『愚か者の身分』ネタバレ!あらすじから結末を相関図付きで

小説『愚か者の身分』は、闇ビジネスに手を染め墜ちていく若者たちの姿を描いたクライムサスペンスです。今回は、映画化も決定した西尾潤さんによる『愚か者の身分』のあらすじから結末をご紹介します。
『愚か者の身分』あらすじ
女性になりすましてターゲットを巧みに騙し、戸籍売買に手を染めるマモルは、ある日 上司にあたる佐藤から、タクヤと距離を置くように指示される。
金に困っていた自分をこの世界に誘ってくれた兄貴分的な存在のタクヤに何が起きたのか。
翌日、タクヤの部屋の清掃を命じられたマモルが目撃したのは、部屋中に飛び散った血痕で、それはタクヤが消されたことを示していた。
悲しみに暮れるマモルの元に、タクヤからメールでメッセージが届く。
そこには、自分の命が危ないこと、そして佐藤が上の事務所から横取りして隠していた金1憶を貸倉庫に隠しているから、2千万円を江川春翔と言う男に、残りをマモルに遺すと書かれてあった。
その頃、タクヤから戸籍売買のオトシ役を頼まれた槇原希沙良は、黒ずくめの謎の女性に襲われ…。
『愚か者の身分』登場人物
◆登場人物
◆柿崎護(マモル)・・・五人兄弟の末っ子として生まれ、小学校に上がる前に両親は蒸発。タクヤに誘われ戸籍ビジネスに手を染める。
◆タクヤ・・・梶谷に誘われ闇ビジネスの世界に入り、病弱な弟の医療費を稼いでいる。マモルを弟のように可愛がっている。
◆槇原希沙良・・・タクヤからの依頼で、戸籍売買を持ち掛ける仕事(オトシ役)を請け負う。人気アナの神尾あやこ似。
◆江川春翔・・・タクヤとマモルに騙され戸籍を売り、現在は谷口ゆうととしてネットカフェで働く。父は瀬戸内家の運転手をしていた。
◆仲道博史・・・探偵。真貴に頼まれ、春翔の行方を探す。
◆久保(瀬戸内)真貴・・・老舗家具メーカー瀬戸内家の娘。一家心中で生き残り、使用人だった久保の養女となる。
◆久保朝子・・・博史の伯母。瀬戸内家の使用人。瀬戸内家で生き残った娘と養子縁組を結んだ。
◆佐藤秀人・・・タクヤの上司。関西出身。ジョージが集めた金をネコババしするためタクヤを利用する。
◆市岡譲治・・・佐藤の上司。違法金塊ビジネスを行い大金を稼いでいる。
◆梶谷剣士・・・運び屋。タクヤを「闇ビジネス」の世界に誘った兄貴分的な存在。
◆相関図
※無断転載ご遠慮ください。
『愚か者の身分』結末ネタバレ
半グレ集団のトップ・ジョージが金塊ビジネスで集めた投資金を愛人宅に隠していると知った佐藤は、タクヤと共に1憶円を盗みました。
佐藤はその金をタクヤに貸金庫に預けるように命じ、鍵をタクヤの家にあるテディベアのぬいぐるみに縫い込んでいました。
しかし、佐藤は最初からタクヤを利用することしか考えておらず、すべての罪をタクヤにかぶせて金を独り占めしようとしました。
危険を察知していたタクヤは、金を別の場所(貸倉庫)に移し、その鍵を冷凍庫に凍らせた鯵の腹のなかに忍ばせ、マモルに渡すことを計画しました。
ちょうどその頃、タクヤに戸籍売買での報酬を受け取りに来たオトシ役・槇原希沙良は、突然ボブカットに赤いルージュを引いた女に襲撃されました。
必死に抵抗した沙良はなんとか女を殴り倒して逃げましたが、再び女が現れて沙良を拉致しました。
実はその女は、タクヤがターゲットにして戸籍を売り飛ばした江川春翔の幼なじみの久保真貴という女性でした。
真貴は養母の葬式で、従兄弟で探偵の仲道博史に会い、春翔の所在を確かめることを依頼しました。
