『ベネチアの亡霊』あらすじ~結末・犯人を相関図つきでネタバレ

ケネス・ブラナー監督による「オリエント急行殺人事件」「ナイル殺人事件」に続くシリーズ第3弾『ベネチアの亡霊』のあらすじと結末を相関図付きで解説します。
『ベネチアの亡霊』あらすじ
水の都ベネチアで引退生活をしていたエルキュール・ポアロは、旧友で小説家のアリアドニ・オリヴァに誘われ、元オペラ歌手ロウィーナ・ドレイクの屋敷で開かれる降霊会へ参加します。
ロウィーナは娘のアリシアを転落事故で亡くしており、今回「降霊した死者の声で語る」という霊媒師レイノルズを招き、娘の最後の言葉を聞こうとします。
招かれた客は、ドレイク家の家政婦オルガ、心を病む医師フェリエと早熟な10歳の息子レオポルド、そして何者かから招待状を送られたアリシアの元恋人・マキシムでした。
実はアリシアは、婚約していたマキシムと破談となったことで精神的に不安定となり、錯乱状態のなかバルコニーから落下し運河で溺死、警察は自殺と判断したという経緯があります。
霊媒師レイノルズは、助手デスデモーナ、彼女の弟のニコラス共に屋敷に現われ、降霊会を始めると、用意されたタイプライターが勝手に文字を打ちはじめました。
しかし超常現象を全く信じていないポアロは、ニコラスが暖炉のなかに隠れ、リモコン装置でタイプライターを操作していることを見破りますが、直後に座っていた椅子がポルターガイスト現象のように勝手に動きだします。
そしてレイノルズは、アリシアにそっくりな声で「私は殺された!」と叫び、バルコニーへの扉が開いたかと思えばタイプライターに“M”の文字が打たれました。
ここでひとまず降霊会は終了しますが、ポアロは先ほどの現象のトリックを考えていました。
するとそこにレイノルズが現れ、ポアロがかつて愛した女性「カトリーヌ」の名を口にし、ポアロにローブと仮面を身に着けさせると立ち去りました。
ローブと仮面を身に着け仮装した状態のポアロは、さきほど子どもたちが遊んでいたハロウィーンの定番ゲーム「アップルボビング」(水面に浮かんだリンゴを加えるゲーム)を一人で始めます。
するとポアロが水に顔を付けた瞬間、背後から何者かに顔を押さえつけられ、溺死しそうになってしまいます。
なんとか助かったポアロの元にボデーガードのポルトフォリオが駆けつけ状況を聞き取りするなか、屋敷内に悲鳴が響きます。
そこには、階下に置かれた女神像が持つ槍に突き刺さったレイノルズの無残な遺体がありました。
ポルトフォリオはすぐに警察に連絡しますが嵐のためゴンドラを動かすことができず、応援は期待できないことが分かりました。
ポアロは犯行時刻にアリバイがあったオリヴァと共に、密室となった屋敷内でレイノルズ殺害の犯人捜しを始めますが、再び犠牲者が…。
『ベネチアの亡霊』相関図
※無断転載ご遠慮ください。
『ベネチアの亡霊』の犯人と結末をネタバレ
◆名探偵ポアロ復活
ポアロはまずロウィーナに降霊会を開催した経緯を聞きました。
霊媒師レイノルズから娘・アリシアが自分だけに使っていた愛称「アスパシア」が記された手紙を受け取ったロウィーナは、我が子の声を一言でも聞きたいと思い今回の降霊会を催すことに決めました。
生前アリシアは魅力的なシェフ・マキシムと婚約しましたが、反対していたロィーナは屋上庭園の花を全部抜いてトルコのイスタンブールへ旅立ちました。
ロウィーナが言うには、マキシムはロィーナ親子があまり裕福でないと知ると、突然婚約を破棄しました。
それ以来アリシアは心を病んで屋敷に閉じこもりがちになっていきました。
次に事情聴取されたのは、夜中に尋ねて来たロィーナと共に音楽室にいたという家政婦のオルガ。
オルガはアリシアを娘のように大切にしていましたが、事件の夜に錯乱したアリシアから少し目を離したことを悔やんでいました。
そしてポアロは、元修道女のオルガの洗礼名は「M」から始まる「マリア」だと聞き出しますが、直後に屋敷のなかでかすかな少女の歌声を耳にしました。
それからドレイク家の主治医・ドクターにレイノルズの検死結果を確認したポアロは、レイノルズの遺体にアリシアの遺体にも残されていた鉤爪の掻き傷があったことが分かりました。
この傷は、この屋敷に取り憑く子どもたちの霊の伝説で語られる「復讐の印」と同じものでもありました。
ドクターは戦争末期に従軍医師としてナチスの強制収容所を訪れた際に、解放された人々の看護にあたりましたが、食料も薬も不足していたために大勢の目の前で尽きていく惨劇を目撃しました。
