものみち』結末までをネタバレ
◆聡里の過去
小学校4年生の誕生日に母・有紀子を亡くした聡里は、2年ほど父と二人暮らしをしていましたが、あるとき父は再婚。
しかし、その再婚相手・有梨は、血の繋がらない聡里を疎ましく思い、愛犬パールも手放すように言ってきました。
聡里は、自分がいない間にパールが捨てられてしまうかもという恐れから、家から出られなくなり不登校となってしまいます。
それから3年半たった聡里15歳のとき、突然 祖母のチドリが家を訪ねてきます。
チドリは、聡里のボサボサの頭ややせ細った体を見て、泣き、怒りに震え、その日のうちに自分の家へ連れ帰ったのでした。
もちろん、聡里が一番辛いときに傍にいてくれたパールも一緒です。
◆獣医師の厳しさ
北海道の北農大学に進学した聡里は、寮に入ることになりました。
しかし人見知りの聡里は、寮のルームメイト・梶田綾華に好かれてはいないようで、挨拶すらしてもらえません。
ある日 綾華から、気持ち悪いから同じ部屋で過ごしたくないと言われた聡里は、その理由を聞きます。
実は、聡里は愛犬・パールの遺骨を亡き母が7歳の誕生日に注文してくれていたケーキの箱に入れて、寮に持ってきていました。
そして寂しい時や辛いときに、その遺骨に触れ、心を落ち着かせていたのです。
聡里の過去を知った綾華は、それ以来 これまでのような険のある態度を改め、友人として接してくれるようになっていきました。
綾華は、医者一家に育ちましたが女であることを理由に両親から熱心に教育を受けさせてはもらえました。そこで医学部を受験しますがすべて落ち、腹いせのように獣医学類に進学していました。綾華は自分よりも辛い境遇で育った聡里と出会ったことで、少しづつ実習にも慣れていきました。
◆獣医師の仕事は甘くない
授業や臨床実習、動物病院でのバイトをこなしていた聡里は、ある日静原夏菜の実家の牧場で馬のお産に立ち会うことになります。
夏菜の叔父から生まれてくる子馬の名付けを頼まれた聡里は、「スノーパール」にしようと決めます。
しかし いざお産が始まると、胎子の前脚は母馬のお腹に引っかかり、このままだと母子共に危険な状態にさらされることに。
そこで 能美先生が下した決断は、胎子切断術。
母体を守るため、上半身が出てきたとろこで胎子をノコギリで切断して掻き出すという方法です。
夏菜と同じく先輩の加瀬一馬は、能美の指示に従って、処置を手伝いました。
聡里は 目の前で起こったことに耐えらなくなって叫びました。
そして、自分には獣医師は無理だと思い、祖母のいる東京に逃げ帰りました。
この後、夏菜に「獣医師の仕事は甘くないから、無理だと思うなら、やめたほうがいい」と言葉をかけられた聡里。実は夏菜の父は、競走馬を診る獣医師でしたが、自分の判断で競走馬が安楽死になってしまうことに耐えられず、自ら命を絶っていたのです。夏菜は、獣医師の本当の厳しさを知っていたこそ、聡里に現実を教えたんですね。
◆母の想いと友情
東京に帰省した聡里は、なんとなく生家をこっそり見に行きました。
すると偶然にも父と継母・有梨との間に誕生した唯に会い、彼女から父親がまだ聡里の写真をスマホに保存していることを知ります。
有梨に見つかるとまずいので、父はこっそり唯だけに聡里の画像を見せていたのです。
あれから父も聡里を忘れていたのではなく、15歳から18歳まで養育費を渡して聡里が塾へ行くことを援助しながら、聡里のことを想っていたのです。
またチドリは、聡里の母・有紀子が15歳の頃に20歳になった自分へ向けて書いた手紙を聡里に渡しました。
有紀子は、心臓疾患で20歳まで生きるのは難しいと宣告されながらも、「子どもを持ちたい」という強い夢に従い、自分の命を危険にさらしてまで聡里を出産していました。
そんななか、聡里のもとに獣医学群の同級生・久保残雪と綾華から心配する電話がかかってきました。
母から夢を叶えるためなら何事も恐れない勇気を与えられ、友達からの励まされた聡里は、大学の臨床実習に戻ることを決意しました。
◆初恋からの失恋
二年生になった聡里は、憧れの先輩・加瀬一馬は代わりに、ナナカマド動物病院のアルバイトを引き受けることになりました。
聡里は、そこでペットロスや「伴侶動物」と呼ばれるペットの獣医学を学ぶうち、自分が将来進むべき道を模索していきます。