仲道は自ら沙良の偽名だったアイコに接触して、春翔が戸籍を売り飛ばされた可能性があることを知ります。
春翔をハメた男がタクヤとアイコ(沙良)だと知った真貴は、沙良を拉致してタクヤの自宅に向かいますが、そこで二人が目撃したのは目玉をくり抜かれ、血だらけで横たわるタクヤでした。
タクヤの予想通り佐藤は裏切り、ジョージの指示によって中国人に角膜を移植するドナーとしてタクヤは目玉をくり抜かれたのです。
タクヤの状況を見て怖くなった真貴と沙良が逃げ出したあと、今度は運び屋の梶谷剣士が現れタクヤを山梨の病院に運ぶことに…。
タクヤは山梨の闇病院で、さらに臓器を取り出される手配がされていたのです。
しかし梶谷は、タクヤを闇ビジネスに誘った兄貴分的な存在で、組織に嫌気がさしていたこともあり、タクヤと共にそのまま逃走することを決意します。
その頃、マモルはタクヤからのメッセージ通り、貸倉庫から金を持ち出し、指示通り2千万円を春翔に渡しにいきます。
谷口ゆうとという名義でネットカフェで働いていた春翔は、マモルから金が入ったリュックを受け取り、社員ロッカーに入れますが、客のトラブルが発生した隙にリュックを盗まれてしまいます。
その後、真貴と春翔は再会。春翔は元々汚れた金だと、リュックを盗んだ者を探そうとはしませんでした。
一方、梶谷とタクヤは、車に装着されていたGPSにより、ジョージが率いる組織の追っ手に襲われますが、なんとか梶谷の女のツテを頼って神戸のマンションに潜伏することに成功しました。
翌日、タクヤは見えない目で、弟が好きだった鯵の煮つけを梶谷に振る舞っていましたが、ふとテレビからジョージと佐藤が逮捕されたというニュースが飛び込んできます。
まだまだ安心はできませんが、ひとまず追跡されないと知ったタクヤと梶谷は、黙々とご飯を食べるのでした。
『愚か者の身分』感想
粗さが目立つという書評通り、少し読みにくい構成でしたが刺激的な内容とスリリングな展開でページをめくる手を止めることができませんでした。
特に第一章の「柿崎護」がとても良く、凍った魚をコンビニの袋に入れて歩き出すラストは非常に鮮烈な印象が残りました。
またコム・デ・ギャルソン、すし好、世界の山ちゃん、伊勢丹メンズ館、もうやんカレーなど、すぐにネオン煌めく新宿が浮かび上がる描写も素晴らしかったです。
後で調べてみると、第一章で大藪晴彦新人賞を受賞したあと、他の章は書き足したようです。
戸籍売買、違法な臓器移植など闇ビジネスを扱い、目玉をくり抜くなどの残虐なシーンがあるところは、『地面師たち』と似ています。
両目えぐりとられて、冗談言えるタクヤは凄い…。
自業自得とはいえ、闇ビジネスに身を投じるしかなかった若者たちの、危うさやあきらめのようなものが切ない。
梶谷の言葉で心のない奴が生き残り、生きていて欲しい奴はこの世を去るという通り、この世界の不条理がよく伝わる作品でした。
物語はクライムサスペンスといった雰囲気で、勝手に最後のドンデン返しを期待していましたが、美味しい鰺の煮付けと白飯と共に希望のあるラストを迎えました。
伏線ぽいハラハラしたシーンがあったのに、意外にも終わりはサラリ。
マモルや梶谷の逃走劇に対して、春翔や真貴、仲道のターンは、少し物足りない感じで、ジョージたちの上の人間が捕まっていないのも気になりますので、ぜひ続編も読んでみたい!
なお『愚か者の身分』は2025年10月24日に映画が公開されますので、そちらも楽しみにしたいと思います。
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