耐えられなくなったドクターは、自らの胸を銃で撃ち負傷することで戦場を離れ、医師という仕事を離れました。
精神を病んだドクターでしたが、密かに恋をしていたロィーナに頼まれて、アリシアの主治医を引き受けました。
しかしドクターは、婚約破棄によって心を壊したいったアリシアに真剣に向き合えず、満足な治療が出来ないまま彼女を死なせてしまったことを後悔していました。
そんななかポアロは手の震えが抑えられずにトイレに向かいますが、洗面所の後ろにアリシアの幻影を見て驚きます。
トイレからでると、そこにドクターの息子・ レオポルドが立ち「霊はあなたを仲間と思っている。何か言いたい霊はあなたを選ぶはず。」と意味深な発言をしました。
次に聞き取りを行ったのは、レイノルズの助手であったデズデモーナ&ニコラス姉弟。
彼らはハンガリー出身で、戦争で村を焼き払われドイツの森で飢えを凌いでいたところをアメリカ軍に保護された過去がありました。
アメリカ軍に見せてもらった映画「若草の頃」に憧れ、ミズーリ州で暮らすという夢を持った姉弟。
二人は、その資金を貯めるためレイノルズのもとで1年ほど働いていましたが、姉を召使いのように扱い、弟に色目を使うレイノルズに不満を持っていました。
ポアロが夢のために焦ってレイノルズを殺害したのでは?と指摘すると姉弟は逃げ出そうとしますが、すぐにポルトフォリオが拘束しました。
◆謎が謎を呼ぶ
ひとまず事情聴取を終えたポアロは、廊下で先ほどのハロウィーンパーティ―に来ていた少女と話をしていましたが、オリヴァに「誰と話しているの?」と問われた途端、少女は消えてしまいました。
怪現象に悩まされるポアロでしたが、突然地震のような地響きを耳にして地下室に向かうと、そこで隠し通路と地下水路を発見します。
それはかつてペスト流行の際に、孤児院の子どもたちが閉じ込められた場所でした、それを見たドクター発作を起こし、マキシムに殴りかかり制止されます。
レオポルドから薬を渡されたドクターは、しばらく防音の効いた音楽室で一人休むことになり、安全のため鍵がかけられました。
その際ロウィーナは、ポアロに鍵を預けました。
音楽室を後にしたポアロは、マキシムが破られたアリシアの写真を持ち歩いていることを知り、金目当てではなく本当に彼女を愛していたのでは?と問います。
マキシムはアリシアと交際中からロウィーナの過干渉があったことを明かし、婚約後にイスタンブールに旅立ったロウィーナをアリシアが追ったことが婚約破棄の原因だと言いました。
婚約者より母を選んだアリシアを見て、自分は愛されていないと感じ婚約を解消したのです。
それからマキシムに差出人不明の降霊会の招待状を見せられたポアロは、文面から「APPLE」の字が浮かび上がるという幻視に襲われ、オリヴァに連れ出されました。
ポアロは、屋敷の黒電話が鳴った時に、初めての場所にもかかわらず すぐにポルトフォリオが受話器を持ち上げたことに違和感を持っていました。
さらに、誰にもポアロの玄関を通さなかったポルトフォリオが、オリヴァだけをすぐにポアロに面会させたことも不思議に感じていました。
そしてポアロは、レイノルズとオリヴァ、ポルトフォリオは最初から手を組んでおり、「名探偵ポアロを圧倒した女」としてオリヴァが小説家として返り咲こうと計画したと指摘しました。
オリヴァはポアロを欺いていたことは認めたものの、レイノルズ殺害は否定しました。
◆真犯人
音楽室で休むドクターに声をかけても返事がないことを心配したロウィーナ。
ポアロは、預かっていた鍵で音楽室に入りますが、そこには何者かにナイフで刺殺されたドクターの遺体が。
亡霊の仕業でもない限り実行不可能とも思える今回の事件に、参加者たちはこの悲劇から逃れようと屋敷を出ようとします。
そこでポアロは、一連の事件の真犯人が、ロウィーナであると明かしました。
溺愛する娘・アリシアが婚約者マキシムに取られてしまうと感じたロウィーナは、旅先のイスタンブールでシャクナゲから取れたハチミツに幻覚作用があると知り、屋敷に戻るとシャクナゲの栽培を始めました。
そして養蜂を行ってハチミツを作り、アリシアに飲ませることで幼い精神状態に陥らせ、自分から離れられないようにしたのです。
しかし、事件の日にいつもよりも激しく錯乱したアリシアを看病していた家政婦のオルガは、普段ロウィーナが落ち着かせるために与えていたハチミツを通常より多めに飲ませてしまいました。