そんななか一馬が卒業する日がやってきました。
聡里は残雪から「気持ちを伝えた方がいい」と言われ、思い切って自分の想いを伝えようとしました。
しかし、聡里が目撃したのは、仲睦まじく手を繋いで歩く一馬と夏菜の姿でした。
聡里は「たくさん たくさん ありがとうございました 大好きです」と書かれたメッセージカードとクリスマスローズの花束を握りしめ、涙がこぼれないようにその場から去りました。
こうして、聡里の初恋は告白すらできずに終わってしまいました。
◆チドリとの別れ
六年生になった聡里のもとに、左半身が麻痺していいた祖母・チドリが入院したという連絡が入ります。
聡里が慌てて寮に向かう様子を見ていた残雪は、車で空港まで聡里を送り届けてくれました。
東京に到着すると、なぜか父が迎えにきていました。
気まずい気持ちのまま、父と共に病院に向かうと、すでにチドリは息を引き取っていました。
翌日、聡里はチドリの葬儀の喪主を務め、パールの遺骨をチドリの棺桶のなかにこっそり納めました。
葬儀を終えて聡里がチドリの家に戻ってくると、父が訪ねてきて「おまえも一人になって辛いだろう」と一緒に暮らすことを提案します。
しかし聡里は、父と友梨と異母妹二人の家族になかに自分の居場所があるわけないと、きっぱり断りました。
そして自分の苗字を祖母の「牛久」に変えたいと、事実上の決別を宣言し、父に3年間養育費を払ってくれたことの感謝を述べました。
「聡里。おかえり。」千歳空港に降り立った聡里を残雪が迎えに来ていました。
残雪は、運転しながら自分の名前の由来や、子育て中のチドリが外敵からヒナを守ために自分が怪我をしている風に見せて囮になることなどを話し、悲しみに暮れる聡里の心を溶かしていきました。
寮に到着すると残雪は、チドリと自分には2つ共通点があると言い、一つは名前に野鳥が関係すること、そしてもう一つは聡里のことを傍でいつも見守っていることだと話しました。
残雪らしい聡里への告白。チドリという支えを失ってしまった聡里でしたが、自分のなかで残雪の存在が次第に大きくなるのを感じるのでした。
◆結末
聡里は、実習先の折原牧場で牛のお産を手伝い、生まれた仔牛が「サト」と名付けられたことを嬉しく思いました。
そして、大動物(産業動物)の獣医師になることを決意します。
それから六年後ー。
北海道農業組合の診療所で獣医師となった聡里は、折原牧場を訪れ、サトと名付けられた母牛は出産した仔牛を診察を行っていました。
そして、残雪との結婚を控えています。
残雪は釧路にある鳥の研究所で働いており、結婚後は聡里も釧路に移住して獣医師を続けることになっています。
聡里は、思い悩むことはあったけれど何とか獣医師になることができたことを誇らしく思い、これからの困難も残雪とだったら乗り越えられると思うのでした。-おわりー
『リラの花咲くけものみち』感想
『リラの花咲くけものみち』は、虐待された過去を持つ少女が、祖母や仲間たちに支えられ、命の重さに向き合いながら獣医師になるまでのお話。
どんなに悲惨な状況にいる人でも、周囲が寄り添い、手を差し伸べるだけで、ここまで人生を切り拓いていくことができると思わせてくれる作品でした。
最初に祖母の袖をひっぱりモジモジしていた聡里が、最後には産業動物を診る逞しい獣医師になるとは…彼女が動物の命を通して友人や恋人など青春を取り戻していく姿がとても眩しい。
途中、動物好きには目を背けたくなるようなシーンも多く出てきますが、獣医師という仕事は綺麗ごとだけでは片づけられないハードな面を持つことも事実。
ペットロスや動物保護、畜産業の経営、競走馬の末路についての社会的なテーマも自然に織り込まれ、普段触れられないものことも知れて良かったです。
そして、重いエピソードの途中に挟まれる、北海道の雄大な自然、野鳥、魚、花、などの美しい描写は、一種の清涼剤として物語を彩ってくれています。
『満天のゴール』も素晴らしかったですが、本作も藤岡陽子さんらしい、瑞々しい文章が紡ぎ出すじんわり心温まる物語です。
ドラマで興味を持った方は、ぜひ原作小説も手にとってみてください。
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