それによりアリシアは息を引き取りました。
ハチミツの毒性の発覚を恐れたロウィーナは、何も知らないオルガが部屋を離れたあと、庭にあった熊手でアリシアの遺体に「復讐の印」をつけた後、バルコニーから投げ落としたのでした。
アリシアの検視は、正常な判断ができないドクターが行ったため、死因は溺死と判断されました。
娘の死を完全に隠蔽できたかと思いましたが、あるときからロウィーナのもとに脅迫状が届くようになりました。
検視を行ったドクターと霊媒師のレイノルズを疑ったロウィーナは、降霊会を利用して二人を消そうと計画。
ポアロが襲われたのは、ローブと仮面を身につけた姿がレイノルズと同じだったことから、ロウィーナが見誤ったためでした。
またポアロが体験した怪現象は、シャクナゲのハチミツを紅茶に混ぜられていたことによるものでした。
ドクターは、密室の音楽室で休んでいたときにロウィーナから「他殺にみせかけて自ら命を絶たなければ息子レオポルドを殺害する」と脅されたため、亡くなりました。
ポアロにすべてを暴かれたロウィーナは屋上の庭園に立ち「娘への愛」を訴えますが、雷鳴と共に現れた娘・アリシアの亡霊に驚き、運河に連絡して亡くなりました。
◆結末
一夜明け、警察がレイノルズ、ドクター、ロウィーナの三人の遺体を運び出すなか、残された人々も屋敷から去ろうとします。
そんななかポアロは、家政婦のオルガに引き取られることになったレオポルドに、ロウィーナに脅迫文を送っていた人物について話しました。
レオポルドは10歳にしては早熟で聡明なため、父・ドクターが書いたアリシアの検死結果を見て「アリシアは転落による溺死ではなく、シャクナゲのハチミツの毒によって亡くなった」と気づきました。
さらにオペラ歌手のロウィーナがかつてアスパシア(ロウィーナの愛称)役を演じた演目が、暗殺に備え日頃から毒を服用して“耐性”を作っていた王の物語であったことも知っていたのです。
ロウィーナへの脅迫によって得たお金は、父が働けないために生活費に使いましたが、まだ十分すぎるほど残っていました。
ポアロは、自分の行いにより父が亡くなってしまったと悔いるレオポルドに、残りのお金はデズデモーナ&ニコラス姉弟のミズリー州への旅費に充てたらどうかと提案します。
皆が船で去ったあと、新作が台無しになったと愚痴るオリヴァに別れを告げたポアロは「人は己の亡霊からは逃れられない」と呟くのでした。-おわりー
『ベネチアの亡霊』感想
「オリエント急行殺人事件」「ナイル殺人事件」に続くシリーズ第3弾「ベネチアの亡霊」は、これまでの作品とは違ってポアロが引退中の話であり、オカルト色の強いものでした。
原作の舞台イングランド南西部ウドリー・コモンから映画では水上都市ベネチアに変更されました。
また場所も、前2作より列車→船→家となって壮大さはなくなったものの、赴きある屋敷が舞台となっています。
ハロウィンナイトのなかで語られる不気味な伝説や戦争での悲劇…オウムの鳴き声や突然現れる少女の亡霊などの効果音にビクつきながら鑑賞しましたが、ここまでホラー的な演出は必要なかったのではと感じました。
ミステリートリックだけでも十分に魅せられたように思います。
まぁポワロが体験した怪現象も、ちゃんとシャクナゲの毒によるものと説明されたので納得でしたが。。。
一番 腑に落ちなかったのは、ドクターが息子の命を守るためロウィーナに脅されて命を絶ったこと。
自分が亡くなれば息子は一人になってしまうし、よく考えれば他に息子の命を守る手立てはあるはずなのに、あっさりと要求をのんでしまいます。
ロウィーナに惚れていたこと、精神的に病んでいたということも理由に考えられますが、そこの動機がちょっと弱いと感じました。
キャストでいえば、ミシェル姐さんの「リスニーンニグ」の怪演にテンション上がりましたが、あっさり退場してしまったのも残念でした。
それでもケネス・ブラナーが、これまでとは違ったポアロ作品にしようとしたチャレンジは評価できるし、ポアロの葛藤や人間の業によって生み出される悲劇などは丁寧に描かれていて概ね満足しました。
エンドクレジットでベネチアの街並みが空撮で長回しされているのも、作品の余韻を堪能できて良かったです。
『ナイル殺人事件』相関図付きのあらすじ結末は⇒こちら

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